今こそ売上を上げるのに必要な、LTV(顧客の生涯価値)(2)
This is my site Written by admin on 2012年2月14日 – 10:00
こんにちは、吉田繁治です。前号(有料版)では、ドラッカーが言
う「事業は顧客創造である。事業は顧客である。」の意味を、顧客
満足の観点から解釈しました。

「事業は顧客創造である、顧客である。」ということが、一般には、
表現を飾る修辞としてしか理解されていないと思ったからです。修
辞は形容、あるいは飾りです。大方の人が、事業は顧客であると言
ったドラッカーから理解したのは、商品の生産・販売をする事業の
形容が顧客だということだったでしょう。しかし異なります。事業
は、顧客そのものです。

▼理解のための序章

事業は、商品やサービスを売り、対価としてお金を払ってもらうこ
とです。買うと判断し、お金を払うのは顧客です。

このため、事業は顧客であるとなる。当たり前のことです。しかし
事業に属する各人の仕事が、経営管理、仕入、生産、在庫、販売、
物流などの分業で行われているため、事業は顧客であるということ
が見えなくなっているのでしょう。生産(工場)と営業、あるいは
販売(店舗)の機能分業もあり、最終顧客が見えなくなっています。

【プロフェッショナルからの類推】
関連して言えば、プロフェッショナルは、約束した成果を作って提
供でき(pro=前もって、fession=約束する)、作った商品及び
サービスと交換に、顧客からお金をもらえることを原義とします。

アマチュアのわれわれが、カラオケでうまく歌っても、誰もお金を
払ってはくれません。逆に、カラオケ代を払う。ところがプロの歌
手のCDを人々は買う。舞台にも行く。成果を得られるという期待
からです。CDを聴いても、得られる成果が顧客の期待に添わなけ
れば、次は買いません。

プロフェッショナルは、事業と同様に、仕事の成果で顧客の期待を
満たし、顧客満足を与えることができなければならない。期待であ
る理由は、商品やサービスの価値は、使ってみなければわからない
からです。

「期待する価値→購買→効用に充足→満足」です。形をもつ商品や、
無形のサービスの、期待される価値を効用(benefit)とも言いま
す。商品(及びサービス)の期待される効用÷価格=商品価値です。

この効用の算式での商品価値の高い商品が、顧客満足を与えるため
に、売れます。(注)効用で、機能・品質・効用を一体化したもの
を代表させています。

▼「顧客が事業である」ことの意味:前号を振り返りつつ・・・

【カスタマーの創造】
売上は、商品やサービスの対価として、お金を払う顧客からしか来
ません。顧客は、原著ではcustomerです。繰り返し買う顧客の意味
です。LTVはカスタマーが、継続購買したのときの想定売上、営
業利益です。(注)本稿ではLTVを売上とします。

カスタマーの創造は、「繰り返し買う顧客(カスタマー)を、より
多く作る(創造する)」ということ。言い換えれば、継続率を高め、
離反率を下げるための活動となる。

離反率を低めるには、買った顧客の、商品・サービスへの満足度を
高めねばならない。こうした意味をもちます。(ドラッカーの『マ
ネジメント』における、事業は顧客の意味)

あらゆる業種の、あらゆる事業に共通です。

【背後を看破した】
事業は商品の製造と販売とするのは普通の定義です。

ドラッカーの、現代と将来に通じる新しさは、
・目に見える現象である商品販売から1歩進ませ、
・「事業は顧客満足の販売である」という観念を看破(かんぱ)し
たことにあります。観念は、人の考えです。考えの構えです。

人は、コトバと数値を使い考えることができる。
これが観念(考え)です。観念から、行動が生じます。

繰り返し言えば、買った顧客の満足度を高めることは、
・繰り返し購買(リピートの頻度)を高め、
・離反率を減らすことです。

多くの企業が、本義が曖昧なままに言っている「顧客満足」の実際
の意味は、ここにあります。

買った顧客の満足を高めることが、繰り返し購買(リピートの頻
度)を高め、離反率を減らして、売上を増やすからです。本稿で示
すLTVの計算で、これが劇的にわかります(後述)。

