ブッシュの敗戦
This is my site Written by admin on 2004年6月22日 – 08:00

こんにちは、吉田繁治です。義父の逝去についてお悔やみと励ましを
いただき、ありがとうございました。全メールにお礼の返信をするこ
とは難しく、この場を借り、御礼申し上げます。

身近だった大切な人が、一人また一人と亡くなる。切実な喪失感があ
って、何ものも、その空洞を埋めない。変化した世界を受容すること
ができるだけです。誰もが経験する月並みな悲しさこそが、痛切に思
えます。

教会の大伽藍(がらん)、豪奢な寺院、大古墳や巨大ピラミッド、そ
して種々の宗教は、こうした喪失を、現世の富を集めた物的なあるい
は思考を凝らした精神的なものを供物として捧げ、埋め合わせようと
したことから発しているのではないか。

近親や大切な人の死との関係は、奇妙な面があります。遠くにいても、
生きているときは、考えないで済ますことが多い。亡くなると、記
憶が鮮明になって、声が聞こえ、いつも一緒にいるような、対話して
いるような錯覚に襲われます。

考えてみれば、弔うことや仏壇は、死者を忘れさせる機能も果たして
いるのではないか? まさか仏や霊になったとは思えない。フィクシ
ョンがある。 

世の中は不確実です。人が死ぬことは確実です。しかしこれが本当に
確実かと言えば、実はおぼつかない。本を読んでいたとき、「太陽が
東から上がって西に沈むのは、確実なことか?」という問いがあって、
虚をつかれた。

テーマは、はやばやと<ブッシュの敗戦>です。多くの人が、既に感
じていることでしょう。アブグレイブ収容所でのイラク人虐待は、長
く記憶される墓碑銘になる。

現場兵士のモラルの堕落は、義のない戦争遂行が、いよいよ困難にな
ったことを示す。焦点をあてるべきは、兵士の心です。

ベトナム戦争を映画にした、フランシス・コッポラの『地獄の黙示録
(1979)』の狂気を思い起こさせる。ベトナムの記憶から米国が立ち
直ったのは、90年代のニューエコノミーによってでした。それまで
20年余もかかっています。

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       <Vol.191: ブッシュの敗戦>

【目次】

 1.不完全さが知識の本質
 2.自己補強
 3.7つの注
 4.財団
 5.自らの過りで没落する
 6.論理の抑圧の始まりは、誤りの明証
 7.目的
 8.イラク戦費の調達先
 9.なぜ、円建て債にしない?

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■1.不完全さが知識の本質

▼帰納法的な真理

人類が経験している限り、太陽が西から上がったことはない。地球の
自転と公転が変わらない限り、これは変わらない。しかし変わること
あるかもしれない。太陽も有限な恒星です。

過去がそうだったからと言って、将来も永遠に太陽が東から昇り、西
に沈むとは言えない。われわれは、究極の時間から見れば、暫定的(
ざんていてき)な世界に住んでいます。

科学的な真理の全部も、今のところは、反証がないという時限的なな
仮説です。ここまでは、誰でも知っている。そこから、先に考えをす
すめるかどうか・・・分岐点がこれです。

▼ソロス

ここ10年くらいの間、私が、言動を注目している人物のひとりが、
ジョージ・ソロスです。一般には、巨額な資金を動かすヘッジファン
ドの投機家とされる。マネーへの投機を職としていて、同時に社会思
想家であり、世界ナンバーワンの慈善活動家でもあり得るのか?

