夕張市の財政が象徴すること(1)
This is my site Written by admin on 2007年1月31日 – 08:00

こんにちは、吉田繁治です。夕張市の「財政破綻」としてシンボリ
ックに現れた地方財政の問題について、書こうと思います。わが国
行政の象徴としてです。

夕張市は、行政の借金の累積(630億円)を、12,800人の市民へ「つ
け」として回す典型例です。夕張市の人口は、1960年10.8万人から
8分の1に減っています。(注)1957年以降、財政再建団体に指定さ
れたことがあるのは、288の自治体です。

そのまんま東氏が、宮崎県知事に当選した機会です。
地方自治を知らない素人として、地方財政問題に迫りましょう。

東国原氏が、元林野庁長官の川村氏と7万票の大差で、まさかの勝
利を収めた理由は、「政治、既存政党、行政」への不信です。

認識を新たにしました。日々の、感想も述べたくない嫌なニュース
の連続に、「今の体制は、どうしようもない。風穴をあけてくれ。」
と憤(いきどおり)りをもつ人が過半数になった感じです。

今年の統一地方選、参院選でも思わぬ波乱が起こるだろうことも、
確実なこととして想定できます。

バブル崩壊直後の1992年、細川護煕氏の日本新党が支持を受けた時
の空気に似ています。期待は、ビールでなくワインで乾杯するイメ
ージだけに終わりましたが・・・

本稿で示すように、夕張市の例は、どうにもならなくなって現れた
氷山の一角です。おそらく、全国の3170自治体のうち70%は、人口
が急減してきた夕張ほどではなくても、似ています。総務省も自治
体(都道府県、市町村)も、これをひた隠しています。

住民は、自分が借金をし、あれやこれやに使った覚えはない。しか
し、過去の行政の成果も失敗も、両方を引き受けねばならないのが、
町に住んでいる人です。

地方財政の問題は、総務・民生・衛生などと古ぼけた行政語、概念、
数字の曖昧さがあり分かりにくい。

主権をもつはずの住民に内容を知らせようとする熱意でなく、分か
りにくくすることに心を砕いてきています。当然に、行政の条件で
あるアカウンタビリティ(会計的説明)の責任は果たしていない。

内容のひどさを住民が知れば、責任を問われると感じた震えからで
しょう。

ちまちました裏金や不正は、誰にも分かりやすい。しかし自治体の
累積赤字の罪に比べれば実は小さい。(注)裏金は業務上横領で刑
事事件になるはずのものですが、検察はなぜ動かないのか。皆でや
れば犯罪ではない? こうしたところにも検察の恣意(しい)が見
えます。

<ともかく(自治体の実質公債比率の)数字が、外に漏れてはマズ
イ・・・この数字が公になると、地方債の信用度が下がってしまい
ます。(総務省の担当)>

国民が実態を知れば、ひどい内容なので金融市場が驚き、金利が上
がる。だから知らせない。これは、考えが逆転しています。

粉飾は、民間では経済犯です。地方財政の赤字の内容が知られれば
地方債が嫌われ、金利は上がる。だから知らせない。それによって、
地方債の金利を低く保つ。

これは「204兆円の地方債を買った人や機関の所得」を不当にかすめ
とる行為です。1%で1年2兆円の経済犯。エンロン以上です。

実際、地方債の発行について、市場からのチェックをさせなかった
ことが、地方債の発行を続けさせ、今の自治体の財政の窮状につな
がっています。

財務省(国)は地方の財源を「保障」すると言いますが、実は、保
障は大方の人が思っている「保証」とは違います。

保障は、監視して指導することです。保証は、弁済できないときは
代わりに弁済の義務を負うことです。言葉は似ていますが、中身に
は天地の違いがあります。地方の財源について、国は保障していま
すが、保証はしていないというのが財務省の統一見解です。

ここにも、官僚的に姑息(こそく)な、言葉の言い換えがあります。
保障と保証の違いを知れば、204兆円に増え、これからも1年で14兆
円くらいは増える地方債を保有している金融機関は、どう反応す
るでしょうか?