事業の売上は、[買った顧客(カスタマー)のリピート額+新しく
顧客となる候補の購買額]です。リピート率が高まれば(=離反率
が下がれば)、売上は増えます。そして離反率の低い事業は、顧客
の満足度が高いため新規客も多く集まります。玄関に行列のできる
レストランのイメージです。古代の中国では、門前市をなすと言っ
たことです。

離反率が新規客率より低い事業(あるいは商品シリーズ:カテゴ
リーと言っても同じ)は、売上は増えます。売上が増えているとき
は、離反率が低く新規客率が高くなっています。(注)離反率=離
反数÷顧客数;新規客率=名寄せ後の新規客数÷顧客数、です。

逆に、既存客の離反率が新規客率より高い事業は、売上が減って行
きます。買った商品、受けたサービスへの不満足を原因に離れて行
く顧客数が、新規客数より少ないからです。

売上が、長期傾向で減っているときは、
(1)商品とサービスへの何らかの不満足から、
(2)あるいは満足度が高い事業が進出したことが原因で、離反率
が新規客率より高くなっています。

(注)店舗で言えば、わが国商圏では、1年に約5%(20店に1店)
の新規出店があります。満足度が高い店舗が進出すると、その前は
満足していた顧客も、不満足の度合いを高めます。満足・不満足は、
競争的です。顧客にとっては、他との比較で感じられる相対的なも
のです。

また、コンビニ等に見るように、店舗が5分内の至近にあるという
ことも、商品以外のサービス価値です。顧客満足とは「商品価値+
販売にからむサービス価値の高さ」です。

ここで言うサービスは、タダということではなく、モノとしての形
がない商品です。医師の医療、弁護士の弁論はサービスに属します。
教育、通信、交通、ホテルもサービスです。家計調査では、これら
サービス支出が1ヶ月8万8000円であり、27万3000円の消費支出のう
ち32%を占めています。消費額の1/3は無形の商品と見ていいでし
ょう。(総務省家計調査:2人以上の世帯:11年11月)
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001085073

「離反率を、どうやって減らす」か・・・これが、売上を増やす事
業をつくるポイントになります。要は、既存客の、買った後の使用
や、食べたことの満足度を高めるメンテナンスです。販売時点だけ
ではなく、その後の使用の満足です。

宣伝やプロモーション(販売の促進)が、既存客に対するメンテナ
ンスを真の目的とすると考えれば、事業活動が変わるでしょう。

時計のロレックスや、アクセサリーやバッグのルイ・ヴィトンなど
の、基本デザインを長期で変えない世界の有名ブランドの、マスコ
ミ・メディアを使う宣伝は、中味を見れば「買った顧客の満足」を
高めることが目的であることがわかります。

他方で、新商品のデザインや機能をころころ変える日本の大手メー
カーは、前に買った商品の陳腐化を促し(言い換えれば不満足を高
めて)、買い換えを促進することが、宣伝の目的になっています。

顧客を、長期に引き寄せる「高いブランド価値」を作れない理由が
これです。買った商品の陳腐化を、新商品で促すとは、不満足を高
めることだからです。

ロレックスやルイ・ヴィトンの宣伝は、もつ満足、使う満足を高め
るためのものです。そのために、繰り返し購買をする顧客が多い。
新しく欲しがる人も増える。

日本のメーカーは、過去のものより、新商品のほうがいいという宣
伝です。このため、狙いとは違って、所有と使用の満足を減らす陳
腐化を推進しています。

以上のため、日本の有名メーカーも、売上対比の利益率が、米欧の
同業に比べて低い。ブランド価値を維持する活動に弱く、コストの
かかる、多くの新商品の開発と投入のサイクルが短いからです。

他方、ユニクロを見ると、新商品は、ほぼ3ヶ月毎に出しても、ユ
ニクロとしてのデザイン・アイデンティは守っています。ユニクロ
がシリーズ商品になっていると言っていい。

