今年の夏は選挙の季節;その内容の分析(2)
This is my site Written by admin on 2019年7月13日 – 10:05
前編につづく、後編を送ります。2012年末の、自民が復帰した衆院選
のときからの、18歳から30代の、自民党への支持の高さが、どんな理
由からきているのか。これを解くことは、民主党政権への失望から、
自民党を復活させた経済政策を見ることでもあります。

ただし、同じ18歳から30代でも、女性の自民党支持率は、50歳以上の
世代と同じように低い。これはなぜなのか。

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  <408号:今年の夏は選挙の季節:その内容の分析(2)>
       2019年7月10日:有料版

【前編の目次】
1.政党の支持率

【後編の目次】
2.自民党が、政策面では、社会民主主義風になった
3.失敗を振り返らず、解党した民主党
4.安倍政権の経済・金融政策の中核にあるのは、円の増発
5.若い世代の、自民党支持率の高さの原因

【後記:アマゾンのサイト】
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■2.自民党が、政策面では、社会民主主義風になった

【社会民主党の政策になった自民党】
1年に35兆円から40兆円という、(社会保障費の増加が主因である)
財政赤字を続ける自民党を見ると、実質的な政策は、「西欧風の社会
民主主義」に変化しています。

◎ただし、わが国では、戦後の人口における年齢構成の大きな歪みか
ら、高齢者の自然増と現役世代の減少によって、2000年代から公的年
金・医療費を原因に財政赤字が増加して、実質的な高負担になったの
であり、1人あたりに支給する社会保障費の増加ではなかった。

このため、自民党の社会民主主義的な政策は、意識されなかったので
す。ここに、世界に先行した人口の高齢化が生んだ、歪みがあるので
す。

(注)米国は、日本に15年遅れて2015年から、中国は20年遅れで、
2020年から高齢化に入ります。両国とも「大きな財政赤字から日本化
する道」をたどることになります。米国の連邦政府の財政赤字は1兆
ドルを超えて、名目GDP比(2019年:21兆ドル)で4.8%になっていま
す。日本が4.2%ですから、すでに近い。中国の財政赤字はGDP比3%
とされますが、合計が集計されない地方財政の赤字が大きいので5%
はあるでしょうか。

選挙結果では、自民党の変身が、野党から社会民主主義のお株を奪っ
ています。これが、野党が国民の10人に1名からしか、固定的な支持
を集めない少数党になった最大の原因でしょう。

安倍自民党は、保守が、財政赤字と日銀の国債買い(財政ファイナン
ス)を財源にして、福祉負担の大きな社会民主主義を飲み込んだので
す。

この点をジャーナリズムは指摘しえていません。ジャーナリズムは、
もともとエスタブリッシュメントがもつ強制権力への批判によって、
存在理由をもちます。

批判は非難ではなく、カントが『純粋理性批判』で使ったような、ク
リティックです。日本語では「クリティックは批評」になってしまう
ので、批判が非難と同一視されます。

米国にはある、保守派のジャーナリズムが成立せず、朝日新聞のよう
な批判が、反政府になる理由です。ジャーナリズムは、本来、人民日
報のような政府広報紙であっては、いけないものです。

SNSを含むインターネットの時代になり、日本特有の宅配で部数が多
かった大手新聞の購読数が、年率2%から3%で減り続けていることが、
論理的なクリティックではなく、政治家のスキャンダルに偏った報道
のイエローペーパー色が強くなった理由でしょう。

宅配依存の新聞は自らの記事内容で、自滅しているように思えます。
他方、購読が減っていた、保守的革新のNYタイムズ紙は、電子版の有
料購読数を450万部に増やすことによって復活しています(2019年3
月)。2025年には1000万部を目指すという。

当方も、ウォールストリートジャーナルと日経新聞は、電子版で参照
することが多い。長年とっていた英エコノミスト紙のサーモンピンク
紙版は、やめました。電子版のブルムバーグとロイターがあるからで
す。日経新聞は切り抜きを約30年続けていますが、次第に切り抜く記
事が少なくなっています(A4のノート1冊分が約2か月)。

【自民党は、革新政党だと自称する】
安倍首相が「自民党は、革新政党だ」という理由は、年金、医療費、
介護費の社会保障で赤字予算を組み、社会民主主義を実行していると
いう意識があるからです。問題は、福祉の財源が、国債(政府の借金
の証書)発行であることです。

