ビジネス知識源:前編:グローバル・デマンド・ビジビリティがわが国産業再興のキーポイント(2)
This is my site Written by yoshida on 2011年2月8日 – 15:15

おはようございます。1月20日に同時に送った前2通で、製造ではア
ップル社、小売りではウォルマートが構築し実行したサプライ・チ
ェーンで、日本の産業全般に、2000年代の遅れがあること指摘しま
した。

サプライ・チェーンは、言うまでもなく、生産から流通までを、ム
リ・ムダ・ムラを排除し、コストダウン(最適化という)する方法
です。最適化は、営業利益に対し、各段階の必要在庫を適量化する
という意味です。

システムは、優劣は別にして1990年代後期から主に米国のソフト・
ベンダーから紹介されていました。各種のセミナーがあったのでご
記憶の方も多いでしょう。

しかし、わが国の多くの企業では、サプライ・チェーンを、コンピ
ュータ・システムの購入として理解し、業務の方法改革として考え
なかったことに問題があった。情報システムは業務の支援を行うも
のです。業務を変革しなければ、システムは活きません。

サプライ・チェーンには、2つの面があります。

【(1)ロジスティクス】
ひとつは、需要プル型のサプライ・チェーンの実行、言い換えれば
ロジスティクスです。

ロジスティクスは、商品(または部品)の需要予測数(使用予測
数)に対し、最適量の在庫を補充する活動です。最適量をどう予測
し、発注、在庫するのか、現場業務の課題になります。

最適ロジスティクスは、会社で実行できているかどうかは別にして、
ロジック(論理)には、完成した姿があります。サプライ・チェー
ンにおけるロジスティクスは、論理化され、ソフトウェア化されて
います。

(注)ソフトの優劣は、大きくあります。システムはあっても、わ
が国の実情では、サプライ・チェーン・ロジティクスが実行できて
いない会社が、実に多いことは否めません。

【(2)商品計画】
もうひとつは「商品計画」です。例えば小売業は、店頭で商品構成
(棚割りともいう)をして、販売します。

商品構成計画が、サプライチェーンでの商品計画に当たります。製
造業では、店舗の商品構成に匹敵するものとして旧製品、新製品、
開発計画のミックス(構成)と販売予測があるでしょう。卸売業で
は、小売業と類似する商品構成があります。

後述しますが、商品計画(商品構成)には、世界的に見ても、まだ、
どうすべきかのロジックはありません。ロジスティクスのもとにな
る各品目の売上予測をするには、まず、その品目の構成(ミックス
:商品構成)の計画が必要です。(注)試行としては「カテゴ
リー・マネジメント」があります。

商品構成→品目の売上予測→在庫と調達のロジスティクス、です。

当方の観察(日米で約20年:数千店)から言えば、大型店の総合型
ディスカウント形態ですが、商品構成を論理化している点では、ウ
ォルマートがナンバーワンでしょう。自信をもって言えます。論理
化すれば、商品構成もコンピュータ化ができます。ウォルマートの、
商品の棚割り表を見て、以上を思ったのです。

ウォルマートのスマート・システムを設計した主任技師ウェスター
マンも、『ウォルマートのデータ・ウエアハウジング(2001)』で、
商品構成の論理化に触れています。

【季節サイクル】
店舗の商品構成は、一般に、季節のサイクルである3ヶ月で更新し
ます。わが国では、四季と産物の変化が、他国より大きいという条
件のため、商品構成の更新割合が米国より大きくなります。

特に食品では、夏と冬は、食べるものが激変します。これは米欧に
はないことです。典型は、タンピン・カンリ法として需要プル型の
棚割と在庫をするコンビニの、夏と冬の商品構成の変更です。

四季の大きな変化は、3ヶ月単位で作られる新商品が、わが国で、
他国よりはるかに多い原因でもあります。体感気温では、夏は赤道
直下のシンガポールより暑く、冬は北国の寒帯より寒い。