日本の多くのメーカーは、顧客満足と継続購買の意味を誤解し、は
き違えているように感じます。店頭に並ぶ商品を見ても、わが国は、
世界で最高に、過去のものとは傾向を変えた新商品が多い。その裏
では売れ続ける期間である「商品寿命」が短い。

ここが、
・今のソニー(株式の時価価値が1.5兆円:12年2月)と、
・かつてソニーから見ればはるかに下位だったアップルとの差でも
あります。アップルの時価価値は$4600億(3.7兆円)であり、石
油のエクソンを抜き、世界ナンバーワンになっています。株価の時
価の理論価格は、将来の予想利益額にリスク率を掛けて、金利で割
り引いたものです(ファイナンス理論)。「市場の将来利益への、
集合的な期待」を示す株価、及び時価総額(株価×発行済み株数)
については、若干の解説が必要です。

【捕捉】
株価の理論値={当年度純利益額+2年目の予想純利益×(1-リス
ク率)+3年目の予想純利益×(1-リスク率)の2乗+3年目の予想
純利益・・・・}/予想金利。株価は、事業の将来の期待利益の合
計を含むものです。

現実の株価は、理論値の周辺を、(時には大きくはずれて)波動し
ます。株価が半年先の景気を見ると言われる理由は、次期の予想純
利益に対する株価、つまり予想PER(=現在株価÷1株あたり次期 予
想純利益)で妥当性を判断する人が多いからです。純利益は税引後
の利益です。

東証一部・二部(2091社)の合計では、PERは15.7倍(12年1月)
です。上場2091社の、次期予想純益(12年3月期)の15.7倍がいま
の株価水準という意味です。
http://www.tse.or.jp/market/data/per-pbr/b7gje600000051p5-att/j_per-pbr201201.pdf

【使用過程で、成長する商品】
アップルは、エレクトロニクス・メーカーとしては製品のアイテム
数は極度に少なく、同じシリーズの改善を行い続け、シリーズ全体
の売上を、世界で数億台に高めます。シリーズが、年度での機能向
上を重ねながら長期で続いています。

ブランド価値を守り、既存客のメンテナンスのための活動を行う営
業利益率が高い米欧の有名メーカーと、日本メーカーのプロモーシ
ョンと販売に対する。考え方の基本部分での違いがあります。

アップル風に、「プロモーションは、既存客の満足度を高めるため
に行う。既存客の満足を昨年より高めることが、新規客も増やすコ
ツである」ということでなければならない。iPad、iPod、iPhoneは、
いずれも買った後のソフトで、機能が「成長」します。ここが肝心
な点です。

以上のような「顧客の行動原理」を知っているため、商品が完成し
ているロレックスの時計やルイ・ヴィトンのバッグなどの新商品は、
「同じものだが、違う」という伝統的なデザイン枠を外さない差で
新商品を出すのです。

デザインは、「外形と内部の機能」の設計です。内部機能を外形と
調和(コーディネート)させるという方法で、外形と機能の相乗効
果で商品価値を高めることです。錠剤は他のどれとも同じなため、
機能(=効能)の違いがわかりにくい薬のパッケージを見ると、こ
れが分かりやすいでしょう。化粧品も同じです。

特定層に支持が多いメルセデス・ベンツ、BMWやアウディなど世
界の有名ブランドもおなじです。1990年代中期までの、ブラウン管
のトリニトロン時代のソニーには、客の立場で言えば、明らかに、
これが強くあったのですが、10年前くらいから、弱まっています。

【「観念」で見るのが人間】
昨年12月に、NYの5番街にあるソニーの巨大ショールームに行っ
たのですが、「建物と商品の放つ輝き(オーラ)」が消えていまし
た。

感じるのは「気(き)」です。気は、人が感じることができるもの
です。「オーラや華」とも言う。人気の高い女優や俳優が、舞台に
登場したとき、瞬間で放ち観客が感じ取る「華」、あるいは「オー
ラ」です。アップルには、これがある。

たとえば骨董は、物的には同じでも、権威ある人が「ホンモノ」と
いう判定をつけると、俄然、「気を放つ」ように変わります(TV
の『なんでも鑑定団』で経験できます)。

鑑定家から贋作とされれば、自分がホンモノと思っていたときの気
が消え、物的には同じなのに、突然、われわれの目に、つまらない
作品に変化します。事実、変わってしまう。これはなぜか?