地方のひどい財政内容が公開され、金融市場からのチェックで地方
債の金利が上がり、市場原理で発行制限が加わるなら、膨大な赤字
をつくっている無駄な事業は行うことができなかった。

個別事業の、フィージィビリティ(実現の確証)のある、採算計画
が求められるからです。

借金は、相応の金利を払い、税収から返済をしなければならないと
いう考えがあれば、ここまでの地方財政の悪化も防ぐことができた。
借金は期限が来れば返済するのが、普通の考えでしょう。

赤字のつけまわしで、夕張市のように、あとで住民が苦しむ事態は
避けることができたのです。

知らせるのは義務です。しかし、いつも、隠そうとする。

地方自治は、決して面白い話題ではない。言葉からして地味です。
しかし正確に見てゆけば、面白い。憂鬱になるのではなく、正面か
ら見つめることです。
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<Vol.244:夕張市の財政が象徴すること(1)>

【目次】
1.北炭夕張炭鉱
2.代議制
3.無い袖(そで)が振れなくなる時期
4.夕張市の財政状況を要約すれば

<Vol.244:夕張市の財政が象徴すること(2)>

【次号予定】
5.財政再建団体
6.65歳以上が40%:65歳が50%以上になると「限界集落」
7.今後18年間の再建計画は現実的か?
8.「数字が外にもれてはまずい」
9.重要なこと:地方債へ国の保障の根拠はあやふや
10.財務省の「地方債の保障」についての見解

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■1.北炭夕張炭鉱

【1965年〜1975年】
北炭夕張炭鉱は、東京オリンピック後の昭和40年代(1965年代)、
他の炭鉱(筑豊・北海道)が閉山に追い込まれる中、エネルギー政
策を担う通産省から資金的な支援を受けた北海道炭鉱汽船(北炭)
が、最新技術を投入したものでした。

北炭は、消え行く炭鉱の中で夕張の希望でした。

鉄鋼用のコークスに活路を見出し、出炭を始めたのは、栄光の石炭
の時代(1950〜60年代)が終わっていたオイルショック後の1975年
(昭和50年)です。

【悲惨な炭鉱事故】
炭鉱設備は新しかった。しかし、日本が世界の貿易黒字国として今
の中国のような輸出大国になった1981年に坑内火災事故で93名の犠
牲者を出します。

坑内に安否不明の59名を残し、火災を止めるため坑口を密閉し、そ
の後、家族に同意をとり注水が決定される。悲惨な事故でした。

1982年に北炭夕張炭鉱は閉山され、翌年に北炭は倒産します。1990
年には最後まで残っていた三菱石炭鉱業の南大夕張炭鉱も閉山し、
夕張の炭鉱の灯りは消えます。

【人口はピークの8分の1】
夕張市の人口は1960年10.8万人、1970年7.0万人、1980年4.2万人、
1990年2.1万人、2006年末は1万2831人です。ピーク人口の8分の1で
す。

炭鉱の町であり、農業開発は少なく、閉山で失業した雇用の受け皿
はなかった。今は、ピンクの果肉が甘くせつない夕張メロンが産物
です。

【炭鉱から観光へ】
市は「炭鉱から観光へ」のテーマを掲げ、テーマパーク、スキー場
等の観光設備投資を行います。

炭鉱事業は(旧)通産省が主導する国策でもあったので、政府は、
国から地方交付税と国庫支出金を特別に注ぎ込んできました。

2001年には臨時措置法の産炭法が失効し、後で述べる「地方交付税」
の金額が減らされます。肥大した市の財政は借金まみれになる。
負債は630億円。今の、激減した12,800人の住民1人あたりにかぶせ
るなら、1人あたり492万円にもなります。