(注)小泉首相は「(公共事業の増加をいう)自民党をぶっこわす」
と言って人気を得て、90年代は40兆円だった公共事業を20兆円台に半
減しています。安倍首相は、財政主義(財務省)に立たない社会保障
政策を推進しているという意味で、「自民党は革新」と自称したので
す。

いずれも、旧自民に対する野党的な姿勢が、政権への国民の支持が高
く、野党が低い理由でしょう。野党は、安倍人気の根源が、財務省の
財政主義に立たないというところにあることを、知らねばならない。
民主党政権は、「事業仕分け」などを通じて、財務省に発する財政主
義でした。

財政予算を編成することから官僚のトップに位置する財務省は、安倍
首相からは、「増税と財政赤字の削減主義」に立ち、国民負担の増加
と福祉予算削減を主張していため、財政保守派に見えているのでしょ
う。

▼日銀のゼロ~マイナス金利策が、財政危機を防いでいる

財政赤字が35兆円程度で済んでいる理由は、国債の金利が0%付近で
あるため利払いは8兆円でしかないからです。1985年(昭和60年)に
は、国債の残高は150兆円でしたが利払い費は10.5兆円でした。金利
が6%台だったからです。

【国債残×金利=利払い】
1998年には、国債残が295兆円と約2倍に増えても、利払い費は10.5兆
円でした。国債の平均金利が3.5%だったからです。

2018年は、国債残は883兆円と、1998年の3倍になっていますが、利払
い費は9兆円(予算)です。残った国債の平均金利が1%と低いからで
す。現在の発行は10年債でも0%以下のマイナス金利です(-0.15%付
近)。
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/005.pdf

国債の金利が2.5%を超えると、財政危機(国債の新規発行が金利を
上げる状況)になり、3%を超えると新規国債の発行が困難になり財
政支出のデフォルトに陥ります。

これが、「日銀のゼロ%~マイナス金利策」で防がれているのが現在
の状況です。「いつまで続けることができるか」は、政府から語られ
ない問題ですが、内閣府が作った「中長期の財政試算」では、金利の
目立った上昇は2022年からとしています。

2022年の名目長期金利は0.4%、23年0.9%、24年1.4%、25年2.1%、
26年2.6%、27年3.1%、28年3.4%です。これは現在の異次元緩和を、
2022年からは縮小しやめていくということです(成長実現ケース)。

GDPの成長率が低いベースラインケースでも、2022年0.2%、23m年0.
6%、24年1.2%、25年1.8%、26年1.8%、27年2.0%としています。
異次元緩和を縮小開始の時期は、やはり、2022年です。
https://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h31chuuchouki1.pdf

政府が側の「中長期の財政試算」では、GDPの含みのマイナス要素に
なる金融機関の損失は、計算されていません。平均満期が8年のゼロ
金利国債は、1%の金利上昇につき7.5%価格が下がります。1000兆円
以上になっている既発国債が75兆円は下がって、国債をもつ日銀、金
融機関がともにその損をするということです。2%に上がると14%
(140兆円以上)の下落です。

【無残だった、菅内閣と野田内閣】
菅内閣では、2011年の3.11に東日本大震災が起こり、政府が偽装した
原発事故の問題がありました。野田内閣は、財務省に押し切られ、消
費税10%の法を成立させたあと、当時の安倍総裁に党首討論で挑発さ
れて行った衆議院の解散・総選挙で惨敗し、自民党政権(公明党との
連立)に代わっています。2012年12月のことでした。

■3.失敗を振り返らず、解党した民主党

民主党政権の政策の目玉は、総予算が388.5兆円の特別会計に対する
事業仕分けでした。目的は、ムダな財政支出を削減して、財政の赤字
を減らすことでした。(注)特別会計の総額から、一般会計、および
会計間の重複を除く純計は195.7兆円です。これでも、一般会計の
100兆円の約2倍もあります(2018年)。

特別会計の純計の内訳で大きなものは、
(1)国債償還費 88兆円(長期国債は60年償還とする。この償還費と
国債の金利払い)
(2)社会保障給付金 60兆円(保険料以外の社会保障支出)
(3)地方交付税 19兆円(国税の地方への分配金)
(4)財政事業融資への繰入金 12兆円(財投貸し付けへの繰入金)
(5)2009年当時はなかった復興費 1.5兆円(東日本大震災への復興
予算)