芥川賞や直木賞でも、同じことが起こります。受賞後は、急に、す
ぐれた小説に見える。これは、ごまかされているのではない。優れ
たものか、そうではないか、もともと自分に見えていなかったから
です。

●すぐれたものに見える理由は、人の認識には、物自体に「ホンモ
ノという情報」が加わるからです。われわれは、物自体を見ていな
い。いや、見えていない。哲学風ですが、「もの自体」からの、情
報(「現れ」ともいう)を見ているからです。

(注)20世紀の哲学であるフッサールやハイデガーの「現象学」は、
古代からの哲学論争の対象だったプラトン風のモノ自体(=本質)
を否定し、その現れが、人の意識に認識されるだけだとしています。
サルトルの『存在と無』も現象学の立場です。「存在する物には、
本質はない。現(あら)れだけである」ということです。現れは、
情報です。現象学は、情報の現象学と言えます。

マーケティング費用をかけ、顧客満足度のモニター調査をする会社
は多い。その集計結果は、あまり役にに立たない「定性的な満足、
不満足」のアンケート調査です。アンケートでは、タテマエの声し
かわからない。

【簡単に計算できるLTV(顧客の生涯価値)で、端的にわかる】
肝心な顧客満足としては、既存客の継続率の変化、言い換えれば離
反率(1-継続率)の変化で、定量的にわかります。原因を数値で
みなければ、対策も出ないのです。

以上が、「顧客が事業である」ことの意味と、その事業の展開です。

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<262号:今こそ、売上を増やすのに必要な、LTVの概念(2)>
               2012年2月14日:無料版

【目次】

  1.自社のLTV(Life Time Value)の計算方法
  2.売上で上位80%に属する顧客を対象にする
  3.次の3ヶ月を集計:A店
  4.次の3ヶ月を集計:B店
  5.顧客満足を高めるのが販売
  6.顧客の名寄せができない店舗でのLTVの計算

【後記】在庫がほぼ出揃いました。

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■1.自社のLTV(Life Time Value)の計算方法

商品別、あるいはカテゴリー(同種の商品をグループ化したもの)
別の商品売上は、その数量、単価、金額ともにどこの会社も記録し、
計算しています。

●事業は商品販売と考えたことが、商品売上を記録する理由でしょ
う。しかしこの商品売売上は、顧客が満足した結果の販売額と数量
です。

事業で肝心なものは顧客と考えるなら、売上の原因としての商品の
売上分析だけではなく、顧客分析が必要でしょう。ところが、これ
を行っている会社を、ほとんど見かけません。

メーカーにとっては、店舗で誰が買ったか、誰が買わなくなったか、
わからなかったからでしょう。これはやはり、生産に価値があると
考えてきたからです。顧客の購買に価値があると考えるなら、何ら
かの方法で、顧客をとらえるデータを求めたはずです。

このため、製造と販売が分離しています。自社商品の、店舗への出
荷数(卸売上)はわかる。顧客はメーカーからは言えない。卸と店
舗を顧客とみて、行えばいいでしょう。

店舗と販売部は、直接に顧客分析ができます。直販メーカーもでき
る。メーカーが直販する車の販売等では、当然に顧客分析ができま
す。

わが国でもインターネットでの商品販売が、旅行やレストランを含
めば、15兆円に達しつつあります。わが国でも、店舗の販売額
(110万店:134兆円:2011年 経産省 商業統計)の12%を占めるく
らい大きくなっています。15%、20%と増える傾向です。約5年は
先行した米国のネット販売を見ると今後の傾向もわかります。

日本アマゾンの販売ほぼ15%占めるとされる単行本(推計)では、
現在、インターネットがほぼ30%を占めるでしょうか。店舗の平均
売上は増えていませんが、インターネット販売は、年率10~20%で
増えています。

