紙幣を発行する中央銀行の敵は、ゴールド価格だった(1)
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NYからです。泊まっているザ・ミケランジェロ(51丁目)から、タ
クシーで10分下りると、世界の金融の中心、ウォール街です。窓は
鉄の格子で覆(おお)われた石作りの要塞、ニューヨーク連邦準備
銀行があります。地下5階に、金を保管しているという。

いや、ここにはない。FRBが各国から保護預かりしている金と一緒
に、フォート・ノックスにあるともされます。所在と量を明らかに
しないのは、安全上のためとされていますが・・・。

NY連銀が頂点の、全米12か所の連邦準備銀行を統括するのは、準備
制度理事会 (FRB:Federal Reserve Board of Governors) です。

政策金利(長短の国債金利)を決め、国債(政府の債務証券)を買
って、ドルを政府や金融機関に振込む方法によって、ドルの発行量
を決める中央銀行です。言うまでもなく、FRBはドル紙幣を独占的
に発行できる銀行です。

FRBは、米国債と他の債券を、政府または金融機関から買い、その
代金としてのドル紙幣を無から創造し、印刷・発行しています。

同様の役割が、ユーロではECB、日本は日銀、中国は人民銀行です
。FRBが特殊なのは、政府ではなく私的な資本であることです。

もうひとつ特殊なのは、ドルを世界が基軸通貨、言い換えれば貿易
通貨と認めているため、世界に対しドルをばらまく元になる機関で
あることです。

米国が長年の貿易赤字を気にしないのは、世界が、商品と交換にド
ルを受け取るからです。基軸通貨は、もっとも信用される通貨と言
っていい。

仮に円が基軸通貨として世界に認められれば、海外から輸入する商
品代金として、円を印刷して渡せばいい。これは国家としての最大
の特権であることがわかるでしょう。

不思議なことですが、世界は、通貨価値、つまり商品購買力が下が
り続けるドルを、約90年、もっとも信用し続けています。下がるド
ルが、もっとも信用されている理由は何か? 米国政府の信用でし
ょうか。軍事力でしょうか。貿易財(特に資源・エネルギー)の価
格がドルベースで決まるからでしょうか。不明です。

「準備(リザーブ)銀行」と言いますが、信用の元として何を保管
し、引き出しに備えた準備をしているのか? 

1971年以前は、発行した紙幣と交換できる金を準備していました。

1オンス(31.1グラム)の純金が、$35と交換できていたのです。
ニクソンの大統領令によって、FRBがリザーブしていた金との交換
が停止されたのが、1971年でした(ニクソン・ショック)。

1オンスの金は、現在、$1745(約14万円)です。1グラムは、邦貨
で4500円付近(消費税込み)になります。40年間で、ドルは金に対
し50分の1(2%)に減価しています。減価は、通貨の価値つまり
購買力が下がることです。金が上がったのか。ドルが下がったのか
。

当時の金を1万ドル分(8.9Kg)交換していれば、現在は50万ドル(
4000万円)です。年率の平均利回りが約10%(40年で50倍)。金の
高騰によるキャピタル・ゲイン(資本の利益)は、人々が働いた結
果として得る事業の利益(営業利益:営業による利益)をはるかに
超え、すさまじい。
http://goldchart.seesaa.net/

金価格の、異変に見える高騰は、2002年から(とりわけ2004年から
)です。20年の長期チャートでみると、1オンス(31.1グラム)が
$300~$400付近で波動していたものが、$1700~$1800まで、約
5倍に、一直線で高騰しています。

金価格の高騰、言い換えれば、ペーパー・マネーの下落の背景にあ
る事情を調べると、経済学が、何者かの意図が働いたためか、通貨
論を避けてきたことが浮かぶのです。

何者かとは、「国際金融マフィア(金融の奥の院)」とも言われる
中世的な紐帯、つまり同族的に結びつく絆の一団です。世界の中央
銀行の上から命じる中央銀行とされ、スイスにあるBIS(国際決済
銀行)は、一族(デル・バンコ:その意味はThe Bank)の、支配下
にあります。

BISは、世界の銀行が守るべき自己資本比率を決める機関として有
名です。(8%や11%) なぜ、BISが世界の信用創造量を決めるこ
とについて、決定の権力をもつのか? 

実務では、世界の中央銀行間の、為替取引(通貨の交換)を行って
いる交換所です。江戸時代の言葉で言えば、通貨の交換を行ってい
た両替商です。BIS規制に従わないと、その国の中央銀行は外為交
換ができなくなる。このため、BISに従うのでしょう。

マフィアは、法の適用を免れようとする集団も言います。たとえば
、2000年代金融の中心になっているオフショア、言い換えればタッ
クス・ヘイブン(租税回避地)です。ここを本拠にする限り、金融
利益への課税がされません。

なぜ、世界の法を超えるタックス・ヘイブンが作られているのか。
最初は、税法の上にある英国国王の、マネー運用からでした。8000
本の、世界のヘッジ・ファンドの本拠はオフショアです。通信回線
の中を、光速のデジタル信号として流れています。紙幣の形はあり
ません。預金通帳の数字であるだけです。ハードディスク・マネー
と言えます。