【隠れ借金】
市は「ヤミで起債し金融機関から借り入れて」、財政を粉飾してい
たことも後で明らかになります。

実際に北海道知事や所轄の総務省に相談がなかったかどうかは、不
明です。上部団体は口頭の承認をあたえていても、発覚すれば公式
には「知らなかった」と逃げます。

こうしたときの嘘や卑怯は、官と政治の世界の処世術です。
逃げるのが官僚と政治家です。住民は逃げるわけに行かない。

【単式簿記が問題】
企業の複式簿記では、借入金や市債の発行は「負債」として記録さ
れます。その記録がある限り、粉飾(会計の不正)ではない。

行政は一刻も早く複式簿記に変えるべきです。それが市民・国民へ
のアカウンタビリティ(説明責任)を果たすことにつながります。

行政は、今も時代遅れの単式簿記です。現金の支出と入金が記録さ
れます。借り入れも、行政の会計では「歳入(収入)」になります。

こうした会計制度のため「ヤミ起債とヤミ借金」は、他の自治体で
も多いと言われます。

■2.代議制

▼代理権の付与

選挙に棄権(権利放棄)しても、議会制民主主義では、「代議員と
首長」に行政の執行を行う代理権を、委任したことになります。

代理権とは何か? 

市長と議員が、夕張市の、12,800人住民の代理として、条例(自治
体の法)の制定、制度作り、公共投資、商品の購買等の行為をする
権利、または官僚の行政活動の承認を行う権利です。

代理権を与えることは「連帯保証」の印鑑を押すことに似ています。

自分がつくった借金ではない。しかし代理人(行政)がした借金は、
いずれ自分たちに降りかかります。不正な裏金すら、です。

私は今、大阪府の豊中市に住んでいます。当然に、豊中市の財政状
態も、他の市とほぼ同様に、借金財政で悪い。豊中市に住み続ける
限り、財政破綻のとき、夕張市と似たようなことになるでしょう。

地方財政の内容も、独特の定義があって分かりにくい。
この機会に、主要なものを明らかにします。

代理権という権力を与えられて行う行政には、情報公開が必須です。
しかし、これはまだ、わが国の常識ではない。官は、都合が悪く
責任を問われる情報を、隠す。これが常識であってはらならない。

▼単式簿記

地方財政の会計は、現金の支出入を記録するだけの「単式簿記」で
す。例えれば、収入と支出だけを記録する家計簿です。複式簿記の
企業会計と違います。

予算だけを見ても、資産や負債の内容と過去からの残高が、分から
ない。国家財政も、まだ単式簿記です。現金の動きを記録するだけ
です。

(注)東京都は、2006年4月にやっと、収入及び経費的な支出と資本
的な支出、資産、負債を区分して記録する複式簿記の導入を決めて
います。他の自治体(県と市町村)も順次、東京都に倣う予定とさ
れます。今年から、順次、変りつつあります。

夕張市の多くの人たちも、「行政サービスのカットと低福祉・高負
担」が、自分に降りかかると予想していなかったでしょう。

夕張市の人口は1万2800人。日本の1億2700万人のほぼ1万分の1です。
負債の残高は、市債(137億円:04年末)と借入金約500億円弱を
合わせると630億円と言われます。市民1人あたりで492万円です。

ピーク人口の8分の1に減り、65歳以上が40%になった夕張市に住む
人々は、この借金のつけを、これから18年で払うことになります。

630億円を1万倍すれば、630兆円です。この630兆円は、ほぼ日本国
の財投債を含む国債残高に相当します。

(注)複式簿記にしたからと言って、問題が解決するわけではありま
せん。内容は分かりやすくなりますが、次の問題は、その中身になる。

▼(参考情報)国の債務

財務省が公表している国家の債務残高(自治体の債務を除く)は以
下です。(06年12月末)http://www.mof.go.jp/gbb/1809.htm

その時々で、いろんな数字が言われますが、以下を記憶しておいて
ください。

普通国債    533兆円
財投債     138兆円(注)特別行政法人等の借入れ
借入金      58兆円
政府短期証券   95兆円(注)財務省外貨準備のための借入れ
その他      4兆円
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
合計国家債務  828兆円(国民1人当たり690万円)