この時重要なのは、温度計の気温ではなく、湿度と関係する体感気
温です。俳句でも季語がある理由です。何事でも、時期はずれは
「間抜け」とされます。これがわが国の、購買だけに限らない行動
文化です。

米国の店舗より、商品計画が難しくなる要因でもあります。1980年
代に確立したIY堂の、高頻度で少量発注をするタンピン・カンリも、
大元は四季の激しい変化から来ていると感じるのです。

この特質のため、米欧の、店舗のデマンド・チェーンにおける商品
計画より、わが国では、商品の変化対応における精度が高くなる必
要があります。ウォルマートには理解できない点かも知れません。

参考のため、開発輸入(SPA型)のデマンド・チェーンであるユニ
クロのWEBの、3ヶ月サイクルの新商品数を見てください。季節の新
商品(商品更新)の多さは、わが国の気候要因から来ています。他
方、例えばサンフランシスコやロスは、年中、温暖です。このため、
店頭商品の季節要因での変化は少ない。
http://store.uniqlo.com/jp/store/home/

商品構成の更新は、季節で商品が50%以上も変更されるファッショ
ン以外では、ほぼ13週単位(3か月)での
・継続販売商品の決定(約80%)、
・カット商品の決定(約20%)、
・新規商品の導入(約20%)です。
4週単位では、これより小幅な、更新になります。
(注)上記の80:20は経験的なものですが、標準偏差の原理には沿
っています。。

店舗で、個々の商品が売れる原因、売れない原因は、実に多様です。
要因の数理化は困難です。しかし商品計画のためには、売れる要因
を仮説化する必要がある。今回、「売れる要因」を、参考のため、
まとめてみました。

以降で、サプライ・チェーンにおける店舗の商品計画から見て行き
ます。本稿では、(たぶん)世界で最初と思いますが、商品計画
(言い換えれば商品構成計画)を決める要因を、定量化します。

実際の商品構成の指導における経験と、結果である売上から検証し、
仮説としたものです。

商品構成は、わが国130万店(年商総額100兆円)で試行錯誤が行わ
れているだけで、ロジック(論理)がない。商品構成の論理化は、
研究課題としていることの一つでもあります。

サプライチェーン、デマンドチェーンでは、上流のメーカー・卸も
店舗の商品計画(商品構成)に関与すべきです。花王は、P&Gの方
法を真似て、店舗の商品計画に強く関与しています。
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<252号:グローバル・デマンド・ビジビリティ(GDV)が、
        日本産業の再興のキーポイント(2)>
         2011年2月08日

【目次】
<本前編>
1.店舗で商品が売れる要因への経験的な仮説

<引き続き送る、後編>
2.売価要因(25%)
3.世帯所得が、売れる価格帯を決める
4.米国には、現在の日本と似た10年があった
5.1980年代のドル高と、オイルショック
6.日本の店頭価格も約半分に下がった
7.結論:これからの価格政策
8.売価要因25%

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■1.店舗で商品が売れる要因への経験的な仮説

店舗で商品が売れる要因を、仮説的(及び経験的)にまとめました。

店舗立地と面積、部門面積、駐車場、競合要因は、与件(変更のな
い条件)とします。店舗が作られたとき、決まっているからです。

部門面積は、開店後の運用で変更できます。他店との競合要因は、
商圏内への新規出店や退店のありなしと、他店の価格を含む、商品
構成の変更及びプロモーションで、変化しています。競合要因につ
いて、影響をどう定量化するか研究課題です。

部門は類似商品を集めた(アソートした)もので経営単位、言い換
えれば営業利益管理の単位。部門の営業利益=売上高×粗利益率-
(部門の直接費+間接費)です。

アソート(原義は、異なる要素の盛り付け)は、後述するカテゴ
リー構成です。実に、いろんな用語の定義が必要です。小売業は、
非科学にとどまっているからです。科学化(=定量化)しないと、
業務システムにはならない。サプライ・チェーンのロジスティクス
(在庫の数量管理と物流)は科学化されています。