オフショア金融は、オリンパスの1300億円の損失飛ばしでも有名に
なりました。わが国株式市場での、売買の60%~70%は「ガイジン
売買」です。先物やオプションという方法で、レバレッジを使うオ
フショア金融です。

日本国債の、債券市場での売買のほぼ40%も、2011年は、(まだあ
まり知られてないことですが)英米系のヘッジ・ファンドの売買に
なっています。方法は、株の先物と同じく、30倍以上のレバレッジ
がかかる先物とオプションです。

タックス・ヘイブンから、あるいはそこを経由して、流れるマネー
量は世界の通貨流通量の70%とも言われます。正確と思える統計が
ないのは、どの政府も、調査と課税ができない聖域とされているか
らです。このため、マフィアともいう。

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<567号:紙幣を発行する中央銀行の敵は、
ゴールドだった(1)>

2011年12月07日号

【目次】

1.紙幣は負債性の通貨
2.金、貨幣、中央銀行の根源を論じれば「陰謀論」とされる
3.金の在庫と需要
4.ゴールド価格の短期変動は、ヘッジ・ファンドの売買が原因。
しかし、2004年からの長期の上げは、ヘッジ・ファンドの売買では
説明できない
5.金準備銀行だった中央銀行
6.通貨の覇権争いが戦争だった
7.ユーロの結成
8.ユーロの金融・財政の危機対策
:危機のユーロに見るペーパー・マネーの性格
9.変動相場の中では実効レートが、真の金利
10.金匠の「預かり証」が貨幣になった
11.銀行の発展
12.戦後のブレトン・ウッズ体制(以下次号)

【後記】

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■1.紙幣は負債性の通貨

中央銀行が作る「負債性の証券」である通貨には、怪しいところが
あります。

通貨を負債とするとは、聞きな慣れないことでしょう。ペーパー・
マネーは、中央銀行が国民経済から借りた負債であり、負債の金額
をあらわす証書です。中央銀行のバランス・シートでは、マネー発
行の金額は負債勘定です。(日銀は79兆円:1万円札で79億枚:11
年11月 ↓ )
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2011/ac111130.htm/

負債勘定ですが、主要都市にある日銀支店の窓口に行って、「これ
を返してください。」と言えば、係員は「???」とした表情で、
別の新しい1万円札を出すでしょう。

日銀には、返すべきものはないからです。ところが、印刷(マネー
創造)は、日銀の意志でできます。負債性通貨は、奇妙なものです
。

中央銀行の使命は、公式には「通貨の価値を守ること」とされてい
ます。これも奇妙です。通貨の価値が下がるのをインフレ(=原義
は通貨の膨張)と言います。これは中央銀行が金融を緩和し、通貨
の発行量を増やしすぎるからです。通貨の価値を下げるのは、中央
銀行しかない。であるのに、通貨の価値を守るとは、どういったこ
とか?

過去からずっと、中央銀行があったのかと言えば、そうではない。

日本では、政府資本によって(とされて)、明治14年(1881年)に
作られています。

財務省が51%の株をもつとされ、店頭上場されています。天皇家か
らの出資や、ロスチャイルド家から設立時点での出資(日本政府へ
の金の貸付)があった、ともされます。株主名簿は、どんな理由か
らか、非公開です。

米国では、1913年です。FRBは、米国政府ではなく、民間銀行を経
由した私的な資本です。当時のウィルソン大統領は、退官後、死ぬ
まで、「あの決定は間違いだった。米国を、欧州の銀行一派に売り
渡してしまった」と嘆いたという。

中央銀行の紙幣は、特権を付与されています。まず、その通貨を使
わねばならない。商品代金としての受け取りは、拒否できない。

米国FRBは、「ドル信用の根拠は、連邦政府の財政信用だ」と言っ
ています。国債(政府の負債証券)を買い、ドルを印刷しています
から、FRBの資産は米国債です。ドルの信用は、政府の財政信用と
言うのは、その通りでした。

しかし、08年9月の金融危機(リーマンショック)以降は、住宅ロ
ーンの回収権を担保にした証券であるMBS(不動産担保証券)を、
銀行から買って、少なくとも$1兆分のドル紙幣を、増加供給して
います。

MBSの市場価値は、AAA格でも額面金額の60%以下です。BBB格は価
格がつかない。これは金融崩壊を防ぐための、緊急策としています
。もうこれは、「政府信用」ではない。激しく下落した、住宅ロー
ン信用でしかない。

このため、米ドル紙幣のほぼ50%は、住宅ローン信用になっていま
す。ドルが売られて、ドルの外為価格が下げた理由でもあります。
(注)FRBは、下がったMBSを、額面価格で買っています。このため
、FRBは、MBSの下落分の含み損を抱えています。
http://www.federalreserve.gov/releases/h41/current/

だんだん、訳が分からなくなってくるでしょう。
その通り、紙幣の価値の根拠は怪しい。

■2.金、貨幣、中央銀行の根源を論じれば「陰謀論」とされる

●何が理由で、
・1980年以降、2002年まで、22年間も低迷していた金が、
・くびきをとかれたように、高騰したのか? 

