追悼:ドラッカー:仕事ができる人の習慣(6)
This is my site Written by admin on 2005年12月31日 – 08:00

こんにちは、吉田繁治です。今年もあと1日、個人的に振り返れば
不十分なことが、多くありました。ここからまた、次の年の課題も
生まれます。時間は、予想外に短いことを感じます。

▼計画について想う

計画は、守らないために立てるのではないかとすら思えます。今年、
できなかったことの言い訳として、新しい計画を立てるのではな
いか。(自分のことを言ってます。)

計画が、「明日実行する、だから今日は行わない。」という逃げで
あってはならない。

左に過去を思い出し、右に未来を想う。その真ん中が現在というの
が時間についての普通の感覚です。しかしこの感覚は、未来に向か
い姿勢としては、誤っているのではないか。

振り返ってみれば、いつも今日しかなかった。今日の中に、過去の
記憶も、未来の構想も含まれています。新年の1月1日、そして2
006年も2007年も、その時になれば今日のことになります。
明日は、いつまで経っても明日です。

例えば原稿を書くという仕事があります。書く前に、あれやこれや
構想します。

しかし、構想が不十分であっても、書くことを始めなければ、いつ
まで待っても、成果を作ることはできません。構想が十分であって
も、今日書き始めねば、ゼロです。そして十分に思えた構想も、消
えます。

書き始め、読み直し、考え、障害にぶつかり、調べ、考え、書き続
ける。構想は、書くことで必ず現れる予期しない障害によって、鍛
錬され、出来上がって行きます。構想も、書き終えたとき完成しま
す。

そして、書き終えたという事実から、必ず、また次の構想が生まれ
ます。あらかじめの完全な構想があって、それを満たすのが書くと
いう行為ではない。構想と書くことは、実は、同時進行です。書き
始めることによって構想が発展します。これが私の内観です。

こうしたことの、連続しかない。
これが、私の、伝えたいメッセージです。
書くこと以外にも、共通すると考えます。

ピカソは、ともかく絵を描き続けています。描く中で構想を作って
ゆく。モーツアルトも同じでした。イチローも中田英寿も、今日の
試合と練習の同時進行で、未来を作ることでは同じでしょう。

天才たちと自分を同一視はできませんが、学ぶことはできます。あ
らゆる天才は並外れて練習と実行をする人以外ではないことを思い、
突破口は、今日であることを感じます。

計画は、実行すべきことを未来に打っちゃることではなく、今日か
ら実行することです。始めればいい。そして成果目標を立てること
です。計画は実行すべきことの羅列です。成果目標を立てれば、実
行すべきことを、成果目標からの逆算で、明らかにできます。

[成果目標−現在の達成度]→成果を上げるために実行すべきこと

▼強み

前稿でとりあげたリカードゥの「比較生産費説」、いかがでしたか?

組織の中のポジションを決めるとき、「個々人の強みを組み合
わせる」方法として、長く参考になるはずです。自分が仕事をやる
ときも同じです。

注意すべきは「他の人と比較した上での絶対的な強み(絶対優位)」
ではなく、「個々人の能力の中での相対的な強み(相対優位)」
であっていいことです。リカードゥが、英国の綿布生産、ポルトガ
ルのぶどう酒生産の分業で証明しています。

比較優位を他の人にすんなりと説明できないときは、前号を読んで
ください。繰り返し読めば、知識になります。

知らない人に「説明できるもの」でなければ、知識とは言えません。
説明すれば、自分に分かっていない点が明らかになると同時に、知
識として強化されます。

知識労働、専門的作業、マネジャーに必要な「知識の更新と強化」
は、機械に例えると、設備の改善や更新に相当します。

今期、または今月、そして今日どんな知識を加えたか、それを意識
しておくことが必要です。

私のケースは幸運です。書いたり話したりすることを、自分の知識
の強化と確実化の機会にすることができます。あやふやなことは説
明ができず、根拠が曖昧(あいまい)であれば、相手が納得しない
からです。

高校の地理の教師が言っていました。「教壇に立ってから、細かい
地名までが記憶できるようになった。」皆が教壇に立てるわけでは
ありませんが、類似した機会は、意識すれば作れるはずです。

「13歳の中学生に説明ができなければ、本当の知識ではない。」
13歳は、脳が完成する年齢です。

本シリーズを振り返れば、以下の5項について、順に述べています。
(いずれもドラッカーが実践した方法です。読み込めば、そう感
じます。)

