日本株の超楽観相場は、いつまで続くか
This is my site Written by admin on 2023年6月17日 – 17:00
日経平均は、6月の、先物の限月(SQ値での清算日)を過ぎても上が
り、3万3706円という異例の高さになっています(6月17日)。上昇は3
月末以来、80日です。2万6000円台から7100円(27%)上げています。

原因は、
1)米銀の危機のときは(23年3月)、2.2兆円売り越していたガイジ
ンファンドの、4月からの、一転した買い越し(4月2.2兆円+5月2.4
兆円+6月の1週9854億円=5.5兆円)。

2)ガイジン買いに重なった、事業会社の自社株買い3.2兆円です(過
去最高:5月)。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB236HU0T20C23A5000000/

両方とも、過去になかった金額の大きな買いです。

この80日、1)日本の個人投資家と、2)銀行を含む機関投資家は、3
万円以上に上がった株を手放し、売り越しています。金融商品(全部
が債券)は、市場の売買で価格が決まります。

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<Vol.1347号:土曜増刊:
       日本株の超楽観相場は、いつまで続くか>
       2023年6月17日:有料版・無料版共通

【目次】
■1.売買で決まる株価
■2.ガイジンファンドの異例な買い越し
■3.ガイジンファンドが4月から急に、2兆円/月以上、日本株を買い
越した理由
■4.今後の問題は、ガイジンファンドの大きな買い越しが、いつまで
続くかという一点
■5.銀行危機の本番になる不動産価格の下落が控えている
■6.2023年末までの株価予想
■7.米欧の物価と、賃金の上昇率は高い
■8.円安はどうなるか?
【後記】

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■1.売買で決まる株価

4月、5月、6月のように買いが多いときは株価は上がる(売買は普段
の2倍の量です)。

◎株価の予想とは、どの主体がいくら買うか。どの主体がいくら売る
かの予想です。

物価と金利、企業の期待利益、GDPの成長率、通貨の増発、通貨レー
トなどのファンダメンタルズでは、短期の株価予想はできない。

投資主体のグループ区分は、
1)個人投資家(約700万人:名寄せ後)、
2)東証の売買の70%を占めている海外ファンド(運用マネーが巨大
なヘッジファンドとインデックス・ファンド)、
3)機関投資家(生損保、都銀、地銀、信託銀行、投資信託)と政府
系金融(日銀+GPIF+ゆうちょ・かんぽ)、
4)主要100万社の事業法人です(上場が約3300社)。
(安藤証券:2週遅れくらいで公表される主体別売買)
http://www.ando-sec.co.jp/market/movement.html

3月末からの日経平均の、7000円(27%)の急騰は、
1)ガイジンファンドの買い越し(5.5兆円:先物が60%)、
2)事業会社の、自社株買い(3.2兆円:株価上昇には約2倍の6.4兆円
の効果)によるものです。

日本の個人投資家と、銀行と生損保が先頭の機関投資家は、
ガイジンファンドと自社株買いでの買い越しの分(合計8.7兆円)を
売り越しています。

これが米欧の市場にはない、東証の特徴です。

◎個人投資家と機関投資家は、グループ合計では上がる局面での「逆
張り」を、6月も続けています。

(注)買い越し=買い>売り、売り越し=買い<売り、です。
買い越しと売り越しは、事後に金額が一致します。

東証での、買いのオファー(成り行き買い)の勢いが強いと、売りの
オファーの価格も上がります。

下がるときは成り行きの売りのオファーが多く、買いのオファーが少
ないときです。市場での売買が実現しない価格での買いや売りのオフ
ァーを出しても、現物株の売買は成立しません。

【先物とオプション】
そのときは、先物やオプションの売買になります。現物市場とは別の、
先物やオプションの価格と、現物の価格に相当の差があるときは、証
券会社やファンドには、高い方を売って安い方を買う裁定取引(アー
ビトラージ)の確実な利益が生じるので、現月までの金利込みの価格
が一致するまで、株価は動きます。

このため、
・コール・オプション+先物買いの主導で、株価が上げ、
・プット・オプション+先物売りの主導で下げる相場になるのです。
世界に共通です。

最低でも、証拠金の数倍のレバレッジがかかるオプションと先物売買
は、ガイジンファンドに多い。証券会社に差し入れた500億円の証拠
金で、2500億円を売買するような「短期借入金での売買」です。