(注)サプライチェーンは供給側(メーカー・卸)から、デマンド
チェーンは店舗側から言うものですが、両者は、「メーカー~卸~
店舗」の全体システムでは一致します。

【5要因】
店舗の、部門売上を決めるのは、
1.品揃えの豊かさという要因(40%)、
2.売価要因(25%)、
3.プロモーション要因(15%)、
4.サービス要因(10%)、
5.その他の要因(10%)と想定されます。

括弧内の%は、当方の経験的な仮説です。(注)顧客が自分で商品
を選んで、レジで支払うセルフ販売の時です。耐久財や衣料等の接
客販売の店舗では、接客の優劣という要素が入ります。接客とは接
遇と商品説明、及び顧客にとっての最適商品の推奨です。

以降で、順に見て行きます。サプライ・チェーンの中で、店舗が作
る「商品計画」がどうあるべきかを、探索するためです。

ロジスティクス(最適量の商品補充)では、既存ソフトがあります。
「商品計画」では、ロジックを作った標準ソフトは、全くない。商
品計画は、価格付け(=価格政策)を含む、品揃え計画です。

(注1)店舗が商品価格をつけることが一般化したのは、わが国で
はずいぶん遅く1990年代からです。米国では、その約60年も前から
でした(シアーズがその先頭でした)。

(注2)わが国で90年代以降、百貨店が、売上を大きく減らした一
因は、小売業が価格を付ける時代に向かっても「メーカーやベン
ダー定価」での販売を行ってきたことです。

「自主品揃え(自分での商品構成)」を行っても、ベンダーへのフ
ルサービス依存をやめ、価格付けを百貨店が行えるようにならない
と、再興はないでしょう。低いテナント料でSPA型の専門店を入れ
るしか方法はないとも言えます。その上で、GMSとの差異化を図る。
この10年、百貨店に買い物に出かける回数が増えた顧客数は、果た
して商圏の何%でしょうか。

▼1.品揃えの豊かさという要因(売上を決める要因で40%)

「品揃え」は、部門の棚の品目構成を言います。商品構成と類似し
ますが、正確には、商品構成は、価格要素(価格帯とプライスポイ
ント)を加えた品揃えを言うので、品目の構成では「品揃え」が適
語です。横軸に価格をとり、縦軸にそれぞれの価格の品目数を示し
たものを「商品構成グラフ」と言っています。

商品計画を単純に言えば、
・どんな商品を、
・いくらの価格で、
・どう陳列するかということです。

商品構成(=商品計画)の手掛かりになるのが、まず「カテゴリー
(用途区分)」です。

▼(1)要素1:
品揃え要因の中の、カテゴリーの種類という要素

カテゴリーは哲学用語で、小難しい「範疇(=区分)」ですが、商
品カテゴリーは、商品の使用者(顧客)から見た「用途の分類」を
言うと定義しています。

顧客が、どんな時に、どんな場面で使うか(食べるか)という
TPOS(時、場所、機会、姿)での区分です。ファッション、耐久財
では姿(スタイル)の要素が肝心です。

(注)機能は、製造側から見た区分(品種)です。用途は顧客から
見た区分です。用途区分は、店舗が作るべきものです。

同じ生乳という品種(=機能)でも、容量、脂肪度、熱を加えた加
工方法、ユニット価格(同じ容量の価格)、産地等のグルーピング
(集合)で、買う顧客とその用途、つまり需要のカテゴリーが異な
ります。

賞味期限がほぼ1週間内と短いため日配商品と言われ、店舗が毎日
発注する(とても日常的な)豆腐では、味噌汁に入れる用途が適切
なもの、そのまま食べる生食が適切なもの、舌触りの荒い木綿豆腐、
滑らかな絹濾(こ)し豆腐等があります。特別に厳選した原材料と
製法の、高価な豆腐もある。

