わが国政府の、50兆円枠の株価対策の帰結
This is my site Written by admin on 2009年4月19日 – 08:00

こんにちは、吉田繁治です。ウェスティン・ホテルの17階の窓からは、
高層ビルの狭間を通し、削がれた岩が切り立ち白い肌が露出した山
の稜線が、見えます。水墨画が、抽象度は高くしても、写実であった
ことが分かる遠景です。今、思い立ち、ソウルにいます。

日本では春の驟雨(しゅうう)が、絢爛だった桜を散らし、花びらは
地面に萎(しぼ)んで、街路は、祝祭の翌日のように色艶がなくなっ
てしまいました。(ソウルにも、随所に桜があり、散っています) 
四季の豊かな変化は、人の気分に映じます。和歌は季語を含み、手紙
にも時候の挨拶を入れてきた伝統の豊穣を想います。

▼各国政府による経済対策

今、昨年来の、危機的な経済の、底打ちが言う人が増えています。
世界の株価も、3月上旬以来、20〜25%戻しています。政府による対策
を好感したものです。

先の、ロンドンでのG20(参加国の合計GDPは$54兆:5100兆円)では、
合計で$5兆(参加国GDPの約10%)の政府対策が確認されました。

(注)わが国ではあまり報じなかったイングランド銀行前に集まった
1万人のデモは、蜂起した革命の前夜のような激しさでした。「金融の
馬鹿ども」という抗議でした。欧州では、失業率が8%〜10%です。米
国から6か月遅れで、危機が深まっています。欧州の銀行が、中欧・東
欧に投資した300兆円が、約150兆円もの回収不能を含むと見られるか
らです。

各国政府による緊急対策費は、2008年、2009年、2010年の3年分を合計
したものです。1年で言えば、世界で、500兆円÷3年≒167兆円の経済
対策です。金融機関への支援が半分として84兆円くらいでしょう。

これは、各国金融機関の損失を埋めるものです。GDPの増加要素ではあ
りません。連鎖の破産を防ぐための、損失の補填です。(注)この額
では、はるかに不足しますが・・・

●20カ国の、需要対策(言い換えれば国債発行による各国政府予算の
拡張)は、1年で、83兆円分程度でしょう。20カ国の年間GDPの83÷51
00兆円≒1.6%です。これも十分な金額ではない。

公共事業が生む「乗数効果」は、国毎に異なります。公共事業がもと
もと多かった日本では低く、新興国では大きいでしょう。

平均の乗数効果(波及効果)を1.5倍として、1.6%×1.5=2.4%のG
DPの増加要素です。(注)乗数効果は政府の支出増加分が民間に流れ
、それが経済に波及する割合です。

これらの公共事業対策を入れない状態での、2009年の世界経済の下落
率は、どこも、確かなものは出していません。

●仮にマイナス2%とすれば、政府対策によって世界のGDPが、相当に
マイナスするという最悪の事態は、避けられそうに思えます。以上が、
「経済は底打ちした」と言われている根拠です。

(注)底打ちとは、現在以上の下落は避けることができるだろうとい
う期待です。最近の経済論は、分析ではなく期待が多い。論者の立論
が、政権に都合のいいデータを強調する公報に、基づいているからで
しょう。

【日本】
(1)緊急補正予算15.4兆円:
わが国では、一般会計(88.5兆円の予算:09年度:うち国債発行で33
兆円分)を補う補正予算として、財政支出15.4兆円(GDPの約3%)が
政府から、緊急に提案されています。(国会承認前です)  当然に、
原資は、国債発行です。

(2)総事業費56.8兆円:
15.4兆円の補正予算の支出案に関連し、政府による債務保証や、貸付
金等を含めば、総額では56.8兆円の、補正による総事業費が提案され
ています。(09.04.12時点)

(3)株価対策費50兆円:
同時に、株価への対策費は、50兆円とされています。これは、政府機
関(特別行政法人)が株を買う資金を、政府が50兆円分まで保証する
というものです。

これら3つを言い、麻生首相は、胸を張っています。

●「財源(つまり国債発行)を顧慮しない、前代未聞の、巨額経済対
策費」が立案されつつあるというのが、現在です。

財源を言わないことは、米国も同じです。2009年度は財政赤字が$2兆
(190兆円)を超えています。金融対策を加えれば、米国債発行は、推
計では$5兆(475兆円)の巨額になるでしょう。これはもう、FRBが引
き受けるしかない。

(注)中国は、買いません。貿易赤字に転落した日本は、買う力がな
い。欧州は、米国債を買うどころではない。米国並の危機だからです。
原油価格が下がった中東も、中東の資金を運用するスイスも買えませ
ん。

本稿は「日本の政府機関による、50兆円を枠とする株価PKO(価格維持
政策)の当否と帰結」を検討します。各国は、90年代の日本の金融危
機対策を、ほぼ真似ています。その意味で、世界の経済対策を検討す
るものでもあります。

本稿の目的は、国民に帰属するマネー(金融資産)に、みすみす損を
させないためです。116兆円の、政府による年金基金の運用を含めて、
です。政府マネーと言いますが、元をたどれば、国民から預託された
ものか、国民からの借金(=国債)です。政府の損は、いずれ、迂回
して、または直接に国民の損になります。

(注)株価対策の意味を知るには、若干(数ページ)の、前提となる
予備知識が必要です。そこから書き起こします。株価と実体経済はど
んなつながりがあるのか? ここも意外に、不分明です。重要な事項
は、理解を助けるため、●で示しています。なお、本稿は、先に送っ
た有料版をもとに、説明的な解説を加えたものです。

必要な素材を集め、分析したあとの結論は、50兆円枠の政府による株
価対策は、アナウンスして行うと、愚策になるということです。株で
は、政府の買いという、一方向しかない買い支えの手の内が知られれ
ば、反対売買に、利益収奪の機会を与えるからです。

