今年の夏は選挙の季節;その内容の分析(1)
This is my site Written by admin on 2019年7月13日 – 10:00
おはようございます。選挙カーが連呼する参議院選挙に突入しました。
野党の支持の低さから、政権与党の優位は動かない。

憲法改正勢力が参議院で2/3(非改選79名に合わせて164議席)に達す
るかどうかが争点だとメディアは言っていますが・・・。改憲勢力は
自民、公明、そして維新です。当方は、そこまではいかないと見てい
ます。

最近の安倍内閣の支持は41%、不支持が37%です(低く出る傾向があ
る朝日新聞の定例世論調査:2019年3月)。平均的な生活費への年金
の不足問題にかかわらず、政府への支持率はおちずむしろ上がってい
ます。

モリカケ問題があった2018年3月の内閣支持率は、軒並み30%台でし
た。現在は、そこから約10ポイント回復しています。(注)朝日の他
社との差異は、3%付近と見ていいでしょう。

政権支持の10ポイントのズレ、統計用語ではボラティリティがもつ意
味は重要です。有権者の10人に1人が、そのときのスキャンダル的な
言動、福祉政策、経済情勢などの政治的なイベントによって浮動する
層と見なせるからです。

衆参両院の総選挙では、選挙区の10人のうち1人の支持の移動により
与野党の勝敗が決まっています。浮動の10%が意識されているかのよ
うに、政府の政策と首相の言動は、自民党が依頼している世論調査を
元にして、行われています。

たとえば昨日の、厚労省ではなく、首相が決めたハンセン氏病への控
訴の断念は、参議院選挙にらみでの決定です。トランプ大統領の常態
になっている突然の海外・外交政策、政令も、次期大統領選への世論
調査の結果がもとになっています。

世界的なポピュリズムと言われますが、その当否は、政策の内容にか
かるものです。メディアが怨嗟をこめていうような政権支持の形態は、
問題になることではない。

メディアが自分をエリートの立場に置いて、大衆を下に見ているとい
う理由から、「あの政策は、国民の人気取りのポピュリズムだ」とい
う非難が出ているのです。

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  <407号:今年の夏は選挙の季節:その内容の分析(1)>
       2019年7月10日:有料版

【前編目次】
1.政党の支持率
2.自民党が、政策面では、社会民主主義風になった
3.失敗を振り返らず、解党した民主党

【後編の目次】
4.安倍政権の経済・金融政策の中核にあるのは、円の増発
5.若い世代の、自民党支持率の高さの原因

【後記:アマゾンのサイト】

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■1.政党の支持率

もっとも新しい政党の支持率は、以下です(時事通信:19年6月14
日) 時事通信の調査は、偏りが少ないと見なせるでしょう。

       2019年4月   6月
~~~~~~~~~~~~~~~~
自民党     26.7%   27.7%
公明党     3.9%    2.6%
~~~~~~~~~~~~~~~~
連立与党   30.6%   30.3%  