この債務に、自治体の債務(204兆円:05年3月期)が加わります。
合計の[国家+自治体]の政府部門の債務は、1032兆円(06年)です。

■3.無い袖(そで)が振れなくなる時期

「市の財政状況は、厳しいらしい。しかし結局は、北海道庁や日本
国がなんとかしてくれる。住民に、市の過去の借金と赤字のつけを
回すことはないだろう。」と多くの人は思っていたはずです。

(注)多くの人は、国の国債もいずれ自分に降りかかるとは思って
いません。

「なんとか・・・するだろう。・・・するはずだ。」というのは、
非論理的で、根拠がないうっちゃりです。

しかし政府も自治体も「とどのつまり、ない袖は振れない。」とい
う時期が来る。夕張市が示唆することです。 

追加の借金が難しくなった企業となんら変わりません。借金が増や
せる間は幸福です。一転し、返済を迫られれば、一夜で窮状です。

国も自治体も「国債と公債を増やすことができる間、または増加借
金をしなくても済む増税ができる間に限って、今の行政予算の規模
が維持できる。」

これは至極当たり前のことです。

しかし、政府(国)や自治体のこととなると、人々は「借金が増え
ても、今まで、なんとかなってきた。今後もなんとかなるだろう。」
という見方をしているのが普通です。

「なんとかなるだろう」思う国民や住民の態度を「不当だ」とは決
して言えない。過半の人は、文句は言っても、政府や市を厚く信用
しているからです。最後は、北海道や国が面倒をみることができる
という期待があるからです。しかし政府も、保障はするが、とどの
つまり保証はしていないと逃げます。

国も自治体も、財政の苦しさを国民や住民が分かるように(選挙の
際に判断できるように)、情報公開してきたとは言えないからです。

逆に内閣・中央官庁、そして市長・自治体が行政責任を問われる情
報は、隠してきました。

求められても公開を渋ってきました。
公開するときも、分かりにくく表示してきました。

住民も、借金であれ国からの補助であれ、予算がある間、この予算
と行政サービスがいつまで続くかを問題にはしなかった。
明日も、今日のような状態が続くとしてきた。

公共施設、道路、橋、ダム、市の設備ができるとき、財源が借金で
も、町の中で反対する人は少なかった。経済振興と失業対策として
歓迎してきました。

北九州市に住んでいたことがあります。20年(5期)の首長を務め今
期で辞める末吉市長は、旧国土省の土地局長から最初の市長選に出
るとき「自分は中央官庁にいた。阿修羅(あしゅら)のごとく、国
からお金を引っ張ってくる。」と朝食会で公約したことを覚えてい
ます。

ほぼ日本中の自治体が、80年代と90年代はそうしたことだったので
す。時は過ぎます。しかし予算の結果は残ります。残った負債は誰
が面倒を見るのか・・・

■4.夕張市の財政状況を要約すれば

多少面倒ですが、正確に見るため、夕張市の財政状況を見ます。

単式簿記の行政は、収入を「歳入」と言っています。
税金収入も借金(公債発行+他の借り入れ)も、同じ歳入です。

まず、この「歳入」という概念に問題があります。
歳入は、市(行政)の金庫に入る現金という意味です。

企業では、売上収入は収入と言います。借金と収入は別枠であって
借金は負債です。負債は、いずれ返済せねばならない。

家計簿でも所得と負債の区分くらいはするでしょう。小学生でも分
かるマネーの常識です。借金と収入を混同すれば、普通の人は生き
ては行けない。住宅ローン(負債)を借りて、わが世帯の財政も豊
かになったと感じれば、それは変でしょうね。

しかし行政の財政では、税収も負債も歳入です。国でも、国債発行
は歳入になります。ここが、行政の財政のおごった点です。

行政は現金収支が合えばいい。借金の利払いは「必ずできる」。
その理由は、徴税権がある行政だからとされています。

以下に、夕張市の歳入から示します。科目は、同類のものをまとめ
単純化しています。(2005年3月期:総務省の公開資料から)