──────────────────────────────

<427号:政府がアナウンスした50兆円枠の株価対策の帰結>
        2009年4月19日号

【目次】

1. 政府が、株価維持策あるいは上昇策を採(と)る理由
2. 政府機関による50兆円枠での、株価維持・上昇策
3. 政府の資金源の検討をすれば、2.2%の金利上昇で国家破産
4. 50兆円枠の、政府の株価対策の効果の行く先
5. ヘッジ・ファンドの動き
6. 50兆円枠で株を買うという政府の愚策は、ヘッジ・ファンドに利
益を与えて終わる
【後記】

──────────────────────────────

■1.政府が、株価維持策あるいは上昇策を採(と)る理由

日経平均株価(225種平均)は、09年3月10日の7000円付近を底に、年
金基金を使い、投資信託を通じるPKOによる買いを主因にして、8742円
(09.04.15)付近に上がり、波動しています。(注)PKO:Price Kee
ping Operation:政府による株価維持策。

1ヶ月で、25%も上がったのですから、急騰と言えます。政府策は、金
融機関と企業の、3月決算における資産評価対策の、支援でもありまし
た。(1)空売りは禁止し、(2)昨年に比べ減った自社株買いは促
進し、(3)政府マネーでは株を買い支える三面作戦です、

【3月の上げの原因】
前号で述べたように、<09年3月は、ガイジン・ファンドの売り越しが
、(3月決算のため)3000億円に減っています。他方、わが国の年金基
金を運用するGPIFは、投資信託を通じて、8000億円を買い越していま
す。両者の差額である買い超が、5000億円です>

これが、3月10日以後の株価を25%上げた主因でした。外人ファンド売
りが減ったのも、米系企業とファンドの決算対策のためでしょう。売
れば、マーケットが下げ、保有株に含み損が出るからです。

しかし株式市場では、相変わらず「薄商い」が続いています。4月13日
時点の、1日当たりの売買額は、6日移動平均で1.4兆円に過ぎません(
東証1部)。過去の半分以下です。

薄商いの中では、少しの買いでも増加資金投入があると 株価は上が
ります。(注)過去は、3兆円レベルが売買高でした。

25%上がったとは言っても、東証1部(わが国を代表する1677社)の時
価総額は、07年10月を約200兆円も下回った279兆円です。この時価総
額の下落が、以降で述べるように、経済にとって問題になるのです。

【年金基金による買いは、3月で上限に近づいた】
前稿で述べたように、昨年秋から今年の3月まで、買い支えを行ってき
た年金基金で買い枠は、上限に近づいています。(注)年金基金では、
総運用資金(116兆円)の11%が、国内株の枠とされています。。

【50兆円枠の買いのアナウンス】
年金基金の買い枠が上限に近付いたため、政府は、先週、株価が下が
れば、政府系機関による50兆円枠での、買い発動を準備するという発
表をしました。

▼株価と経済

株価の下落は、なぜ、経済にとって不都合か、その理由を示します。

(1)要因1:株価の下落は、国際業務を行う金融機関に総資産の8%は
必要な自己資本を直撃して減らし、資産を圧縮する必要から、信用収
縮を生みます。日経平均で1万1000円くらいを割ると、生保を含む金融
機関の持ち株に、含み損が出るからです。

日経平均が1万円以下(現在は8700〜9000円水準)に下げたままなら、
金融機関は貸出しを回収し、新たな貸し付けをせず(貸し渋って)、
手持ちの証券を売らねばならなくなる。(損失で減った自己資本に応
じて、総資産を圧縮:BIS規制)

これは、経済の総信用(マネー供給額)を減らす負のレバレッジ(マ
イナスのテコの効果)になり、経済の取引に必要な資金量を減らしま
す。不良債権で出血し、貧血になった体のように、経済取引が減り、
不活発な経済に陥ってしまいます。

(2)要因2:同時に株価の下落は、社債の格付けを下げ、額面金利を
上げます。その結果、企業と金融機関は、必要な資金調達に困難を来
たし、投資が減り、企業活動が収縮します。

(3)要因3:加えて、株主(日本では約700万人)が、時価総額の下
落分の数10〜100兆円という損をし、投資と消費が減ります。

株価は、「会社の将来利益を期待金利とリスク率で割った現在評価」
ですが、これが下落すると、以上の3要因で、マネー供給が減るマイナ
ス効果をもたらし、実体経済の生産・流通が減ってしまいます。

経済記事が、筆頭に、株価変化をとりあげる理由は、株価が、経済取
引に必要な資金量を増減させる、大きな要素だからです。

【株価と経済】
株価が上がることは、企業と金融機関にマネーを注ぐのと同じ効果で
あり、経済を浮揚させるには必要です。

●いや、原因と結果の実際で言えば、経済取引(消費と投資)が活発
になり、次期の企業純益が増える予想に転じる数か月前から、株価は
上がるのです。つまり実態経済の好転予想が、株価を上げます。

しかし、市場での売りが超過することによって、株価が下げれば、上
記のように、企業と金融機関から、下げた分のマネーが抜けたことと
同じになって、実体経済の消費と投資も、悪化してしまいます。

(注)世界の株価時価総額は、2007年10月の6000兆円を頂点に、その
後、約3000兆円(約50%)も、下落しています。3000兆円の資産が減
り、マネー抜けたことと同じです。

以上が、政府が株価対策に躍起になる理由です。

【衆院選という、経済外の要素】
迫る衆院選挙で、政府・与党への国民の支持を集めるには、経済が浮
揚しなければならない。経済を回復させる基本条件が、下落した株価
の上昇策だとなるのです。(重要な注)この、目先の選挙対策という
ことが、後で述べる誤りを生みます。選挙のためなら何でも行うとい
う、放縦なものになるからです。