特別会計が195.7兆円といえば、一見では、巨大財源のよう見えます
が、削減が可能なのは社会保障費だけです。あとは、およそ削減でき
ない経費です。
https://www.mof.go.jp/budget/topics/special_account/fy2018/2syoutokubetukaikeinogennjyou.pdf

しかし年金、医療費、介護費の社会保障費は、国民を困窮させるので
削減はできない。民主党が意気込んで行った、政府事業の仕分けの成
果は、目標とした16.8兆円からは程遠く、予算削減額は、その1/10の
1.6兆円でした。

「195.7兆円の財源が宝の山に見えたが、瓦礫しかなかった」。この
無知による失敗を民主党は反省せず、政党して消えました。

「反省」とは、市失敗の原因を振り返って確定し、原因対策を立てる
ことです。これが、「民主党はダメだ」という失望を生んだもっとも
大きな原因でしょう。

308議席という、明治時代以降、他の政党が一党では得たことがない
圧倒的多数を得ながら、民主党政権は政策で迷走したのです。「2位
じゃだめなんですか」という蓮舫氏の言葉だけが残っています。

■4.安倍政権の経済・金融政策の中核にあるのは、円の増発

安倍政権は、米国ノーベル賞学者クルーグマンが2001年に書いていた
『流動性の罠』を日本経済のベースとして、財政赤字の縮減ではなく
むしろ拡大するリフレ政策をとりました。

事業仕分けの、「ムダな支出はなかった」という失敗を、傍らで見て
いたからです。

方法は、財政赤字の削減、つまり新規国債発行の減少ではなく、
日銀が、年間60兆円規模の国債を買い取る、通貨増発策でした。

2015年には、金融機関が新規国債を買っていた原資である国民の預金
が、退職後人口の増加によって増えなくなる、むしろ減る傾向でした。

預金が増えない金融環境の中で、
・政府が毎年、40兆円規模の国債を発行すれば、
・売れない国債価格が下がって金利が上がり、
・財政資金は不足して、政府はデフォルトに向かいます。

2012年の時点で、2015年にはそうなる恐れがあったのです(拙著『国
家破産』:2011年)。民主党政権の中でも、日銀は、預金の増加では
まかなえない20兆円の国債を、買い続けていました。

【リフレ政策としての円の増発】
安倍政権は、これに対して、2年後に、2%のインフレの実現を目標に
した異次元緩和策をとっています。短期金利は0%に誘導し、日銀が、
インフレ率が2%になるまで、国債を60兆円/年買い続けることでした。

社会保障費(121兆円:2018年)の増加が主因だった財政赤字は縮減
せず、金利を下げて国債を買って、円を増発するリフレ策をとったの
です。

【流動性の罠からの脱出論】
クルーグマンは、金利がゼロになった経済では、流動性選好が起こる。
罠とは預金や現金を使わず、貯めることです。

しかしインフレになれば、預金通貨と現金の価値(=商品購買力)が、
年々、目減りするから、現金を貯めることを増やさず、消費や投資に
使おうとするだろう。借入金利を下げれば、実質金利(名目金利-期
待物価上昇率)はマイナスになるので、企業の借り入れの増加による
投資も起こるはずだ。

世帯の消費と企業の投資の増加によって、インフレとともに経済は潜
在成長率を発揮して盛んになり、潜在成長率を超えた需要と、投資が
インフレを加速する。このインフレによって、日本が1998年からかか
っている金融の病であるデフレと流動性の罠から脱出できるとしたの
が、クルーグマンでした。

▼社会保障費の赤字は削減しない:事業仕分けの愚を避ける

安倍政権は、国民から不人気になる財政赤字の削減は必要がない。
インフレのためなら、むしろ財政を拡大したほうがいい。

借入需要が増えても金利が上がらないようにするには、日銀が政府の
負債である国債を買って、日銀の負債である通貨に換えればいいだけ
だとしたのです。

安倍政権には、「これが現代エコノミーだ」と自称するリフレ派エコ
ノミストの進言がありました。政府通貨の発行を説いている「現代貨
幣論」にもなっています。中央銀行による国債のファイナンス、つま
り政府負債のマネタイゼーションは、大きなインフレになるまでは、
積極的に行うべきだとするものです。

政府は、「ゼロ金利で生じる流動性の罠」から脱出するための「2%
のインフレ目標」を掲げることによって、財政赤字を、堂々と日銀に
ファイナンスさせたのです。これは、通貨の増発を原資にした、社会
民主主義の政策でもありました。