その国の食文化で多く食べるものほど、用途カテゴリーの種類が多
い。ドイツやフランスの肉、チーズ、ワイン等の種類は、わが国の
数倍~10倍はあるでしょう。わが国では単に牛肉と言いますが、米
欧では、優に10種以上の区分名があります。チーズも同じです。
50種はある。

他方わが国では、魚の用途カテゴリーの種類は、魚種、刺身・干
物・惣菜を含み世界最高に豊富です。

食品だけではなく耐久財や衣料も、その国の生活に多く使われるも
のほど、カテゴリー種類が増えます。

まず、売れる要因として店頭陳列するカテゴリーの種類の豊富さが
あるでしょう。これを「品揃えの豊かさ」とも言います。

単純な食品スーパーに慣れた米欧の人達は、価格の高さは別にして、
調理済み総菜を売る日本の百貨店のデパ地下に行くと、半日が楽し
めるくらいの「品揃えの豊かさ」に驚嘆すると言います。

生鮮・惣菜における「マイクロ・マーチャンダイジング:微細な分
類のカテゴリーの豊富さ」です。食における特産の地域文化が、大
きく異なるのも日本です。

生鮮食品と日配食品では、カテゴリーは豊富でも、品目の平均売上
数量は少ない。タンピン・カンリの手法になる。需要数を発注する
タンピン・カンリが、日本でコンビニを発展させた根本の理由です。

以上のような、使う立場、着る立場、食べる立場からの商品分類が
カテゴリーです。ジャム、シャンプー、歯ブラシ、携帯電話、パソ
コン、ポロシャツ、炊飯器、鍋、スーツ、書籍、CD、医薬、洗剤、
ソファ、車、住宅にも、多くの「カテゴリー」があります。トルコ
では、装飾品のカテゴリーが多かった。

経済学的に言えば、生活に使う商品カテゴリーの種類の多さがGDP
(国内総生産)の大きさです。後発国では、ジャムやシャンプーの
種類は少ない。店舗面積も、わが国のかつての家業店のように狭い。
東南アジアや中国に行けばわかります。(注)大都市部は、日本や
米欧と同じブランド店です。

店舗の品揃えにとっては、どういうカテゴリーで、何種を陳列する
か、これが棚割の決定になります。

この用途区分は、[部門内での大分類>中分類>小分類カテゴ
リー]の3段階になるでしょう。商品構成を専門化するほど、中分類
と小分類のカテゴリー数が増えます。

1部門の面積は、500坪以上の大型店では20~60坪でしょう。部門数
は15~20くらいになります。部門は営業時間の8時間分を1人の労働
(商品作業)で管理できる面積で、営業利益の管理単位になります。

「専門化」は、商品構成でのカテゴリーの種類の多さという意味で
す。売り上げを減らしているデパートやGMSが、売上対策のため
「専門店化する」と言っていますが、この専門化がA部門では何か、
B部門では何か、C部門では・・・と定義する必要があるでしょう。

(注)4段階以上の深さは、品目区分に近くなるので、大型店以外
(3000坪以上)は、避けたほうがいい。細か過ぎ、顧客にとって無
意味になるからです。大、中、小のカテゴリー区分は、各品目の商
品マスターファイルに、カテゴリー・マスターから入れるべきもの
です。カテゴリー分類が検討されたものでないと、豊かな品ぞろえ
はできません。

・店舗の主力部門(売上で上位68%に属する部門)では、カテゴ
リー種類を、競合他店より専門化させ、
・準主力部門(中位27%)では専門化の度合いを減らし、
・補助部門(下位5%)では基礎カテゴリーのみにします。
これも、標準偏差(1シグマ)の原理に基づいた仮説です。