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1:常に、自分が何に多くの時間をとられているかを知ること。
2:常に、自分以外の外部に役に立つことに焦点を当てること。
3:常に、自分ができること、すなわち強みの上に、仕事を組み上
げること。
4:常に、自分の能力のうち、優れたものが何かを知り、その領
域で成果を上げることに集中すること。
5:常に、成果に焦点を当てて意思決定をすること。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

本稿は「人に機会を見ること」から始めます。その後「成果をあげ
るための集中」、「重要なことから始めること」、「意思決定の条
件」と続けます。

(注)本シリーズは、ドラッカーの代表的著作、『経営者の条件』
をたどり、考察を深める方法をとっています。引用部は<>で示し
ます。今年の秋に亡くなったドラッカーとの、言葉を通じた、仮想
対話のつもりです。

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   <223号:仕事ができる人の習慣(6)>

【目次】

1.人に機会を見る習慣
2.リーダーの役割は基準を上げること
3.成果をあげるための秘訣は集中である
4.生産的でなくなった過去のものを捨てること
5.優先事項を本当に優先にするには、劣後順位を決める
6.方法

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■1.人に機会を見る習慣

うちの社員も幹部もダメだと言うトップ、同僚の能力が足りないと
言う人、指示をする社長や上司がお話しにならないという社員が多
く目につきます。

こうしたことがまともに言われたことだとすれば、前提は2つです。

(1)自分は成果に向かって正しく実行している。しかし同僚、チ
ーム、上司、他の部署がダメだ。そのため成果があがっていない。

この場合は、「正しく実行しているのは自分」という、自身につい
ての「仮想評価」を基準にしています。

(2)もうひとつは、「理想的な会社」に比べれば、今の会社はダ
メだとする「仮想環境」との比較です。

▼評価

あらゆる評価には、意識的であれ無意識的であれ「基準」がありま
す。その基準に照らし、いい、悪い、優れている、劣っていると言
います。

問うべきは、基準がどこに設定されているかです。次に、評価が正
しいかどうかです。しかし一般に、こうした言葉が発せられるとき
は、基準も評価方法も、明確なものではありません。

【政治的言語】
こうした言辞は、どんなに専門的な単語が使われようが、要は、「
期待された成果をあげない自己の正当化」です。できないことの理
由を「政治的」に述べているにすぎない。

政治的とは、自分を非難されない立場におくための「かけひき」の
ための理由づけということです。

簡単に言えば、「自分は正しい、周囲やあなたが間違っている」と
いう表現です。野党が与党を非難し、自己を正当化する国会論議の
ようなものです。

▼姿勢

ドラッカーはどう見たか。

<同僚、部下、上司について「できないことは何か」ではなく、「
できることは何か」を見るよう自己統制(discipline)するならば、
強みを探し、強みを活かすという姿勢を獲得できる。>

姿勢(attitude)は、判断と行動のスタンス、あるいは態度のことで
す。つまりは、考え方の様式(style)です。習慣とも言います。

(注)組織に共有された考え方、判断、行動の様式を企業文化と言
います。組織の習慣と言っても同じです。

意識して、同僚・部下・上司ができること、つまり強みを見る。
大切なことは「意識して」という点です。

【再び習慣について】
習慣:習慣は、後天的に(意識的に)習得し、比較的に固定してい
て、少ない努力で反復できる行動様式。(広辞苑の定義:再掲)

習慣は、生まれつきの才ではなく「後天的」に意識して作ることが
できます。反復することによって、自分のものにすることができま
す。意識し反復する。そうすると、次第に、少ない努力で実行でき
るようになる。そして、習慣化すれば、行わねば居心地が悪くなる。
習慣こそが個性でしょう。

前稿で原理を述べた比較生産費説に従えば、誰にも、その人の中で
の「相対的な強み」があります。営業がダメな人は、緻密な考えが
できる人かもしれません。

ドラッカーが言う強みは、比較生産費で言う、個々人の中の相対的
な強みのことです。他の人に比較したときの絶対的な強みではない。
絶対的な強みをもつ人は、論理的には、世界にたった一人しかい
ないはずです。

