福島第一原発 吉田昌郎の、危機のリーダシップ(3)
This is my site Written by admin on 2013年8月10日 – 09:00
おはようございます。猛暑と洪水にまで至るゲリラ豪雨が、日本海
側を襲っています。原因は、偏西風の蛇行と言う。南海の、湿度を
大量に含んだ熱い空気が北へ行き、蛇行した偏西風で南へUターン
して、日本列島に向かって流れるとき、尾根で上昇気流になって大
気が冷め、含んだ水分を落とす。

なぜ蛇行したのか、天候は複雑系であり、わからない。多くの原因
と結果の連鎖が、複線で入り乱れるためです。毎年、夏と冬の天候
が、強烈になっている感じです。

福島原発の、1日に400トン増えて、一部は地下に流れ、多くはタン
クに溜めた高度汚染水42万トンの処理が、問題になってきました。

いつかはわからない廃炉まで、汚染水は増え続けます。賠償、除染、
廃炉までには10兆円を要すると言う。当然、東電は払えない。政府
の負担です。結局、税と上がる電気代としての国民負担です。

1998年からの金融危機のとき、政府が銀行に出した出資金は、13兆
円でした(りそなが最大で3兆円)。それに匹敵するのがこの10兆、
つまり消費税の1年分です。

本稿は<福島第1原発:吉田昌郎の危機のリーダシップ>の第3号
です。とても残念ですが、去る7月9日に、委細を語らず、脳内出血
で亡くなられた吉田氏の追悼を含めるものでもあります。

われわれがテレビで見ているとき、映像の届かない現場で、リーダ
シップがどう発揮されたかという観点から、人類が未経験の事故処
理に当たった人々の行動を見て行くのが目的です。

行動は自己犠牲的で、自分たちにしかできないという義務感からの
ものでした。給料をもらうから行うという仕事では、事故後の処理
は、とてもできるものではなかったのです。

このリーダシップは、経営におけるリーダシップと変わらないもの
です。

▼権力とリーダシップ

【権力というもの】
他人を動かすものには、2つがあります。一つは、権力(パワー)
です。権力は、ある主体が、別の主体に対して自分では望まない行
動であっても、強制して行わせる力です。服従させる力でもありま
す。

上司は命令する。部下は、それを実行するというときは、この権力
が使われています。権力の元になっているものは、会社では、仕事
の評価権と人事権です。

評価権は、学校の教師が、生徒の成績に点数をつけるようなことで
す。教師は、この評価権をもっているということから、生徒の上に
立ち、命令しています。

生徒は、いい評価を得たいということから、先生の指示や命令に従
う。会社では、上司が行う、部下の仕事の評価がこれにあたります。
この評価が、人事権につながってゆきます。

評価権より上のものが、人事権です。人事権は、部下に、仕事のポ
ジションを決め、昇進あるいは降格、そして解雇もさせる力です。
部下は、その人事権に従属しています。

会社では、自分では、部署を移ることや昇進は、できない。上司か
ら推薦をうけて、最終的には社長の承認(印鑑)で、昇進が決まる。
この人事権においては、課長は部下の、部長は課長の、役員は部長
の、部長は社長が人事権をもつという階級的な構造であることが一
般的でしょう。

このように、会社を経営するとき、上司が部下に行動を命じること
ができ、部下がその命令に服従するという権力は、部下の働きを上
司が評価し、部下の人事権ももつということから来ています。

株式会社は、マネー資本を元にして、こうした階級的な権力で経営
されてきました。階級的とは、役職が上になるに従い、権力の深さ
と範囲が大きくなるという意味です。組織は、権力の体系になりま
す。出世という言葉がありますが、これは、軍隊のように権力の階
段を上って行くことでした。「偉い」というときは、この組織内の
権力で上位であることを意味していました。

軍隊型の組織は、階級的で権力型のものです。なんだか、ブラック
企業風でもあります。軍隊では、上長からの突撃の命令があれば、
部下は拒否できません。逃げれば敵前逃亡になり、軍法上の犯罪と
されます。攻撃は、自分の命を懸ける自己犠牲的なものではあって
も、それは自発的なものではない。権力への服従の行為です。

                         *

福島第一原発では、誰かが原子炉に近づいて、水路パイプの弁を開
かねばならないとき、その実行者を吉田昌男所長が命じたわけでは
ない。

現場の、弁のありかを知る人のうちベテランが「自分たちしかいな
い」と自発的に手を挙げ、放射線と戦いながら突入しています。普
通の時は、立ち入り禁止になる高い放射線量です。