(注)カッコ内は部門の売上順ですが、これは、今までの売上結果
だけではなく、自店で今後、主力としたい部門、準主力としたい部
門、補助とする部門と考えてください。今の売上結果は準主力部門
に属しても、今後、主力もって行きたい部門があるはずです。付記
すれば、部門面積は、部門の最大営業利益を求めて、変更を続ける
べきものです。部門面積の長期固定は、衰退へ道です。

陳列カテゴリーの種類は、部門面積の適正規模(適正面積)という
重要な概念で規定されます。

部門面積の適正(何坪がベストか?)は、その部門の営業利益を最
大化させる面積という観点から決めるべきものです。従って、前提
として部門の営業利益管理が必須です。(注)以上の店舗の商品構
成論を言えば、優に1冊の本になります。

▼(2)要素2:
カテゴリーの中の、比較される適正品目数という要素

さて次は、同じカテゴリー(上記の用途分類)の中で、顧客が購買
の際、「あれかこれか」と比較する品目の数です。

最近、コロンビア大学の心理学者ジーナ・アイエンガー女史が、参
考になる実験を、「店頭での食品・飲料等の販売」で行っています。
(『選択の科学』) 理論の背景には実証がなければならない。本
来は、小売業が行うべきことです。

結論は、「ジャムの種類が多すぎると、顧客は却って決定に迷って、
ジャム売り場の売上が下がる」というものです。

女史はコーラ、ダイエット、コーラ、ペプシ、スプライトでも同じ
実験を行っています。価格・容量が同じで、選択においては同列に
思える品目を7種並べた。同じ小分類カテゴリーで7品目と言う意味
です、

インタビューした過半の顧客の反応は、この7種の異なる品目を1種
としてとらえ、「炭酸水を飲むか、飲まないかだ。自分の分類は、
炭酸水、水、ジュースの3種」と捉えていた人が多かった。

以上は、店舗の品揃え政策(棚割)、およびメーカーの製品戦略に
とって驚嘆すべき事実です。(注)クラシック・コーラとダイエッ
ト・コーラは「カテゴリー」が異なるので、区分されるでしょう。

店頭には、飲料や食品の品目種類(SKU数)が、多すぎるのかも知
れません。これは、「部門別の営業利益」で発見できます。

品目の種類が、商圏地域(食品スーパーでは1万人から2万人)の需
要にとって過剰に多いと、売上が十分でない品目が、品揃えの80%
以上になって、部門が赤字になります。

サプライ・チェーンの中では、部門の営業利益管理が、何よりも重
要です。「品揃えの豊富さ」の要因で売ろうとして、部門面積を大
きく取りすぎ、カテゴリー種類を増やしすぎて、同じ用途カテゴ
リーの品目数が、商圏需要に対し多すぎると、部門の営業利益で赤
字になります。部門の営業利益で、部門面積は最適化すべきもので
す。商品分類の体系は、店舗>部門>大・中・小カテゴリー>価格
ライン>品目(SKU)です。

メーカーや卸にとっても、店舗が最適な商品構成をしていないと、
その店舗では品目の売れ数が少なくなりますから、メーカー・卸の
売上も少なくなります。プッシュ型営業で過剰な品目数や在庫数を
卸せば、返品も増えます。

(注)部門の営業利益=部門売×部門の粗利益率─(部門の間接費
+部門の直接費);間接費はその部門がなくても発生している経費
です。レジ、店長、事務費用等は間接費です。直接費は、その部門
をなくすと無くなる経費です。部門別管理と言います。当方は、
[部門経営]という用語のほうがいいと考えています。英語では、
Department Managementです。このマネジメントは営業利益目標に
よる管理です。

部門の営業利益経営を、サプライ・チェーンの中で、徹底したのが
ウォルマートです。毎週、部門の営業利益目標と対照した実績が、
部門マネジャー・店長・担当バイヤーに出され、目標対比を出し、
差異の原因を究明して、営業利益の改善活動を行っています。