立憲民主党   3.3%   4.3%
維新の会    1.9%   1.8%
共産党     1.9%   1.8%
国民民主党   0.6%   0.6%
社民党     0.1%   0.3%
~~~~~~~~~~~~~~~~
野党合計   7.8%    8.8%
~~~~~~~~~~~~~~~~
支持政党なし 58.5%   59.4%
~~~~~~~~~~~~~~~~

連立与党が30.3%であり、野党の合計8.8%の、3.5倍です。選挙民
10人のうち3名が与党を支持するのに対して、野党の合計は1名にも満
たない。この世論調査を反映した選挙の結果なら、勝負にならないこ
とがわかります。

ただし、実際の選挙では59%(10人のうち6人という多数派)という
無党派うち、投票に行く人(おそらく25%から30%程度:約半分)が、
どの政党に入れるかで、勝敗ラインが決まるでしょう。

米国のように、共和党・民主党の支持が50:50付近で拮抗している国
とは、まるで違います。

【1990年代の、社会党の消滅のあと】
なぜこの違いが出るのか。当方の疑問はまずこれです。考えて行きま
す。無党派が圧倒して多く、与党の支持が野党合計の3.5倍であるこ
との理由です。

共産党以外の野党の出自は、1990年代にほぼ消滅した社会党であり、
社会党は、共産主義に近い社会民主主義を奉じる政党でした。1990年
代のソ連崩壊によって、政治的なイデオロギーとしての共産主義は消
滅していますが、マルクスの、労働価値説の経済理論は残っています。

1993年からは、共産主義のイデオロギー色のない、日本新党を経て、
政党としての主義を欠き、保守自民に対して中核的な主義のない野党
は、単に、政権に反対する野党になったのです。その結果が、合計で
も少数にしかならない野党の分立でした。

【自民党は、野党との連立に活路を見出した】
少数政党になっていた自民党は、社会党と新党さきがけと連立して多
数派を形成し、奇策として社会党の村山富市氏を首相にしたのは、ご
記憶でしょう(1994年)。党が過半数を占めないときは、主義をどう
曲げても、連立しか手段がないからです。

公明党との連立もこの筋です。公明党が野党連合のままなら、自民は、
これからの選挙でも、政権をとることができないでしょう。公明党は
自民と組むことで、党の固有政策を実行しやすくなると考えたのです。

95年の1月17日には、阪神淡路大震災が起こっています。

【経済の転機が1995年だった】
この1995年は、生産年齢人口(15歳から64歳)の減少がはじまって、
実質GDPの増加は、1人当たり生産性の上昇分(ほぼ1%台)しかなく
なったときでもあります。1994年からの地価下落は、生産年齢人口減
が、需要面での理由でした。

通貨では、国内の不況にもかかわらず、1995年は、1ドル=79円とい
う超円高でした。その原因は、「大震災の保険金支払いのため、ドル
国債をもっている日本の保険会社がドルを売る」という過剰観測だっ
たのです。このため、米銀が先回りしてドルを売り、大震災の被害と
原発の自壊から経済が低迷していた日本の円を米国が買ったのです。
政府には、突然の円高の理由がわからなかった。

しかし「日本からのドル国債売り」は、米国側の短絡的な誤認でした。
日本が米国債を売り越すことはなかったからです。このため79円とい
う超円高相場は、数か月で終わり、あとは一直線の円安(ドル高)で
した。日本の、金融危機の直前の1997年には、「1ドル=140円」とい
う超円安に転じたのです。円安とは、ドル買い/円売りのことであり、
日本のマネーの海外流出です。

1997年のアジア通貨危機、1999年のロシアの国債でデフォルト(ルー
ブルを1000分の1に切り下げ)の中で、世界の一極になっていた米国
では、
・第一次IT株バブル(赤字企業のトッドコム・バブル)に向かって、
株価が上がり(2000年4月に崩壊)、
・世界のマネーは「ドル買い/自国通貨売り」をしていたからです。
(90年代後期のドル高と超円安の理由)

【公明党との連立】
1999年から、単独では過半数がとれなくなった自民党は、約870万票
の、動かない基礎票をもつ公明党と連立して政権を組みます。

このときから、選挙票の約10%を掌握する公明党との、選挙協力が、
自民党の過半数の維持を支えてきた原因になったのです。冒頭で示し
たように、10人のうち1名の支持の移動(与党→野党、または野党→
与党)が、政権を左右するからです。

2001年には、「自民党をぶっこわす」と言って党内野党を標榜し、反
自民の国民からも支持を得た、低くとも45%付近という高い支持率の
小泉内閣が成立し、2005年の第三次内閣まで続きます。

2005年は、複雑な政治を、ワンフレーズに単純化する才能があった
「郵政選挙(郵貯の民営化をめぐる選挙)」で、自民は勝利し、民主
党は惨敗しています。自民の大勢は郵政国有化だったので、小泉内閣
はまさに党内野党でした。

【衆参ねじれ国会のため、年変わりの内閣になった】
2006年には、小泉首相の辞任をうけて、第一次安倍内閣が成立してい
ます。安倍政権では、5000万人の年金記録に、職場を変わったあとの、
保険料支払いの継続に問題が起こっていました。

安倍首相は、2007年の参議院選挙での惨敗(自民党は結党以来はじめ
ての過半数割れで半減:民主党が参議院の第一党)と、潰瘍性大腸炎
の持病ため辞任し、福田・麻生と「1年内閣」が続きます。短命内閣
の原因は、参議院では少数派の「衆参ねじれ国会」になって、野党の
反対する政策と法案が、通らなかったからです。

【年金の記録漏れが、政治問題化した】
リーマン危機のあとの2009年には、308議席をとった民主党政権が誕
生しています。鳩山内閣の支持は、最初は80.6%と驚異的でした。も
っとも大きな原因は、自民党を崩壊させた年金問題でした。衆議院の
過半数は、233議席です。

このときの民主党の議席はわが国の議会史上、一党では最大数でした。