ソロスは、1930年にハンガリーのブダペストで生まれ、ユダヤ人
としてナチスの迫害を受けた。英国で学んだあと、1956年に米国
に移住した。証券会社の勤務を経て、驚異的な運用成績の「クォンタ
ム・ファンド」を立ち上げる。

ソロスが動けば、世界のマネーが動くとまで言われた。事実、英国の
ポンド売りでは、イギリス中央銀行に勝利する。ソロスの最高の瞬間
だった。

英国ポンドに、過大評価があると見た。後にタイのバーツの過大評価
も突いた。97年のアジア通貨危機は、これが端緒になった。

彼は、現象の一歩先を見ます。誰もがまだ気が付いてはいない、しか
し、指摘されれば、皆が我に帰る。その瞬間を狙う。いわば矛盾の極
点です。

ソロスの信念は「人は現実や経済について、完全な知識を持つことは
できない。科学的に真理と思われていることも、誤りを含む暫定的な
もの。」ということです。

ユダヤ人思想家であり科学哲学者、カール・R・ポパー(1902〜94年)
の批判哲学に依拠しています。主要著作である『開かれた社会とそ
の敵』は翻訳が入手できます。2段組、2冊、750ページの大著で
すが・・・

人の認識や考えは誤ることが多いというわれわれの常識を、透徹させ
たものが彼の信念です。ここからソロスは、有名になった投機理論(
自己補強の理論)を組み上げる。金融投機で、それを実証します。

■2.自己補強

「市場の参加者の認識は、自己補強をするため、誤っている」と彼は
考えた。市場の、集合的な認識の誤りを突いた。高率の運用成績は、
市場が誤る自己補強の理論を使ったものだった。

自己補強論は、有料版でお届けした行動ファイナンス理論(03年6
月〜7月 『行動ファイナンス理論とは何だろう?(vol.101〜1
03)』)と共通します。自己補強の現象を実証し、原則を導いたの
が行動ファイナンス理論です。

参加者は自分の投資・投機・賭けに都合のいい事実だけを見る傾向が
強い。逆を示す材料は、兆候を無視する。事業の経営者にも、これが
多く、失敗の原因にもなる。

持ち株や手持ち債券が上がっているときは、高いことが合理的である
材料を探す。否定的なものは軽視する。

下がれば逆になって、低い価格が合理的だという材料を探す。それら
によって、価格が形成される。価格には、非合理な歪みがある。

PER(株価÷1株あたり税引き後利益)は、米国では過去、15倍
だった。年間利益の15年分が企業の価値とされていた。今はこれが、
30倍に膨らんでいます。企業価値が2倍に評価されている。

(注)日本は、来期予想の純利益によるPERで20倍弱(04年6月)

なぜ過去、長期にわたって純益の15倍だったものが、今は30倍か
? 合理的な説明はできない。ゴルフ会員券の価格は過去のピークの
5%から10%です。これにも合理的な説明はない。説明すれば、で
っち上げです。商業地の地価もゴルフ会員券価格に類似します。価格
は、常に非合理を含む。

価格を上げるのも下げるのも、人間に共通な、自己肯定、または自己
補強の心理です。

株価・債券価格・金利、そして地価は、常に、高くも安くも市場参加
者の自己補強による誤りを含んだものになっている。自己補強がゆき
すぎ、異常なレベルになった状態がバブル的な高値と、逆のパニック
的な安値です。

そこまでは行かなくても、バブル価格分やパニック価格分は、今日の
価格の歪みとして常に含まれている。スマートな用語では「動的不均
衡」と言いますが・・・

世界の90年代では、金融のボラティリティ(価格変動の標準偏差の
幅)が大きくなっています。投機マネーが、増えたためです。

認識の歪みがもたらす、こうした一層の動的不均衡を、他の人より早
く察知し、果敢な判断をする。しかし、ソロスに注目する理由は、稀
代の金融投機家だからではありません。

■3.7つの注

(注1)
素人の にわかTRADER(株をインターネットで売買する人)が目立ちま
す。時折、何を買えばいいか問い合わせもあります。手を染めている
人は、儲けがあるうち、あるいは損をしないうちに一刻も早くやめる
ことです。これが、唯一確実なアドバイスです。