(注)社会民主主義ではありませんが、共産主義のソ連では、「政府
通貨が、返さなくてもよく、金利も要らない借金」として国有企業に
貸しつけられていました。ソ連の偽装GDPは、政府通貨によって作ら
れていたのです。日銀が行っている国債のマネタイゼーションは、政
府通貨の発行とおなじことです。

経済の潜在成長力(潜在的な生産力)が高いときに、需要を増加させ、
十分に生産力を発揮させる政府通貨の増発は、効果を上げます。しか
し潜在成長力が低いときは、政府通貨の増発も、効果を生まず、単に、
通貨安とインフレになるだけです。(注)潜在成長力とは、その国の
経済の、商品生産力の100%を言います。日銀が試算してる潜在成長
率は1%です(2018年)
https://www.boj.or.jp/research/research_data/gap/gap.pdf

▼インフレ目的の、円安誘導ためのドル買い

自民党が政権につくことが確実視されていた2012年末からは、政府系
金融(とくに郵貯とかんぽ生命)を使って、ドル国債を買わせ、「円
安誘導」も行っています。

円安は、ドル建ての輸出物価を下げ、輸入物価を上げます。輸入物価
の上昇分、国内の物価は上がる(円安インフレ)。輸出物価が下がる
分、輸出は増えて、GDPが増える。

副次的には、ドル高によって、対外資産1000兆円(2018年末)に為替
差益分が、400兆円くらいはいっています。10%(当時は約8円)のド
ル高(円安)でも、全体では50~60兆円/年の評価益ですから巨大で
した。(注)円高/ドル安のときは、逆の評価損になります。

政府系金融による[隠されたドル買い]は、2012年11月からであり、
金額は30兆円スケールでした。政府の連結のバランスシートにしか現
れないようにように隠すのは、中国のような為替操作国と言われるか
らです。

日銀が、ゆうちょ銀行とかんぽ生命がもつ国債を発行価格より高く買
いあげて円を供給する。→ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、この円をも
とにして、30兆円の「ドル買い/円売り」をして、円安を誘導すると
いう方法でした。

円は、2012年の80円から、2013年は100円台、15年には120円台という
50%の円安になったのです(19年7月は108円台)。
この間の、ドル建て対外資産の評価益は、ピークで400兆円だったで
しょう。

金融機関と、海外に工場をもつ輸出企業、120兆円の外貨準備をもつ
政府の評価益です。注意すべきは、「評価益」であることです。実際
に、ドル建ての対外資産が増えたのではない。GDPの、潜在成長力増
加の要素ではないことです。国の経済の潜在成長力は、資本の投下、
つまり設備投資に増加によってしか増えません。

ところが2000年代の企業は、人口問題からの将来GDPの成長の低下を
予想していて、営業キャッシュフロー以下の投資しかしていません。
日銀による増加マネーは、世帯の住宅ローンの増加と、企業の借り入
れによる設備投資の増加にはなっていないのです。
世帯と企業の、借り入れの増加のなさが、日銀が国債の現金化(財政
ファイナンスとマネタイゼーション)を約400兆円行ってもインフレ
になっていない理由です。

クルーグマンの「流動性の罠」から離脱するための、ゼロ金利と財政
ファイナンスの処方箋は、人口の高齢化と減少予想から有効需要の増
加が見込めない日本経済に対しては、誤っていたのです。

▼日銀を含む政府系金融による株買い

2014年10月からは、日銀が、公的年金を運用している政府系のGPIFの
もつ国債を買いあげて、GPIFは国債と振り替わった現金で、日本の株
式を36兆円に、海外株式(ほとんどが米国株)を37兆円にふやしてい
ます。郵貯もかんぽも、内外の株を買いました。

この政府金融(郵貯銀行の総資産208兆円、かんぽ生命76兆円、GPIF 
159兆円;合計は443兆円と資金量が巨大)の、日銀に国債を売って得
た現金での株買いが、アベノミクス株価の上昇の主導をしたものです。

これに、日銀の株ETFの買い26兆円も加わっています(年間6兆円の枠
で継続中)。

【70兆円の買いが、株の時価総額を直接に210兆円はふやした】
日銀の26兆円を含む政府系金融による、国内の株買いは、2012年末以
降の6年間で70兆円にはなるでしょう。