インターネットで直販を行っているメーカーは、直接に、名寄せ後
の売上履歴から、顧客分析ができるでしょう。それをモニター・
データ(サンプリング)とすればいい。視聴率や世論調査のように、
サンプリングによって、母集団(全体の顧客)が推計できます。

■2.売上で上位80%に属する顧客を対象にする

コンピュータで、売上ファイルに対し、以下のような、顧客分析の
プログラムを作ります。店舗別に作るのは当然です。

▼顧客名が名寄せできる店舗でのLTV計算

(1)【初回集計    A店:B店同じと仮定】
                            平均     平均
3ヶ月間の名寄せ後顧客数  1回単価  購買頻度   購買額
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  たとえば1万人           2000円    10回     2億円 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

[解説]
店舗の総売上で、上位80%に属する顧客数は、1万人だった。その
1回購入の平均単価は2000円、3ヶ月間の平均購買頻度は10回あった。
その間の1万人の総売上は、2億円(1人平均2万円)だったというこ
とを示しています。

■3.次の3ヶ月を集計:A店

[3ヶ月前の集計と同じ顧客の
  3ヶ月間の名寄せ後顧客数]  1回単価   購買頻度     購買額
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
     9600人                  2000円     9.5回    1.824億円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  

A店の3ヶ月後です。前3ヶ月に買っていた顧客を追跡して分析しま
す。3ヶ月後は1万人より増えることはない。かならず減ります。そ
の減り方の程度が問題です。1回の平均顧客単価は、短期では大き
くは変化しません。

A店は、平均購買頻度も、前3ヶ月の10回から9.5回に下がっていま
す。このため、2億円だった1万人の購買は、9600人で1億8240万円
(1人あたり1万9000円)に減っています。

【売上全体では、たいしたことではないように見えるが・・・】
A店の集計顧客(上位80%:1万人)の3ヶ月前の、3ヶ月間売上は、
2億円でした。今度の3ヶ月の売上は1億8240万円ですから、1760万
円(8.8%)しか減っていず、「たいしたことはない」ように見え
るでしょう。

ところが、名寄せ後顧客の、購買額の減少は、つぎに述べる「重大
な意味」をもっています。

【顧客数での離反】
顧客数での離反率は3ヶ月で(1-0.96=4%)でした。ただし、購
買頻度も前3ヶ月の10回から9.5回へと、5%下がっています。これ
も、顧客の離反を示します。

このため、A店の離反率は、3ヶ月前の顧客数の減少4%+購買頻度
の減少5%=9%と見なければなりません。

1般に、顧客離反率が高いと、3ヶ月後も買い続けた顧客の平均購買
頻度も減っています。ここから、A店のLTV(顧客の生涯価値)
を計算します。

【A店の顧客LTVは、わずか21万1000円】
A店の顧客の平均生涯価値=1年目:[1回単価2000円×年間購買頻
度9.5回×4倍×(1-離反率9%×4倍)]+2年目:[1回単価
2000円×年間購買頻度9.5回×4倍×(1-離反率9%×4倍)の2
乗]+3年目・・・[無限等比級数]・・・≒ 7.6万円÷年間離反
率36%≒21万1000円

●この意味は、A店では、買い始めた新規客が継続して買うカスタ
マー(顧客)になってから離反してしまうまでに、21万1000円買う
のが平均ということです。[1年目7万6000円+2年目7万6000円×0.
64+3年目7万6000円×0.64の2乗+3年目・・・・]です。

1年後の離反率は3ヶ月(9%)の4倍(36%)と高いので、2年目は
当初顧客に比べて40.9%(=0.64の2乗)に減り、3年目は26.2
%(=0.64の3乗)というように、当初の継続顧客がどんどん減っ
てしまいます。

3ヶ月で9%(顧客離反4%+購買頻度の減少5%)という顧客の離反
率は、1年では、その4倍の36%と高い。10人の顧客のうち、次年度
も買うのは6.4人、2年目は4人に減っているということです。