株価が10%動いたとき、5倍のレバレッジでは、50%の損益になりま
す。

■2.ガイジンファンドの異例な買い越し

◎今回の株価予想では、ガイジンファンドの買い(60%が先物)の主
導で上がった相場が、必ず来る清算の期限日までに到来する売りのと
き、どれくらい下がるかを見極めることです。

1)事業会社の自社株買い(5月3.2兆円)は、6月、7月、8月とは、続
かないでしょう。6月、7月、8月の買い越しは、たぶん各月1兆円以下
の、2000億円や3000億円、あるいは売り越しに下がるからです。

2)アベノミクスの株価を上げた日銀の株ETF(23年6月残高37兆円)
は、今回は買い増しではなく、「売る方向」です。

3)年金基金のGPIF(国内株48兆円、海外株46兆円)にも、目一杯買っ
ているので、買い増しの方向はない。(年金基金の191兆円の運用)
https://www.gpif.go.jp/operation/34576289gpif/2022_3Q_0203_jp.pdf

以上から、6月、7月、8月の株価は、一手に、「ガイジンファンドの
買い越し」がどうなるかにかかっています。

・3000~5000億円/週の規模の、大きな買い越しを続けるか(上が
る)、
・1000~2000億円/週の規模にスケールダウンするか(下がる)、
・マイナスの、売り越しになるか(大きく下がる)、です。

突き詰めると、単純な要素です。

米国物価、日米の金利、米国の失業率、FRBの利上げなどのファンダ
メンタズには、ほぼ無関係です。

◎わが国の株価論では、「PBRで1倍付近が多く、全体では1.6倍でし
かなく、3倍の米国に比べて1/2と低かった日本株が、海外投資家によ
って見直され日本株が買われた」というものがほぼ全部でしょう。

【低いPBR論はあるが・・・】
PBRは、「株価時価総額/純資産」の倍率の評価指標です。
PBR1倍の意味は、株価が会社の解散価値しかないと言うことです。

日本株で、30兆円規模と、もっとも時価総額が大きなトヨタのPBRは、
23年3月末には0.9倍でした。現在、1.3倍の2358円です。日経平均の
225社全体のPERも1.9倍に上がっています(23年6月)。
https://nikkei225jp.com/data/per.php

以上は、評論家や金融ジャーリズムが得意な「あと解釈」の論です。
株価が上がったあと、あるいは、下がったあと、その合理的な理由を
探して述べることです。

自分のマネーを使う投資家、ヘッジファンドの運用担当であれ、「あ
と解釈」を理由にした売買は、行わない。

自分で「これから上がる、あるいは下がる」という見通しをつけて売
買します。トヨタは、PBRが0.9倍だから割安であり、買うという行動
ではない。

市場は、その都度、売買のオファーの、量の一致点で売買が均衡して、
(多くが予想外になる)価格を作っています。

その均衡した価格が、未来予想によって動く。実際に売買する人にと
っては、「どんなときも日本株の出遅れや、米国株の先行」があるわ
けではない。

当方は、未来を予想して売買が起こる市場に「見直しという行動での
買い」はないと考えます。
◎市場の価格は、その時点の条件では、常に「正しい」。

■3.ガイジンファンドが4月から急に、2兆円/月以上、日本株を買い
越した理由

なぜ、ガイジンファンドは、2023年3月は、2.2兆円も売り越していた
日本株を、4月には2.2兆円、5月には2.4兆円、6月1週には、9800億円
も買い越ししたのか?

4月になって「突然、PBRの低い日本株を見直す認識の変更」が起こる
わけがない。多くの投資家の、認識の変更には、6か月くらいの時間
が必要です。

彼らは、日本株を買い越した本当の、財政的な理由は決して言わない。
推測しかない。

株の買いとは未来の利益を予想して買うことです。
損を目的に買う人はいない。
日本の株式市場の、基本条件を述べます。

1)東証ではガイジンファンドの売買が70%付近を占める。日本人の
売買は30%と少ない。米国のように50%の世帯が株を買っているでは
ない。700万人(700万世帯:13%)でしかない。

