緊急テーマ2:デフレかインフレか
This is my site Written by admin on 2011年3月9日 – 08:00

おはようございます。世界が、世紀単位に思える激動期を迎えてい

ます。経済、マネー、政治、体制のすべてにおいてです。

21世紀になって11年ですが、端的に言えば、「20世紀的なもの」が

内部から、あるいは外部の動きから崩壊し、「おぼろげしか見えな

い21世紀的なもの」に向かっているのでしょう。

▼18世紀から19世紀への変化(西欧世界)
(1)「個人」の思想的な確立によって、選挙制・代議制に向かっ
   た。(注)前号を参照
(2)英国に始まった産業革命(蒸気機関=外燃機関)で、産業資
   本ができた。エネルギーでは、石炭文明。
(3)金本位の英ポンドが、国際貿易の基軸通貨
(4)経済では植民地主義

▼19世紀から20世紀(西欧世界と共産世界、及び第三世界)
(1)思想的には、個人の自由による実証科学主義の時代
(2)新大陸の米国が、英国の地位に変わった。内燃機関(=ガソ
リンエンジン)の時代。エネルギーでは石油文明だった。
(3)米ドル機軸通貨の時代:中央銀行の設立で、マネーは、金の
裏付けがないペーパー・マネーに向かった。
(4)経済では、前半は帝国主義(2度の世界大戦)
   戦後は、混合経済の福祉主義(ケインズの有効需要論)
(5)日本は「近代化」の時代:(注)近代化は欧米化だった。
(6)90年代から、情報革命へ(今、知識革命を促しつつある)
(7)西側情報(TV)による共産主義体制の崩壊(市場主義経済
化)

▼20世紀から21世紀(世界のフラット化→グローバリズム)
(1)思想的には、エントロピー論(=エコロジー)が強くなった

   ・情報革命は、エントロピー論では、省エネです。
   ・例えば知識と情報のデジタル化は、省資源・省エネです。
   ・例えば、家電や車(機械)も情報化した
(2)先進国の国債リスクが上昇し、通貨と政治体制は混乱
(3)先進国(10億人)の高齢化による、政府財政支出の増加
(4)米ドル基軸通貨体制が終焉に向かい、通貨バスケット制へ。
(5)旧共産国と新興国(30億人)の、近代工業化
(6)新興国の成長とピーク・オイル論から、資源・食品価格の高

(7)日本は、経済の上部構造である政治と体制の混乱;混乱は、
合意できる新しい方向が見えず、作れていないこと。20世紀の近代

化思想以降を見極め、「21世紀の現代化思想」を作るまで混乱が続

く。

             *

進行中の21世紀は、しっくりまとめきれませんが、20世紀的なもの

が、内部から崩壊し、「新しいもの:希望か?」へ向かう感じです

希望は、方向を見極めて(ビジョンとも言う)、方法(戦略)をも

ったときでしょう。悲嘆や怨嗟は方法をもたないときです。

とても小さな個人的なことを振り返れば、「10年」が1単位のよう
な気がします。10年で、古くなるものを守り(保守)、新しいもの

を付け加える(革新やイノベーション)。守るだけは、ほぼ3年で

自分の仕事も衰退します。

自己革新とイノベーションを3年の期間で準備し、3年後には加える

ことを行わねばならない。実にこれは、明確に、結果を現わす経験

をしてきました。石の上にも3年は、正しいのかも知れません。

未来は、いつの時期も、確定的には見えなかった。ただ、空間的な

距離が、時間差になることがあった。自国で実現していないことが

他国では現在になっているということです。

例えば米国流通における1990年代の「情報革命、つまり業務のデジ

タル化」を核とするサプライ・チェーンは、未だに日本では、ごく

部分的にしか実現していません。商品流通の分野では、ほぼ20年の

遅れがある。

このため、日本の流通の未来と方向は、およそ確実に予測できます

遅れは、途中での脱落組を含み、時間差をもって追いつくからです

全体が追いつかねば、衰微です。

              *

北アフリカ(チュニジア、エジプト、リビア)と、近々の中東全域

の「イスラム革命」のツール(道具)となっているのは、18世や
19世紀の革命のような「武器と暴力」ではない。

20世紀初頭の、ソ連での共産革命のリーダーだったレーニンは「人

民よ、武器をとれ(武装革命)」と言った。21世紀は、「人民よ、

携帯電話をとれ(情報革命)」に変わっています。

デジタル化し通信化されて、一瞬で数百万人のグループに伝わる、

支配者にとっては都合の悪い情報です。情報はinformation。人間
にインプット(in)され、行動を形成(form:形作る)します。

われわれは、外部世界の情報を受け取って処理し、脳の知識蓄積に

照らして、判断(反応)して、行動します。昆虫も、その点で同じ

です。知識が本能のみで、外部情報からの学習が蓄積されない点だ

けが違います。

人間には、学習(経験)の結果が蓄積します。整合的に蓄積された

知識を、わが国に適語がないIntelligenceともいう。
Intelligenceの違いで、同じ情報に対する行動の違いが生じます。

学習は、情報を整合化する努力です。

再び、金が上がっています(1グラム=4000円付近:10.03.08)。

この情報への判断も、個々人のインテリジェンスの違いを原因に、

・「ヘッジ・ファンドの、金ETF証券での利益確定売りが増えるか

 売り」というものと、
・「中東の政体擾乱から、米ドル国債から、究極の通貨への逃避買

い(現物買い)が増えて、もっと上がる」という正反対の行動にな

ります。

売りと買いの、それぞれの時点で、一致したものが価格です。
買いが増えれば、上がる。売りが増えれば、下がる。
株価の罫線は、この価格への心理的な態度を示します。

[Input→(情報処理=インテリジェンスによる判断)→対応行動

会社の業務においても、同じです。「組織」である点が違う。
[情報インプット→(組織のインテリジェンスによる判断)→対応

行動]

