「利益」はどこにある?(3)高付加価値と商品価値
This is my site Written by admin on 2005年5月2日 – 08:00

こんにちは、吉田繁治です。今、シカゴのスイスホテル(Swissotel)
からです。シカゴへは来ることが少なく、3回目です。

目的は二つです。全米のスーパーマーケットの商品担当が集まるFMI
(Food Marketing Institute)の見本市兼セミナーへの参加、そして
ドラッグ・ストア研究。

FMIでは巨大な展示場に数千のブース、そして米国と世界から会期
中で数万人の参加者でしょう。日本人の姿も、ごくわずか見えました。

シカゴには3日滞在し、今日の午後から4泊するロス(オレンジ・カ
ウンティ)に向かいます。

ツアー一行の9名は、いずれも個性の強いメンバーです。トイレタリ
ー用品卸の副社長、物流の世界的な専門家でもあります。その会社の
同行スタッフが2名。帳票設計に才があるシステム・デザイナー1名。
漢方薬メーカーの社長と専務。元銀行マンで、気鋭のコンサルタント
1名。そして当方から2名です。

このメールマガジンの読者の方も、FMIへの参加があったようです。
事前にメールを受けていましたが、当方は相手の方の顔を知らない
ので、お会いすることはできませんでした。数千人もいれば、探すの
は無理かもしれません。

本稿のテーマは、高付加価値と、わが国で混乱している商品価値の違
いです。

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<Vol.208 :「利益」はどこにある?(3)
               高付加価値と商品価値>

【目次】

1.シカゴ
2.個人消費の国、米国
3.店舗の商品構成研究
4.バリュー・リテイラー(Value Retailer)
5.バリューの原義から

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■ 1.シカゴ

▼巨大なミシガン湖の豪奢な景色

シカゴはミシガン湖の左岸で南北に伸びた都市。今朝は、4時30分
に目が覚めました。ゆったりと風呂にはいり、本や新聞を読むいい時
間です。

1時間ほどすると空が白みはじめ、ホテルの窓から見れば太陽が赤く
雲を染める。早朝のミシガン湖畔、モンロー・ハーバーを90分くら
い散歩しました。気温は10度くらいでしょうか。早足で歩かないと
寒い。

湖とは言っても、凪(な)いだ巨きな海です。地平線に船が見え、岸
壁には様々な形のヨットが係留されている。

人が近づいても逃げない海鳥が無数に空に舞い、声をあげる。白い息
を吐きジョギングをしている人たちが、時間の経過とともに増え始め
る。

ホテルの傍の、湖に面したグランド・パークには、大きな木々が、空
を背景に枝で線画を描くように並ぶ。芝の公園に続く湖が豪奢な景色
を作っています。社会的な富が厚い。

米国人が、普段、海外のことを考えない理由がよくわかります。
この国が世界最大の債務国であることを話題に出す人は、少ない。

頑丈な建物と大陸的な風景を見れば、海外からの資金に依存して投資
や消費をしているとは、実感で考えにくいからです。

(注)1年50兆円〜60兆円規模の資金流入が必要。これが世界経
済の波乱と為替変動、そして米国の国際戦略の基底を作っています。
[経常赤字を補う資金流入→ファンドによる海外投資]という構造です。
金融のメカニズムによる金融資本主義でしょう。

シカゴは、国際都市であるNYやロスよりも、妙な言い方ですが「米
国らしい都市」です。米大陸の空路の要所でもあって、全米・全世界
から人を集めるコンベンションが多い。あらゆる基礎資財を先物(fu
ture)にする商品取引所(Chicago Board of Trade)もあります。

経済学では、新古典派を継承する自由主義のシカゴ学派(Chicago Sc
hool)が有名です。マネタリズム(1960年代〜)の元祖、ミルトン・
フリードマン(1912〜)がいる。自由主義は、約30年サイクルで変
わることが観察されている「時代の気分」と結べば、帝国主義的な自
由主義にも傾斜します。

自由主義は、強いものが弱いものを支配するための根拠を与えるイデ
オロギーにもなるのです。

■2.個人消費の国、米国

米国経済では、GDPに占める個人消費(店舗での買い物、住宅、車、
医療費等)の比重(約70%)で、日本より10ポイントくらいは
高い。

日本が公共投資の国であったとすれば、米国は個人消費の国です。

▼住宅の象徴的な意味

住宅(My Property)には、「個人が地球の空間を占有できる、唯一の
私的空間」といったニュアンスがあります。外部からの何ものの介入
も許さないという風情です。

縄張り(私的資産)に許可なく近づけば、Armed Response(武器によ
る防衛)を受けても仕方がないともされることがある。米国人の心的
バランスには、私的空間の占有といったものが重し(アンカー)にな
っていると感じます。

資本主義が、私有財産を基底におく社会・経済制度であることが、こ
の国ではよく了解できます。

今のブッシュ政権の主要政策は、持てるものの社会(Ownership Soci
ety)です。政府の赤字を膨らませている減税は、そのための政策です。
税を少ししか払っていない中流層以下の人には、減税での受益は少
ない。ブッシュ政権への支持は、減税策が支えています。