機関投資家では、2000年以降、日銀、GPIF、ゆうちょ・かんぽ以外は、
株を買い増していない。

2)日本の株価を決めるのは、ガイジンファンドの売買である。

米国株(6000兆円)に対して時価総額は約1/8なので、東証の株価は、
米国市場の1/8のマネー(1か月2兆円の買い越し)で上がる1か月に2
兆円買い越せば、大きく上がる、2兆円売り越せば大きく下がる。

2020年までに日銀とGPIFは目一杯、日本株を買ってきた。
買い増す余力がない。保有を維持しているだけである。
2020年までの株価形成の力は、ない。

3)機関投資家は、長期売り越しを続けている。

4)個人投資家は下がったときに買い、上がった時に売る「逆張り」
である。価格に対して受動的な売買であり、相場を先行して動かす
マーケットメイクはできない。

5)日本株のマーケットメイクは、ヘッジファンドとインデックス・
ファンドが、米国の1/8のマネー投資でできる。

ヘッジファンドとインデックス・ファンドは、ノンバンクの範疇。総
資金量は60兆ドル(7800兆円)、米銀の約3倍の運用資金量。

5)日本企業に対してはヘッジファンドとインデックス・ファンドは
「アクティビスト」の大株主である。

米国(自社株買い1兆ドル:130兆円/年)に対して10分の1以下と少な
い自社株買い10兆円/年の、日本の事業会社には配当としての、自社
株買いの増額を要求できる。

コロナ後の、円安で増えた利益に対して、賃金の上昇率が3%と低く、
投資が少なく累積の利益留保が多くなっている事業会社は、応じるは
ずだ(留保利益200兆円:現預金321兆円:2022年12月末)。

設備投資を減らした大手企業の預金は、借り入れが要らない(返済す
る)くらい多い。

【3.2兆円の自社株買い】
◎2023年5月には、事業会社は突然、3.2兆円/月という、異例の自社
株買いをしています。これは、3.2兆円の、2倍の金額の買い越し相当
する株価の上昇効果をもつ。

日銀とGPIF1が買い増しをせず、国内の機関投資家は合計では売り越
すので、会社の自社株買いという手段しかない。
↓
個人投資家は、自社株買いした株なら上がることが確実なので、競っ
て買うだろう。

23年5月の、事業会社の3.2兆円の自社株買いは、日本株の先物を買い
越すガイジンファンドとの「出来レース」でしょう。

以上のような、東証の状況に対して、ヘッジファンドとインデック
ス・ファンドが、
・3月の米国銀行危機の中の、債券と株価の下落で損をし、
・回復の利益戦略を、日本株を対象にして立てたことは、想像に難く
ない。これが当方の推測です。

ファンドマネジャーなら、分かるでしょうが、売るにも買うにも、確
実な理由付けが必要です。この理由付けがないと、会社は売買を許可
しません。ファンドの誰にとっても、「自分のお金」ではないからで
す。

3か月で運用マネーの10%の損をすれば、マネジャーも首でしょう。
ウォール街で多いのは昨日までは、20億円や10億円のローンで買った
タワマン、今日からはホームレス。10%は年間換算では、40%の損に
相当するからです。

このため多重のヘッジ(いわば損の保険)をかけた売買をします。利
益と損を、等分に小さくすることです。

◎日本株を買い増すときは、同額の、円の先物売りを組み合わせる。
円の先物売りは、円安のとき利益が出ます。

ガイジンファンドには、日本株が20%上がっても、10%の円安/ドル
高になると、ドル換算では10%の利益しかない。

日本株は、円安とともに上がり、円高ととも下がる傾向を持ちます。
東証でのガイジン売買が、70%を占めるからです。日本株の買い越し
とともに、円先物売りが増え、円が下がる傾向を持つのです。

(注)日本の株価が下がると、円先物売りが限月での円買いになるの
で、円は、上がる傾向をもっています。

円安のヘッジが、円先物(または通貨オプション)の売りです。
円高のヘッジは、円先物の買いです。

■4.今後の問題は、ガイジンファンドの大きな買い越しが、いつまで
続くかという一点

日本の投資家と市場を異常な楽観論が支配しています。

この楽観は、
・ガイジンファンドの大きな買い越しが続き、
・個人投資家も、大きな買い越し(週間3000億から5000億円規模)に
転じると前提しています。

円の低金利と、過剰流動性が相場環境である「見直し相場」に、
ガイジンファンドの大きな買い越しが、いつまでも続くと想定ができ
るのか? ここが、当方の基本的な疑問点です。