本稿のテーマは、今、見極める必要がある「デフレかインフレ
か?」です。定期購読している『週刊エコノミスト』を読むと、面

白い。

先月デフレ特集があると、翌月は一転しインフレ特集になる。株価

も同じです。株価下落論のすぐあとは、上昇論の特集を出す。数ヶ

月の雑誌を並べても、これです。結局、よく分からないということ

なのでしょうか。

当方が分かるとは、(自己判断して)思えませんが、若干は発言が

できるかも知れません。論の混乱は、資源、資産、証券、商品を、

別の値動きをするものと分離して見ないからでしょう。

一般にインフレという時は、消費者物価の上昇です。デフレはその

下落です。

商品デフレの一方で、資源価格高騰(資源インフレ)がある。不動

産価格の下落がある。先進国と新興国が、交替を繰り返す株価の上

昇や下落がある。

金利の上昇があるかと思えば、次は安全資産とされる国債が買われ

て金利が下がり、証券価格も上下する、国債価格と相反する動きが

ある。金価格も上下する。株価も上下する。

何がなんだか、分からない。それらに見通しをつけようというので

すから無謀ではあります。

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 <528号:緊急テーマ2:デフレかインフレか>
       2011年3月9日号

【目次】

1.相場変動に先鞭をつけるヘッジ・ファンド
2.インフレとデフレで、認識しておくべきこと
3.先進国で、まだ、商品インフレが起こっていない理由
4.マネー要因によるインフレの起こり方
5.通貨要因によるインフレが大きくなっている
6.いいインフレと悪いインフレがある
7.フィリップス曲線:消費者物価と失業率の関係
8.資源、エネルギー、穀物の高騰と国債の関係はどうなるか
9.重要なことを敢えて言えば・・・

【後記】

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■1.相場変動に先鞭をつけるヘッジ・ファンド

基底では、元本$2兆(164兆円)のヘッジ・ファンドが、10倍から

30倍以上、時には100倍のレバレッジがかかる巨大資金で、「先物
買いや、その逆の先物売り」をしていることが、構造化しています

先物市場に投じられる、日々の売買の資金量が、現物市場より大き

くなっていることが、上や下への価格擾乱がある理由です。外国為

替の、FXを見れば分かるでしょう。2000年代は商品先物が加わって

います。

今、あらゆる相場(通貨、金利、国際コモディティ、国債と社債、

株、不動産証券)の、価格変動に先鞭をつけている数百本のヘッ
ジ・ファンドが、仮に原油先物や金先物を買っても、トレーダーが

原油を自分で精製して使い、金を自分で貯蔵するものではない。

運用資金を預かってキャピタルゲイン(売買の時間的な価格差)を

求める仮需です。実需ではない。清算期限が来る限月(げんげつ)

前には、先物買いは売りで、先物売りは買いで清算しなればならな

い。

このため、大きな売り(下落)の後には買い(上昇)が、大きな買

い(上昇)の後には売り(下落)が来て、これを繰り返します。

ヘッジ・ファンドは、先物であれ現物であれ、買いと売りの価格差

が大きければ大きいほど利益が出ます。価格のボラティリティ(標

準偏差)が高まると、その市場に集まる。実需の相場とは、まるで

異なるのです。

(注)運用損の確率と損害も、利益の確率と利益額と同じく大きく

なります。

今、価格が1年に50%くらいで上がっている国際コモディティ(資
源、エネルギー、穀物等)の、先物の売買をするファンドは、月間

配当(投資家への利益還元)が、月利で5%と言います(FT紙)。
年間換算では1.05の12乗=1.8→80%の利回りに相当します。
(注)損の確率も、利益確率と等しい。

以上を言えば、ますます、分からなくなる。しかし分かる方法もあ

ります。ヘッジ・ファンドも買いや売りの時、「上がるだろう、下

がるだろう」と判断する根拠をもつからです。

上がるだろうと市場を誘い、ピークで売る。あるいは下がると誘っ

てボトムと見える時点で買い、値上がりを待つ。この両方を同時に

ポートフォリオにする。そのため、ヘッジという名がつく。ポール

ソン・ファンドやPIMCOの、住宅証券とCDSの売買方法で分かること

です。

■2.インフレとデフレで、認識しておくべきこと

店頭商品(CPI:消費者物価)、資源(コモディティ)、株、国債

不動産と分けるべきです。

▼CPI(Consumer Price Index)

1980年頃まで、インフレと言えば、店頭消費者物価(CPI)が世帯
所得の上昇率を上回る、価格高騰でした。所得の上昇が年3~5%、

CPIの上昇が5~10%以上)であるときインフレと言われました。

【先進国のCPIは+0.1~4%】
先進国のCPIの最近値を見れば、米国+1.6%、日本+0.1%(10.
12)、英国+4.0%、ユーロ諸国平均(17ヵ国:3.3億人)で+2.4
%です。ドイツ・フランスを含む、ユーロ17ヵ国は、人口でもGDP
でも、ほぼ米国と同じ経済規模です。

英国がポンド安(1ポンド133円)で、消費者物価+4.0%、ユーロ
がユーロ安(1ユーロ115円)を主因に、2.4%と高くなっています
が、高騰と言える水準(7~8%水準)ではない。

【新興国のCPIは+4.6~10%付近と高騰している】
中国のCPIは+4.6%ですが、これは信用ができません。ほぼ10%の

賃金上昇から見て、もっと高いはずです。食品は10%以上の高騰で

しょう。(注)ただし失業も7.9%と高い。

ギリシア+5.2%、ロシア+9.6%、インド+9.7%、インドネシア
+7.0%、アルゼンチ+10.6%、ベネズエラ+28.9%、エジプト+
12.6%、サウジ・アラビア5.4%です。

新興国は総じて、「インフレ」に向かっています。(英エコノミス

ト誌:巻末統計)