特に1980以降、金の現物の所有をめぐって、「争奪の戦争」とも言
える、日本を除外した銀行間での争いがあったのですが(事実)、
一般には伝えられていません。論じれば、不名誉な陰謀論の烙印を
押されます。

時代、時代で、正統派とされてきた経済学は、金の価格、BISや中
央銀行の役割、通貨の発行、つまり「信用創造の根源」にあるもの
、言い換えれば、通貨の根源を論じることを、なぜか、禁じていま
す。

「金戦争」とは、チューリッヒに、ロスチャイルド資本の「バンク
・リップス」を開き、金を買収していたフェルディナント・リップ
スの言です。

2002年ころに、「どこかのグループ」は、世界の中央銀行が金の高
騰を抑えるために市場に放ってきた金の現物の買収を完了した。こ
のための、2002年からの高騰に思えます。

現物の枯渇は、金を更に高騰させますから、ペーパー・ゴールド(
契約上の金)としての、金ETF(上場投信の証券)が作られました
。

以上は、貨幣論と金融に大きく関係する事実です。
しかし論じるエコノミストや学者は、いない。

(注)ケインズは、ほとんど読まれない、錯綜した『貨幣論(未完
)』で論じています。目的は、ゴールドを、ばかげた貨幣として葬
り去ることでした。英国財務省の高官でもあったケインズは、金(
きん)を論じたあと、ペーパー・マネー論に転じています。国債を
発行することによる「戦費調達(ドイツとの戦争)」で、それが明
らかです。政府が国債を発行し、銀行と中央銀行が買い取れば、戦
費は調達できるとした。

事実を、あるいは事実からの論理的な推理で、BISと中央銀行が果
たしている機能、および金の所有と通貨を論じれば、どこからか、
陰謀論の烙印(らくいん)をおされる憂き目をみます。陰謀論にす
るのは、金融マフィアの当為です。目的は、論を葬ることです。本
稿は、そのためにこそ書きます。

主流派の経済学は、通貨の発行、中央銀行、金の価格を論じません
。

IMF(国際通貨基金)の総裁だったストロスカーン(フランスの次
期大統領が確実視されていた)の、仕組まれたように見える、不名
誉で・・・不明瞭に報じられたスキャンダルは、「FRBは約8000ト
ンの金を売ってしまって、いまはもう持っていない」ことを知り、
公言する恐れがあったためとも言われます。

こういう発言も「陰謀論」とされます。

■3.金の在庫と需要

地上の金の現物在庫(ゴールドバーと宝飾品)は、16.5万トン(現
在価格743兆円)とされます。このうち世界の政府・中央銀行が、
投資用のゴールド・バーとしてもつのが、3万708トン(WGCを通じ
て公開しているIMFの統計:2011年)です。

1年の、世界の金の生産量は、ほぼ2500トンです。他方で、金の現
物需要は、ほぼ一貫し、4000トン付近と推察できます。産金量に対
し、現物は1500トン不足します。この30年、誰が、1年に1000トン
余り(30年で3万トン)を売ってきたのか?

4000トンという現物需要の量は、ロスチャイルド家のエージェント
としてリップス銀行を作り、1990年代に、中央銀行から流されたゴ
ールドの買収を行ってきたフェルディナント・リップスによるもの
です。

肝心なところで、言えないことのためか、論理が飛んでいるところ
が随所にある『いま、なぜ金復活なのか(リップス):邦訳2006年
』を数回読み、他の本や情報も参照しながら確証を得たのが、現物
の需要量4000トンです。金証券(金ETF)、金先物、そしてオプシ
ョンがあるので、現物の買いの需要は、見えにくいのです。

2500トンの産金量に対し、4000トンの現物需要があり続けるなら、
金価格は、短期でファンドの利益確定や換金売りが超過することに
よる下落はあっても、今後も(半年以上の期間をとった傾向では)
、大きく上がるでしょう。

■4.ゴールド価格の短期変動は、ヘッジ・ファンドの売買が原因
。しかし、2004年からの長期の上げは、ヘッジ・ファンドの売買で
は説明できない

一般に、ヘッジ・ファンドが、レバレッジをかけて巨額に売買する
先物、オプション、ETF(金先物証券)の限月(げんげつ:反対売
買の期限)は、決算期に合わせた3か月が多い。

相場の大きな下落期には、他の証券で損をしたファンドが、資金繰
りのため、ポートフォリオ(各種金融商品への分散投資)で利益が
出ているもの(特に金)の、売りに回ります。

このため上がってきた価格も下落します。しかし、現物の需要が1
年に1500トンも超過していれば、換金売りの時期が収まると、また
上がる傾向になるのが必定と判断していいでしょう。

ヘッジ・ファンドの先物買いは、限月までに、反対の売りになりま
す。オプションでの売買も、売りと買いは同量です。このため、現
物の需要増加という要因ではない。買いが増えるときだけ、需要増
になりますが、ほぼ3か月後には、売りの増加になるからです。