民主党は、小沢公約では、副大臣と政務官を100名送り込んで、官僚の
高官を、米国のようなポリティカル・アポインティー(政治任官)に
すると言っています。

米国では、大統領(つまり政権)の交代とともに、官僚高官の3000人
余が入れ替わります。わが国の、終身雇用の官僚制の中の高官にとっ
て、これは驚天動地になる。わが国官僚が最も嫌うことは、政治が、
人事権を持つことです。

「何が何でも、民主党の単独政権は避ける。民主党が衆院で多数にな
れば、自民と民主党がお互いに分裂に誘い、連立の新党を作るように
誘い、官僚制度についての公約をご破算にした新政策にする」という
ことを、政府高官たちは期待し、そのための、経済対策を立案してい
ます。小沢党首追い落としの、検察対策も含んでいるのかもしれませ
ん。

15.4兆円の、史上最高の補正予算案と、50兆円のかつてない株価対策
の資金枠は、自民と官僚の合作で出されたと言えます。これは経済外
のことであるため、経済では、長期の有効性に疑問が残ります。

■2.政府機関による50兆円枠での、株価維持・上昇策

4月以降、政府機関による株価の増加購入がないと仮定すれば、おそら
く日経平均は6000円、5000円に向かい下落するでしょう。

これは、クレジット・クランチ(信用収縮)の激化から、実体経済の
商取引が更に低下することを意味します。株価が上がらない限り、経
済の回復はない。経済規模は、商取引の総額です。

●上記の理由は、日本の2009年度のGDP(商品の生産と流通量)が少な
くとも5%、以下で見るように、多く見れば8.7%も減ると見られてい
るからです。これは、企業の利益が、壊滅的に減ることを意味します。

▼179倍という予想PERの倍率

一株当たりの次期予想純益(税引き後の企業利益)に対する株価の倍
率を、予想PER(株価収益率)と言っています。

【妥当値は15倍付近】
●PERの妥当値は、その国の経済(GDP)が成長に向かう年代か、そう
でないか、金利水準が高いか低いかで異なりますが、一般には、先進
国への国際投資の理論価の基準は、15倍程度が上限とされています。

意味は「株価は、次期純益の15年分の理論価値」ということです。

前稿で述べたように、資本主義体制では、企業の利益は、株に帰属し
ます。企業があげた純益は、株主の所有です。株は、一般には、次期
企業純益の15年分を所有したと見て、市場で価格をつけるということ
でもあります。

ところが、現在の、東証一部上場企業1677社の、次期の期待利益に対
する予想PERの倍率は、世界の先進国では破格に高い179倍です。

▼2009年、2010年のGDP予想と、現在の失業率

●予想PER179倍の理由は、わが国GDPの減少とともに、次期の企業
純益が、前年の7分1〜10分の1に減る予想だからです。

主要国の、次期GDPの予想値を、その幅とともに、示しておきます。デ
ータは、英エコノミスト(09.04.11号巻末)からです。各国の主要金
融機関が予想したものが、ベースになっています。

(注)08年2月頃までに発表された政府対策は,織り込まれていると見
ていいでしょう。3月以降の政府対策は、含まれていません。

【主要国の、実質GDP成長率予想:民間金融機関による】
                      公的な発表での
      2009年度     2010年度   現在の失業率
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
日本   −8.7〜−4.5%  −1.9〜+1.6%   4.4%
米国   −3.9〜−2.0%  −0.2〜+2.5%   8.5%
ユーロ圏 −4.3〜−2.0%  −0.7〜+0.8%   8.5%
英国   −4.5〜−2.3%  −1.1〜+1.7%   6.5%
仏    −3.4〜−1.4%  −0.6〜+1.1%   8.6%
独    −5.4〜−2.7%  −0.7〜+1.1%   8.1%
イタリア −4.8〜−2.7%  −0.9〜+0.8%   6.9%
スペイン −3.6〜−1.8%  −1.9〜+0.7%   15.5%
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

日本の2009年度GDPでは、国内で言われる−4.5%(24兆円の減少)は、
実は最良の予想であり、最低値は−8.7%(47兆円の減少)とされて
います。

現在の傾向では、80兆円規模だった輸出が08年10月以降、40兆円規模
/年へと半減していますから、GDPでは8.7%の減少に近い。
(GDPの意味と失業率の関係は、有料版の09年4月1日号)

このGDPの減少は、わが国250万社の企業の合計売上において、5%〜1
0%の減少を意味します。利益が、2008年の7分1〜10分の1になるのも
当然です。わが国を代表する250社(日経平均対象)の利益は、売上の
5%分〜10%分で、出ているからです。

なお2009年に、平均で5%〜10%の企業売上が減るということは、利益
で下位グループに属する三分1の会社(約80万社)の平均では、その2
倍以上(10〜30%)の売上減になることを意味します。

存亡の危機に直面している会社も、相当多い。10社のうち3社は、そう
いった淵にあるでしょう。今はまだ雇用されている潜在的な失業が顕
在化し、失業が劇的に増加(+10ポイント:+630万人)する可能性が
高い。(注)現在の失業率は4.4%(280万人)です。

●昨年10月以後の輸出の半減を主因に、09年の1〜3月期も輸出は前年
比で半減のままであるため、GDPの下落幅が、月を追い拡大している現
在の状況では、GDP(企業の生産と流通)と、急減する次期純益を予想
して動く株価は、下げます。

消費者の購買心理も「不況と失業不安、および高齢化による将来所得
減」の認識から悪化しています。この心理は、所得で買えるものも、
買い控えるという行動を生みます。(注)経済マスコミが言うのは、
悪化へ向かう程度が若干緩和したというものです。