【国際コモディティは、ドルベースで+26%】
国際コモディティの、加重平均の価格指数は、2010年の平均279が
今351(2月末)ですから、米$ベースでは26%上がっています。
(ロイター・ジェフェリーズCRB指数)

ドルに対し、約20%相対価格が高くなった円ベースでは、同期間に

4%の上昇(日経コモディティ42種)に過ぎません。円が、ドルに
対しほぼ20%上がったからです。このため、日本の消費者物価の上

昇率は0.1%と低い。

以上は、FRBによるQE2(量的緩和)としての、通貨増発($6000億

=約50兆円の印刷)による、米ドルの下落と見ることができます。

【円高ではない;ドルの20%安です】
「円高」とは言っていますが、モノとの関係での実際は、円が上が

ったのではない。円は、国際コモディティの価格上昇と4%違いで
下がっています。

ここから、米ドル(及びユーロ)が約20%下がったドル安と言える

のです。このため、国際コモディティが、26%上がった。

国際コモディティは取引市場がウォール街、シカゴ、ロンドンのシ

ティにあって、価格はドル建てです(前号のドル基軸通貨の根源が

これです)。

そのため、国際コモディティ・インフレ(26%上昇)が言われます

が、2010年の実態は、米ドルの価値下落でした。

もっとも、通貨価値の下落がインフレですから、ドル基軸の世界で

は「ドルの下落を原因とする資源インフレ」と明確に言えます。米

ドルを信奉するグループが、認めたくない事実がこれです。

(注)シンボリックなゴールドは、ドルの購買力の下落で上がる
「ドルの反通貨」と見ていいでしょう。

金が高騰するのは、ドルの価値下落(購買力低下)が根底の理由で

す。アラブでは、今、王家の逃避資産として、金現物やETFを買う
動きがあります。ナチスが、スイスに金を預けたことと似ています

■3.先進国で、まだ、商品インフレが起こっていない理由

これは、商品の原価構成の変化を見れば分かります。例えばユニク

ロのシャツで、店頭価格1980円のものは、中国やベトナムの工場出

荷価格が400円以下(約20%以下)でしょう。

80%の原価は、先進国の「流通費用+商品在庫リスク費用+利益=

広義の流通費用」です。商品在庫リスク費用は聞き慣れない原価か

も知れません。

ある規格のシャツを100万枚仕入れ、25万枚が季節外れになって売
れ残れば、商品価値はほぼゼロになります。3ヶ月が寿命のアパレ
ルの開発輸入では、ほぼ25%の在庫リスクは見込まねばならない。

25%の在庫リスクを減らすのは、直接に利益になりますが、工場へ

の発注日から入荷日までのリードタイム短縮(生産日数+ロジステ

ィクス日数の短縮)が必要です。

コンテナ輸送日数は、輸入地との距離で1週から2週とはほぼ決まっ

ているので、肝心なのは、設計から生産期間の短縮です。

これをユニクロより果たしたのが、スペインのZARAとスウェーデン

のH&Mの低価格ファッションです。

▼原価構造の変化

以上のように、先進国の店頭で売られる商品価格の多くの原価構造

が1990年代以降、激しく変わっています。

先進国ファッションの店頭価格
=原産国の出荷原価(例えば20%)+広義の流通費用(例えば80
%)

原産国の出荷原価割合は、ファッション(20%)、家電(50%?)

食品(50%)、耐久財(30%)で変わります。当然ファッションが

もっとも原産国での調達原価が低い。

国際コモディティ価格(エネルギー、金属資源、穀物、冷凍食肉や

冷凍魚等)は、ドルベースで世界共通に、商品取引所で今日の相場

価格が決まります。

商品原価に占める原材料とエネルギー部分が、仮に50%上がっても

先進国の店頭物価への影響は、1990年代以降、少なくなっています

資源が50%上がって、店頭物価が5~10%上がるくらいでしょう。

【過去は】
1973年の第一次石油危機、1980年の第二次石油危機の時は、まだ、

商品原価においての、原材料と工場製造のコスト率が高かったので

資源価格の上昇が、消費者物価の高騰になっていたのです。近々に

想定される第3次オイルショックでは、以上の原価構造を考えてお
いてください。

【現在は】
1990年代からの工場のグローバル化以降、1980年以前とは、店頭商

品(CPI)の原価構造が変わったため、国際コモディティ価格の上
昇(=ドル下落)が、先進国のCPIを上げる影響度は小さくなって
います。

しかし、先進国内での賃金の上昇があれば、生産原価より大きくな

った「広義の流通費用(上記算式)」も上がります。

このとき、先進国の店頭物価の、賃金上昇に比例した上昇が起こり

ます。ところが日米欧の賃金の名目額(その国の通貨での金額)は

上がっていません。賃金は、上がるときも下がるときも物価よりあ

はるかに遅いので、予測ができます。

(注)名目賃金上昇(年10%程度)での物価インフレがあるのは、

人民元を不当に安く抑えている中国です。元高が起こると、先進国

の店頭物価も同時に上がります。世界の商品価格のアンカー(錨)