つまり、ヘッジ・ファンドが買ったから長期で上がったとは、言え
ないのです。同量の売りがすぐ来るからです。

そうすると、金価格を上げた原因は何だったか?
本稿で推理し、確定します。
これを行えば、未来の金価格も予想できるからです。

■5.金準備銀行だった中央銀行

▼何を準備(リザーブ:保管)しているのか

FRBは、今も「準備銀行」と言っています。ところが、通貨との交
換用の金は準備していない。

資産として所有し、準備しているのは、政府の借用証である国債と
、住宅ローンの負債の証券であるMBSなどです。負債の証券は、準
備とは言えません。FRBの宣伝映画を見ると、ドルの信用の裏付け
は、もはや金ではなく、米国政府の財政信用だと言いきっています
。

いまも準備銀行という。FRBに行って、1万ドルとの交換を要求して
も、何も渡しません。詐欺でしょうか? 後で述べる金匠(銀行の
原初型)は、金を渡せないと、ギロチンにあったのですけれど・・
・

負債性の証券(=国債)を担保にした通貨の発行、つまり無から通
貨を生むことは、FRBにとっては合法的ではありますが、他が行え
ば、オリンパスの飛ばしのような詐欺行為です。

この特別の権利を、FRB、日銀、ECBは持っています。そして全世界
の法律では、その国では自国通貨の受け取りを拒否はできないとさ
れています。正義と法は、別物です。

【イメージ】
企業が、通貨発行権を持っていることを仮想すれば、わかるでしょ
う。商品を仕入れる時、株券に相当する紙幣を印刷してわたせばい
いなら、賃金も印刷した紙で払えます。

その証券を、他の人が信用するなら商品が買えますが、世間は、企
業がプリンターで印刷した証券の価値を信用しないため使えない。
どころが、中央銀行が印刷した紙幣(流動性を法が保証した有価証
券)は違います。

【ドルの信用の元は何か】
FRBが発行するドルは、価値があると信用されます。今も真実の通
貨に思える金に対し、1年に10%も価値をへらし続けてきたドルが
、信用されるのはなぜか。円やユーロも、同じです。金はドル基準
で価格が決まり、その後に、円やユーロに換算されています。

世界のGDPの30%をやりとりしている貿易材(商品)の、根幹にあ
る国際コモディティ(世界の資源や金を含む)では、米ドルベース
で価格がついています。

その後にユーロや円を含む各国通貨に変換されます。つまり、ドル
中心です。これを、各国が貿易で使う通貨機能と合わせて「ドル基
軸通貨体制」とも言います。これは、世界では米ドルがもっとも信
用されているということです。

■6.通貨の覇権争いが戦争だった

国際コモディティが米ドルでの売買になっていることの源には、サ
ウジの王家の永続性を、駐留している米軍が保証し、その代替条件
で、サウジアラビアは、原油の売りにドルを使い続けるとしたこと
があります(事実)。

米軍のサウジ駐留は、ドル基軸体制の維持が目的です。フセインを
追放し、イラクの原油を抑えた理由も、ドルの価値維持が目的です
。

歴史をさかのぼると、主に英国が、人を送って開拓した植民地だっ
た新大陸(米国)に、英ポンド紙幣を使わせることが、英軍(つま
り英国政府)の目的でした。

英国中央銀行が無償でポンドを刷って米国に与えれば、米国の商品
がタダで買えるからです。貸せば、金利を受け取れます。

植民地を、武力で支配する宗主国の言葉と通貨を使うことは、植民
地の条件です。日本はかつて、台湾や中国でこれを行いました。日
本の国内では戦国時代から、これは変わりません。この時代の国は
、戦国武将の統治下の土地でした。「お国は?」と訊ねるとき、こ
の戦国時代の、分割されていた国の概念が残っています。

原油で言えば、原油の輸入国は、サウジに対しドルで払わねばなら
ない。このため、自国の商品や通貨を米国に売って、ドルを稼ぐ必
要があります。

その外貨の累積が、中国政府が$3.2兆、日本政府が$1.2兆をもつ
外貨準備です。外貨準備が必要なのは、世界貿易の60%がドルで行
われているからです。つまり、商取引の決済に「多く使わせること
」が基軸通貨です。

イラクのフセイン大統領は、価値が不安定な米ドルに替えて、当時
は上がっていたユーロでの売買にしました。これが、2003年に米国
がしかけたイラク戦争の原因です。大量破壊兵器の存在は、でっち
あげでした。

こうした基軸通貨の主権をめぐって、通貨の覇権維持を原因に、戦
争が起こります。国家の権力のもとは、国債を中央銀行に買わせる
ことによって生じる「通貨発行権」だからです。権力の基盤はお金
です。

ソ連は、周辺国を併合してソ連邦と東欧圏というルーブル通貨圏を
作り、ソ連が印刷したルーブルで、商品を買っていました。

ルーブルが、政府による印刷しすぎで信用されなくなった結果起こ
ったのが、1999年の、ベルリンの壁の崩壊です。

ソ連は共産主義の経済だったので、全員が、国家(=官僚機構)か
ら給料をもらう公務員でした。ところが公務員の給料と年金は、ル
ーブル紙幣の印刷しすぎのため、その購買力(通貨価値)が無効に
なったことからの体制転換だったのです。ルーブル信用の低下の、
目に見える形が、物価の高騰(ロシアのハイパー・インフレーショ
ン)でした。