以上が、3ヶ月での[瞬間風速]での、LTVが意味するところで
す。

A店は、今、1年に36%の顧客(10人のうち3.6人)が離反していま
すから、36%以上の新規客(新規客/総顧客数)がないと、店舗売
上が減少します。

新規客への集客に、販促コストをかけても、離反の期間が短いので、
採算を割れてしまいます。(注)1度離反した顧客は、プロモーシ
ョンをかけても、店舗で売る商品の価値への満足が大きく変わらな
いと、なかなか戻ってきません。その店への不満足から、他の店舗
で買う習慣に変わったからです。

こうした店舗は、何が、買った顧客の不満足の原因か(商品価値で
の負け、あるいはサービス価値での負け)を確定して、対策を打た
ないと、いずれ、大きな赤字で、消滅せざるを得ない店舗になって
ゆきます。

その店で買わなくなった顧客は、どこか他のところで買っています。
顧客満足度で、負けたのです。

●まだどこも行っていない「継続顧客(店舗売上げのほぼ80%)の
LTV分析」は、重大な意味をもっています。商品の売上分析だけ
では、見えないことです。

顧客満足と絡め、LTVの計算法とその意味が、開発されたのは米
国であり、1980年代後期でした。

しかしそうした顧客分析を行っているところを、見たことがありま
せん。つまり、実務の手法(分析技術)としては新しいということ
になります。

■4.次の3ヶ月を集計:B店を見ます

[3ヶ月前の集計と同じ顧客の
3ヶ月間の名寄せ後顧客数]  1回単価   購買頻度     購買額
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
     9800人                  2000円     10.0回    1.96億円 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

[解説]
B店は、3ヶ月前(顧客数1万人)との比較で、離反顧客数が200名
(2%)です。1年ではその4倍の8%です。

(注)B店の継続顧客の3ヶ月の売上は、1.96億で、2億円に対し-
2%です。他方、A店は、1億8240万円であり、-8.8%でした。従
来の商品売上だけの分析では、A店もB店も大差ないように見えるは
ずです。ここから、経営の誤りも生じるのです。

B店の上位顧客の平均購買頻度は、3ヶ月で10回であり、前の3ヶ月
の頻度が維持されています。顧客のLTV(生涯価値)は、以下の
ように計算されます。

B店の顧客のLTV=1年目:[2000円×10回×4倍×(1-離反率2
%×4倍)]+2年目:[2000円×10回×4倍×(1-離反率2%×4
倍)の2乗]+3年目・・・無限等比級数・・≒8万円÷8%=100万
円

B店の顧客のLTV(継続購買の平均)は100万円です。1回2000円
買うとして、平均で500回も買い続けます。(注)A店はこれが21万
1000円でしかなくA店の約1/5です。B店の顧客満足度は、A店の1
/5しかないと見てもいい。

A店の顧客離反率が1年で36%と高く、B店は8%と低かったことが、
こうした大きな、累計売上の違い(3倍)をもたらします。LTV
で比べれば、21万1000円(A店)と100万円(B店)の4.75倍の差で
あり、怖くなるくらいの、差の大きさでしょう。

●年間離反率でA店の38%、B店の8%は、4.75倍の違いです。この
離反率の差が、A店のLTV=21万1000円、B店のLTV=100万円
という、長期での大きな売上差を生みます。

鍵は、買った顧客の顧客不満(=離反)と顧客満足(=継続)です。

●どこの店舗でも、3%増えた、5%減ったというように漠然としか
見られていない顧客数は、このLTV分析をすることによって、劇
的な、1刻もゆるがせにできない顧客満足の変化を示すものになり
ます。

買った商品と受けたサービスへの顧客満足が高くなれば、売上は増
える。逆なら減ります。LTVの観点で言えば、単純なことなので
す。

景気が良くない、人口が減っているから悪いというように、売上の
原因を、他に転嫁すべきではない。顧客の購買行動は、その会社が
作った自己原因で考えねばならない。

■5.顧客満足を高めるのが販売

商品構成、及び価格戦略と販売は、
(1)買った顧客の満足度を高め、
(2)購買頻度を高めること、
(3)そのために、顧客満足度を下げて、顧客不満のタネ(原因)
になるものを、ひとつずつ減らす改善を継続することだと、LTV
から理解できるでしょう。