が、中国製品だからです。

今、先進国の店頭物価(CPI)の上昇は、小さい。あるところが上
げようとすると、別のところが下げる。この価格競合のため上がら

ない。

(注)ポンド下落からの英国のCPI 4%上昇は、ポンドの長期金利
(現在は3.79%)を、6%~7%に上げる要素ですから、英国は今、

危機寸前です。

英ポンドの下落の原因は、英国の銀行が、国債危機・経済危機のア

イルランドに、貸し付けと国債保有が多いからです。2010年11月に

10兆円の救済資金をEU、IMF、英国が投入していますが、その後の
好転は、PIIGS同様にない。

金融支援を受けているギリシア国債の、保証保険のCDSの料率(デ
フォルト確率を示す)は、10%に上がってます。

支援は、金利を払わねばならない増加貸し付け(負債の増加)です

から、一時的な資金繰りの綱渡りはできても、ギリシアのGDP(生
産力)が増えない限り、好転しない。デフォルトは将来を見れば確

定しています。最終的には、借金の棒引き(EUの損)しかない。

■4.マネー増発要因によるインフレの起こり方

店頭商品の高いインフレは、
・国債金利の上昇から政府財政が破産し、言い換えれば予算執行が

できなくなり、
・発行する国債の金利を下げる(=国債価格を維持する)ため、
・政府の要請や立法で、中央銀行が際限なく、赤字国債を買って、

つまり、紙幣を印刷したときに起こります。
(注)国債価格の下落は、通貨の下落と同義です。

【サイン】
このサインが、中央銀行がコントロールできない、「長期金利
(10年債金利)」の高騰(長短の金利差:イールド・スプレッドの

拡大)です。

これは、通貨要因によるインフレです。
長期金利は、国債の売買市場で決まります。

物価が上がるのは、通貨(=現金+預金)の商品購買力の下落です

この通貨をマネーサプライ(またはマネーストック:M3)と言い、

1082兆円(11年2月:日銀)あります。

通貨のうち、現金紙幣(76兆円:11.2.28)が占める部分は、極め
て小さい。皆、財布の現金は3万円や5万円でも、すぐ引き出せる預

金や、通貨として使えるクレジットカードがあるでしょう。これら

も通貨です。

例えば日銀の紙幣印刷は、日銀当座口座振り込みの、金融機関と政

府の預金数値です。現金(76兆円)+日銀当座預金(18兆円:10.
2.28)をベースマネー(基礎通貨)と言います。

これが元になって、民間銀行システムの中で、信用創造の連鎖(預

金総額)が起こるからです。しかし、日本の90年代以降は、民間の

信用創造が弱いため、日銀がマネーを刷っても預金の増加にはなら

なくなっています。これが、今のデフレ原因です。

内訳は、普通預金424兆円、定期預金551兆円です。CD(譲渡性預
金)は31兆円。1年に1.8%(約20兆円)しか増えていません。増え

るのは世帯預金ではなく、企業が、GDPの期待成長率の低下から、
設備投資を減らしたことによる企業預金の滞留です。企業預金では

60兆円の余剰があります。

【インフレが昂進する理由】
物価の上昇が観測されて、「物価のインフレ期待」が高まると「貯

蔵できるものは、10%上がる前に買っておこう」という動きが起き

る。

金利がほぼゼロで、預けておけば商品購買力が下がる普通預金が引

き出され、定期預金は解約されて、世帯と市場に現金が溢れるよう

になる。

銀行は、100兆円の預金解約があれば、国債を売らねばならず、簡
単に資金不足が起こって、破産します。中央銀行は必要な現金を印

刷し、トラックで銀行に運ぶようになります。

銀行で預金を引き出せないようになると、パニック的な取り付けが

起こり、人々が開店前の銀行に並ぶ(これが信用崩壊)。こうした

事態を、中央銀行は防がねばならない。

以上の事態は、ヘッジ・ファンドによる、
(1)ターゲット国の国債の空売り(及び先物売り)から起こり、
(2)国債保有者(金融機関と年金ファンド:日本では郵貯・簡
保)が、国債下落(金利上昇)による損を怖れ、一斉に売りに出た