米軍が勝利を収めたアメリカ独立戦争(1783年)は、米国13州が英
国ポンド通貨圏を離脱するため、自国の銀行(または政府機関)が
発行するドルを使う動きに原因があります。

戦争は、結果としての現象です。原因は、通貨の覇権です。覇権と
は支配する能力です。太平洋戦争を仕掛けた理由も、日本が、英米
による海上封鎖のため、資源と石油が輸入できなくなったためでし
た。

独立とは、自国が通貨を発行することです。通貨はそれくらい重く
、国家権力にかかわっています。

■7.ユーロの結成

2000年のユーロの結成は、ドイツとフランスが(一見では裏腹な動
きもするロスチャイルド家の系列銀行をバックにして)、米ドル圏
を離脱することが目的でした。

ルーブルが無価値になったソ連崩壊後の冷戦終結は、東欧への米ド
ル経済圏の拡大でした。これを90年代は「パックス・アメリカーナ
(新ローマ帝国)」とも言っていました。統一通貨ユーロは、ソ連
崩壊後、米ドル圏になっていた東欧の、欧州による奪回だったと言
っていいのです。

人民元も、1980年代後期からの一国二制度のあとドルへの準ペッグ
制です。つまりFRBの傘下のドル経済圏です。中国の、経済成長で
、中国GDPの40%の輸出入が増えると、決済と外貨準備の増加のた
め、ドルの需要(ドル買い・人民元売り)が増えます。

このため、米国がドル債を増発しても、中国のドル買いで吸収され
てきたのです。このように、通貨の覇権(他国が信用して使うこと
)は、国家の巨大利益です。ドル債は負債証券です。それを海外が
買ってくれるからです。

たとえば株券を、市場がいくらでも買ってくれるなら、企業は、商
品を売る事業をしなくても、お金が入ります。紙幣は、国家が発行
する株券のようなものです。

■8.ユーロの金融・財政の危機対策
:危機のユーロに見るペーパー・マネーの性格

今、ユーロの通貨危機、および通貨危機を生む金融危機に対し、EC
BがPIIGS国債を買い、ユーロを刷ればいいとする論があります。果
たしてそうか? ECBが国債を買ってユーロを刷れば問題が解決す
るなら、もともとPIIGSの国債危機は、起こらなかった。

2008年の金融危機以降、ECBは、金融機関が手放しているPIIGS債を
、毎月、買い続け、ペーパー・マネーを与えているからです。この
ため、PIIGSはまだデフォルト(債務不履行)をしていない。

ただし、信用が下がった国債を、ECBが資産として買うこと(現象
はマネーの供給)は、ECBが発行している通貨ユーロの、価値の減
価です。

この減価のため、ユーロは外為市場で売られ、円に対してはピーク
(168円付近:07年7月)から103円まで、約4割も暴落したのです。


●【重要】変動相場制で、各国通貨が自由に売買される外為市場が
あると、中央銀行のマネー印刷は、その通貨の価値下落であると認
識されて売られます。ユーロが売られることは、ドル、円、スイス
フランが買われることです。

これが売られた通貨の「キャピタル・フライト(お金が海外に逃げ
ること)」です。このため、ECBが、ユーロ内に、印刷マネーをい
れても、ユーロの下落になって、増加マネー(マネーストックの増
加)になっていないのです。

たとえば今、NYにいて、円で米ドルを買い、ドルを使っています。
日本から見れば、円売り・ドル買いであり、日本のマネーを減らす
ことです。

国債を買い、代金として通貨を発行する中央銀行にとって、政府の
財政危機は、国債が資産である中央銀行そのものの危機でもありま
す。

政府財政の危機は、売ってきた国債の償還と利払いが、危うくなる
ことです。中央銀行の信用の低下を示すのが通貨の下落です。

●PIIGS債のように、将来の償還と利払いが懸念されると、信用リ
スクの高騰という原因で、その国債を買う人が期待すべき金利が上
がるため、国債価格が下がります。

(注)PIIGSは、ほぼ絶対に、過去の国債の自力での償還と、高騰
した金利の利払いはできません。国債の償還と利払いができるには
、GDPが成長し、経常収支が黒字になって、政府財政も黒字になら
ねばならないからです。これは不可能でしょう。200兆円くらいの
債務カットしか方法はない。

政府の利払いは、上がった国債金利のため、一層困難になって、い
ずれデフォルト(支払不能)になる。いずれ、そうなります。その
とき、ユーロは解体されます。

将来の、税収の増加と、経済成長が見込めないことが原因です。
国債の償還と利払いは、将来の税収を、担保にしているからです。


赤字が回復する見込みが薄い会社へは、貸付金利が上がり(=国債
金利の高騰)、貸す金融機関がなくなり、株価が下がる(国債と通
貨下落)のと同じです。個人で言えば、「サラ金金利」になります
。

●事実を言えば、ECBが、可能な額を斟酌しながら、PIIGS債を買っ
ているにもかかわらず、PIIGS債の下落危機が起こっているのです
。このため、ユーロという通貨が売られて、下がったのです。通貨
の下落は、中央銀行の信用の低下です。