売上分析は、商品が売れた結果しか示しません。LTV分析は、商
品の売上の増加と減少を、顧客の購買行動として見せてくれます。

LTVは、顧客の、買った後の満足を原因にした購買行動の「見え
る化」でもあります。売上は、満足した顧客の購買行動の結果です。
購買は、買った商品と受けたサービス価値の高さで増えて行きます。

(1)売上の減少は、顧客不満の増加です。(1)あるいは、満足度
の高い商品がでたこと、または満足度の高い店舗ができたことの結
果です。

他店や他の商品からの満足度を上回らねば、売上は増えません。顧
客満足は、買った商品の価値の高さからです。商品価値=機能・品
質・効用÷価格です。市場では、この商品価値を競っています。

(注)円高で日本のメーカーの海外売上が減るのは、商品価値の低
下からです。[商品価値の10~20%の低下=機能・品質・効用は前
と同じ÷価格は円高で10~20%上昇]が起こるからです。その間隙
を、中国メーカー、韓国メーカーが、北米市場で埋めています。

当然のことですが、商品価値を高めないと、顧客満足は下がって、
商品は売れなくなります。

地域の人口と、世帯所得の合計が増えなくなった日本では、商圏全
体では、新規顧客と、買うための所得が増えません。このため、商
圏内では顧客満足度、商品では商品価値の高さを競うことになって
います。

■6.顧客の名寄せができない店舗でのLTVの計算

顧客の名寄せができないときは、統計的なサンプリングの方法を使
います。店舗売上額で上位80%に属する継続顧客(たとえば約100
名)をランダムに抽出し、平均の1回購買額、そして3ヶ月の購買頻
度を、上記に倣(なら)って集計します。

顧客に訊ねる、ヒアリング調査でもいい。
顧客数の5%がいいのですが1%でも試算として十分です。

(1)【初回集計    A店とB店は同じだったと仮定】

                            平均     平均
3ヶ月間の名寄せ後顧客数  1回単価  購買頻度     購買額
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  たとえば100人           2000円    10回       200万円 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

この集計は容易でしょう。

(2)2回目集計(A店)

[3ヶ月前の集計と同じ顧客の
  3ヶ月間の名寄せ後顧客数]  1回単価   購買頻度   購買額
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
     96人                  2000円     9.5回      182万円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  

3ヶ月離反率は、客数で4%+購買頻度の低下で5%=9%です。年間
で4倍の36%です。(注)本来は複利計算ですが、LTVの計算で
は、単利で十分です。

A店のLTV=2000円×9.5回×4倍÷9%×4倍=21万1000円です。

(3)2回目集計(B店)

[3ヶ月前の集計と同じ顧客の
3ヶ月間の名寄せ後顧客数]  1回単価   購買頻度     購買額
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
     98人                  2000円     10.0回    196万円 
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3ヶ月の離反数は2人(=2%)です。1年で8%です。購買頻度は同
じなので、頻度低下での離反はない。このため、B店のLTVは以
下のように100万円と、顧客離反が大きなA店の21万1000円の、4.
75倍の高さです。これが、店舗の将来の累積売上(想定値)です。

●繰り返して強調すれば、3ヶ月後のA店の、継続顧客のサンプリン
グ売上は182万円と8.8%しか減っていないことです。他方でB店は、
3ヶ月前に比べて2%の減少です。

ここだけで見れば6.6%の差でしかない。ところが、店舗の将来の
累積売上では、4.75倍もの差になることです。ここに気がつかね
ばならない。

前記の、名寄せができるところの実数売上を使うものと比べれば、
LTVの結果は、正確性は劣りますが、名寄せできないところでも
サンプリングで、ほぼ同じのものが計算できます。

毎週、毎月の顧客数、購買単価、購買頻度は、以上のように、あら
ゆる販売にとって、重大なことを示しているのです。さっそく、貴
社でも分析して下さい。行うべき対策での、大きな発見があります。