▼歳入は194億円:うち一般財源59億円

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
地方税等   13億円( 6.7%):夕張市の当年度税収
地方交付税  46億円(24.7%):国から分割支給される税
〔一般財源小計59億円(30.4%)〕
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
使用料    8億円( 4.1%):市の施設の使用料収入
国庫支出金  14億円( 7.2%):国から受ける援助金的なもの
北海道支出金  3億円( 1.5%):道から受ける援助金的なもの
諸収入    100億円(51.5%):貸付金等の回収金
市債新規発行 11億円( 5.6%):夕張市債の当年度新規発行額 
   
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
歳入合計   193億円(100%):夕張市の全収入
(1人あたり換算で143万円)

数字だけでは分かりにくいと思います。歳入の内容を、短く付記し
ながら、見ます。(科目と内容は、他の自治体も同じです。)

【一般財源:税収に類するもの】
(1)地方税13億円
夕張市の13億円の地方税は、国税に含まない地方税(市町村民税)、
事業税、固定資産税や取得税、タバコ税、都市計画税等の32種の
細かな税目からなります。ゴルフ場利用税などもあります。

夕張市は、この地方税の収入が歳入の6.7%(13億円:住民1人あた
り10万円)と極めて少ない。

地方税の少なさが、「財政再建団体」になった主因です。(注)地
方税が少ない理由は市内の法人と個人の所得が少ないからです。

地方税収入13億円の、15倍(193億円)を歳出として使っているのが
夕張市です。

(2)地方交付税46億円
次は、46億円の地方交付税です。

法人税は、国税です。住民が払う所得税の大半も国税です。消費税
も5%のうち4%分(80%部分)が国税とされ、国庫に入ります。

【地方交付税の意味】
本来は地方自治体が直接に受け取っていいと思われる税も、一旦は
国庫(一般会計)に入れ、一般会計から財務省が自治体に還元して
いるのが「地方交付税」です。

地方交付税は、中央官庁が、全国自治体の行政に関与する権力の裏
づけです。国民から集めた税の分配が、財務省権力の根拠になるの
ですから変な具合です。自分に分配権があると思っているのでしょ
う。この地方交付税が、財務省が自治体を「保障(監視し指導)」
する根拠となる財源です。

1月30日の新聞では、国に地方交付税(国税)の不足分18兆円が、隠
れ借金(国債発行でなく民間金融機関からの借入れ)になっている
ことを、財務省が明らかにしています。

赤字が大きい夕張のような自治体には、財務省・総務省は、他より
多く地方交付税を還元しています。その分、関与が強くなります。

地方交付税は、大都市部の税を、経済力が弱い地方に分配する主旨
のものです。政党や政治家もこれに関与します。しかし、一旦与え
たものを減らすときは大変です。

以上の、
(1)夕張市が直接に徴収する「地方税等13億円」と、
(2)国(大都市部)から還元された「地方交付税46億円」の合計
を「一般財源」と呼んでいます。

この59億円を「一般財源(行政用語)」と言う理由は、これらが国
から自治体への交付税を含んだ「税収」に相当すると見ることがで
きるからでしょう。

(3)使用料8億円
市が所有する施設(公民館、公会堂、福祉施設、市営住宅、市が貸
与する建物等)を使うときの使用料の収入です。

(4)国庫支出金14億円
国から自治体に無償で給付される補助金等です。
夕張市では、地方税13億円より国庫支出金が多い。

国庫支出金が給付されるのは、国として行うべき事業を、地方が代
理で行うときです。石炭事業は、通産省がエネルギー政策として行
う国策でした。これも、夕張市は多い。こ

(5)北海道支出金3億円
北海道庁から夕張市に無償で給付されている補助金等です。

(6)諸収入100億円
夕張市が、銀行を通じ、市の農業者や中小企業に貸し付けた資金の
返済金と金利です。いわば、市が金融機関の機能を果たす。

この諸収入は、後で述べる「歳出」の中の「投資・出資・貸付金資
質93億円」とほぼ見合うものです。回収してはまた貸し付ける。

04年度は、1年で93億円を農業や中小企業または市の外郭団体に貸
し付け、当年度内に100億円を「元本の返済+金利」として受け取っ
たということになります。くるくる回っている資金です。回収が難
しい資金でしょう。