(注2)
キャピタルゲインを狙うのは、投機です。投機は、棄ててもいいお金
ができたあと、金満家だけが行うべものです。借金で投機する信用売
買など、まさにとんでもない自己破壊の行動です。他方、投資は、そ
れを購入し、自分が使って利益を上げるための行動です。投機と投資
は、冷厳に区分しなければなりません。

(注3)
資産運用は、値上がりを目的にするのではなく、実質価値を減価させ
ないために行うべきものです。

(注4)
アラブ全域が、米国の支配下を離れたとき、資源価格はどうなるか?
 準備が必要でしょう。

これからの焦点は、日々政情不安が高まってきたサウジアラビアと、
プーチンのロシア、そして石油と資源の宝庫でもあるカスピ海沿岸の
動きです。資源国であるロシアは、資源価格高騰での経済浮揚を狙っ
ています。

イランと中国が、石油で結びつきはじめたのは御存知でしょうか? 
そして、プーチンは、ロシアの原油埋蔵の、西側による発表を、とん
でもないでっちあげの干渉だと非難しています。これも戦略的な準備
でしょう。

(注5)
2億5000万バーレルの原油埋蔵をもつサウジアラビアに、イラン
的な革命(1979年)の動きが見えます。イラク(同1億5000
万バーレルの埋蔵と言われる)の、政権委譲後の推移が、誰の目にも
はっきりすれば、サウジも米国を離れる可能性が高い。

米国メジャーとつながっていたイランのパーレビ国王の追放(197
9年)から、ホメイニ革命が起こり、第二次オイルショック(198
0年)になった。石油の高騰とともに、ゴールドも資源価格も高騰し
た。

(注6)
第二次オイルショックで、深刻なスタグフレーション(インフレと不
況の同居)に陥った米国は、2桁の高金利になった。米国の80年代
初期は、悲観論が支配的だった。これを変えたのがレーガンです。

(注7)
先進国世界で、最も資源価格高騰に弱いのが米国であり、強いのが日
本です。ただし両国とも、今は金利高騰には極度に弱い。

・日本は1000兆円超の債務を抱える国家が、金利高騰に弱く、
・米国は、合計で22兆ドル(2420兆円)の債務を抱える企業 
 と家計が弱い。
・個人消費と企業の投資の金利感応度は、以前の3倍になっていま
 す。
・金利が、+3%も上がれば、即刻、米国経済は沈みます。

■4.財団

ソロスは、1984年に、共産主義下の故国ハンガリーの人々のため
に財団を設立し、個人で政府を超える経済援助をしている。世界の3
3ヶ国にも私財を投じた財団を作っている。86年には中国にも「改
革・解放基金」を作っている。天安門事件の、学生運動のきっかけに
もなったと言われる。

ソロス財団の1年間の予算は、4億5000万ドル(約500億円)
と言います。今までに50億ドル(約5500億円)を、世界の各国
に投じている。

人は「ソロスの偽善」とも言います。私は、決してそうは思わない。
5500億円を、社会の進歩や人の福祉に投じることのできる人物は、
畏怖に値します。

人の本性は善であると信じなければ、寄付行為は行えない。ソロスの
5千5百万分の1にすぎない100万円でも、寄付は難しい。行って
みてください。困難さが分かる。偽善では行えない。私には到底行え
ない。

▼個人

もうひとつの理由は、ソロスが個人で情報を集め、判断し、動くこと
です。個人でも、想像を超える大きなことができることを立証した。
親から受け継いだ資産はない。大組織にも属さない。

3番目の理由は、金融と哲学の文筆家でもあることです。著作によっ
て、考えの深奥までを知ることができる。難しい内容のものですが読
むに値します。投機の方法は説かない。金融、経済、社会の本質への
考察です。