しかし個々人の中での相対的な強みなら、全員がもっています。
つまりすべての人は、その人の中の弱みに比べたときの、強みを持
ちます。

▼実態

人ではなく、会社の製品別や部門別の業績でも、全部が弱いという
ことはありません。弱いものがあるから、それとの比較で強いもの
もあります。

そうした、「比較生産費的な」強みの発見の姿勢を、モノや人の見
方で習慣にすることです。

<(同僚、部下、上司、あるいは製品の強みを見ることによって)
成果を生む機会を育て、障害をつぶさねばならない>

<自分を含め、あらゆる人間に機会を見なければならない。強みの
みが成果を生む。弱みは、たかだか頭痛を生むにすぎない。弱みを
なくしたからといって何も生まれはしない。>

弱みを矯正しても、」到達点(ゴール)は、せいぜい二流のレベル
でしょう。

例えば私は、小学校1年のときから、走るのが遅いのです。一所懸
命に練習を続けても、到達点は、同世代の四流にもならない。最高
の到達点が100人のうち、90位でしょう。マイナスの成果とし
て、自己憐憫(れんびん)ならあるかもしれませんが・・・

▼成果をあげること

<弱みをなくすことにエネルギー(=時間・費用・努力)を注ぐよ
り、強みを活かすことにエネルギーを注がねばならない。>

現在の企業業績は、弱みがもたらすものではなく、強みが十分に活
かされていない結果であると見る姿勢を身につけることです。(重
要)

コンサルティングでも、他社と比較した弱みを直し、強みに転化し
ようとしてもうまく運ばないことが多いのです。

人や会社の弱みは、誰でもすぐ指摘できます。しかしそれを直すた
めに注ぐエネルギーとコスト(犠牲)は、膨大に必要です。仮に直
しても、成果はわずかです。

(注)学校教育も、個々人の強みを発見し、伸ばす方法に変わるこ
とを希望しています。生徒の能力を高めたことを、教師の評定にす
ればいい。

代わりに、強みを見る。伸びている製品群を見る。増えている顧客
と商品領域を見る。それを更に伸ばすのは、弱い部分を直すよりず
っと少ないコスト(犠牲と時間)で可能です。

それを伸ばすことによって利益を生み、弱み(赤字部分)をカバー
させる。前稿の比較生産費のモデルであった、英国とポルトガルの
方法と同じです。

■2.リーダーの役割は基準を上げること

リーダーとは集団の中でリードする人、つまり「先行する人」のこ
とです。組織のトップやエグゼクティブということではない。

エグゼクティブが仕事のリーダーである必要はありません。
エグゼクティブは、リーダーを配置することを任務とします。

▼集団とリーダーの性質

<人間集団の基準(standard)は、リーダーの仕事ぶりによって決定
される。従ってリーダーこそ、強みに基づいて仕事をしなければな
らない。>

最近、10代の女子プロゴルフの技術水準が上昇しています。
聴衆はそれを敏感に察知し、視聴率が急に増えています。

宮里藍は、若いプロの基準(standard)を上げたリーダーです。
彼女の登場によって、追随する人たちが次々に出てきています。

宮里藍は、日本女子ゴルフ協会のエグゼクティブではありません。
しかし彼女は、女子ゴルフ界に新しい基準を作るリーダーです。(
イチローや中田英寿も、高いレベルで、リーダーの役割を果たして
います。)

プロスポーツ選手の、成果とは何か? 
観客動員数の多さです。これが成果です。

高い技術は必要条件です。それだけではプロフェッショナルとして
十分条件ではない。目的を達するための必要条件と、成果を生むた
めの十分条件は、区分して考えねばなりません。

単に優れている(必要条件を満たす)のではなく、買われる技術、
売れる技術が十分条件です。

<人間の世界では、(先行する)リーダーと、平均的な人々の距離
は一定である。リーダーの成果が高いものなら、普通の人の仕事の
水準も上昇する。>

【距離は一定】
リーダーと普通の人の距離(成果の差異)は一定であるという観察
は興味深いものです。明証があるわけではないのですが、確かに、
世の中の事象(affairs)では、それが言えそうです。

周囲が、リーダーの仕事ぶり(performance)を近くで具体的に見て、
見習う(learningする)からでしょう。リーダーがその達成基準を
あげると、集団の達成基準も、それに引っ張られて(リードされて)
上がります。