日本では、世論に受け入れられにくい政策でしょう。小泉首相が「持
てるものの社会、持てるものに還元する社会」を作ると言えば、左右
のイデオローグから袋叩きにあいます。

車で30分くらい郊外に出れば、平坦な芝の絨毯(じゅうたん)でも
ある林の中に、オーナーシップ(私的所有)の象徴である家々が、点
々と並びます。アパートをマンションと言い換える日本では、豪邸と
されるレベルのものでしょう。

【市民生活の防衛】
米国は市民の生活を守る。

9.11以降、40兆円を超えた軍事費はそれによって正当化されま
す。職業軍人に対し「命をかけ国家を守る人々」として尊敬を払う。
子供たちが花束をもって、労をねぎらう。軍が、日本とは別の含意を
持ちます。市民のための軍隊。

市民(Citizen)とは、その国に生まれた人ではなく、その国の法と体
制を守ることにコミットした人を言います。この国の市民権は、自然
的なものではない。国家と個人の双務契約に基づきます。(わが国で
は、自然的なものでしょうね。日本人と日本市民に区分がない。)

わが国今の憲法論では「国家のための兵か、市民生活を守る兵か」と
いう、軍隊の目的と位置づけに必要な根底の論が欠落しています。
(市民の生活を守る軍なら、拉致に対しとるべき態度は明確でしょう。)

中国の兵は共産党体制(現在の国家体制)を守るためのものです。
わが国の兵は、過去は、天皇制を守るためのものでした。

今の、年5兆円を使う自衛隊は、何を目的にしたものでしょうか?
防衛なら、防衛の目的物を明確にしなければならない。

市民の生活と私有財産を守るための軍という位置づけが欠けたまま、
憲法改正に進もうととしています。

曖昧には済ませないことのはずですが。「ことを荒立てないで」行う
のがわが国一般の方法だからです。

(注1)わが国では多くの場合、主語と目的語、および言葉の意味を
定義した論理的な議論は、「ことを荒立てる」とされます。

(注2)私は、「ことを荒立てる」ことを行いたいと思っています。

■3.店舗の商品構成研究

米国人の生活で大きな位置を占めるドラッグ・ストアを中心に、シカ
ゴ近郊の店舗研究を行いました。

自分の義務と決めた課題は、『顧客にソリューション提供ができる商
品構成(=枠組み)、および品揃え(=品目の盛り付けと表現)は何
か、それを数式でどう定量化するか?』です。

「他との差異性(differenciation)のある価値提供」が、今、小売を
含むあらゆるビジネスのキー概念だと思っています。

商品構成と品揃えで「方法」を持っていると思われる店舗を見て、実
証的に考える。(実は、わからないことが多いのです。)

そこで、手がかりとして、なぜA店(個店)は好調で、同じ商圏にあ
る同業のB店は不調かをします。好調、不調も目で見て判断します。

(注)企業の売上げと利益ではなく個店レベルのことです。企業レベ
ルのものなら、数字は公開されています

訪れた個店の数字を、あらかじめ知っているわけではない。しかし個
々の店舗の売上げと利益の数字は、数分で「香り」のようなものとし
て察知できます。

全体が好調な企業にも約30%の不振店があり、全体が不調な企業に
もおよそ20%の好調店があります。業績は競争環境で決まるからで
す。

好不調の理由がわかったと思えれば、頭の中に電気が点(つ)く感じ
になります。「あぁ、これだったのか。」という感覚です。

実際、商品構成と品揃えでは「考慮すべき要素」が多すぎ、それらの
要素のうち、何がその店舗にとって重要かは、一律に決まるものでは
ない。

やり方に多くの方法が許容されるために、多くの店舗があり、店舗は、
それぞれの方法において「試行錯誤」を続けています。

「この方法ではどうだろうか?」と思い、それを実験する。

結論として言えるのは「唯一の正解」はない、しかし正解を求め「方
法」を探そうとしているところ、あるいは方法を徹底しようとしてい
るところは、ほぼ例外なく業績が好調であることが多いということが
見て取れます。

不調な店舗には、漫然と並んだ商品から察知される「方法」が見えな
い。その商品が陳列されている理由が何であるか、わからないと言っ
ても同じです。

■4.バリュー・リテイラー(Value Retailer)

今日のFMI(Food Marketing Institute)のセミナーで、マッキン
ゼーのコンサルタントが強調していたのは、バリュー・リテイラーと
まとめることができる店舗がシェアを伸ばしているということでした。

▼価値提供のイメージ

価値提供を行う小売業と言うと、どんなイメージを持たれるでしょう
か? 有名ブランド品を売る店、ハイ・サービスの店舗、品質と機能
が高い商品を売るところといったことでしょう。

高くてもいい商品を売るといった意味が、わが国の「価値提供を行う
小売業」の基本映像でしょう。質が高いということが、価値の最初に
来る。

食品スーパーで言えば、新しい新橋駅にできたDean&Delukaや小さな高
級スーパーの成城石井あたりでしょう。東京の丸の内のブランド街や
大阪の御堂筋のブランド店を思い浮かべる人が多いかもしれません。
http://www.seijoishii.co.jp/