■9.変動相場の中では実効レートが、真の金利

変動相場制の世界では、以下に示す実効金利の概念で、考える必要
があります。たとえば、ユーロの政策長期金利は2%程度です。こ
れに、ユーロの予想下落率も加えねばならない。通貨の価値が変動
するからです。

ユーロの実効金利=ECBの政策金利+ユーロのレートの予想下落率

たとえば、ユーロが1年で円に対し20%下がる予想なら、円から見
たユーロの、必要な実効レートは、[ECBの政策金利(2%)+ユー
ロの実効レート下落率(20%)=22%・1年]という高さになりま
す。

22%という高い実効レートは、ユーロが円に対して、22%価値を下
げる予想があるということです。このため、ユーロの、上記の考え
での実効金利が22%以上でないと、ユーロ国債は買われない。

ユーロ建てのドイツ債すら、政府が発行した金額の40%が売れ残る
札割れ(ふだわれ)が起こったのは(11年11月)、ドイツ債もユー
ロ建てであるため、必要な実効レートがもっと高いからです。

簡単に言えば、金利2%のドイツ債の利払いは確実であっても、ユ
ーロが20%下がれば、ドイツ債を買った人は18%も損をするからで
す。

以上のような変動相場があるため、PIIGSの金利が高騰する危機が
、ドイツ・フランスを含む、ユーロの危機になります。

このため、ユーロ内のECBによるペーパー・マネーのユーロの印刷
では、一層ユーロが売られて下落し、ユーロ圏の金融・財政危機が
深刻になります。

▼なぜ、米国・日本・中国がドルを、ECBに貸すのか?

このため米国FRB、日銀、人民銀行が、手持ちのドルをECBに貸し付
けるという、異例の緊急策(11月30日)が執られたのです(金額は
不明)。

この報を受け、世界の株価は買いが増え、つかのまの高騰を示して
います(12月1日)。短期の株価の動きは、政府マネーの投入を好
感するからです。

予想をすれば、この貸付では「足りない」。欧州の91の金融機関と
、PIIGSおよび各国政府の、次々に満期の決済日が迫る資金繰りの
ために、概算でも、$5兆(400兆円:今年度1年間)くらいが必要
ですが、とてもその金額は出せないからです。

ユーロの株価とPIIGSの金利は、4週とはもたないでしょう。2012
年1月の、政府と金融機関の資金繰りに、不安が残っているからで
す。

             *

時事問題から、ゴールドと紙幣に話を戻します。

13世紀ころからの金細工師(金匠:ゴールドスミスとも言う:イタ
リアの都市国家)の、金貨・銀貨、および貴金属の「預かり証」か
ら発展したペーパー・マネーを、歴史的にたどります。

一冊の本の分量にもなりますので、本稿ではエッセンスを簡略化し
、示すつもりです。中央銀行のペーパー・マネー以降の貨幣論(20
世紀)は、通貨の歴史を、「ばかげている」として闇にほうむって
います。前述のケインズがその代表です。

■10.金匠の「預かり証」が貨幣になった

金匠は、最初の、紙幣を発行した銀行でした。

それ以前は、金や銀の金属貨幣の重さがマネーでした。貴族は、襲
われたときの安全のためもあって、金貨や貴金属を信用できる金匠
に預ける習慣がありました。金匠は、保管料を受け取って、預かり
証を発行していました。この預かり証が、金貨と同じように、流通
したのです。このとき、ベネチアやフィレンツェなどの、イタリア
の都市国家で、紙幣(金証券)が誕生したのです(13世紀)。

金匠は、1トンの量の金貨に預かり証を発行しても、預けた金への
交換要求は最大でも10%の、100Kgでしかないことに気が付きます
。つまり、準備率は預かった金の総量の10%でいい。

900Kg分は、預かった金匠が、自由に運用できる。そこでまず900K
g分の証券を発行して、マネーを必要としている貴族や商人に、金
利をとって貸し付ける。

ほぼ永久に預かったままの900Kgの金証券を、新たに発行しても、
その準備率は10%の90Kgでいい。次は810kg分の金証券が作れる。
・・・という無限等比級数になる。金匠が発行する金証券に総量は
、最初に預かった金1トンの10倍、つまり10トン分にもなるのです
。

これを貸し付けて、5%の金利をとれば、金9トン分の証券×金利
5%=金450Kg分の年間金利にもなります! 

最初に預かった金1トン(1000Kg)が、1年で生む金利は、金450Kg
分になります。つまりゼロから創造されたマネー量が、金証券によ
って、元の金貨の10倍(1万Kg)に増えます。言うまでもなく、こ
の金証券は、金匠が預かった金の、負債を示す証券です。

(注)これが、現代銀行の預金準備と同じ、信用創造の原理です。


預かった金1000Kg→貴族に渡した預かり証1000kg→金匠による金証
券の発行900kg→810 Kg分の金証券の貸付→810kg分の年間金利・・
・これが、無限に続く、信用創造です(等比級数)。

このときが、13世紀イタリア(特にベネチア)での、銀行の始まり
です。預かった金1000kgです。しかし金証券(預かり証)の発行量
は、1000	Kg÷準備率10%=1万Kg分=10トン分に膨らみます。