▼各部署でリーダー的な役割の人

リーダーは、基準(standard)をあげる役割をもちます。
スタンダードは平均ではなく、高い基準の規範を言います。
規範とは模範になることです。

<従って、リーダー的な地位、すなわち仕事の基準(standard)を定
める地位には、高い基準を設定できる強みをもった人を配置しなけ
ればならない。>

なるほど、これが組織の成果を上げる人事、つまり人員配置のコツ
でしょうね。高い能力の人の成果の水準を、もっと高くすることに
よって、組織員の平均か合計での成果水準が上がると見てもいい。

【リーダーの意味】
ここで言うリーダーは、チームのマネジャーとは異なります。

チームや部署の中で高い水準の仕事をする人を、リーダーと呼んで
います。一般的に言えば、どんな会社でも、20人の集団や部署が
あれば、そのうち1人(最上位の5%)は、高い成果の仕事をして
いるはずです。これは5%原理と言われます。

マネジャーは、そうした各作業のリーダーがいるチームの成果を上
げることを任務とする人です。マネジャーはエグゼクティブの範疇
(はんちゅう)に入ります。

▼弱みは、強みの発揮の障害にならないかぎり無視する

<リーダーについても、その人間がもつ最大の強みに焦点を合わせ、
その強みの発揮の妨げにならないものであるかぎり、弱みは関係
ないものとして無視しなければならない。>

大切なことは、強みの発揮の妨げにならないものなら、弱みは関係
のないものとして「無視しなければならない」ことです。

エグゼクティブやマネジャーは、部下と競争する人ではない。
競争相手と見れば、その人の弱みに目をつけたくなります。

しかし基準を上げるリーダーである人に弱みの指摘をし、その克服
を義務づけることは、強みを消すことにもなるかもしれません。

うちの社員はダメだというトップ、エグゼクティブ、マネジャーは、
心の奥で、部下を自分の競争相手と見ているのかもしれません。
減点法の評価がこれです。能力と成果の加点法評価に変えねばなら
ない。

減点法は、部下がダメだから、自分がトップとしての資格があると
いう自己肯定です。これは、相手の弱みを強調し、自分をそれより
高いところに置くための、政治的な言葉でもあります。

▼トップ、エグゼクティブ、マネジャーの任務

<エグゼクティブが果たすべき任務(task)は、人間を変えてしま
うことではない。むしろ、個人のもつ強み、活力、意欲を動員する
ことによって、成果をあげる組織やチーム全体の能力を、個人での
仕事より何倍も高めることである。>

人の性格を変えてしまうことはできません。仕事のやり方を、すっ
かり変えることもできない。可能なことは、強みを活かすことです。
強みを強化することです。それによって、組織の成果を高めるこ
とです。

比較生産費の原理を知った後は、このことがはっきり分かるはずで
す。

実行家は、どこにもない理想的な仮想組織や優秀な人を夢想するの
ではなく、現実的でなければなりません。

組織を個々人の強みの組み合わせで作り、それによって成果を上げ
るよう導かねばならない。それが、トップ、エグゼクティブ、そし
てマネジャーの任務です。

ここまで読んできた皆さんには、上記のことは、すでに自明になっ
てきたことと思います。分かりにくい「管理職(トップ・エグゼク
ティブ・マネジャー・スタッフ)」の任務の内容も、明らかになっ
たでしょう。

次は、成果を上げることです。

■3.成果をあげるための秘訣は集中である

集中は、コンセントレーションです。選んだ特定のことに、エネル
ギーを集めることです。二つのことを、同時にはやらないことです。

▼ひとつのこと

<成果を上げるエグゼクティブは、もっとも重要なことから始め、
しかも一時にひとつのことだけを行なう。・・・ひとつのことにつ
いてさえ、成果をあげる仕事をすることは難しいという事実が、集
中を必要とする理由である。>

状況に任せれば、「あれもこれも」となります。能力があると自認
する人ほど、多くのことを同時に行なうという落とし穴に陥る。
そして、手をつけたすべてに、凡庸な成果しか出せない。

どこに違いがあるのか?