住宅、車、家電、ファッション等の売上急落と、店舗でのとりわけ高
額品の減少がそれを示します。病院への来院数も減っているのですか
ら、恐れ入ります。百貨店の売上の10%〜15%の減少は、改めて挙げ
るまでもない。昨年は、資源と穀物価格上昇で潤っていた食の基礎需
要(30兆円)の食品スーパーですら、少数を除き、売上額が減って
います。これは世界共通です。(注)韓国もGDPの40%もが輸出(相手
は中国・米国・欧州・日本)なので、同じです。

以上から、今より一層、企業は金融面(マネー)で困ることになるの
で、支持を得たい政府・与党によって、50兆円を枠とする巨額の株価
対策の「アナウンスメント」が出たと解釈すればいいでしょう。なお
アナウンスメントは、政府が経済対策の目的で、その政策を、政策の
実行前に、マーケットに対し言うことです。

【当面の株価での結論】
経済の実勢では下落するのが妥当な株価も、政府の保証を得た政府機
関が、数兆円の巨額資金を投入して買えば、「一定期間」は下落を抑
えることができます。一定期間とは、政府のPKOが終わる時期です。

●その間、株価は、経済と市場の売買の実勢からではなく、意図的な
政府策で低い株が買われて、「底上げされた状態」になります。

日経平均(現在9000円付近)において、経済が悲劇的になる7000円を
割る下落は、政府のPKOによる買い上げで、防ぐことができるでし
ょう。しかし、その株価は、政府の緊急対策による「上げ底」です。
今後、この認識が重要になります。

■3.政府の資金源の検討をすれば、2.2%の金利上昇で国家破産

●昨年来、日本・米国を含む各国政府は「対策は言いますが、その財
源を言いません」。何事も、財源がなければ対策は打てない。

「財源」を言わない理由は、各国とも、新規国債発行しか方法がない
からです。以降で、政府が言わない、わが国の2009年度の、新規国債
の発行額を予想します。

(注)米国・欧州も、金融・経済対策を国債に頼る事情は同じです。

●大手金融機関の損害率が、米国よりひどい英国では、対策資金を得
るために発行した政府債を、金融マーケットが買い切れず、売れ残っ
て金利が上がるという「札割れ」が起こっています。(09年3月)

▼政府資金の源泉の検討

【(1)一般会計での国債発行予定は33.2兆円だったが・・・】
2009年度の、一般会計の予算で確定していた国債の増発分は、33.2兆
円です。政府の2009年度予算によります。

2008年度の、国債の新規発行は25.3兆円でした。今年は一般会計(88
兆円規模)で確定した分だけで、8兆円くらい国債の新発が増えます。
http://www.mof.go.jp/seifuan21/yosan002.pdf

【(2)一般会計での国債新発は、43兆円を予想】
一般会計は、2009年度の税収を、46.1兆円と前提しています。
これには、GDPと企業利益の急減(=所得税・事業税の急減)を、想定
してはいません。

2009年の企業利益が壊滅的であることから、法人税や事業税を中心に
税収が仮に10兆円減ると、その分、国債の増発になります。予定され
た33.2兆円の国債が、10兆円増え、43兆円になる。

【(3)加えて補正予算15.4兆円分も新規国債の発行が資金源】
政府の補正予算案の真水分15.4兆円も、その財源は、国債発行です。
(注)真水は、政府が直接支出する分です。

特別会計における埋蔵金(剰余金の累積)が40兆円余あるとは言って
も、それは現金ではなく、政府債と国債の手持ちです。

埋蔵金を使うには、国債の発行(または売却)での、現金化が必要に
なります。

●つまり、この補正予算分(案)で15.4兆円の国債発行(あるいは政
府短期負債)が増えます。一般会計分の43兆円+補正予算分の15.4兆
円=58.4兆円の、国債発行になります。

▼国債バブルの破裂という問題

58兆円余の新規国債を、世帯と企業預金が増えていず、株価と証券価
格下落、地価下落で、損失(表面化+含み損)が巨額な現在の金融機
関が買うのは、とても無理です。

売れなければ、債券市場では、発行したものが売れ残る「札割れ」が
起こって、国債価格が下落し、売れる国債金利にまで上がります。

金利が上がれば、経済対策どころではなくなる。経済は、一層下落し
ます。5年前から何回も述べたように、今、わが国の長短国債の平均残
存期間(平均償還期間)は5年です。表面利率は、発行額面{100万円
等}に対する利回りです。

【現在の国債価格】
長期国債価格=(1+表面利率1.4%×残存期間5年)×100
      ÷(1+現在の長期金利1.4%×残存期間5年)
      =1.07×100÷1.07=100万円で均衡しています。

この100万円が、現在の平均残存期間5年の、国債の時価です。この国
債が、民間金融機関の引き受け限度(=資金余力)を超えて発行され
ると、買われる価格まで価格が下がります。

額面の10%下げ90万円で売れたと仮定します。長期金利は、どうな
るか。以下のように、1.4%から2.2ポイント%上げて3.6%になります。

長期国債価格=(1+表面利率1.4%×5年)×100
         ÷(1+長期金利3.6%×5年)
      =1.07×100÷1.18≒90万円で均衡します。

つまり、現在1.4%レベルである長期のベース金利が、3.6%に、2.2%
も上がってしまいます。(注)ベース金利:その国の民間金利の基礎
になる金利。企業への融資の際の金利は、国債価格を基にしたベース
金利+その企業のリスクプレミアム(1%〜数%)になります。

【2.2ポイント%の金利上昇の意味】
100万円額面の国債価格が、90万に下落することは、政府部門(国と地
方の長短借入)の、現在の負債1043兆円の証券価値(時価)が10%下
がり、104兆円分も目減りすることです。