(7)市債11億円
夕張市が新たに市債を発行し、政府と金融機関から借りた借金です。
この部分が赤字による借金です。

借金(市債+借金)の残高は630億円です。住民1人当たりで490万円
です。

以上の合計193億円が、夕張市の全歳入です。税収とみなせる一般財
源59億円の、4.2倍に膨らんでいます。

▼目的別の歳出(2005年3月期)

歳出は、支出です。目的別に示すと、以下のような内容です。これ
で市の行政サービスと事業概要も、分かります。

議会費    1.6億円(市議会費用)
総務費    39億円(→(注2))
民生費    27億円(医療補償費、社会福祉費、生活保護費等)
衛生費     6億円(結核対策費、精神衛生費、環境衛生費等)
農林水産業費 1億円
商工費    49億円(商工業の近代化、工業団地、観光政策等)
土木費    39億円(道路、住宅、下水、河川、港湾、公園等)
消防費    4億円(消防署の費用)
教育費    7億円(教員総務費、市町村立の小中学・高校費)
公債費    20億円(市債の、当年度の元利返済金)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
歳出合計  193億円(住民1人あたり換算で143万円)

(注1)投資・出資・貸付金は、以上の目的別歳出科目の、それぞ
れに含まれています。合計が、93億円です。

(注2)総務費とは,総務関係職員の職員給与,教育費及び警察費
に係る職員以外の職員の退職金,庁舎の建設費,維持管理費のほか,
徴税に必要な経費,戸籍,住民基本台帳費,統計調査費など行政
活動で使う管理費です。実にいろんなものが「総務費」とくくられ
ていますね。

(注3)上記の歳出の中に含まれる、市職員関連の人件費は27億円
です。

閉山の後、市は観光の街を目指して施設を作り、全部が赤字になっ
たことが、財政が悪化した原因と言われています。その分は上記歳
出の商工費49億円に含まれています。

仮に、商工費49億円を全部ゼロにしても、歳出は144億円。税収の1
3億円の11倍です。

作った設備の厄介な点は、設備は放棄できますが、設備を作るため
に借りた借金は残ることです。しかも、利払いがある。だれがこの
借金の利払いと返済を負担するかということになる。

▼政府部門(行政)はデフォルトしてはならない

利払いをせず返済もしなければ「自治体のデフォルト(返済と利払
いの停止)」です。夕張市がデフォルトを起こせば、それは、他の
自治体の金融信用も破壊します。ヤミ起債を含め、負債が膨らんで
いる「他の自治体も同じ」ではないかとなる。

政府は、これがもっとも怖い。従って、「市の財政はなにがなんで
も再建」されねばならない。ダイエーのように「約5000億円の借金
の棒引き」を金融機関に求めるわけにゆかない。

それを行えば、国債についで信用があるとされている地方債が急落
し、204兆円の残高の、全部の金利が急騰します。

ここに、借金が、財政規模とアンバランスに増やしてしまった自治
体運営の苦しさがあるのです。

see you soon!

【後記】
無料版の配信が、とびとびになっていて申し訳ありません。頑張っ
て書きます。このテーマは次号で完結します。

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<301号:特別号:随想:チクセントミハイのフロー理論>
       2006年12月13日号

【目次】
1.(随想)「フロー:flow」理論について
2.内発的な動機づけ
3.何が欲求か?
4.自己目的の行為に、目的はあるのか?
5.挑戦課題と自分の能力の関係
6.外科医の手術:仕事の世界での喜び

<302号:フロー理論を参照しライフテーマを考える>
        2006年12月20日号

【目次】
 1.自己目標的行為:自己実現:アイデンティティ:無私
 2.目標と努力の相互関係
 3.2つの目標概念
 4.達成のありか
 5.自分の欲求が目標やライフテーマに転換する段階
 6.大きな目標:ライフテーマの発見

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