▼時間の見積もり

<成果を上げられない人は、まず第一に、ひとつの仕事に必要な時
間を過少に評価してしまう。>

このくだりを読んだとき、自分のことを指摘されているような錯覚
に陥りました。反省すれば、私は必要な時間について過少な見積も
りをしがちです。

【理由】
<(その理由は)すべてがうまく行くと期待するからである。しか
し誰もが知っているように、何もうまくゆきはしない。予期せざる
ことが常に起こる。しかも、それら予期せざることは、ほとんど常
に愉快なことではない。>

【最近のこと】
最近のことを言います。カテゴリー・マネジメントについて、米国
のブライアン・ハリスの『8つのステップ』に代わる実践的な方法
を起案し、開発しています。

いつもの方法で、提案を数十枚のペーパーにし解説しています。

私の頭の中では、営業利益を上げる商品構成と品揃えの改善に有効
な方法が、イメージされています。試作されたプログラムとその内
容を見ると、提案した概念が含まれてはいました。しかし、どうに
も違います。

原因は2つです。
(1)もっとも大きな原因は、概要書が、解釈で補うべき不完全さ
をもっていたことです。
(2)2番目は、概要だからという理由で、細部を無視し、骨子だ
けを書いていたことです。

試作のプログラムを作った人に対し、私は、不完全な概要設計書を
渡したことになります。説明も適切でなかったことになる。申し訳
ない思いです。

成果へ至る過程への見通しへの甘さと、稚拙さが招いた結果です。
チームが使った時間はコストです。私は、相手に無駄なコストを使
わせてしまったことになります。

もう一つの理由は、自分のアイデアの面白さに、関心を持ちすぎて
いたことです。皆が、容易に理解すると思い込んでいました。

やり直しです。骨子のみではなく、細部でも完全に補ったカテゴリ
ー・マネジメントのストリーと帳票を、2週間の間に作ります。
(12月初旬にほぼ完成しました)

「必要な時間」に対する私の過少見積もりが招いた結果です。
反省しなければなりません。反省は原因対策を立てることです。

▼必要なこと

<成果を上げるエグゼクティブは、(実行の過程での障害の発生を
予測するから)実際に必要な時間以上に、時間の余裕を見る。>

私には、これができていませんでした。あちこちでの、異なるテー
マでの講演に慣れすぎたからかもしれません。

<(一般にエグゼクティブは)同時にいくつかのことをしようとす
る。その結果、手がけている仕事のどのひとつにも、必要なまとま
った時間を割けない。そのため、ひとつの仕事が問題にぶつかると、
すべてがストップしてしまう。>

この感じはよく分かります。いろんなことを同時に行なっていると、
ひとつのことがダメになりそうなとき、他のことも成果があがら
ないと思えてしまうのです。

心の中では、ひとつひとつが中途半端であることが分かっているか
らでしょうね。

では、どうしなければならないのか?

<成果をあげるエグゼクティブは、多くのことをなさねばならない
こと、しかも成果をあげねばならないことを知っている。従って、
彼ら自身の時間とエネルギー、組織全体の時間やエネルギーを一時
にひとつのことに集中する。しかももっとも重要なことを最初に行
うべく、集中する。>

時間は有限な資源です。時間は制約条件です。

時間をかければ、いいということではない。しかし時間がないとい
うことが、成果に至らないことを多く作ってしまうのは事実です。
仕事は、アイデアではない。

実行する方法、人、作業、組織を作らねばならないのです。意思決
定はアイデアで行なわれます。しかし、アイデアから、作業と方法
を作らねばならない。これには、膨大な、人手と時間を要します。

意思決定すれば、現場が実行できるということではない。
ドラッカーはどんな方法をとってきたかを見ます。

■4.生産的でなくなった過去のものを捨てること

<(生産的なことに)集中するための第一のルールは、もはや生産
的でなくなった過去のものを捨てることである。>

時の流れにまかせれば、職位が上がるにつれ、目前で行なうべきこ
とが増えます。

▼捨てるものの評価基準

どんな基準で、捨てるべきものを判断するのか?