これは、国債と政府債を持つ金融機関・政府機関の、新たな104兆円の
損失です。わが国の金融機関にとっては、サブ・プライムショックや
リーマン・ショックよりひどい「国債価格バブルの10%崩壊」になり
ます。(注)現在の金融機関と政府は、こうした国債価格の下落を、
まるで想定には入れていません。

国債をもつ金融機関(銀行・生保・政府系金融機関・特別行政法人の
年金基金等)の信用は、不良債権を約100兆円抱えた1997年の金融危機
の時のように、壊滅的に縮小してしまいます。

将来を見た金融・経済危機のうち、最大のリスクは、日米欧の超低金
利で発行されてきた既存の国債価格の下落です。今、政府と金融機関
は、これを論じようとしません。マーケットの長期金利が、政府・中
央銀行の誘導金利(短期金利)の低さを無視して、上がるという事態
です。

●上記で試算した上がる金利は、わずか2.2ポイント%です。これで、
日本の、国債を大量に保有している金融は事実上、壊滅し、政府は財
政赤字を補うのに必要な国債発行ができなくなる。これは、政府が、
対策を打てなくなることを意味してしまうのです。

(注:基礎的な知識)ケインズが、政府が国債を発行してその資金で
公共事業を行うのが有効と言ったのは、その国の経済に「余剰貯蓄の
増加」があるときです。貯蓄は、消費されない蓄積ですから、貯蓄過
剰の経済は、十分なパフォーマンスをしない。その時は、政府が国債
で余剰貯蓄を吸い上げ、公共事業を行えばいいとした。

●しかし、日本の今の問題は、高齢化と貿易赤字のため、余剰貯蓄が
減ったことです。90年代とは変化した金融の中で国債を大量発行すれ
ば、(日銀が引き受けない限り)金利が高騰して、政府の経済対策も
無効になるのです。

米国はもともと余剰貯蓄がなく、海外から総額2000兆円を借りている
くらいですから、海外が米国債を買わないと、FRBが買うしかなく
なります。

【国家破産の実際は?】
こうした状態を、別の言葉で「国家破産」と言います。

●政府が、国債を発行すればするほど、マーケットが国債の下落リス
ク(=金利の上昇リスク)を感じて引き受けず、国債価格が下がって、
金利が上がる状況がひどくなると、国家破産です。

こうした事態は、国債の歴史を調べると、何年もかけて起こるのはな
く、08年秋の、米欧の金融同時破たんのように、「ある日突然」起こ
ります。企業の利益は、野球に似ています。9回まである。金融と資金
繰りはボクシングです。12回まであるとは言っても、KOされればそ
こで終わる。

企業が累積赤字のために、借りようとすれば、金利に高いクーポン(
リスクをカバーするための上乗せ金利)がつき、必要な借金ができな
い状態と同じに、政府が陥ります。こうなると円は、国際信用も失っ
て下落します。

【わずか2.2ポイントの金利上昇で・・・】
こうした金利の上昇(といってもわずか2.2ポイント%ですが)を防ぐ
唯一の策が、「日銀による国債の買い受け」です。

●今年度に予想される、上記試算の58.4兆円の新規国債発行は、日銀
が大半を引き受けることしか、なくなっています。

これと別に、満期が来た国債を償還できず、返済引き延ばしのために
発行する「借り換え債」が100兆円くらいあります。合計で158.4兆円
の国債発行ですから、何と言っていいか・・・恐れ入ります。

2000年代の先進国の国債は、この借り換えで、元本が償還されない永
久債になり、新たな国債発行で、利払いだけが行われています。

【結論】
2009年度に(私見で)予想されるわが国の53.4兆円の国債発行は、大
半(30兆円くらい)を、金利を上げないために、(日銀法では禁じ手
の)日銀が引き受けなければならない。

これは、通貨の発行量が、今の76兆円から30兆円増え、106兆円になる
ことを意味します。金融機関の手持ち国債を買い、銀行が預ける日銀
当座の残高が増えることは、通貨発行の増加と同義です。インフレに
ならない理由は、それが、金融機関の、損失で生じた不足資金を埋め
るものだからです。

(注)ハイパワードマネー=紙幣発行額+日銀当座預金:経済で、直
接に流通するマネー:日銀ではこれをマネタリー・べースと言ってい
て、マネー量の調節の、直接の指標になる。

●上記の補正予算に加え、50兆円枠という株価対策が、必要になれば
なるほど、こうした日銀の国債引受も、増えてゆきます。

日本政府は、
(1)税収が減った一般会計(88.5兆円)、
(2)補正予算(真水15.4兆円)、
(3)補正予算での、貸付を含む事業費(56.8兆円)、
(4)50兆円枠の株価対策費の、「財源」を言いません。

●明らかなことは、民間金融機関と政府機関は、これらの巨額国債を
買う余力(余剰資金)がないので、日銀による国債買い受けしか、方
法がないということです。そのため、公式には、言えない。

(注)米国の、金融・経済対策費(私見での想定500兆円)において、
2009年は海外からの米国債買いが少なくなると想定されるため、FRBに
よる国債買いしかないのと同じです。まぁ、ひどいことになっていま
す。

■4. 50兆円枠の、政府の株価対策の効果の行く先

政府(及び政府機関)が、政策的に株を買い支える(あるいは上げる)
ことの効果と、その行き先を、予測します。他の論に見られないか
らです。

【確認】
●政府が株を買わねばならない理由は、「市場」の実勢では、GDPの減
少予想と、企業の利益減の予想、資産価格の下落予想から株価が下落
してしまうからです。この認識は重要です。