過去、ガイジンファンドが、年間の買い越しをしたのは、1)2017年、
2)2021年、3)2023年(6月まで)だけです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2016年 -3.7兆円(マイナスが売り越し)
2017年 +0.8兆円(プラスが買い越し)
2018年 -5.7兆円(最大の売り越し:月間平均4750億円)
2019年 -0.4兆円
2020年 -3.3兆円
2021年 +0.3兆円
2022年 -0.3兆円
2023年 +3.9兆円(1月から6月1週まで:年間8兆円のペース)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
8年合計 -13.0兆円(売り越し)
(再掲:投資家主体別の売買:2016-2023.06)

【事業法人では】
2023年5月は、自社株買いが3.2兆円あったにもかかわらず、事業法人
全体では、約4000億円の買い越ししかない。事業法人全体では、日経
平均3万円越えの株を、2.8兆円とどの主体よりも大きく売り越してい
ます。
http://www.ando-sec.co.jp/market/movement.html

【ガイジンファンドでは】
ガイジンファンドは、2023年には4月の1週から買い越しに入って、
11週の連続買い越しです(11週で+5.4兆円≒週平均+4900億円)。

こんなに長期の買い越しが続いたのは、歴史上、最初です。
今、戦後70年で、初めてのことが起こっているのです。

「PBRが米国の約1/2と低く(PBR1.9倍)、(世界の株に)出遅れた日
本株を買う」という理由付けだけで、ファンドマネジャーは、歴史上
初めての「日本株の買い越し」を続けるでしょうか? 

【PERは、S&P500より高い】
株価の評価指標であるPER(株価/次期予想純益)は、20倍に上がってい
て、NYダウの19.9倍、S&P500の19.1倍より評価が高い。

新興IT株が多い米ナスダックの29.2よりは低い。
日経平均が3万3000円台の日本株は「割安」とは言えないでしょう。

現在、欧州を除く日米の株式市場には、超楽観の、「バンドゴワゴン
の心理」が起こっています。ディズニーの楽隊に、人がついていくか
ら、自分もついていくというバブルの心理です。

【長期の不況を示す、米国の逆イールド】
2023年末から2024年までを見れば、「米国金利の逆イールド」、つま
りFRBの短期政策金利が5.0%か5.25%と高く、10年債の長期金利が3.
5%程度と低い。

金利の逆イールドは、短期マネーの需要は多くても、設備投資、不動
産投資の長期借り入れの需要が少ないことを示します。つまり、米国
の企業家は、長期では、不況を予想しています。

過去、マレにしかない逆イールドが起こったあとは、1年後くらいか
らリセッション(二期連続GDPのマイナス)入りしています。今回は
例外だ、といえる経済条件はない。

■5.銀行危機の本番になる不動産価格の下落が控えている

長期の景気を示す不動産価格は、経済から6か月から1年遅れる遅行指
標です。

◎先行指標の米国REIT(不動産の賃料を配当する上場投信)は、
2022年6月のピーク353から
・3%台だった不動産ローン金利が約2倍に上がったためと、
・リモートワークの増加でオフィス・スペースの必要が、30%減った
ため284と20%も下がっています。

REITの価格は、2023年末~2024年の商業用不動産の価格が、25%は下
がっていくことを示しています。

住宅ローン金利が2021年の2倍の6%から7%台に上がっている2024年
の米国住宅価格は、商業用不動産の価格を追って、やはり25%程度下
がるでしょう。
(ブルムバーグ:REIT指数)
https://www.bloomberg.co.jp/quote/BBREIT:IND

1)2022年から続く、金利の逆イールドと、
2)賃料の配当で決まるREITの価格の低下は、いずれも、2024年の米
国不況を示しています。

米国と欧州には、現在、不動産価格が上がる要素は皆無です。

■6.2023年末までの株価予想

現在、日米の株式市場に起こっているのは、過剰流動性による心理的
なバンドワゴン効果です。

「上がるという理由で株価が上がる状況」です。
投資家のほぼ70%が、「株価は上がる」と予想しているようです。

当方は、4月の初めには、ファンドの、一転した先物買いで上がった
日本株は、6月のファンドの決算期には、利益を確定して売り抜ける。
6月末から7月の株価は下がると予想していました。