個人ができることの大きさをソロスは示す。

■5.自らの過りで没落する

ソロスの最新作は先月に出た『The Bubble of American Supremacy』
(邦訳『ブッシュへの宣戦布告』)です。

原題を説明的に言えば、「アメリカが犯している卓越性の認識の、バ
ブル的な誤り」です。9.11を政治的に利用し、米政府は敵対勢力
への先制攻撃を正当なものとした。

軍事で制圧すれば、すべてはなびくという暴力至上主義に陥っていま
す。米国流の民主主義と市場経済を至上のものとし、世界の保安官と
してモニターする。米国の国益に敵対するものは、問答無用で倒す。
「議論は要らない」というのが今のブッシュ政権です。

国益とは言っても、内容が問題です。国益の実体は、一部の産・軍・
政府複合体の利益にすぎない。チェイニー(副大統領)、ラムズフェ
ルド(国防相)、ライス(国家安全保障補佐官)、ウォルフォウィッ
ツ(国防次官)の、軍事産業とエネルギー産業への深いリンケージを
あげるまでもない。

日本の論者も、国際政治や国際戦略は国益の追求であると言われれば
黙ってしまう。問うべきは、国益の内容です。国益という言葉には問
題が多い。私益であることがしばしばです。

国益を言う人には、胡散(うさん)臭さがつきまとう。

▼誤り

<アメリカは、今日の世界で、他のどの国家も、またどの国家連合も、
当分は対抗できそうもない支配的地位を占めている。アメリカがそ
の地位を失うとすれば、それは唯一、自らの誤りによってだろう。同
書 P 序文ii>

【冷戦時代】
冷戦時代のアメリカは、ソ連という反対の世界の対抗勢力があったた
め、もっと謙虚だった。共産主義を敵とはしていたが、資本主義が、
無条件に勝るとは思っていなかった。むしろ、脅威に思っていた。

そのための修正資本主義だった。福祉予算への配慮があり、累進課税
で、原始的な資本主義では、必ず、winner takes all(勝者の一人勝
ち)に向かう所得の、再分配を図っていた。戦後の西側世界は、混合
経済体制(サミュエルソン)と言われた。

世界の共産化をとどめることが、米国のミッションだった。日本の経
済発展を支援したのも、共産主義対策からでした。

【共産圏の国家機構の崩壊】
レーガン時代の末期に、官僚による統制だった計画経済のソ連が崩壊
した。体制崩御の原因は、官僚の特権階級化(ノーメン・クラツーラ
族)だった。ソ連の崩壊は、ソ連という旧式の国家体制の崩壊だった。

それを西側イデオロギーは、マルクス主義の誤りとした。
ここに、論理のすり替えがあった。

80年代のレーガンとサッチャー以降、グローバリズムとともに、資
本主義は、winner takes allの先祖帰りの方向に、舵を切った。とり
わけ80年代、最初にグローバル化した金融資本がそうだった。

世界の大企業は、資本買収を行うようになった。グローバル化し、レ
バレッジ(テコ)の信用借りで、巨額化したマネーは、これからも、
世界の企業買収を行うことになります。

今は日本企業が標的になっています。株の20%以上は、ガイジンの
所有になっています。その原資は、日本の財務省がドル買いで提供し
たものです。財務省が貸したマネーを原資に資本買収されている国が
日本です。株価の上昇は、ガイジン買いによるものでした。

金融機関が持ち合い解消で手放した株は、今、ほぼすべてがガイジン
の所有になっています。

【金融のローマ帝国】
製造業で負けた米国は、ドルの基軸通貨で、世界の富を借り、借金を
原資にする金融の帝国を作った。

旧共産圏も、アジアの新興工業国も、ドルを国際通貨にした。不換紙
幣の、印刷コストしかかからない米ドルをどんなに増刷しても、輸出
する商品と代金として、世界が受け入れてきた。ドル紙幣はFRBの、
米国民と世界への負債です。

アメリカは、最初は恐る恐る刷っていたドルを、巨額に刷っても、ド
ルが急には崩落しないから、自らの体制に自信をもった。周辺国を暴
力で収奪し、富を築いたローマ帝国になぞらえ、金融のパックス・ア
メリカーナの時代を言う人も現れた。