市場の実勢は、日経平均で、6000円〜5000円に向かっていたのです。
昨年来、この株価を支えて来たのは、11兆円分も、日本株を買ってい
る年金基金でした。

<08年10月、11月、12月、09年1月、2月、3月と、116兆円の年金基金
を運用するGPIFは、投資信託を通じ、毎月、1兆円くらいの年金基金を
投じ、株価PKOを行っています(前号)>
http://www.gpif.go.jp/kanri/pdf/kanri03_h20_p03.pdf

【市場の実勢】
●年金基金の、株への投入(11兆円)がなければ、民間市場の実勢(
英米系ファンドの売り+個人の買い+金融機関の売り)では、日経平
均は7000円どころか6000円、5000円に下げたでしょう。

(理由)個人以外の買い手が消えていることから、これが言えるので
す。

4月15日現在は8742円です。3500円分(株価総時価で110兆円相当)く
らいは、昨年の秋以来の、11兆円の政府資金(年金基金による買い)
で底上げされています。

更に4月以降、政府機関は追加の50兆円枠で買うと言う。損失は、政府
が保証するというのですから恐れ入りますが、これも白昼の政府策で
す。

●損失保証で買うなら、企業の将来業績の分析がなくなって、買いに
モラルハザード(経済倫理の障害)が起こり、政府対策が終わった時
の、暴落も示唆します。

敢えてそうした無理な策をとらねばならないくらい、下落の実勢が強
いと見なければなりません。

●市場の実勢では、下げるべき株価が、意図的に、底上げされた状態
が続きます。(注)個人の連れ買いは、誘うでしょう。日経平均での
9000円水準を安いと見ている人も多いからです。

▼問題になるのは、ヘッジ・ファンドの動き

問題は、日本の株の25%(現在時価で70兆円分)をもつ、米英系のヘ
ッジ・ファンドの動きです。(注)米英と言う理由は、両者がほぼ同
じ動きをするからです。世界からマネーを集める世界金融の司令塔は、
ウォール街とシティにあります。

以降では、あまり知られていないヘッジ・ファンドの動きを、見ます。

■5.ヘッジ・ファンドの動き

ヘッジファンド(約8000本)は、2008年の6月末が、元本出資額のピー
クであり、合計で$1.9(180兆円)でした。

●この元本に、数倍〜10倍のレバレッジ(商業銀行や投資銀行等から
の借金)をかけ、運用資産を1000兆円〜1500兆円に膨らませて、株・
証券・社債・国債・穀物・資源・原油・不動産等を、ポートフォリオ
にし、買っていました。

バブル的な価格は、ヘッジ・ファンドが先鞭をつけ、演出したと言っ
ていい。

●2000年代で、米欧の商業銀行と投資銀行大手の、自己資本に対する
レバレッジ率(負債倍率)も、10年間も続いた超低金利のため、20倍
から30倍へと無理な拡大をしていました。

2008年8月まで、世界のマネー供給は、全開状態だったのです。これ
を、実体経済を上回る信用膨張(つまり資産価格バブル)と言います。
マネーは中央銀行が供給するだけではない。民間金融機関やファン
ドも、そのレッジで拡大できます。

(注)日本の銀行は預金を融資する商業銀行に当たりますが、米欧で
は証券と銀行の垣根をなくしたユニーバーサルバンク(総合銀行)に
なっています。証券の取引が主になっています。

最近、租税逃れのタックスヘブン(租税回避地)の総資金量が、すこ
し明らかになってきて、総額は$11兆(1045兆円)と言われています。

公的集計がなかったヘッジ・ファンドは、カリブ海や太平洋のタック
スヘブンや、各地のオフショアを、名目上の本拠地にして、投機して
います。

●タックスヘブンの資産額から、ヘッジ・ファンドの、明らかでなか
った、レバレッジかけた運用の総額も推計できます。ヘッジ・ファン
ドは、元本(投資家の出資金)は$1.4兆くらいですが、レバレッジ
で膨らんだ運用額(投資額)は、その8倍の1000兆円規模でしょう。ヘ
ッジファンドは、その拠点を、運用益に対する各国の課税を逃れるた
め、タックスヘブンに置きます。

【損失】
これらヘッジ・ファンドの2008年の、元本に対する運用利回りは、株
価・資源価格の下落を主因に、平均でマイナス23%くらいでした。当
然に、資金を預託する投資家からは、解約が殺到しました。

この損失と2008年中の部分解約で、2008年末のヘッジ・ファンドの元
本は、$1.4兆(133兆円)に減っています。

●ヘッジ・ファンドへの投資元本が、解約で仮に50兆円減ると、投資
額ではその8倍の400兆円余が、株式市場、証券化市場、資源市場、不
動産市場、通貨市場が抜けると見ていいでしょう。ヘッジファンドの
投資・投機行動は、金融当局の、規制の外にありました。英米の「金
融立国論」が、政治に、規制をかけないことを求めたからです。

こうした解約申し込みは、世界の市場で、400兆円規模の巨額マネー抜
けることを意味します。

後で述べるFT紙は、投資家は、出資の50%くらいに解約申し込みを
していると報じています。自身がクオンタム・ファンド(=ヘッジ・
ファンド)を作ったジョージ・ソロスが言うよう、「08年秋で、ヘッ
ジファンドと投資銀行は終わった」のです。

▼ところが・・・ロックアップ条項とゲート条項がある

「ロックアップ条項」とは、契約期間まで、解約できないとする契約
です。「ゲート条」とは、仮にロックアップ期間が終わっても、ファ
ンド・マネジャーの裁量で、売れば価格が下がるからと、解約を拒否
できる条項です。

多くのヘッジ・ファンドは、ロックアップの契約期間を過ぎても、こ
の「ゲート条項」を盾(たて)に、今は解約を阻止しています。(当
然に、その額の公表はない)