<自分と部下(associates)の仕事を見直し、まだ行っていないこ
とについては、「(成果への見通しと照らし)今これに手をつける
べきか?」と問わなければならない。>

過去から引きずってきたことについて、継続するべきか、やめるべ
きかを評価することです。

<答えが(成果をあげるために)無条件なイエスでないかぎり、そ
の仕事はまったくやめてしまうか、大幅に縮小すべきである。少な
くとも、もはや生産的でない過去のもののために、追加の資源(時
間とコスト)を投じてはならない。>

これをまともに実践するのは、難しいことです。過去に着手したこ
とが、成果を生まないと判断されるなら、直ちにやめること。

今まで、過去を守って、新しいものを付け加えると考えていました。
しかしそれでは、両方が十分な成果を生まない恐れがある。いや、
確実にそうなる。

▼新しいものには実行過程で障害がある

<成果を上げるエグゼクティブは、(実行の過程での障害の発生を
予測するから)実際に必要な時間以上に、時間の余裕を見る>とい
うことを考慮に入れれば、成果の期待できない過去からのことに時
間を使う余裕はないと言えます。

これから行なうべきことへの甘い見通しが、過去からのことをその
まま引きずる理由でしょう。

▼過去に成功をもたらしたことの再点検

<完全な失敗を捨てることは、難しくない。完全な失敗は、自然に
消滅してしまう。しかし昨日の成功は、非生産的となったあとも生
き続ける。>

要所はここです。過去に成功し成果をもたらしたことのうち、今は
もう成果に対し生産的でないこと、生産的になる見込みのないこと
を、「直ちに」捨てること。

過去からのことは、やめるという決定をしないかぎり、継続すると
いう決断をしていることになります。赤字店、赤字商品、赤字工場、
赤字部門、無駄な部署、過去からの継続は、数限りなくあります。

▼更に危険なことは・・・

<更にもうひとつ、むしろそれら(=今成果のあがっていないこと、
成果のあがる見込みのないこと)よりもはるかに危険なものがあ
る。本来うまく行くべきと思えながらも、なぜか成果のあがらない
活動である。>

長期的に見て成果をあげるはずだと言うのは、独善あるいは勝手な
確信だけであることも多い。(注)成果があがらない原因が分かっ
ていて、原因対策を打てるならいい。

そうではなく、成果があがらない原因がはっきりせず、いずれ、時
の流れで成果はあがるはずだと考えることは、企業の将来にとって
致命的な誤りを生みます。

<(倒産のない)政府機関の官僚主義に対し、文句を言う企業のト
ップも、自分の会社では必要のない規則を増やし、決定を遅らせる
にすぎない調査を命じ、諸々のリポートや活動のためにスタッフ部
門を使っている。そして彼自身が、昨日の陳腐化したもののために
自分や他のトップマネジメントの時間を使っている。>

▼新しいことに対し必要な準備をする

<あらゆるエグゼクティブが知っているように、新しいものに易し
いものはない。新しいものは必ず問題にぶつかる。従って新しいも
のには、悪天候に入ったとき切り抜ける手立てを、最初から講じて
おかなければ、失敗を運命づけられている。>

なるほど、数年毎に新しいことに挑戦し、エネルギーを集中したド
ラッカーだからこそ言えることです。必ず、予期できない障害があ
るというのは、新しい仕事の前提にしておかねばなりません。

ここまで来て、ドラッカーの仕事と自分の仕事の深さの違いがはっ
きり分かりました。私は、表面をなでるような仕事しかしていない。

そのため、徹底すればぶつかったはずの問題にすら気がついていな
かった。気が付かねば、障害もないと認識されてしまうのです。

<自ら成果をあげることを欲し、組織が成果をあげることを欲する
エグゼクティブは、常にあらゆる計画、活動、仕事を(短期・長期
の成果に照らし)点検する。彼は常に、「これは今でも価値がある
か」と自問する。もし答えが「ノー」であるならば、彼自身の仕事
の成果と組織の業績にとって、真に意味のある仕事に集中するため
に、それらのものを捨ててしまう。>

<私の知るかぎり、アイデアが不足している組織はない。創造力が
問題なのではない。そうではなく、折角のよいアイデアを実現すべ
く仕事をしている組織が、あまりに少ないことが問題なのである。
皆が、昨日の仕事に忙しすぎる。>

アイデアだけなら、どんなセミナーに行っても得られます。ニュー
スと同じように、実行が稀なことだからアイデアになる。

▼優先事項に集中するために廃棄のルールを作る

必要なのは、仕事の計画的な廃棄です。

毎年、エグゼクティブが抱えている20%〜40%の仕事を廃棄す
るというルールを作って、その枠によって点検すれば、経営資源
(人、組織、マネー、設備)の有効活用を図ることができるでしょ
う。