ときです。

まだ、日本はそこに至っていません。逆に、ドルとユーロの下落認

識から、相対的に価値を上げている、円やスイス・フラン買いが多

い。

日本の株価は、09年12月以降は、円では0.3%しか上がっていませ
ん(10年02月末)が、下がったドルで見れば、13%も上がって、米

国株並み(+16%)に高利回りになっています。

(注)政府の財政破産も、人々の認識です。赤字の累積で破産して

も、破産ではない、いずれ立ち直ると考える人が多く、国債が低利

で売れる間は破産ではない。

企業や銀行も同じです。B/S(貸借対照表)が債務超過(資産の時
価<負債の時価)になっても、他の銀行あるいは国、または中央銀

行が、今月の支払いに不足するお金を貸している間は、破産しませ

ん。

時価500兆円の負債の、住宅金融会社であるファニーメイ・フレデ
ィマックは、08年8月に破産していますが、破産していない。

米政府とFRBが、不足するお金を貸し続けているからです。今のア
イルランド、ギリシア、ポルトガル、スペインもファニーメイ・フ

レディマックと同じです。

1000兆円の負債の日本政府も大同小異です。しかしまだ、長期金利

はさほどは上がっていません。

わが国の、世界でもっとも低い長期金利は、0.8%から1.5倍に上が

ったとは言え、まだ1.2%レベルと低く(=低金利の国債が、金融
機関に高く買われ)、店頭物価も上がっていない。

相対的とは言っても、通貨(わが国は円)が上がっている間は、今

のグローバル経済では、物価インフレが起こらない。

(注)今、予算関連法案(特に赤字国債法)が通らず、財務省の金

庫は6月にも枯渇と言われます。予算の執行と公務員給料の払いが
できなくなるという意味。今、日銀への政府預金は1.2兆円でしか
ありません。

その間の資金繰りは、財務省が日銀への、外貨準備であるドル債預

託するか、短期手形を発行し、緊急に日銀に買ってもらうことで凌

ぐでしょう。

公務員給料を遅配し(あるは50%しか払わず、残りは後で払う約束

の政府負債にし)、年金や医療保険の支払いを遅らせれば、ショッ

クが襲いますが、それを行う蛮勇は、財務省にはないでしょう。

8月の夏まで赤字国債法が通らないと問題は、深刻になります。1か

月に、資金不足のため必要な国債新発は、約4兆円です。5ヶ月で
20兆円にも増えるからです。そのときは、金利が高騰するでしょう

■5.通貨要因によるインフレが大きくなっている

今、世界で起こっているのは、通貨下落要因(ドル・ユーロ・ポン

ドの下落)による、1桁(5~10%以内)のインフレです。中国の物

価(CPI)の上昇も、元を狭い幅で米ドルにリンクさせているから
です。

円から見ればドル下落と同時に、元もほぼ同率で下がるので、中国

製品は下がっています。

そのため、原材料の原価構成比が高い食品が、国際コモディティの

上昇で部分的に10%上がっても、日本の消費者物価(CPI)は、消
費財を購買金額で加重平均すれば+0.1%でしかない。

米ドル、元、ユーロと同時に、円が下がっていれば、今、日本は
「インフレだ。ゼロ金利の預金を引き出そう。モノに変えよう」と

いう騒ぎになっているはずです。

かつての消費税の3%上げの時のような、前倒し買いが起こります

税の増加で400円に上がったタバコでも、昨年、これがあった。

日本に、前記の新興国のような消費者物価インフレが及ぶかどうか

は、円がドルに対しどうなるかで決まります。

円安ならインフレです。円高なら今のままが続きます。

■6.いいインフレと悪いインフレがある

インフレには、いいインフレと悪いインフレがあります。

50歳以上の人が78%(1170兆円)をもつ金融資産(預金・保険・年

金基金・債券・株)の価値が、インフレで下がるのはいいインフレ

も悪いインフレでも同じです。

(注)わが国の、世代別金融資産の構成比は、20代以下1.3%(20
兆円);30代8%(120兆円);40代12%(180兆円);50代24%
(360兆円);60代29%(435兆円);70代以上25%(375兆円)で
す。総金融資産は1500兆円。ただしこれには、個人事業主の金融資

産も入っています。株価の変動で、大きく変わります。

世帯預金は、平均賃金の低下ため、2000年から増えなくなっていま

す。2010年以降やっと、賃金は横ばいになっています。

▼いいインフレ

いいインフレは、世帯所得(賃金)が増え、物価も上がるときです

所得が6~8%増え、物価が3~4%上がるならいい。これは、企業で

生産性が上がっているときです。

日本の高度成長期(ほぼ1970年まで)の、10年で所得倍増(池田内

閣)の、近代化成長の時代がこれでした。生産性の低い農業人口が

機械化工場に移転するとき、1年7%の所得成長が起こる。

今は、中国がこれに近い。7%の所得増が10年続くと、世帯所得は
2倍になります。ただし中国の最大問題であり、体制転覆にも至る
可能性をはらむのは所得格差です。

工業化した大都市と内陸の農村で10倍も違う。企業内の賃金格差も

大きい。日本の場合は、この格差が小さかった。そのため、マネジ

ャーも平社員も同じ団地住まいで、希望があったのです。

中国では、豪華マンションと、狭くお世辞にも綺麗とは言えない住

宅というひずみがある。これは新興国に共通します。このため、問

題が起こる。

▼悪いインフレ

悪いインフレは、平均所得が上がらす、物価のみが上がることです

これは、通貨要因で起こります。

この悪いインフレは、資源エネルギーが高騰し、金が一瞬1トロイ
オンス(31.1グラム)で$800の最高値をつけていた第二次石油危
機以後の1980年代初頭、
・ドル高($1=200円以上)だった米国で、
・国内製造業が空洞化して起こった。

米国は、この時期から、恒常的な巨大貿易赤字国になり、ドルを世

界に散布するようになっています。当時も、ドル危機と言われたの

ですが、危機が常態化すると、誰も危機と言わなくなった。

理由は、世界(特に日本と中東)からのドル需要(ドル債買い)が

多かったからです。現在は、赤字通貨のドル買いに、中国と新興国

が加わっています。ちょうど、1.2%の低金利でも買われている円
国債と同じです。

今の金価格は、1トロイオンスで$1400ですから、第二次石油危機
の$800の1.7倍です。更に進むかどうか、これは、短期では中東情

勢次第です。

中東全域か、サウジ・アラビアまでの波及、またはイスラエル・イ

ラン戦争があると、原油1バーレル$300(今の3倍)とともに、更
に高騰するでしょう。そうなると、紛れもない第3次(第4次と言え

るか)の石油危機です。

経済学者は、物価が上がるのに景気は好転せず、むしろ低下する減

少を「スタグフレーション」と言いました。1980年代の米国がこれ

でした。

今後、先進国に消費者物価のインフレが起こると、ほぼ100%、ス
タグフレーションです。(注)今の英国が、その先行現象です。

つまり、悪いインフレになる。通貨の増発によるインフレだからで

す。中央銀行が通貨を増発することによる、インフレターゲット論

を、いいことのように言う識者も多いのですが、今は誤りでしょう

世帯所得が上がればいいのですが、それがないからです。

■7.フィリップス曲線:消費者物価と失業率の関係

▼古典的フィリップス曲線の時代は1960年代だった

自由貿易が経済を発展させるという「比較生産費論(リカード
ゥ)」と並ぶ経済学の有名な定理に、「フィリップス曲線」があり

ます。

・縦軸に物価のインフレ率をとり、
・横軸に失業率をとって、
・折れ線グラフ(フィリップス曲線:1958年の論文)を描いたもの

です。これは、生活に大きく係わります。

失業が減って、賃金が上がり雇用が増えるのは、経済が好況である

ことです。逆に、職を失う人が増え、賃金が下がるのが不況です。

失業率が下がる(=賃金が上がりやすい)と、消費者物価は上がる

傾向になる。逆に失業率が上がる(=賃金が下がりやすい)と物価

の上昇率が下がる。

フィリップは、この関係が成り立つとした。

確かに論文発表後の1960年代は、
・失業率が減ると賃金の上昇率も上がって物価が上がり、
・失業が増えれば、賃金の上昇率が低下し物価の上昇率は下がる関

係が見られたのです。

(注)日本では、つい1990年まで、失業が大きな問題になることは

ありませんでした。失業3%以下の完全雇用だったからです。

▼理論では正しいように見えるフィリップス曲線が働かない

しかし1990年代は、先進国と新興国で共通に、失業率と物価の上昇

/下落の関係が、不明確になっています。

原因は、
・各国とも商品交易のグローバル化(新興国の工業化、企業の多国

 籍化)によって、
・為替変動に大きく左右される経済になったからでしょう。

物価が上がるようになると、新興国からの安い商品輸入が増え、そ

れが売れる。そのため、物価は上がらず。国内の失業も改善しませ

ん。

▼名目と実質について

GDPと賃金には、名目と実質があります。
・名目賃金は、報酬の金額です。
・実質賃金は、名目賃金÷(1+消費者物価上昇率)です。
これが商品の購買力を表す賃金です。