70兆円の買いは、年間12兆円、月間1兆円です。現在の、ちょうど
600兆円の時価総額(東証一部:19年7月)のうち、株価への、直接の
レバレッジ率を、米国の自社買い並みの3倍と低く見ても、210兆円分
(35%)に相当するでしょう。

【民間の株買いの誘導分を含むと50%の300兆円】
平均指数の日経平均株価で言えば、2万1500円のうち6500円分です。
ただし、政府系金融が誘導した民間の株買いが上げた分を含むと、ほ
ぼ50%(1万円:時価総額では300兆円)が、政府系金融が惹起した株
価と推計します。

前号で述べたように米国株は、2011年から18年に社債で調達した4兆
ドル(440兆円)が、株価の時価総額では12兆ドル(1320兆円)を上
げています。現在の時価総額3000兆円の44%分です。

▼元になったこと

リーマン危機後の、FRBのドル供給4兆ドル(440兆円)
<社債発行への波及>→低金利の社債発行(負債の増加)による、株
買い4兆ドル(440兆円)
<株価上昇への波及>→株価時価総額3000兆円→米国経済の高成長説
が生じる。

これは、もとをたどれば、FRBのドル発行の増加、つまりFRBの負債の
増加が上げた株価です。

日本では、元になったのは、日銀の負債増加になる国債の現金化です。

【元になったこと】
日銀の国債の買い400兆円により400兆円の現金を増加供給
<波及(1)>→ゼロ金利の円での2%から3%の金利がつくドル買い
(円売り)→40%の円安→対外資産の評価が40%上昇した

<波及(2)>→政府系金融機関の、手持ち国債が、日銀によって現
金化された→その現金による株買い(70兆円)→日本の株価を35%
(210兆円)は上げた。

以上のように、日米の株価は、いずれも、中央銀行の通貨増発がもと
になってものであり、「大きな負債の上の饗宴」です。宴(うたげ)
は、飲み会であり終わりが来ます。いつまでもつづけることはできな
い。この点が、GDPの潜在成長力を高める設備投資とは違います。

■5.若い世代の、自民党支持率の高さの原因

【小泉内閣は、高齢者になるほど支持が高かった】
小泉内閣末期だった2006年の調査では、
・自民党支持率は20代と30代は30%前後、
・40代から50代が30%後半から40%台、
・60代以上が40~50%台でした。
年齢層が上がるにつれて、自民党支持が増えていたのです。
(注)データは朝日新聞社の調査

2006年の第一次安倍内閣では、20代と30歳台の自民支持は、10%台と
極端に低迷しました。

【第4次安倍内閣の異変】
ところが、2009年からら2012年民主党政権を挟んだあと、2018年の第
4次安倍内閣の支持率では異変が起こっています。

18歳から30代の若年層の、男性の支持が53%から57%と極端に高くな
ったことです。同年代の女性の支持からも19ポイントくらい高い。女
性の安倍首相を支持しない率が高いのは、「人格が信頼できない」と
感じる人が多いからでしょう。女性は、政策より人物で人を選ぶ傾向
が強いからです。

一方で、50代、60代、70代の男性の支持は、35%から40%であり、
18歳から30代よりも17~18ポイント低いのです。18歳から30歳の、女
性の安倍内閣の支持率と同じくらい低い。

第一次安倍内閣からの、年齢別支持層の大逆転は、なぜ起こったの
か? 50代、60代、70代の男性の支持は、35%から40%ですから、小
泉内閣のときと、さほど変わった点は見られません。自民支持層は、
変わらず、自民を支持しています。

大変化が起こったのは、18歳から30代の、安倍内閣支持率です。
おそらく支持した民主党、次は希望の党への失望から転じて、まだ痛
みと負担が感じられない通貨増発を財源にした社会民主義的な政策へ
の支持でしょう。

18歳から30代にとっては、有効求人倍率が政権への支持を決めます。
民主党が政権をとった2009年の有効求人倍率は0.5倍と低かった。求
職者2名に対し1名の求人です。2018年には、これが1.6倍上がってい
ます。経済成長(企業の売上増加)が低い中で、「人手不足」とすら
言われます。

50代、60代、70代で新しく就職する人は少ない。このため、自民支持
は小泉内閣のころから変化はない。正社員への就職に大きく関係する
18歳から30代の、特に男性の支持が上がったのでしょう。