金匠が預かった金の準備率は10%でいいと、金匠が気づいたからで
す。金を預けた貴族が、預かり証と金現物の交換に来る割合が10%
しかなかったからです。9トン分の、金貨と同じ機能を果たす「金
証券」が増えたようになって、経済は、インフレ含みで活性化しま
す。物価は、上がります。

金匠は「無償」で金9トン分を、得たことになります。
金証券の発行総量は、10トンです。
預かった金は、10分の1の1トンです。

以上の構造のため、あの金匠は10トン金を保管していないとう噂が
立つと、取りつけが起こって、潰れることを繰り返していました。


取り付けが起こると、金証券で10トン分に増えていたマネー量が、
一挙に、1トンの金貨に縮小します。通貨量は10分1になる。不良
債券になって消えるのが、9トン分の金証券です。

このため、商取引ができなくなって経済は、デフレ型の恐慌になっ
ていたのです。

恐慌は、インフレの後、不良債券の増加が分かってマネー量が減る
ことによって、商取引が縮小するデフレです。金匠は、偽の資金証
券を発行した詐欺師として、ギロチンにかけられました。

これ以降、銀行は、金準備の本当のあり高を公表しない習慣があり
ます。準備とは、支払準備用の金のことです。このため、金を準備
したFRB(連邦準備銀行)とも言うのですが・・・。

【参考】
フランス革命の理念だった「自由。平等、博愛」というが考え(イ
デー)があります。これは、階級が富と権限を決めていた、階級社
会に対し、金融資産(つまり金の保有高)において平等であり、自
由であるという意味でした。金は、誰にとっても価値は同じだから
平等です。

資本(つまりマネー)の持ち高の程度によって、それを基準に、平
等であるとう意味です。金の保有高が、自由の程度を上げる社会の
ことです。資本主義がこれです。資本主義は、ベネチアで誕生して
います。

マネーは、出自(出身)と相続が決めていた階級社会での隷属から
、人を開放するものでした。この考えで、(近世の商人=お金を貯
めたブルジョアジー階級)が、マネーを持たない貴族に貸し付けて
、上に立ったのです。これが、フランス革命(イデオロギーが自由
・平等・博愛)であり、資本主義です。

資本主義とは、生まれが決める階級より、マネーを重んじるという
意味の、経済社会を言います。

現代社会でも、マネーがないと、他人の命令に従う労働での隷属を
強いられます。(注)シェークスピアの『ベニスの商人』が当時の
社会を、活写しています。金が自由を保証するものでした。

■11.銀行の発展

銀行の発展は、金準備の裏づけのない、金証券の余分な発行でした
。金兌換制度とか、金本位制とは言いますが、金証券は銀行が発行
した負債であり、その負債に相当する金はなかった。

現代の銀行では、これが、自己資本比率です。たとえば自己資本比
率を8%とすれば、銀行システムは、その1÷8%=12.5倍の「信用
創造=レバレッジ」ができます。

簡単に言えば、1000億円の自己資本(これが支払準備金)なら、1
兆2500億円のリスク資産の保有(貸付金+証券保有)ができるとい
うことです。これが、銀行の、経済へのマネー供給(=貸付金)に
なる。

そしてその大元のマネーです。銀行にマネーを貸し付ける銀行を、
「中央銀行」と言った。前述の金匠のように、19世紀までは準備金
が枯渇して銀行が破産し、信用の縮小、言い換えればマネー流通量
の急減から、経済では、売上が減って失業が増え、恐慌を起こすこ
とが多かったのです。

これを防ぐには、「銀行に貸し付ける銀行」、つまり、中央銀行を
作る必要があった。

このマネーは「法定通貨」であり、金とは交換しない不換紙幣であ
ることが多かったのです。不換紙幣の発明は、銀行の信用創造を金
のくびきから解き放ちます。

法定通貨を発行できる中央銀行こそが、無から信用創造(マネー印
刷)できる銀行なので、銀行家は、その創立に参画しようとします
。代表が、かつてのフィレンツェの、メジチ家のような「金商人+
銀行家」になっていたロスチャイルド一族でした。

米国FRBは1913年に、支配下の銀行からロスチャイルド家が、主に
資本金を出して、作られています(事実)。ロスチャイルド家が支
配していたイングランド銀行を真似たFRBを発案したのは、ロスチ
ャイルド家のエージェントであった、ポール・ウォバーグです。

米国FRBは、米国で法定通貨を発行できる唯一の機関ですが、政府
が出資して支配する機関ではなく、私的な資本の銀行です。

(注)株が店頭上場されている日銀は、財務省が51%の資本をもつ
とされています。天皇家が*%、他は不明です。今日は、1株4万円
付近でした。政府の財政不安のため、年初の6万円からは2万円下げ
ています。2007年は17万円でした。どこかからどこかへ売られ続け
76%も下がっています。FRBやECBは、上場されていません。資本金
は明治の創設以降、ずっと1億円で、とても変ですが、中小企業並
みです。日露戦争のときは、英国のロスチャイルド系の銀行が、日
銀に金(戦費)を貸し付けていました(事実)。この金が、いまど
うなっているか不明です。