【インフレと賃金】
名目賃金が10%上がって、35万円/月平均になっても、物価指数
(商品バスケット)が10%上がるなら、実質賃金は0%の上昇です

金利が仮に7%と高くても、物価上昇率の10%を引いた実質金利は
-3%なので、金融資産の価値は、3%下がります。(注)負債の価

値も3%下がります。

このとき、名目GDPは10%増えますが、実質GDPは0%成長です。こ
れは、好況と言えるかどうか?

逆に、賃金が、前年と同じ0%の上昇でも、物価指数が3%下がるな

ら実質賃金(商品の購買力)は3%上がったことになる。

預金金利がゼロでも、給料で振り込まれる現金と、預金等の金融資

産の価値は、3%高まります。負債の価値も3%重くなります。実質

金利=名目金利0%-(物価上昇-3%)=+3%だからです。

この場合、デフレで名目GDPの成長は0%ですが、実質GDPは3%伸び

たことになる。これは、不況と言えるかどうか?

実質賃金と実質GDPは、物価上昇率を引いた、商品購買力での賃金
と商取引の金額を示しています。物価が下がるときは、その分プラ

スされます。

今日本のGDPは、2005年の物価を基準にすると、名目で477兆円
(10.11月期)、実質では542兆円と高い。両者の差は65兆円もあり

ます。(注)世帯所得は約270兆円で、1世帯500万円。高齢者と30
歳以下の単身世帯が27%に増えています。

名目GDP477兆円÷実質GDP542兆円=88%です。この5年間で12%
(=1年間で2.5%の複利)で、わが国の[商品とサービス]の平均

物価の下落があったことになります。

GDPデフレーターと言っていますが、商品とサービスの物価の合計
です。

(注)消費者物価(CPI)とほぼ近いが、GDPデフレーターには企業

間取引の商品価格も含みます。例えばコンサルタント料やシステム

開発費は企業間物価です。

▼賃金には、名目賃金が下がりにくい下方硬直性がある

さて、ここからです。

【賃金には、下方硬直性がある】
物価が10%下がって、同じ1万円での商品購買力が10%上がったか
ら(実質賃金は10%増加)。今年度の(名目)賃金は、5%下げて
も、購買力は5%上がったことになるから、いいはずだと経営者が
言ったとき、納得できるかどうか? 

たぶん、納得できない。確かに実質賃金では5%上がっていても、
住宅ローンの支払額は昨年と同じで、5%は下がらないからです。
そのため、名目賃金を下げるのは困難です。

これを「賃金の下方硬直性」と言っています。一度決まった賃金は

勤務年数とともに、わずかではあっても加算されることが多い。
そのため、物価が下がっても、平均賃金は下がりにくい傾向がある

これが、賃金の下方硬直性です。

物価が数年で10%下がってデフレになっても、賃金の名目額を大き

く下げることは、一般にできないし、企業も行いません。

しかし10%も商品物価が下がれば、企業は以前と同じ商品量を売っ

ても、10%売上金額(名目)が下がります。

ところが賃金を下げるのは難しい。ここで起こるのが、失業増つま

り雇用数の減少です。

賃金は、物価への弾力性が少なく「下方硬直性」があります。
このため、物価が下がるデフレの経済は、不況になる。

物価が日本のように5年で12%と大きく下がっても、企業内の個人
の平均賃金が下がるのではなく、企業の外部に失業が増えるという

ことになる。

これが2000年代の20代~30代のほぼ半数の人にとって「正社員が高

嶺の花」になった理由です。難しい公認会計士をとっても、専門語

を使える大学院を出ても思うような職がないという状況になってい

ます。つまり、フィリップス曲線が効かない。

▼インフレではどうなるか?

物価インフレの時は、どうなるか。仮に10%のインフレで賃金の上

昇は、5%だったと仮定します。実質賃金は5%下がって、給料での

商品購買力は減ります。

しかし企業の売上は、同じ商品数を売れば10%増えます。
(注)実質所得の低下があるので同じ商品数は売れませんが・・・

売上数が同じ会社は名目賃金を5%上げても、企業は利益が増えま
す。このため雇用を増やすように思え、失業も減るように感じます

過去に借りた住宅ローンも、5%の名目賃金が上がれば、楽に払え
るように負担が下がります。金融資産の価値も10%下がり、負債の

価値も10%下がります。万々歳のように見えます。

しかし、実際は違います。今の経済では、先進国も新興国も、
1960年代のようには、フィリップ曲線が働かないからです。原因は

金融と商品のグローバル化です。

商品輸入は、他国の労働をコンテナに封じ込め輸入することに等し

いため、インフレ(国内物価の高騰)になっても、国内の雇用が増

えないのです。以下は、その実証です。

物価、失業、長期金利の実例で言えば・・・

           物価  失業   長期金利
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・ギリシア      +5.2%  8.6%  10.68%(国債危機)
・ロシア       +9.6% 7.2%   5.54%
・インド       +9.7% 10.8%   8.37%
・インドネシア   +7.0% 7.1%   4.82%
・アルゼンチン   +10.9% 7.5%   na
・ベネズエラ    +28.9% 7.7% 6.55%
・エジプト     +12.6% 8.9% 6.63%
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