ところが6月の第二金曜日(6月8日)の、反対売買(売り)が増える
SQ日を超えても、ファンドの買い増しは続き、日経平均は上がり続け
ています。

◎原因は、ファンドは、SQ日から3日間での清算売りより多く、6月
10日以降も先物を買って「ロールオーバー」したこと以外にない。

【ヘッジファンドの決算】
ファンドが、次に、上がった株を売って利益を出す必要がある決算は、
9月です。23年8月までは、日本株を上げる先物買いを続ける可能性が
高いようです(推測)。

(注)含み損/含み利益は、ファンドの決算の利益にはならない。売
らなければ利益も損も確定しない。

ヘッジファンドの年間利益は、現在-5%から+5%に分布しています
(HFR)。決算では5%以上の利益を出す必要があるのです。

預金であるMMFの金利は、5%程度と高いのでファンドが5%以上の利
益を出さないと、解約が増えて、45日後には返金しなければならない。

銀行の危機は預金の大量流出、つまり、銀行に不安を感いた預金者の
取り付けから起こります。現金がショートする銀行は、金利が上がっ
ているので含み損が大きな長期債券を、売らねばなない。
損が膨らんで、政府または他の銀行がマネーを入れる破産になるので
す。

ヘッジファンドとインデックス・ファンドが、3か月決算で利益を出
さないと、客からの解約が増え(=現金の返金が必要)、銀行危機と
同じことになります。

このためヘッジファンド、インデックス・ファンドは、3か月決算で
利益を出し続けねばならない。金利が5%台に上がると、リスクのあ
るファンドの利益率は上がった金利より、高いものでなければならな
い。

金利が上がると、ファンドは成立しにくくなります。7年間のゼロ金
利で、銀行の3倍に肥大したのが、ファンドへの預託金60兆ドル
(7800兆円)です。

【日本株の、異例の買い越しの理由】
米国銀行危機(株価下落)後の異例な日本株の買い越しは、米国の1/
8のマネーの買いで高騰する日本株を買って、米国株のポートフォリ
オでの損を埋めようとしたものだと見ています。

このために、8年間も減らしてきた日本株の構成比(ポートフォリ
オ)を増やしたのです。

長期では不況入りが予想される米国金利の、約2%もの逆イールドの
なかです。株価を2倍は上げる自社株買いを要請しながら、日本株を
買い上げたのでしょう。

◎日本の株式市場は、70%の売買をするヘッジファンドとインデック
ス・ファンドの支配下にあります。

日本人の個人投資家と、機関投資家による株の売買が少なく、平常時
の東証の出来高が2.5兆円と小さいため、日本の約8倍のマネーを動か
す米国金融の支配になったのです。

現在の出来高では、6兆円/日もあり、約2倍になっています。
東証の株の売買が2倍になっているのです。

【株の買い】
◎23年7月か最長で8月までは細心の用心をしながら、株を買ってもい
いかもしれません。発生したバンドワゴンには一時的には乗る。

しかし、ヘッジファンドとインデクスファンドが、合計で売り越しを
始めたときは、仮に含み損があっても、23年12月を期待せず、売り抜
ける準備が必要でしょう。当面、3か月以内の短期の売買しか、して
はならない。

株価の時価総額が、世界の50%を占め、世界の株を上げている米国株
の上昇は2000年の期待が先行したインターネット・バブルに似ていま
す(当時はナスダック5000ポイント:現在は1万3700ポイント)

深層学習型のAIの開発が、現在の米国株価のシンボルでしょう。

■7.米欧の物価と、賃金の上昇率は高い

以上は、当方の見方です。参考にするかどうか。
ご自分の判断によります。

根本を言えば、米国経済、欧州経済、日本経済が強くて上がっている
株価ではない。日米欧は、「過剰流動性」の中で、断崖の前の超楽観
の相場に見えます

FRBのパウエル議長は、2023年12月までに0.25%×2回の利上げをする
という含みのある発言をしています。

ユーロのラガルドECB総裁は、インフレは終わっていないとして短期
の政策金利を0.25%引き上げて4.00%にし、7月の0.25%の利上げも
示唆しています(コアインフレ見通し5.4%)。

一方で日本は、短期0.1%、10年債の上限が、0.5%のままです。世界
1金利が低い。植田総裁は、これからも大規模緩和を続けると発表し
ました。低金利と金融緩和は、円安の原因にもなります。