昨年の12月、ヘッジ・ファンドの元本に対し、100兆円分(約50%)く
らいの解約希望が、投資家から出ている恐怖を報じたのは、英FT紙(
Financial Times)でした。この恐怖とは、ヘッジ・ファンドが売るこ
とでの、あらゆる市場の、価格下落です。

ところが、解約しようにも、投資していた株価が平均で50%も下げ、
住宅証券には値がつかず、資源価格でも原油は$140から$40付近に下
落していて、解約に応じることができなかったのです。(注)今、欧
州の、ユニバーサルバンクを通じた、中欧・東欧への投資(総額300兆
円規模)のうち、150兆円は回収不能と言われます。金融危機の火種は
米国に加え、欧州なっています。

(1)以上をまとめれば、「ヘッジ・ファンドで30%以上の損をした投
資家は、解約を申し込みし続けている」
(2)しかし「ファンド・マネジャーが処分売りをすれば、投資したも
のの価格がもっと下がるからという理由で、ゲート条項を発動してい
る」状況があると言えます。

●更にまとめれば、現在の元本$1.4兆(133兆円)のヘッジ・ファン
ドは、少なくとも50兆円規模の、強い解約圧力に晒(さら)されてい
ます。レバレッジで、金融機関から借りた運用総額では800兆円に相当
するでしょう。

■6.50兆円枠で株を買うという政府の愚策は、ヘッジ・ファンドに利
益を与えて終わる

以上のような、解約に迫られている状況で、ヘッジ・ファンドは、日
本株の時価で、70兆円分(25%)を持ちます。

日本政府は50兆円枠で、
(1)下げれば買い支える、
(2)上げるために買うと表明しています。

こうした買いの手の内を、ガイジン・ヘッジファンドに見せることは、
株式投資の世界では愚かです。政府は、政府資金(要は国民のマネ
ー)で愚劣な損をします。

結論は、言うまでもないでしょう。

【結論】
今70兆円の日本株をもち、解約を迫られている英米系ヘッジ・ファン
ドは、政府機関の資金投入で、株が、ある程度持ち上がったというピ
ークを判断し、売りに出るでしょう。

売りは、利益を出してあるいは損を少なくして、行うものだからです。

●背景になる理由は、ファンド・マネジャーは「ある程度は、投資元
本の回復をして、投資家の解約申込みに応じなければならない」から
です。

昨年来の政府は年金資金を11兆円使い、09年4月以降は、政府機関に保
証し政府が持ち上げる株価は、いずれ、70兆円の株をもつヘッジ・フ
ァンドから売られ、株を買った政府機関が、損をします。これが結論
です。

(注)当然に、政府資金で高くなった株を売る「空売り」を含めても
いい。ヘッジ・ファンド同士で株を借り貸しすれば、空売り規制も逃
れることができます。

以上のように、政府が手の内を見せた株の買いは、容易に、ヘッジ・
ファンドに利益を与えます。

株価下落の損は、政府機関が被りますが、その損を政府が保証すると
言うため、政府機関は必要な「投資の吟味」をしません。実に、愚策
です。

財務省幹部は、何を、どう考えているのか? 政府機関が株を買うの
なら、誰がどう買ったか、分からないように買うべきです。選挙民向
けに、50兆円枠での買いを表明してしまったので、後の祭りですが・
・・

ヘッジ・ファンドが持つ70兆円の株は、巨額です。10兆円分でも売り
に出れば、もともと1日に1.4兆円くらいしかない薄商いの日本市場の
株価は、ひとたまりもない。

薄商いの理由は、多くの人が、株を買っていないからです。
政府資金を受けた投資信託(元は年金基金)の買いだけが、目立って
いた。

わが国の個人にも、このヘッジ・ファンドの売りを真似た行動も出る
でしょう。

●政府の株買いは、いずれ「終わらざるを得ない」。

政府は、どんなに、損をしても、どんどん買うというわけにはゆきま
せん。公金、つまり政府資金が流失するからです。政府には、説明責
任があります。

●ヘッジ・ファンドは、「世界が楽観的になって、株価が上がる時期」
を狙っています。実体経済が回復に向かわない限り、株価は上がら
ないのです。政府策は、一時的なものです。

「政府機関が買って、株価が持ち上がれば、解約を迫られているヘッ
ジ・ファンドに、お土産をつけて、送り出すことにしかならない」

一刻も早く、財務省は、株の買い方で、方針転換をすることです。買
うのが、悪いことではない。

アナウンスした上での買い方が、株の国際化が進んだ今は、最悪なの
です。財務省は、政府は万能と錯覚しているのでしょうか? 相手は、
ヘッジ・ファンドです。

●1990年代とは異なります。1990年代は、財務省の株価PKOの相手は、
財務省の幹部が頭取に電話をかけて言えば、すぐ従う国内の金融機関
でした。

そのため、株の買い支えをアナウンスしてもよかったのです。その買
い支えによる利益は、国内の金融機関に行きました。今回は、違いま
す。

【結論】
繰り返しますが、今度の政府の相手は、70兆円もの日本株をもつ、ガ
イジン・ファンド(ヘッジ・ファンド)です。ヘッジ・ファンドの手
法は、リスクヘッジであり、市場が高く評価しすぎているものを売り、
逆に、低く評価しすぎているものを買うことです。

こうした手法に対し、政府が「50兆円の枠で株価を買い支える」と言
うのですから、実に簡単に「高すぎる株」を発見できます。

これによってPKOで株に投じた国民の富を、かすめ取られます。

また、世界で、1日の為替市場に投じられる資金量は、数十兆円と言わ
れます。1ヶ月での総計は、おそらく500兆円を超えます。そこでは、
政府資金といえども、小さいのです。