【リーダシップ型経営】
リーダシップには、適当な日本語がありません。ということは、わ
が国ではまだ定着していない。説明的に言えば、「率先して行動し、
人を引っぱる力」ということです。

リーダシップは、リーダー(引っぱる人)が持つべき権威を言いま
す。権威とはオーソリティです。権力型の命令からではなく、その
人が自発的に同意し、服従して、その行動をとるものがこの権威で
す。

その分野に精通し、専門的な知識において高いとき、権威があると
もいいます。人は権威のある人に服従しますが、それは、自発的な
ものであって、命じられたからではない。

リーダシップを日本語に直せば「(威嚇や権力ではなく)権威によ
って人を動かす力」でしょう。一言で言うならリーダシップは権威
です。

パワー      =権力=人に行動を強制させる力
*階級的な権力に基づく組織では、組織は、権限の体系になる。

リーダシップ=権威=ある方向に沿った自発的な行動を引き起こす
力
*リーダシップに基づく組織では、組織は責任と義務の体系になる。

これから成長する組織は、リーダシップ型です。理由は、命じられ
た強制労働より、自発的で自主的な労働が、より高い成果を上げる
からです。

リーダシップ型経営は、以下のような構造をもちます。

1.ビジョン・・・仕事において達成すべきことの全体目標
2.戦略・・・・・ビジョンを達成するための、各部署の方法
3.仕事・・・・・戦略を、それぞれの部署で手順化して実行する
4.管理・・・・・成果目標による管理(=マネジメント)

具体例で、言いましょう。ある食品スーパーの、全体ビジョンでは、
「顧客満足を高めることがわれわれの使命である」としているとし
ます。

戦略は、その顧客満足を高めるには、仕事として、何を、どうしな
ければならないかということになります。つまりビジョンを達成す
るための方法(仕事)が戦略です。このため、顧客満足を高めるに
は、自分は何をどうしなければならないかを、全員が考えることに
なるのです。

例えば、総菜部門でコロッケを揚げる仕事がある。コロッケを調理
して揚げる仕事も、「自分が揚げたコロッケを買って食べるお客様
の満足を高めることが仕事だ」ということになります。

これは、イン・ショップの、コロッケ屋のオーナーや店主のような
ものです。リーダシップ型組織では、現場のパートが、これを果た
す。ウォルマートが言った「店舗の中の店舗」がこれです。部門マ
ネジャーがその部門の経営者になる。

そのコロッケの、月間や年間の売上と利益が、ビジョンでは、抽象
的な顧客満足というものを計る成果(performance)の指標になり
ます。そのため、以下のような工夫をすることになる。

総菜部門の長は、コロッケの担当パートに命令するのではない。ど
うすれば、他店より顧客満足度の高いコロッケを提供できるかを、
パートと一緒に考え、担当のパートに仕事の方法として提案する。
一緒にコロッケを調理し、揚げることも行う。

こうすると、「おなじ目的で働いている」というチーム意識が高ま
ります。ここが、より高い目的(顧客満足)に仕えているというこ
とからの、リーダシップの発揮です。

権威は、ここから生まれます。上から命令することによって、では
ない。ここが、リーダシップが含む「率先」の意味です。古来から
言うよう、「寝ていて人は起こせない」。

(1)価格が決まっているため、限定されざるを得ない原材料費の
中で、どう分量し、配分、調味すれば、他店より美味しいコロッケ
になるか。
(2)油の質、温度、揚げる時間と美味しさの関係
(3)売り場の棚の残数がいくつになったとき、いくつ揚げれば残
数が少なく、常に揚げたてにより近いものを売ることができるか。
何時が、一番多く展示すべき時間か。

全部の要素を挙げることは、コロッケを専門的に知らないためでき
ませんが、「他店より顧客満足を高めるコロッケの提供」というビ
ジョンの観点からすれば、たぶん、大きなものだけでも、数十の要
素があるでしょう。

全部の要素で、「顧客満足を高めるには、***せねばならない」
と、必要作業を決めて行く。

リーダシップ型組織では、現場のパートの方々が、上司からの指導
とアドバイスを受けながら、「他店より顧客満足を高めるコロッケ
の提供」を実行します。この点で、リーダシップ型経営では、現場
が経営者とも言えます。上司は、命令者ではなく、アドバイザーで
す。

上記の1.2.3.・・・が満たされれば、顧客満足を高めることになっ
て、「コロッケという古い商品」が、「顧客満足が高いコロッケと
いう新しい商品」になります。この新商品で、地域の、コロッケ需
要は増えます。