20%は全くの無駄があるはずです。あと20%は、過去に成功し
たことではあっても、今も将来も意味のないことがあるはずです。

創業者や社長が始めたことであっても、アンタッチャブルな領域に
してはいけない。実行するのは、幹部や社員だからです。

成果があがらない仕事ほど、担当するものにとって徒労感と消耗が
残るものはないからです。徒労と消耗は、人を成長させません。

例えば5年間も赤字店にいた店長は、容易には回復できないダメー
ジを受けています。その後黒字店に移籍させても、黒字店を赤字に
してしまうことも多いのです。

■5.優先事項を本当に優先にするには、劣後順位を決める

マネジメントでは、実行すべきことに優先事項を決めます。
これは普通のことです。

しかし新しいことを優先事項とするときに、エグゼクティブが同時
に決めねばならないことは、行なってはならないことの順位、つま
り「劣後順位」だと言います。

▼有限な時間

時間は有限です。制約条件です。誰にとっても、自分の時間を増や
すことはできない。

こうした制約条件の中で優先事項を決めれば、結果はどうなるか?
新しく決めた優先事項が、十分に実行されないという結果を生み
ます。

<ともかく仕事は、利用できる時間にあわせて行なわれる。(従っ
て新しいことの)機会も、実務を担当する有能な人間が使える時間
にあわせのみ、実行が行なわれることになる。>

一般に有能な人と見られている人には、仕事が集中します。彼は、
短時間でそれらに辻褄(つじつま)合わせ、片付るかもしれない。

新しい仕事も、古いものから生じる問題解決も、有能な人に集中し
ます。しかし前述したように、<あらゆるエグゼクティブが知って
いるように、新しいものに易しいものはない。新しいものは、必ず
問題にぶつかる。>

▼劣後順位の決定

優先事項の決定だけでは、その有能な人たちが問題解決のための時
間が取れないことになります。そのため、途中で放棄され、成果と
して結ばない。

<いかなる仕事も、組織の行動や姿勢(そして慣習と定型作業)に
ならないかぎりは、完結しない。いかなる仕事も、誰かが自分の仕
事として引き受け、新しい方法で行なう必要性と、新しいものを行
なう必要性を受け入れなければ始まらない。>

従って優先事項を新しいものにするときは、同時に、取り組むべき
ではない仕事の決定が必要です。

<エグゼクティブが本当に行なうべき決定は、優先事項を決めるこ
とだけではない。優先事項の決定は、(未来に向かうことだから)
容易である。(ところが未来に向かって)集中できる時間を作るこ
とのできるエグゼクティブがあまりに少ないのは、「劣後順位」の
決定すなわち取り組むべきではない仕事の決定と、それを守ること
が至難だからである。>

▼状況に流されれば、劣後順位の決定と実行は困難になる

なぜ、優先事項の決定とともに(物理的時間で)必要な、劣後順位
の決定と遵守ができないのか?

<(経営の環境や経営の状況からくる)状況の圧力は、常に、(1)
将来よりも過去に起こったものを、(2)見えない将来の機会よ
りも起こった危機を、(3)そして外部に実在するものより組織の
内部で見えるものを、(4)更には、将来に向かって意味あるもの
より今切迫したもの解決を優先するからである。>

行なわねばならないことという決定方法では、優先事項が出てくる
だけです。優先事項を実行するには、同時に、やめるべきこと、後
回しにすべきことを決めねばならない。

■6.方法

しかし、劣後順位を決めることが至難なら、どうしたいいのか?

<エグゼクティブの本来の仕事は、昨日に由来する危機を解決する
ことではなく、今日と違う明日をつくり出すことである。(明日の
問題は切迫していないから)常に後回しにできる仕事である。とこ
ろが今日の状況の圧力は、常に昨日の問題を優先することを迫る>

過去に由来する問題は、今日の解決を迫ります。状況に流されれば、
常にそうなる。方法がないではないかと思えます。

「明日に由来する危機」とは何か?
 鍵になるのはこの言葉の理解です。

過去に行ったことから生じた危機やは、今、明らかになっています。
そして今日、あるいは今月の、切迫した対応を必要とします。これ
は、誰にとっても分かることです。これが「昨日の問題を優先す
る」ということです。

しかし2年後の危機は、今は明らかになっていない。1年後、2年
後または5年度の未来に、大きな危機になるだろうことは何か? 
今から行わねば、危機になることは何か。あるいは、機会損失にな
ることは何か?