2000年春に、金融バブルとITバブルが同時にはじけた。恐慌に
陥るかと思われた。ユーロー諸国は、米国から資金を回収したが、中
国、日本、アジアはドルを持つことで、金融ローマ帝国を支えた。

そして01年9月11日、世界は震撼した。これは一体何だったか?
未だにはっきりしていない。結果はイラク戦争だった。

【ネオコンの浮上】
9.11は、「米国新世紀プロジェクト(新保守派)」が、ブッシュ
政権を、露骨に支配する契機になった。米国世論はそれをバックアッ
プし、マスコミの言論は、事実上、統制されていた。

米国内で、「石油のための戦争」と言うことはできなかった。

<アメリカは、今まさにそうした誤りを犯している。この国が、「確
実なものが存在する」という間違った考えと強い使命感をもつ過激派
グループ((注)新保守派)に牛耳られているためだ。彼らはアメリ
カが世界で占めている地位を乱用することによって、自らの意図に反
して、アメリカを弱くしてきた。(p ii)>

米国的な市場主義と民主主義は世界で唯一確実なものか?
それ以外のものは、イスラムを含め、すべて「悪」か?

ブッシュ大統領が「アメリカにつくか、テロリストの側につくかだ」
と言うとき、9.11のTVで見た心理的な刷り込みが、人々の判断
を誤らせる。

9.11が、どんな集団によって実行されたものか、判然としていな
い。アルカイダが実行組織だったかも実は不明です。首謀組織もあげ
られてはない。米政府の、断定のみがあります。

今アメリカがとっている解決法は、アメリカの正義を賞揚し、不当な
テロと戦うという心理的なバブル(偏った熱狂)に基づくものです。

■6.論理の抑圧の始まりは、誤りの明証

テロは、殺人と殺人未遂の法的な犯罪です。犯罪者は、文官である警
察が捕まえ、司法の裁きによって断罪しなければならない。

テロと言えば、法的な犯罪ですから、行政府である政府や、軍が裁く
ことはできない。法は、強大な国家主権に枠をはめるものでもある。

▼戦争へのすり替え:敢えて論理で問う

しかし9.11が起こった直後の、ブッシュ大統領の第一声は「これ
は戦争だ」ということだった。

その意味は、9.11のテロを司法によっては裁かないということで
す。テロを戦争とすれば、法と警察はひっこみ、対テロ戦は、戦争に
なる。戦争は、法が及ぶところではない。

調べもつかないときに、どんな根拠で戦争と言ったのか? そして9
.11は本当に戦争だったのか? これについての法学者の発言も、
マスコミの追求もない。テロの定義も、明らかではない。

戦争は、国家対国家の闘争であり、法を超えます。
9.11を戦争とすれば、法を超えてしまう。

法は、国家の枠組みの中でしか有効ではない。法を超えた共通のもと
しては、ルソー的な自然権、各種の倫理、そして無数の宗教しかない
。(従って戦争を裁くのは自然権、倫理、宗教しかない。)

9.11を宣戦布告とすれば、裏には、テロ組織と同一視される国家
がなければならない。宣戦布告は、国家しかできないからです。

アフガニスタンはイスラム連理主義のタリバンが支配していた。タリ
バンは、アルカイダやビンラディンとのつながりが明白だった。
アフガンへの侵攻までは、戦争の前提に誤りはあるにせよ、かすかに
論理があった。

9.11をアルカイダの対米宣戦布告とすれば、アルカイダとつなが
りがあるアフガンを攻めることはできた。ここまでは、かすかに論理
があった。

しかしその後のイラク侵略(政府自身がinvadeと言う)には、石油の
支配権を軍事力で確保するという以外には、論理がない。

米政府も、中東での覇権と石油を支配するためのイラク侵攻だという
本当のことは言えない。そこで、でっちあげの他の理由が必要になっ
た。

唯一の根拠は、イラク国民の弾圧者フセインの追放です。これなら国
際世論に訴えることもできる。醜悪なフセインを穴蔵で捕獲した。米
政府は、すぐDNA鑑定の結果を明らかにすると断言したが、未だに
公表されていない。名目にした大量破壊兵器は、漫画のような、つけ
たしに過ぎなかった。