若い女性の支持が低いのは、「モリカケ問題」で露呈した安倍さんの
人格への嫌悪からでしょう。

永久就職は(たぶん)結婚でしょうが、30代(30歳から39歳)で結婚
していていない女性が42%に増えているからです(2015年)。1980年
は9%、90年は14%だったので3倍増です。

しかも、30歳で結婚していない女性が、40歳になる前に結婚する確率
は、33%程度でしかないという。40歳を超えると、生涯の独身が増え
ます。婚活が事業になる理由が、ここにあるのです。女性の結婚率は、
内閣にかかわらず、下がり続けています。

これが、
・新卒の就職率が大きく改善した18歳から30代の男性の、自民・安倍
内閣の支持の高さと、
・同世代の女性支持の、男性に比較した17~18ポインもの支持率の低
さの原因でしょう。少子化の主因は、未婚率の上昇です。

【少子化の原因は非婚率の高さ】
わが国の経済の、最も大きな長期的な問題は、非婚率の高さからくる
少子化です。女性が子供を産むのは、ほぼ40歳までです。

わが国では、フランスのよう非婚者の出生率の高さがなく(フランス
では60%の子供が非婚者と言われる)、子供をもつ未婚者は2%程度
だからです。特に30代の未婚率が、以下のよう4倍から7倍と大きくあ
がっています。

未婚率  25歳~29歳  30~34歳    35歳~39歳
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  
男性   50%→72%  10%→47%  5%→35%
女性   20%→61%   8%→35%   6%→23%
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~   
(注)前の数字が1970年の未婚率、後が2015年(2015年:内閣府:
1970年のとの比較)
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/data/mikonritsu.html

【非婚の主因は、雇用の形態】
結婚しない人(あるいはできない人)が増えている主因は、非正規雇
用の増加による、経済的な安定のなさでしょう。大卒が増える20歳か
ら24歳の男性でも、33%(3人に1人)が非正規雇用です。同年代の女
性では、38%が非正規の雇用です(2017年)。
http://www.garbagenews.net/archives/1954673.html

2002年には、男女の全体で、正社員の29%だった非正規雇用は2017年
には37%に上がっています。原因は、「1人当たりの、生産性の上昇
の低さ(約1%/年)」です。2%から3%は必要な賃金上昇を。産業の
平均で1%の生産性上昇ではまかなえないからです。

【投票行動】
未婚が平均50%以上に増えている18歳から30歳の男性の、安倍内閣支
持率の高さが、選挙に関係するには、投票率の低さが問題になります。

2016年の、前回の参議院選挙では、20歳代の投票率は35%でしかない。
30代が44%、40代が53%、50代63%、60代70%です。70歳以上は60%
に下がっています。(全体平均は54%)

年齢別人口では、20代が110万人ですが、40代は180万人くらいです。
20代の支持率が約2倍あっても、人口数ではあまり変わらないことに
なる。

その上に、騰落を決める投票率は40歳台、50歳代の53%~63%の平均
58%に対し、20歳代の投票率は35%でしかない。6/10です。

18歳から30代男性の、安倍内閣への支持率の高さは、得票数が決める
選挙では全く生きていない。このため、選挙の、党派別の得票は、世
論調査の自民支持、安倍内閣の支持率より、相当数、低くなります。

【参院選の結果は、投票率が決める】
やはり投票に行く人(3年前の参議院選挙では、57.5%でした)の10
人に1人の、投票の移動が結果を決めるでしょう。与党への支持が10
%、野党に移動すれば野党の勝利でしょう。

移動しないなら与党の勝利です。与党の勝利は動かないでしょう。し
かし参議院で2/3に達するまではいかないと予想しています。自民党
の支持率が高い20代、30代の投票率が上がるとは思えないからです。
却って、年金問題から、50代以上の投票が増えるかもしれません。注
目すべきは、この投票率がどうなるかです。

投票に、行きますか? 当方、近くに貼られたつくり笑顔の候補者の
ポスターを見て、気分が失(う)せているのですが・・・。

【後記】
新刊の、『臨界点を超える世界経済』が、アマゾンや書店で売られて
います。アマゾンのランキングでは、世界経済情勢のカテゴリーで、
1位から5位くらいを変動しています。2時間の購読数で決まるようで
す。

これからほぼ5年の世界経済を、負債の増加から分析し、ドル、円、
ユーロ、人民元の通貨価値を予想し、金融資産を守る方法も示しまし
た。筆者の通貨論の集大成になるものでしょうか。

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