未来への対策は、後回しにできます。危機や問題は、まだ現れてい
ないからです。業界や会社内の誰も、気がついていないかもしれな
い。しかし未来への対策を行わねば、危機は必ず現れます。

「今は問題がないが、放置すれば、2年後は危機になって現れる・
・・」 その兆候は、実は、誰でも感じているはずです。エグゼク
ティブは、そうした未来の危機への対策を、優先せねばならないと
ドラッカーは言います。

新製品の開発、新業態の開発、新しい情報システム、未来へ向かう
人事、将来は必要になる組織、そして知識や技術、こうしたものは、
現在のことに変革を迫るものです。明日の成果へ向かっての、必
要な変革、あるいは革新、これに焦点を絞らねばならない。

そう、未来への投資です。投資は、現在のキャッシュフロー(また
は利益)の減少になります。未来への投資を控えれば、最高益も出
るかもしれない。しかし最高利益の時とは、未来投資が不足し、し
ばしば、停滞や業績低下の始まりでもあるのです。

決断が仕事の責任であるエグゼクティブが、過去を守ることに終始
していれば、数年後には、もうその過去が守れない。

<集中とは、「真に意味あることは何か」、「もっとも重要なこと
は何か」という観点から、時間と仕事について意思決定する勇気
(courage)のことである。そしてこの(明日の成果へ向かっての必
要な変革への)集中こそ、エグゼクティブにとって、時間と仕事に鞭
打たれる従者となることなく、逆に時間と仕事を支配する唯一の方
法である。>

未来の成果に向かって集中するには「勇気」がいるということに着
目すべきです。その方法とはどんなものか?

(1)過ぎ去った過去より、今日と違った未来を重く見る。
(2)起こった問題の解決より、未来の機会に焦点をあわせる。
(3)横並びでついて行くのではなく、先行して方向を決める。
(4)安全で簡単な商品開発より、明日の大きな成果を生む技術と
   事業のイノベーションを選ぶ。

これらのことは、起こった状況からの選択ではなく、将来を作る意
志が選ばせることです。未来を選ぶ勇気と言えます。

この4項が、優先事項です。優先事項に仕事の時間をとるためには、
劣後順位を決めねばならない。これは、自らに強制する勇気だと
ドラッカーは言います。

確かに勇気です。決断は、確信をはらませた勇気からしか来ない。
過去の事実を分析すれば、決断ができるというものではない。これ
は経験上からも言えます。

あらゆる情報を分析すれば、正しい意思決定ができると考えていま
した。しかし、そうではなかった。

まず「あらゆる情報は集まらない」のです。加えて、情報を集めれ
ば集めるほど、情報の意味が多義的に混乱し、最後は分からなくな
ってきます。不十分な情報は問題ですが、情報の過剰は却って思考
の混乱を生みます。そして、考えても後回しにすれば、それは否決
です。

情報は意思決定の参考にはなります。しかし決断は、状況を見極め
て、意志によって跳ぶことです。

未来は、向こうからやってくるのではない。未来は、人間の意志が
作ります。新年は、単なる地球の回転です。新年を未来にするのは、
人の意志です。

人は環境を選ぶことはできない。家族、周囲、会社、業界、そして
地域、日本、世界、現在という環境は与えられる。しかし人は、そ
の環境の中で、自分自身の歴史を作ります。自分の意志によって・
・・

年の終わりと、明日からの新しい年の始まりにあたって、以上のよう
なメッセージを、お届けします。

【後記】
新年の第1号は、「意思決定の条件と方法」をとりあげます。意思
決定するのはトップマネジメントだけではありません。範囲は狭く
ても、人は皆、日々意思決定をしています。定型作業においてすら、
意思決定と判断が必要です。

どうか、いいお年をお迎えください。お送りする論考が、読者の方
々の、何かの場面での参考になっているとすれば、とても幸せです。

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<249号:2006年の経済の焦点(1)>
   2005年12月28日号

【目次】

テーマ1:国内:増税は?
テーマ2:国内:金利が動き出す06年
テーマ3:国際:世界の物価と中国
テーマ4:基準:ゴールド価格が基準と見ることができる
テーマ5:国内:高齢者医療費負担の増加は?
テーマ6:国内:長期的な人口の減少は?
テーマ7:国内:日銀の量的緩和の解除は?

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