【購買頻度の低い業種での応用】
顧客の来店と購買頻度が低い業種の事業では、3ヶ月間集計ではな
く、半年、1年集計と期間を長くします。自動車販売などは2年単位
で集計でしょうか。上位20%のA級顧客の購買頻度は、0.5回等
(4年に1回)となるでしょう。

【後記】
やっと、インターネットではほぼ全店で、在庫が補充されています。
『国家破産・・・これから世界で起こること、ただちに日本がすべ
きこと』。 ビジネスの遂行と金融資産の運用で、知っておくこと
が必要な、金融と経済を書いています。書名の国家破産は、1章だ
けです。

できれば全員の方に、なんらかの方法で読んでいただきたいと思っ
ています。400ページ:全9章を読めば、知識の視野に、新しい地平
が開けるはずです。

幸い、「金融・経済の知識がなくても、とても分かりやすいと」高
い評価を頂戴しています。現代の世界を見渡した「金融と経済の入
門書でもある」という評価でした。金融は、為替取引(世界で1日
500兆円)とデリバティブ(対象資産5京円)を含み、激しくグロー
バル化しています。この中に経済があります。以下で検索できます。

アマゾン(紙)            : http://www.amazon.co.jp/
紀伊国屋Web(紙+電子板)
                          : http://bookweb.kinokuniya.co.jp/
楽天書店(紙)            :http://books.rakuten.co.jp/
廣済堂bookgate(紙+PDF版): http://www.bookgate.info/
セブンアイネット書店  :  http://www.7netshopping.jp/books/

リアルな書店や他のWebにも、補充されていると思います。

●インターネットで偶然見つけた評価のひとつです。気恥ずかしい
のですが、当方の意図をよく理解していただいていると感じたので、
掲載します(掲載の承諾はとっていませんが・・・)。

***は今、世界を覆う財政危機や金融不安の本質がどうなのか気
になっているのですが、
本書はこれ一冊読めば、
・国債の信用リスク
・デリバティブの恐怖
・米ドル安と円高の行方が及ぼす影響
・不動産価格の見通し
・国家破産の可能性
・資産防衛のためにすべきこと
など、すべてが関連付けて理解できます。

とはいえ、ひとつひとつ理解しながら読んだので、読み終えるのに
たっぷり1週間かかってしまいました。この本のすごいところは、
徹底的に数値をもとにした論理展開を行なっていること。

読者をいたずらに怖がらせたり脅したりするような表現は、一切使
っていません。類書では、著者が金融ビジネスに携わっていたりす
ると、自分の商品の販売に結びつけたり、自分の権威を高めようと
したりするポジショントークが含まれていたりするものですが、そ
んなポジショントークも一切なし。

著者の吉田繁治さんは、【ビジネス知識源】というメールマガジン
の発行人で、ビジネスメールマガジンではNo.1の人気を誇ります。

書いてあることは難しそうに見えるのですが、変に楽観論や悲観論
に偏っておらず、データを丁寧に紐解きながら、重要な部分は繰り
返し解説してくれるので実にわかりやすい。

読了した後、もう一度ななめ読みしただけで、理解がさらに深まり
ました。ここに書かれている事実を自分はどうとらえるか、そして
どう行動すべきか。腑に落ちるまで、何度も読み返すべき本だと思
います。

現在、そして今後の世界経済を語る本の決定版ではないでしょうか。
http://blogs.yahoo.co.jp/kit_45104/29108188.html

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<574号:増刊+正刊:
            世界恐慌を振り返れば、将来が見える(2)>
               2012年1月25日号

1.1210兆円の、不良債券の根雪の上を、中央銀行と政府マネーの
500兆円が覆っているのが現在
2.日銀が集計した、日米欧の資金循環表
3.米欧の金融機関に必要な、自己資本額の計算のために
4.日本、米国、ユーロの官民の金融資産合計は、1京2919兆円
5.1929~1933年の大恐慌のときは、どうだったか?

【後記:外人の日本国債買い】

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