中央銀行は、政府から直接に、あるいは国債をもつ銀行から間接に
、国債や公社債を買って、買った国債や公社債に見合う通貨を発行
します。買った国債には金利がつきます。100兆円の国債を買えば
、金利が3%なら3兆円の収益が上がります。国債を増加買いすると
き印刷する現金は、1万円1枚で22.2円しかかかりません。中央銀行
は無から利益(税収の分け前)を生める特権をもっています。

資産=国債という構造をとっていますから。中央銀行の信用は、国
債信用、つまり政府の財政信用と同じです。国債の価値を背景に、
通貨を発行しています。

この意味で、現代の通貨の価値は、国債の価値です。ユーロが、PI
IGSの政府財政危機で40%も下落したのは、17か国の、政府財政の
赤字の増加が、通貨の危機と同じことだからです。

価値が下がった通貨は、金利は、前述の「実効レート」まで上昇せ
ねばならない。(注)見える現象面では、通貨が下がって、海外か
ら買われるのに必要な実効レートが上がります。

■12.戦後のブレトン・ウッズ体制(1944~1971】

第二次世界大戦の勝利と、その後の占領で、米国政府は、世界の政
府・中央銀行がもっていた金の、70%を集めていたと記録されてい
ます。

日本を占領したとき、米軍が最初に抑えたのは、日銀の地下金庫の
金だったことは、少数の人に知られたことです。

世界の中央銀行は、3万トンの金をもつとされていましたから(IMF
やWGC等の公開データ)、この70%を推理すれば、2万トンでしょう
。

(注)現在、公式に米国FRBがもつとされているのは、現在は8100K
gです。1945年から2000年ころまでに、1万2000トンを売ってきたこ
とになります。ただし米国FRBには、この8000トンはないという説
もあります。

戦後の2万トンは、現在の時価(1グラム4500円)では、90兆円に相
当します。金準備率を、伝統的な10%基準とすれば、900兆円もの
ドル紙幣を発行できる額でした。

1944年からのブレトン・ウッズ体制は、金1オンス(31.1グラム)
が$35と交換できる制度でした。金と交換できるドルという背景で
、世界は、米ドルを基軸通貨としたのです。紙幣が金と交換できる
ので、金本位制とも言います。

円は、$1=360円の固定相場でした。360円×$35=1万2600円で
す。つまり金31.1グラムは1万2600円でした。1グラムが405円です
。(注)現在は1グラム4500円程度です。円は金に対し、11分の1
に減価しています。

ブレトン・ウッズ体制が続いたのは、冒頭で言った1971年(ニクソ
ン・ショック:金ドル交換停止)までです。なぜ、続かなかったの
か?

1960年代の、ベトナム戦争の戦費増加から、米国が経常収支で赤字
になったからです。貿易赤字とは、輸出国に渡すドルが、増えるこ
とです。このため海外が米ドルをもつ。ドイツとフランスは、米国
に、ドルと金の交換を要求したのです。

交換に応じれば、米国の金が、海外に流出します。金が価値ある通
貨としていた米国は、この流出を止めようとします。これが、金・
ドル交換停止でした。この時から、米ドルと世界の通貨は、金との
リンクを失ったペーパー・マネーになって、現在に至っています。


1971年の金・ドル交換停止の後、米国FRBは奇妙な発言をします。
「金は価値がない」と言い始めたのです。

価値があると思っているから、米国からの金の流出を恐れ、交換停
止をしたのです。価値がないなら売り渡せばいい。しかし、それを
とめた。

これ以降、金価格は、高騰にはいります。そして1980年代の下落、
1990年代の低迷があったのです。金価格の上昇を止めようとしたの
もFRBです。

1971年以降の「FRBによる金の敵視」を調べると、金がなぜ、2002
年から急上昇し、2012年以降どうなるか、見当もつきます。以下、
次号で書きます。短期、長期の利害をめぐって、奇奇怪怪のうごめ
きがあります。

【後記】
NYから戻りました。今日は、IBMでの講演のため、東京のホテルで
書いています。新刊書が印刷・製本されはじめ、明日、当方に見本
が送られてきます。

今日まで、書名を知りませんでした。出版社(PHP)に任せ、適当
につけてくださいとしていました。さきほど知った題名は、『国家
破産・・・これから世界で起こること。ただちに日本がすべきこと
。』でした。

内容は、世界の金融・経済・財政と、デリバティブ(証券化)です
。数値的な根拠をつけた予測です。250ページの予定でしたが、圧
縮して書いたつもりで400ページです。書店に並ぶのは、たぶん12
月15日以降でしょう。編集者からは、幸い、分かりやすいという評
価をいただきました。書くことは面白い。自分の考えが深まるから
です。

欧州は、恐慌前であるかのように、緊迫しています。米国では、多
くの人が自分の国を世界と思っているのか、意外に海外に関心がな
い。海外ニュースは少ない。対外負債を知っている人はごく少数で
す。

われわれはいま、100年スパンくらいの、歴史の転換点にいる感じ
です。金融の矛盾が、カオスになり、溶けるのか。根柢の原因は、
ペーパー・マネーとレバレッジのいたずらです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



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