【後記】
「日銀しか、大量発行される日本国債の、主な買い手はない。」と世
界の金融市場が認識すれば、それは、円の信用下落です。

海外ファンドは、円売りに出るでしょう。日本株を売って、円を手に
し、米国へ送金すればドル買い・円売りです。

【記憶事項】
(1)なお、日本にある投資銀行を含む外銀の、総資産のピークは07年
2月の59.9兆円でした。09年1月にはこれが38.1兆円に減っています。
2年で20兆円の引き揚げ(円売り・ドル買い)があったことになります

(2)海外及びタックス・ヘブン(租税回避地)が本拠の、ガイジン・
ファンドは、わが国では、2008年には、10.3兆円の長期債・短期債・
株を売り越しています。このうち、株の売り越しは、7.5兆円分です。
これが、昨年秋以後の株価下落の主因でした。

政府が、4月以後、50兆円枠で株を買うことは、また、ガイジン・ファ
ンドに売り越しの利益を与える機会を作ります。

(3)米欧系の、投資銀行(投資家から預託を受けて投資するヘッジ・
ファンドと同じ)は、事実上、消滅しました。今、精算売り(ポジシ
ョン解消)の機会を狙っているのです。この認識は重要です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     【ビジネス知識源 読者アンケート 】

読者の方からの意見や感想を、書く内容に反映させることを目的とす
るアンケートです。いただく感想は参考になります。

1.テーマと内容は興味がもてますか?
2.理解は進みましたか?
3.疑問点は?
4.その他、感想、希望テーマ等、ご自由に
5.差し支えない範囲で読者の横顔情報があると助かります。

コピーしてメールにはりつけ、記入の上、気軽に送信してください。
質問のひとつひとつに返信することはできないかも知れませんが、共
通テーマはメールマガジンでとりあげます。いただいたメールは、全
部を読んでいます。

↓あて先
yoshida@cool-knowledge.com

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■創刊以来、全部門で1位を続け、『まぐまぐ大賞2008』を獲得してい
る有料版(週刊:1ヶ月で630円)の購読案内です。

■無料版バックナンバー:過去には発行した無料版全250号余は、全部
、以下に公開しています。
http://archive.mag2.com/0000048497/20090221184102000.html

■有料版バックナンバー:有料版の約8年分超のバックナンバー420号
余は公開していませんが、月単位で購入できます。以下に、全タイト
ルがあります。
http://rd2.mag2.com/r?aid=22334&rid=1

■『ビジネス知識源プレミアム』は、「1ヶ月ビジネス書5冊を超え
る情報価値をe-Mailでお届けする」ことを趣旨に、ビジネスの成功原
則、経済、金融等のテーマを原理からまとめ、明快に解き、週1回お届
けしています。最近号の、一部の、目次は以下です。なお、お陰さま
で、全部門で発行数1位を続けています。

<424号:1部 米ドルの趨勢:
2部このままなら、1929年以来最悪になる日本経済>
2009年3月25日分
【1部:米ドルの趨勢】
1.大統領が、敢えて米ドルは強いと言わねばならない背景
2.FRBが独立性の声明を出す理由
3.すでに09年3月で驚くべき資金供給額
4.FRBのB/Sに、簿外の$5.3兆を加えれば
5.6ヶ月後のFRBのB/S(バランスシート:貸借対照表)
6.FRBの独立性を米財務省とFRBが声明した理由
7.バッドバンク構想
8.バッドバンクが有効なのは

【第2部】
9.世界でもっとも悪化した日本の実体経済

<425号:2009年の経済:GDPの中身を解きながら>
        2009年4月1日分
【目次】
1.GDP(国内総生産)の基本構造
2.企業の設備投資(81兆円:前年比−19.5%:GDP構成比15%)
3.政府支出(98兆円:+4%)・公共投資(19兆円:-2.5%
4.問題の輸出と輸入
5.GDPについてのまとめ
6.海外からの移転所得(経常収支に含まれる)
7.重大なこと:対外純資産の急減
8.中国に米ドル離脱の動きがある
9.中国の検討
10.米国の財政赤字の急増

<426号:住宅・株価・基軸通貨のトリオ論>
2009年4月8日分
【目次】

1. 米国の住宅市場の近況
2. 住宅市場の本命は、中古住宅市場
3. 09年3月の株価回復の真相
4. 4月以後の日本の株価
5. 純債務国の基軸通貨という矛盾:米ドルの帰趨
6. 肝心な、対米資金流入は、どうなったか?

【最初の1ヵ月分は、無料お試しセット】
無料での購読が、最初の一ヶ月間、できます。その後、気に入れば継
続してください。

(↓)お手間をかけますが、会員登録方法の説明です。
http://premium.mag2.com/begin.html
新規の申し込み月の1ヶ月分は、無料お試しセットです。
(注)お試し期間の1ヶ月後の解除も、自由です。

【申し込み方法】
(1)初めての『会員登録』で支払い方法とパスワードを決めると、
(2)[まぐまぐプレミアム]から会員登録受付のメールが送って
   きます。
(3)その後、購読誌の登録です。
(注)過去のバックナンバーの購読も月単位でできます。

↓会員登録の方法
http://premium.mag2.com/begin.html

↓申し込み画面
http://cgi.mag2.com/cgi-bin/magpre/frame/P0000018

↓購読誌の登録
http://premium.mag2.com/mmf/P0/00/00/P0000018.html

【新設された、まぐままぐマーケット】
[まぐまぐマーケット]では、PDF版『ゴールドと通貨の本質』が
販売されています。有料版のバックナンバーから、上記テーマの関連
論考を集め再編集した、渾身の論です。有料版購読中か否かに関係な
く、どなたでも、セットで買えます。
http://www.mag2market.com/pickup/yoshida.html

Comments are closed.