いずれも、古典的な経済原理から言えば、変です。

物価の上昇率が5~10%と高いのに、失業率も7%~10%と高い。
古典的なフィリップス曲線の想定では、あり得ないことです。

●結論言えば、マネー増発をしても、海外から国債が売られ、金利

も上がって、物価は上がるが、失業の改善にはならない。

まず国債が売られて、金利が6%~10%に上がり、通貨が下ります

変動金利の住宅ローン金利も上がる。輸入商品も上がる。

物価上昇率より金利が低いと、国債が売られて通貨安になる。輸入

資源や商品物価は、更に高騰します。

大衆の生活は苦しくなって、食品が10%も上がれば革命運動が起こ

るくらいです。革命への蜂起の原因は、共通に、賃金で食べ物が買

えないことからのパンを求めるものです。

日本では、金融危機以後約13年、デフレ傾向が続いています。

しかし日銀が、米国のQE2($6000億)のように50兆円の国債を増
加買いして、大きくマネーを増発すれば、上記の国のように、
・円下落、
・金利上昇が起こり、
・輸入資源と商品物価も上がり、
・雇用も賃金も増えず、
・逆に、不況が深刻化します。

(注)ヘッジ・ファンドは、この時期を、日本国債の先物売り、空

売りで、10兆円以上の金融史上にない巨大利益を上げるチャンスと

して狙っています。PIMCO、ポールソン・ファンド、ソロス・ファ
ンドです。日本国債の格下げで、どんなことが起こるか、格付け機

関と一緒になって様子を見ている時期が今です。

■8.資源、エネルギー、穀物の高騰と国債の関係はどうなるか

▼2009年以降の円高で助かった・・・

米ドルにとっての資源、エネルギー、穀物の20%以上の高騰は、今

20%の円高で、大部分(80%)が相殺されています。仮に、円がド

ルと一緒に下がっていたら、今頃、日本は大変だったでしょう。

平均賃金(名目値)が下がっている中で、物価が、数%は上るから

です。

そして、重大なことを言えば、
・国債ディーラー間での「期待インフレ率の高まり」から、
・円国債の先物が売られ、
・金利が一層上がったからです。
 期待物価上昇率は、長期金利と見合います。

国債が売られ、金利が上がる時は、短ければ2週間、長くても3ヶ月

で、数ポイント%は上がる速度になります。

対策が追いつかないくらい速い。1日を争うと言ってもいい。1秒に

3000回売買するコンピュータ・トレーディングのためです。

▼円国債についての事実

日本は、物価が0%~マイナスという前提で、
・物価が上がらないため、長期金利が1.22%と低く、
・短期0.16%、長期1.22%の国債が売れて、
・官民の金融機関に、合計で800兆円保有されています。

[期待長期金利←実質GDPの期待上昇率+期待インフレ率]です。
なお、長期国債金利(10年債)は、これに、政府財政の信用リスク

率を足したものです。

今、この金利の低さが、最大の将来リスクです。

金利がわずか2ポイント%上がっても、
・借換え(133兆円)と新規(44兆円)の国債が売れにくくなって

・満期が来る国債の償還が困難になるため政府財政は破産し、
・1000兆円の国家への貸し手(金融機関)には、90年代のバブル崩

壊を上回る巨大損が出るからです。

【仮定計算】
期待物価の上昇(=将来のインフレ予想)から、長期の期待金利が

2ポイント%上がったと仮定しましょう。

今、市場の長短の国債の、平均残存期間は約6年です。

5年債の金利は今0.6%ですからこれを採用します。短期の借金を除

き、国債残を800兆円とします。全平均で、2.6%の金利になる。
(注)長短国債残は753兆円、政府短期証券が110兆円、借入金が
55兆円で、合計919兆円(10年12月末)ですが、丸めて800兆円でい

いでしょう。

2.6%も実に、低い金利です。これで、国債の命取りになる。日本
はPIIGSのようにならないという人が多い。しかし、それは異なり
ます。

確かに、PIIGSのような、5%~10%の金利にはならない。なり得な

いのです。しかし、わずか2.6%の金利になるだけで、PIIGSと同じ

になります。国債の残高が、GDPの2倍にも累積しているからです。

800兆円の国債価格
=(1+0.6%×6年)×800÷(1+期待長期金利2.6%×6年)
=1.036×800÷1.156=717兆円・・・83兆円の時価の下落

これが国債をもつ金融機関を一瞬で襲います。90年代の不動産の下

落による金融機関の損が100兆円(公称)とされました。

今、都銀、地銀、保険会社、郵貯・簡保を含む金融機関合計では
60兆円くらいのB/S上の自己資本(1000兆円の預金資産×6%)しか

ないでしょう。

これが、全部消えます。つまり全金融機関が一瞬で飛ぶ。ちょうど

住宅証券の下落から起こった2008年のリーマン・ショックです。こ

うなってしまうのです。

(注)今、郵貯銀行がドル債の下落と国債金利上昇で損をし、9兆
円の自己資本(自己資本比率は4.6%と低い)を失ったとも言われ
ます。有価証券(ほとんどが国債)を177兆円持ちますが、B/Sを見

れば実に脆弱な財務内容です。
http://www.jp-bank.japanpost.jp/aboutus/financial/pdf/zim2011q3_gaikyo.pdf

■9.重要なことを敢えて言えば・・・

国債は満期まで持てば、
・元本(この場合800兆円:1年に133兆円)の満額償還があるので

・途中の時価の下落は、関係がないと言う人もいます。
 財務省がこの姿勢です。これは、真っ赤な嘘です。

【理由】
●1年に133兆円は必要な「借換え債」の新規発行と売却も困難にな

るからです。これがデフォルト・リスクです。

例えばPIIGS国債は、満期が来る国債の償還のための、借り換え債
の発行が困難になっているので、デフォルト・リスクが高まり、
CDSの料率も金利に比例して上がっているのです。

わが国のp800兆円の国債の、平均残存期間が6年ということは、1
年に、800兆円÷6年=133兆円の借換え債が必要です。

これが、市場で金融機関に売れにくくなる。
満期が来た国債も、ジャンプが必要になる。

▼国債のデフォルトとは何か?