賃金上昇が1.3%と低い日本と違い、米欧では賃金上昇(欧州5.7%:
米国5.6%)なので、インフレは長引きます。

物価を原因に上がった名目賃金は、すぐには、下がらない。「生鮮・
エネルギーを除くコア物価の上昇→雇用者から賃金の上昇要求→物価
の上昇→賃金上昇要求・・・」というスパイラルなサイクルになって
いるからです。

2022の最初の物価上昇は、コストプッシュ型でした。
現在は、物価上昇→賃金の上昇要求になっています。

賃金の上昇に伴う、米欧のインフレの長期化は、金利の高止まりも示
し、2024年のリセッションを誘発するでしょう。株価は、住宅価格が
下がるころに、暴落に向かうでしょう。

米欧では、利上げと金融の引き締めで、経済を不況化させ、失業を増
やして賃金を下げ、需要を減らさないと、物価が下がらなくなったの
です。

■8.円安はどうなるか?

今日のドル/円は、141.84円。1月の131円からは10円(7.6%)の円安
です。長期的には、2012年の80円からは、44%もの円安です。通貨は、
基本的には、その国の経済力(期待GDP成長率)の差が均衡点になり
ます。短期では、金利差(米国5.0%~5.25%)、日本、短期0.1%、
10年債上限0.5%から来るイールド(約5%)が、「ドル買い/円売
り」を誘っていることです。

世界の金利が上昇し、高止まりするなかで、円の金利だけが異常に低
い。32年累積した財政赤字(=政府の税収不足)からの国債残が
1200兆円もあります。

日銀が、インフレ(生鮮を除くコア物価3.4%:23年4月)に合わせて、
長期金利(10年債の金利)を2%に上げると、銀行(日銀+銀行)は
自己資本をなくし、国債の増加買いができなくなって、政府は国債が
売れない。資金不足の政府は、財政が破産に向かうからです財政支出
の30兆円くらいの削減(-25%)が必要になります。医療費、年金、
公務員賃金には25%の未払いが出ます。これは、2011年のギリシア危
機のときに起こったことです。

このため、日銀は、財政以外に理由を転嫁して、利上げをせず、金融
緩和を続けていて、米欧のとの金利差が拡大して円安になっているの
です(円売りの超過)。

1)ファンドが日本株を買い越すときも、買い越し増加に相当する5兆
円の円先物売りをして、円高のリスクをヘッジします。
2)もう一点、大きなものは、低金利の円を借りて、高利回りの債券
や株を買う「円キャリートレード」です。2023年の4月から、円キャ
リートレードの残高は12.8兆円を超えています。普段は8兆円くらい
です。

まとめれば、
・日本株がガイジンファンドの買い越しの増加で上がるときは「円
安」になる。
・買い越しが減って、あるいはマイナスになって日本株が下がると、
円高/ドル安になる。
そういった、「投機的な円安相場」が起こってるのです。

ガイジンファンドの日本株の買い越しは、最長でも2023年9月には終
わると見ています。8月に終わるかもしれない。その後は、逆に、
「ドル安/円高」と、ドルの実効レートが下がると上がる金価格が上
昇するでしょう。

現在の金価格は「ドル高」のため、短期的には下落基調です(1オン
ス1926ドル:5月初旬は2040ドル)
https://www.dailyfx.com/jp/gold-price

スイスフランもドルに比例して上がり、2023年の年初の139円が、
158円(+13.6%)に上がっています。低金利で売りが多いい円と逆に、
政策金利が1.5%と低くても、世界からスイスフランの買いが強いか
らです。マイナス金利をプラスにしたスイスのインフレは2.9%です
(23年3月)。日本のコア物価の上昇3.4%より低い。

スイスの物価上昇率の低さ(2.9%)は、スイスフランの通貨価値が
円、ドル、ユーロより下がっていないことを示します。

【後記】
ここで18ページなったので、有料版・無料版共通の土曜増刊を送りま
す。本稿で、23年12月までの株価の見通しに、ケリをつけたように感
じています。

株価は、多くの要因が絡みあってしかも要素相互間での共鳴がある複
雑系です。気象のように、青天の霹靂の嵐もあります。底に穴があい
た洗面器の、渦の発生と同じです。通貨も同じです。単純な線的数式
では決まらない。8月の入道雲(上昇気流)は、嵐の原因です。

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