米大統領選挙の前に、共和党支持を高めるタイミングを計って、ビン
ラディン捕獲が発表されるかも知れない。瓜二つの人物は、ハリウッ
ドの技術があれば、容易に作ることができる。世界の人々は、映像し
か見ない。

9.11は衝撃的な映像だった。しかしそれを利用し、国民世論を誘
導して、新保守の過激派による「米国新世紀プロジェクト(PNAC)」
の戦略を正当化するのは、論理のすり替えです。

http://www.newamericancentury.org/

航空機が衝突すれば、あんな見事に、巨大ビルが崩壊するのか?
崩壊の様子は、ダイナマイトを仕掛けた古いビルの破壊に似ていた。

■7.目的

新保守派の目的は、彼らがステートメントの最初で目的としているよ
うに「軍事費の増強」です。30兆円余/年(GDP費3%)を、4
0兆円/年(GDP比4%)にすることです。わずかと言えばわずか
な年10兆円の予算の継続的な獲得です。

【矮小】
ここに、新保守派の矮小さが見える。金融投機で儲けた5500億円
の私財を、経済の援助と、教育に投じるソロスと人間の格が違う。

【軍事費】
冷戦が終わって、国民の税をつかい軍事費と数千発の核兵器をもつこ
との正当性が薄れた。新たな、しかも継続的な、冷戦のように50年
も続く安全の脅威がなければ、世界の軍事費は、正当化されない。

【源泉徴収と申告制】
米国は、ナチスドイツが戦費調達のために発案した源泉徴収とは違い
、全員が所得申告をする税制です。納税感が希薄になる源泉徴収制の
わが国より、タックスペイヤーの意識ははるかに高い。政策実行には、
一層の世論の支持が必要になる。

(注)わが国の旧大蔵省は、ナチスにならって、源泉徴収制を導入し
た。この制度は、官僚と政治家にとっては便利です。これを、申告制
に改めるという発案は、官僚からは決して出ない。

世界の国家予算を見れば、今、軍拡に向かっています。

テロリズムの脅威は、軍拡を正当化します。軍需産業から言えば、テ
ロは、時折、発生しなければならない。米国政府は、テロとの永久戦
争を宣言しています。

各種の事件に、どこがどうつながっているか不明な、憶測によるしか
ないマッチポンプがないと、誰が言えるか? 軍事的な事件は、歴史
が証明したことによれば、多くは、軍部の陰謀によるものだった。

■8.イラク戦費の調達先

財務省は、昨年から今年にかけ、米国債券を30兆円も買っています。
財務省の裁量による、国民の承認を得ていない戦費の供与です。

今の米国債は、戦時国債と何ら変わらない。戦争は、破壊と富の蕩尽
です。30兆円を裁量で使ってしまった財務官は、一体なにを考えて
いるのか? 理解に苦しみます。

ドル安になったとき、その穴は、誰が埋めるのか。
赤字を出し続ける国の通貨が下がるのは必然です。

▼ドルの減価による、戦費の無償調達

最終的には、日本国民が預金の中から今のイラク戦費と、今後の中東
戦費を負担します。米国は売ったドル金額の債券(=債務)をドル安
で切り下げ、債務を減価させることができます。

相手国の通貨で貸せば、主導権は、債務を抱える相手に渡る。こうし
た外国為替の仕組みが、一見ではわかりにくいため、世論は黙してい
ます。通貨投機は、ごく一部のファンドマネジャーしか行っていない
からです。

米国政府への最大の貢献者は、日本政府です。
小泉首相はサミットで、真ん中に立った。

赤字を抱えるドル安は、FRBか米財務省のたった一言で誘導できま
す。他方、ドル高に誘うには、とても困難な政策ミックスと産業の振
興が必要です。

■9.なぜ、円建て債にしない?