償還期限のジャンプを、普通、デフォルトと言います。満期が来た

国債の償還ができない。

以上のことを、言う人が、なぜか、この国にはいないのです。

これがデフォルト・リスクです。今は0.8%のCDS(債務回収保険)

が2%、3%、4%に急騰し、大きな損害が出ます。担保価値も下が
るのです。追加担保が必要になる。これが金融市場です。

【事例】
そうなると、米国の、AAA格だった住宅証券(MBS、CDO)のように

投げ売りされ、投げ売られるからこそ買い手がなく市場が消えます

FRBが、市場が消えたMBSやCDOを緊急に100兆円買ったような対策が

もっと大規模に必要になる。

国債や証券ディーラーにとって、市場の消滅(買い手が消えるこ
と)くらい怖いものはない。損切りすらできない。気配値はあって

も買い手がなく、自分が資金繰り困難になるからです。

【金利の上昇スパイラル】
物価の上昇期待から、2.6%に期待金利が上がり、日本の金融機関
の全自己資本が消えたと認識された後は、皆が損を怖れますから、

手持ち国債が更に売られ、売られるから買い手はますます消え、金

利が5%、6%、10%を目指すようになります。

国債金利が5%に上がるとどうなるか。計算が嫌になります。

800兆円の国債価格
=(1+0.6%×6年)×800÷(1+期待長期金利5.0%×6年)
=1.036×800÷1.3=638兆円・・・162兆円の時価の下落

800兆円の価値の国債が638兆円に下がります。

20%の円高が、この事態を止めたと言っていいのです。

物価が上がると認識されれば、まず「今1.2%程度の期待長期金
利」が上がって、国債価格が下がり、新規国債が売れにくくなる。

日銀の増加買より方法がない。そうなると、国債の売り崩しを狙う

ヘッジ・ファンドに、先物売りの利益機会を与えたでしょう。

これは、国内金融機関の資産(国債は持ち手には資産)が、ヘッ
ジ・ファンドの利益になって、かすめ取られ、海外に流出すること

です。国債の取引での利益と損は、ゼロサムです。

▼円高がいい

円高は、
・輸出企業と500兆円ものドル債の持ち手にとって不利ですが、
・国際コモディティが上がる環境での、資源輸入国の国民経済(日

本が典型)と国債にとってはプラス要因です。

800兆円の国債の金利を考えず、安易に、日本はインフレと円安に
なったほうがいいと言う人がいます。これは、国債の金利問題がな

ければ、正しい論です。

国債がGDPの2倍に増え、一般会計の税収と他の政府収入(38兆円)

より国債新発(44兆円)が多いわが国経済では、インフレ=期待金

利の上昇と円安は、命とりになります。

円高でデフレだからこそ、金利が低い。デフレから脱却するための

通貨増発は、仮に2%や3%の物価上昇でも、国家財政の破産につな

がります。

米国FRBは、10年11月からQE2で$6000億の国債買い($増発)を発

動しました。

普通なら通貨増発で下がるはずの米国の長期金利は、2.60%(10年

11月)から、逆に、3.48%(10年2月)に、0.84%上がっています

驚くべき異常です。米国GDPが、日本と違い実質GDPが2.8%成長し
ているからです。2011年は実質で3.1%成長の見込みです。(注)
物価上昇は今、1.6%です。

米国の長期金利3.48%≒実質GDP成長2.8%+物価上昇1.6%、です

今、日米欧とも、中央銀行が国債を増加買いすれば、逆に市場は、

買い手が少なく、国債の信用リスクが上昇したと見て、保証保険の

CDSの料率が上がり、売るように変わっています。

これと同じことが、GDP対比で米国より2倍国債が多い日本では、輪

をかけて高く、起こるからです。

【後記】
インフレや、もし日本の景気の上昇(名目GDPの増加)があれば、
民間の資金需要が増えるため、期待金利が上がります。これが国債

のリスクを生むのですから、皮肉です。とても困ったことですが、

事実です。

企業は今、60兆円の預金(余剰資金)があるから、投資にそれを使

える。今は減っている設備投資が増えても、金利の上昇(=国債価

格の下落)はないという人もいますが、これも嘘です。

企業が金庫に60兆円を持っていれば話は別ですが、それは全部、銀

行預金です。銀行も、金庫に預かった60兆円(多くは普通預金:定

期預金は個人)を金庫に保管しているのではない。

60兆円のほぼ全部で、0.16~1.2%と低くても金利を生む国債を買
って運用しています。銀行に、余分な現金(金利ゼロ)はない。企

業の増加預金があったから、それを預かった金融機関に、低利の国

債が売れたのです。(注)既述のように、世帯預金は増えていませ

ん。

インフレ含みでGDPの期待成長(将来予測でのGDP)が高まり、企業

が貯めた預金を引き出して設備投資や、相当に古ぼけた設備の更新

投資に使うと、銀行は、手持ち国債を売らねばならなくなる。これ

が、金利を上げるのです。

国債の金利上昇を避けるには、皮肉ですが、今は、日本経済が成長

してはならない。円安で物価が上がっても、ダメです。

本来は、政府がほぼ400万人の国家公務員+地方公務員+特別行政
法人の準公務員の報酬(合計約40兆円:1人当たり1000万円:年金
と諸々の福利厚生費を含む)を30%は下げて、予算から12兆円を節

約し、国債発行を12兆円減らして、最大でも30兆円規模に縮小せね

ばならない。

これを行わない限り、国債危機は日々深まります。
これしか、方法はないのです。
民主党は、これを行うべきでした。

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