イメージ映像がどんなものであるか、ビジネスの想像力と事業の展開
では極めて重要です。想像力は映像的なイメージだからです。

しかしバリュー・リテイラーは、これとはイメージが異なります。
米国でバリュー・リテイラーといわれるものの筆頭には、ウォル・マ
ートなどのディスカウント・ストアが来るからです。

どこからどう見ても、ウォル・マート(西友を買収)は日本風に言う
質の高い商品を売るバリュー・リテイラーには見えません。むしろ安
売り店とされます。

(注)ウォル・マートのビジネスの本質は、コストのディスカウンテ
ィングを行って、後で述べる「商品価値」を上げることでしょう。

▼補注

わが国でいう、企業側に利益をもたらすように錯覚されている値入率
の高いいわゆる「高付加価値商品」とは異なります。

値入率=値入額÷「仕入原価+値入額」=「値入額」÷「売価」

たとえば仕入れ原価200円、値入額100円なら売価は300円、
値入率は100円÷300円=33.3%です。この値入率が高い商
品を「高付加価値商品」と呼んでいます。

このため、バリューリテイラーは、こうした値入率の高い高付加価値
商品を売る店舗とされる。ここからバリューリテイラーへの混乱が生
じます。

■5.バリューの原義から

同じ価値という言葉を使っても、対極的に相反する意味の違いはどこ
から来るか。

経済学では、商品価値は以下の数式で表します。

商品価値=[使用価値(品質と機能)]÷[価格]

たとえば、A店が300円で売っている商品、またはそれと同等の品
質・機能を持つ商品(代替可能商品ということにします)を、越えて
コストダウンし、B店で250円で売れば、B店は50円分(20%)
の商品価値を高めたことになる。

使用価値とは品質と機能です。品質と機能、および付帯的なサービス
がよく親切で価格が安ければ、商品価値が高くなる。

商品価値は、顧客にとっての価値です。

顧客にとっての一層高い商品価値を追求するのが、バリュー・リテイ
ラーです。マッキンゼーのコンサルタントが言うバリュー・リテイラ
ーの、バリュー(価値)は、こうした商品価値の意味から来ています。
(彼らがどう意味づけしたかは別です。)

まぁ・・・「当たり前のこと」ですね。日本語では「お買い得店」で
しょう。したがってバリューリテイラーは「お買い得店」です。

<米国の2000年代は、お買い得店の売上げと利益が伸びている現
象が見られる>と言えば、これは、2000年代に限ったことではな
い。過去から現在に至るまで、まったく同じです。

もともと安い商品を集めて売っても、お買い得店ではない。安いもの
なら一層(20%以上)安くする。高いものも安くする。他より値入
率を低くし安く売ることができる、コストと作業構造を作る。

(注)この20%には、実証の根拠があって、たとえば5%なら価格
差は感じにくい。しかし20%以上違えば、ほぼ60%以上の主婦は、
価格差からくるお買い得を感じます。

コンサル会社は、常識に戻る当たり前の言葉ではお金をもらえないの
で、バリュー・リテイラーという謎めいた含みのある用語を使います。
そしてバリューの内容を、1時間、説明する。

『お買い得店の研究』というセミナーでは当然すぎて、人が集まりに
くい。そこで多義性をもつValue Retailerという符牒(シンボル)を
作る。これがセミナーの商品化のテクニックになる。

そしてセミナー用語から、いろんな解釈の誤解が生じ、誤解が誤解を
派生させ、コンサルタント自身も自分が何を言っているのか、わから
なくなることも多いように思えます。

この価値を手前勝手な高付加価値ではなく、経済学的な「顧客にとっ
ての商品価値、サービス価値」と転換すれば、いろんな領域でのビジ
ネスの共通の方向が見えます。

わが国では「バラエティ・ディスカウント」が今後、成長を獲得する
と判断しています。その業態(商品構成と作業の方法)作りのための、
今回のケーススタディです。

今はほぼゼロですが、今後、合計で20兆円を超える巨大業態になる
と見ているのです。

【後記】
つかの間のシカゴを終え、今日からロスアンジェルスに向かいます。
シカゴは、尖ったNYより落ち着いた、住みやすそうな街です。

ウォル・グリーンという、何の変哲も面白さもないドラッグストア(
4222店:3.2兆円年商)を研究します。
http://www.walgreens.com/

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2.組織は固有の価値観という「暗黙の命令」で動く
3.コンビニエンスストアのフランチャイズ制度は、店舗運営のエン
パワーメント
4.ハイテク化された戦闘機
5.同質競争で働いたランチェスターの法則
6.小さなコンビニ
7.ライリーの法則の適用

<211号 :エンパワーメント組織による経営(3)>

【目次】
第一部:JR西日本の事故であらわになったこと
1.時事:隠蔽(いんぺい)の企業文化
2.事実への態度にそれが見える
4.原因は価値観
5.統制型組織が陥(おちい)る、部分指標の重視
6.リスク・マネジメント
7.確率的な必然
8.ハインリッヒの法則(1:29:300)で起こった事実を見る
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