自民の復活はないと見られていて、献金をしていた経済団体と医師会
などはこぞって、民主党支持にまわっていました。

【主義のない民主党政権は、事業仕分け】
国会で審議を受けにくい、特別会計に属する特殊法人(現在の独立行
政法人)の財政支出を減らすための事業仕分けでの、「(スーパーコ
ンピュータで2位ではダメなんですか」という即妙の蓮舫氏の発言」
は、記憶に新しい。

しかしリーマン危機のあとの不況に対して、財政赤字の縮減派だった
民主党は金融的な対策が打てず、3倍くらいに膨らんだバブルだった
支持を、急速に失っていきます。国民は、一貫した主義をもたず、
「新しかった」だけの民主党への期待を、短い期間でしぼませたので
す。

(注)小池百合子氏の「希望の党」に似ています(2017年9月25日に
結党された)。2017年の衆議院選挙では、政権を奪取する意欲を示す
べく、衆議院の過半数(233人)を超える235名の候補を出しました。
しかし結果は、小選挙区18名、比例区32名で合計50名の当選でしかな
かった。現在は雲散霧消し、所属議数が衆議院2名、参議院1名という
諸派の泡沫政党です。

希望の党は結党時の、信頼を失う不手際から、逆に自民党の大勝
(284議席)を許したのです。公明党の29議席と合わせると313議席で
あり、2/3の310議席を、3議席超えています。小池氏から「排除され
た」側の立憲民主党は、希望の党を5名上回る55名でした。2017年10
月のことですが、10年も前のことに思えますね。

【主義があるから政党になる】
もともと政党は、政策と主義に衆参して作られるものですが、当時の
民主党と、現在の立憲民主党は、「反自民」というだけで、その主義
は見えない。

このため政権与党に対しては単に反対となって、国民の支持を失って
います。与野党とも、拠るべき政治的な主義がないことが、「議員で
あること」が目的の政治家を生んでいます。

立憲民主党とは「憲法主義」をいうのでしょうか。不明です。社会民
主主義とは言っていません。与党となったときの政策の軸が、かつて
の民主党のように不明です。これが、支持率が低い理由でしょう。希
望の党は、もう語るに落ちます。

国民は、小池氏個人への浮動的な人気だった「希望の党」に参集しよ
うとして拒絶された民主党の議員が、実質的に1億円の報酬がある議
員を続けるために集まった政党であることを知っています。

大阪では第一党の維新は、何をどう刷新するのか、わからない。
野党では、共産党だけが、一貫して主義と政策は明確です。

【欧州では社会民主主義】
欧州には、資本主義を否定する共産主義ではなく、国民の福祉を推進
する社会民主主義」があります。米国では、保守の共和党に対してリ
ベラルな民主党です。

このため欧州は、総じて、福祉目的の税負担が高い(国民所得に対す
る、税と社会保障の負担金の割合)。フランス67%、イタリア64%、
ドイツ53%、英国46%です。米国は、まだ33%と低い(2018年)。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/238.pdf

【米国の財政に、控える問題】
日本の10年遅れの、米国の団塊の世代8000万人(2000万人×20年:日
本は200万人×5年)の高齢化から、公的年金と医療費が増えて、10年
後の国民負担は、現在の日本並みの43%に上がっているでしょう。

日本が90年代の公共事業費40兆円を20兆円台に半減させたように、米
国では2023年ころまでに軍事費(80兆円)を減らさないと、やって行
けない財政になるのです。

・トランプの中国への関税、
・その後の対米貿易黒字国からの輸入制限と関税、
・そして、「米軍の前方展開(欧州、アラブ、日本、韓国への駐
留)」からの後退の意思は、トランプ減税で、年1兆ドル(110兆円)
に増える米国の財政赤字の拡大から来ています。

【お金(財源)の面から政策を考える】
お金の面から政策を考えると、その意味が分かります。政府の財政も、
家計と同じ、キャッシュフローの大福帳会計だからです。企業会計は
複式簿記ですが、政府の会計は大福帳です。借金と国債は、キャッシ
ュフローの計算では収入になります。

日本は、国民所得(414兆円)に対して、税と社会保障の負担は42.5
%です(2018年)。ドイツより、約10ポイント低い。

しかし人口の高齢化が進展した2000年代からは、社会保障費(総額で
は約121.3兆円:年金56.7兆円、医療費39.2兆円、介護費他25.3兆円
:2018年)の増加が主因になっている財政赤字(=赤字国債の発行)
が、国民所得の6.2%はあるので、潜在的な税負担を含むと48.7%に
なります。英国の国民負担率(46%)を超えて、ドイツ(53%)に迫
っています。

国民所得は、GDPから減価償却費(約100兆円)を引き、消費税・物品
税などの間接税も引いて、政府からの補助金を加えたものです。世帯
所得と企業所得に当たります。この総所得のうち、48.7%が、わが国
の国民負担(税+社会保障の保険料)です。すでに、高い負担です。

2000年代に、所得のうち約半分が「自分では使えない社会」になって
います。これを政治問題化することが、必要でしょう。高福祉・高負
担の社会民主主義がどうかということです。西欧では、1970代の冷戦
期にまず北欧で生まれて、西欧に広がっています。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/238.pdf
https://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/201906_00.pdf

【後記】
1回目の送信は、ここまでとします。続きは、このあと、すぐに送り
ます。なお本稿は、有料版を、一部修正したものです。

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