ドル安があっても減価しない円債の発行を、米国に言い渡す度胸がな
い。財務官僚は、日本の国益に反した、富を譲渡する決定をしている
ことになります。

日本は、これ以上の富を流出させないためには、財務省が、米国に円
建ての債券を発行するよう要求すべきです。これは、ドルのショック
的な崩落を避ける方法でもある。

円建ての債務なら、ドル安は米国にとって困る(=ドルでの返済額が、
ドルの下落分増える)ため、赤字が抑制され、通貨価値は安定に向
かう。

そのためには日本の財務省が、「ドルもローカルな通貨」であると認
識することです。赤字を抱え、価値を下げ続ける通貨が、基軸通貨で
あるというのは、今の世界経済の最大の矛盾でしょう。借金や矛盾は、
どこまでもは続かない。

日本の財務省は、世界の経済史上最大の借金を国民にし、その借金を
更に積み上げ、米国債を買った。

現下はドル買いを停止していますが、あと100兆円くらいの枠を、
昨年の年末に、為替調整資金の名目で確保しています。今後、円建て
債の購入に特化することを望みます。

日本は、想像以上のパワーを持っています。1400兆円の個人金融
資産を、ドブに棄てるような政策を、許してはならない。

ニューヨークに住むユダヤ人のソロスは、反ブッシュ政権を鮮明にし
た。

(注)私が知る限り、米国人の知性は、まともに議論すればまともに
答える面を持っています。

米国では今、ベトナム戦争のあと停止された徴兵制を復活させようと
する動きがあります。

<9.11で、自分たちの目的を一部しか明かさないまま、(新保守
派は)チャンスをつかんだ。アメリカの一般大衆は、こうした経緯に
今なお完全には気がついていない。P10>

巨大で広大な米国に立てば、他国のことは、実に小さく見える。大陸
が地政的にもたらす幻想です。7月の月初に、三日間、ビジネスを離
れ、ロスアンジェルスに行ってきます。

ソロスは、ブッシュ政権の誤りを指摘するだけではない。次の社会(
オープンな社会)についての、建設的な提案もしています。

国家は、誤ることがあると認めることです。無謬(むびゅう)を言い
張れば、救いはない。誰も、完全な知識は持ち得ない。完全でないも
のが完全な振りをし、正当化のために無理を重ねる。

日本の官僚も、金融、年金、公共投資、特殊法人の諸政策の誤りを認
めることです。官僚が無謬の態度を貫けば、醜悪な言い訳と、無理を
重ねる方向に向かうしかない。意外に身近なところに、解決がある。
米国も日本も、その点では何ら変わらない。

愚民政策は、もう通用しない。

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を読み、会長・社長が衝撃を受け、幹部社員約300名に読むことを
義務づけたと聞きました。著者冥利(みょうり)に尽きます。

熱烈な支持と、中身が難しいという評価に二分されているようです。
情報システムをどう使ったかで、分かれます。次第に、いろんな企業
に浸透しているようです。20世紀型の統制型組織の限界を示し、2
1世紀の現場が自律的に動く組織をデッサンするものです。

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<157号:158号
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【増刊:158号の目次】
 
 1.政治的な言語
 2.小金をもったことの罪
 3.極めて重要な、指摘されない近未来
 4.存在理由を露わにするのがデータベース・マーケティング
 5.商品開発は顧客開発、顧客設計である

【159号の目次】

 1.当たり前のことへの疑問
 2.仮説的な結論
 3.今日、経験したことを素材に、商品構成の仮説を導く
 4.商品構成についての重要な仮説
 5.商品構成の意味
 6.適正規模の商品構成の、「最小セット」はどれくらいか
 7.不思議な現象に思えるが・・・
 8.「購買率」という概念の導入
 9.CRMはまず、RFM分析から
               (続く)

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