北九州市小倉北区に住んでいたとき、集合住宅に隣接して、『まる
しょく』という地元大手食品スーパーの、本部と店舗がありました。
玄関の左では、タコ焼きを焼いて売っていたのですが、どうにも、
それは、美味しいものではなかった。ソースがしつこく甘く、ぱさ
ぱさで滋味がない。小学校までの味です。

大阪に住むようになって、敬遠していたタコ焼きを食べると、味も
舌触り別の次元と思えるように美味しかった。大阪が珍しい時期、
タコ焼きに凝ったくらいです。

北九州のタコ焼きと大阪のものに、タコ、メリケン粉、ダシ、卵、
ソース、青のりや鰹節などの原材料と原材料費に、大差があるわけ
ではない。調理、および焼く手順と、その仕上がりのイメージ(い
わばタコ焼きの完成ビジョン)がまるで違うのです。

このとき、食の新商品は、古来からあるものを、より顧客満足を高
めるものに変えることによって、いくらでも作ることができると思
いました。

タコ焼きの1人当たり消費量は、大阪、兵庫が、断然1位でしょう。
「粉もの」ともいうお好み焼き・焼きそば、たこ焼きの常設店は、
メーカーのおたふくソースによると以下です(2006年)。
http://www.otafuku.co.jp/laboratory/culture/data.html

全国では、1万9480軒で、6500人に1軒の割合です。大阪3449軒(人
口2500人当たり1軒)、兵庫2404軒(2300人当たり1軒)、広島1767
軒(1620人当たり1軒)、東京1324軒(1万人当たり1軒)、福岡県6
65軒(7600人当たり1軒)・・・屋台は含まない。

大阪、兵庫、広島の3県では、全国平均の3倍から4倍くらいの「粉
モノ」の消費があります。

とりわけタコ焼きの消費量が多い大阪では、屋台を含んで店舗が多
いと同時に、「たこ焼き器」のない家はないようです。小学生のと
き、子供から「うちには、なぜ、たこ焼き器がないの?」と聞かれ、
驚きました。友達の家に行ったとき、たこ焼きを焼いてもらったの
だそうです。東京や九州ではどうでしょうか? たこ焼き器のある
家はありますか?

「顧客満足の高い食」は、新しく作り得えます。ある食品スーパー
のコロッケが、とても顧客満足の高いものなら、その地域の人々の、
コロッケの消費は、他の地域の2倍になり得るでしょう。

階級型の組織では、コロッケを調理して揚げるマニュアルだけでし
ょうが、そのマニュアルの上に、リーダシップ型組織では、ポジシ
ョンにつけるとき、「他店より顧客満足を高めるコロッケを提供す
ることが、あなたの仕事の責任である」という与え方になります。

これは、あらゆるポジションに共通します。
顧客満足を、マニュアルの上に位置づけるからです。

以上が、より高い成果を上げる原動力になるのです。
成長を目指す組織は、リーダシップ型の組織に転換すべきです。

ドラッカーが、生涯かかって言い続けた経営は、階級型ではない、
リーダシップ型経営です。それを、成果目標による管理と表現した
のです。

本稿のテーマの、吉田昌郎の危機のリーダシップに戻します。観点
は、以上に書いたことだと意識しながら読んで下さい。今日午後1
時から、東京の青山葬儀場で、告別の会があるという。

顧客満足の高いたこ焼きを作ることと、吉田昌郎のリーダシップは、
構造が、同じです。たこ焼き屋のチェーンを行っても成功したでし
ょう。福島原発の6000人の現場を動かす勘どころが、わかっていた
からです。

東電という官僚型が極まった組織に、こんな人がいた。いや福島第
二原発にも、吉田昌郎氏とおなじような型の、リーダシップの人が
いるのかも知れません。

現場が、力を発揮するには、リーダシップ型組織が必要だからです。
リーダシップ型組織は、制度ではない。経営の、「有様(ありよ
う)」です。

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<668号増刊:福島第1原発 吉田昌郎の、
                               危機のリーダシップ(3)>
               2013年8月7日:正刊
【目次】

1.  1号機のメルトダウン:3月11日夕刻
2.  ベントへ
3.  菅首相が来てわめいて帰った:はき違えたリーダシップ
4.  ベントのGOサイン
5.  1号機の水素爆発

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【後記】
毎週、有料版のプロローグ部をお届けしています。参考にしてくだ
されば、幸甚に存じます。

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