これが、サプライ・チェーンで上位5位にはいったウォルマートの
マネジメント・システム(経営法)の根幹と言っていいものです。
サプライ・チェーンは、現場業務です。単に情報システムではない。

【ファイン・ラインの発見】
ウォルマートでは、長年の、部門の営業利益に対する「最適品揃え
の試行と実験」から、ファイン・ライン(Fine Line:需要カテゴ
リーの最小枠)を発見しています。

これは、上記のジーナ・アイエンガーの実験と同じ結果から導かれ
た、「品揃え最適」の業務概念ともいえるものです。

重要なことを言えば、大切なのは「部門の売上の最大化」ではない。
「部門の営業利益の最大化」です。更に言えば、重要なのは部門の
粗利益率ではない。1坪当たりの粗利益額です。1坪当たりの粗利益
額がKPI(鍵となる指標)です。

ウォルマートのファイン・ラインでは、「最小カテゴリー(商品ユ
ニットともいう)の中の、ほぼ同じ価格・容量で、同列に比較され
る陳列品目の、営業利益に対する最適数は、最低で3種、最大で5種
である」というものです。これは、われわれにも応用が利く品揃え
の原則になるでしょう。

「同じ用途の、同じ価格と容量・品目の最小カテゴリーの品目数が、
1品目では比較ができず、十分には売れない。2品目でも少なすぎる。
3品目が最適だが、競合要素が強い地区や、そのカテゴリーの需要
が多いものでは、5品目になる。これが、営業利益から見た、下限
と上限である」ということでしょう。

これが、カテゴリーの中の最適品目数です。

▼(3)要素3:
   欠品という要素

品揃えの中の3番目は、欠品という要素です。欠品は、店舗に陳列
すると本部バイヤーが計画した(商品計画の)品目が、陳列されて
いない状態を言います。

普通、店頭在庫ゼロを欠品としていますが、これは、経験則から言
って誤りでしょう。同じ品目でも複数個が存在しないと、急に売れ
行きが減る現象があるからです。

最低陳列在庫数で、1品目3個が必要でしょう。サプライ・チェーン
への発注のロジック(定期発注法)の、最低在庫数のパラメータ
(変数)を0個ではなく、多くの品目では3個と設定すべきです。

この点で、発注のロジック(ロジスティクスの論理)に誤りがある
ソフトが多い。欠品率を訊ねると、多くの店舗は2%以内と答えま
す。しかし、1品目で3個未満を欠品とすれば、はるかに多いでしょ
う。

店頭で顧客が商品を選んでいる様子を観察するとこれが分かります。
1個だけ残った商品は、他の人が手を触れて買った後の「売れ残
り」と見なされるからです。1個だけ残った在庫を買うのは、特に
食品では勇気が要ります。

ただし、その部門の「ベスト・プライス」で、価格帯の高く、売れ
数が極度に少ないものでは、ゼロ個を欠品としても許容されるかも
知れません。

原理的に言えば、商圏での売れ数から見て、自店が在庫1個しか陳
列維持できない品目は陳列カットすることのほうが望ましい。
(注)ただし、家電や家具等の耐久財では、1品目1個の陳列です。
これは、店頭見本です。

以上、部門の、
(1)カテゴリーの種類、
(2)ファイン・ラインの中の品目数(3~5種)、
(3)欠品という要素が、売上と営業利益を決める品揃えの要素で
しょう。

部門の売上を決める要因のうち、ほぼ40%が、この「品揃えの豊か
さ要素」と判断されます。

大中小のカテゴリー区分と、小カテゴリーでのウォルマート流のフ
ァイン・ラインを核にすれば、従来は手掛かりがなかった「品揃え
の豊かさ作りの方法」に、答えを見つけることができると感じてい
ます。

              

252号の前編は、無料メルマガの送信データ容量が超過するので、
一旦、ここまでで送ります。後編は、続いて別便で送信します。

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