特別号:ユーロ危機の第二幕は、スペインのデフォルト(1)
This is my site Written by admin on 2012年5月9日 – 12:00
こんにちは。長かった黄金週間も終わり、季節は、初夏の風情です
が、つくば市を、凄(すさ)まじい竜巻が襲っています。気流の温
度差からの上昇気流が生む積乱雲と乱気流で、トルネードが多い米
国大陸はともかく、日本では、竜巻は珍しい。

▼太陽の黒点の、減少期が長い

太陽の磁場で生まれるという黒点が減少しています。なぜか、減少
期間が、普通のサイクル的なものより長い。これが大地震や天候異
変に、関係があるとも言われています(九大宙空環境研究セン
ター)。果たしてそうなのか。

普通は11年周期で黒点が減ります。太陽の活動が不活発になると黒
点が減り、その年は、地球が寒冷化しています。

そして地球の直径の109倍と大きな太陽の、磁場の変化が影響する
のか、M8級を超える地震は、観測された28回のうち79%が、黒点が
最小な年に起こったという事実も記録されています(1963年~
2000年)。

黒点の減少期は、現在、なぜか、12.6年サイクルに伸びています。
「黒点関係説」に拠(よ)るなら、今年も、世界の異常気象や大地
震が起こりやすい。

黒点の減少は、穀物価格の高騰や、経済恐慌の周期にも関係してい
るとも言う(日本では嶋中雄二氏等)。2000年代の、大きな自然災
害は、1990年代の2倍もあると報告されています(国連)。
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/disaster/2688617/5251221

(注)風が吹けば桶屋が儲かるという論理風であり、「原因→結
果」の関係は立証されてはいません。しかし年代で並べると、並行
して起こる確率が高い現象です。

【原因と結果】
黒点と自然現象に「原因→結果」の線的な関係があるなら、「Aと
いう原因→Bという結果」が100%起こります。水素と酸素を、2:
1で反応させれば、爆発的なエネルギーを出し、水になるというよ
うなことです。

少ない要因で「原因→結果」の関係があるなら、要素と函数に還元
できます(還元主義)。しかし、分かっている化学反応のような、
線的(リニア)な関係や法則が立証できないときは、大地震の予測
のように、過去に起こったことの頻度から「確率」で言うことしか
できない。

科学的な立証の対象になるのが、同じ条件のときは、必ずこうなる
という法則です。再現性とも言う。

他方、「30年内に、60~70%の確率で、東南海(地域は曖昧)で大
地震が起こる可能性がある(政府発表)」というのが確率です。

確率とは、原因と結果の関係が分からず、不確かということです。
サイコロを振ったとき、1が出るとは決して言えない。しかし、歪
みのないサイコロを多数回振れば(大数の法則)、1/6の確率に収
束してゆきます。

経済は、それを動かす要因が多すぎ、全部の原因→結果の関係と、
その重みを誰も認識できないため「複雑系」とされています。

気象も、社会も、複雑系です。ガンなどの未解決の病も、個々に要
因が異なる複雑系かもしれない。このため、いつ誰がどのガンにな
るかを言えない。

本稿のテーマは、<ユーロ危機の第二幕>です。経済も複雑系です
が、経済や金融の危機は、人間の、認識の重点の移動によって生ま
れるものですから、比較的に要因は少ない。このため分析と、展開
が予測できるように考えています。

                              *

その前に、日本の株価(相場の全体を示す日経平均)です。

1月半ばから、日経平均は20%上がっていました(8500円→1万200
円:3月末)。4月からは9500円に下がり、連休明けの今日(5月9
日)は、9045円に下げています。(注)1600社の平均株価である
TOPIXで見ても全く同じです。

株の買いが増えたことが原因で、日経平均が20%上がると、約
1600社の株価時価総額(東証一部)も20%上がります。

260兆円が、20%上がれば、ほぼ300兆円になります。個々の株の
80%くらいが、日経225種の平均とそっくり同じ値動きをします。
(注)日経平均株価は225社の単純平均ですから、含まれる小型株
の売買によって、平均(相場全体)を変えることができます。

この20%の上昇は、株主に50兆円(20%)のマネーが増えたのと同
じことになる。これが、経済に対するマネー注入と同じ効果を生み
ます。つまり、投資が増え、経済活動が活発化します。

(注)日本の株の保有構成は、銀行が30%;生損保が7%;証券会
社2%;非金融法人21%;ヘッジ・ファンド等の外人26%;個人20
%です。株価が上がっても、それを発行した会社が利益を受けるわ
けではない(「擬制資本」と言う)。株価の上昇による損や利益は、
株主のものです。

売買額では海外ヘッジ・ファンドが60~70%を占め、租税と規制を
回避するオフショアからの外人の投資の動きが株価を上げ、または
下げています。

ヘッジ・ファンドには、一任勘定で、大口投資家がお金の運用を預
託します。私的な投資組合ですから、公開の義務はない。

ユーロ危機が日本の株価に影響するのは、世界に分散投資している
ヘッジ・ファンドの売買で、日本の株価の60~70%が決まっている
からです。

現在のように、日経平均が約10%下がると、一時期(3月)は増え
ていたように思えた日本市場の25兆円のマネーが、投資家合計から
消えます。25兆円の金融資産の減少は、経済にマイナスの影響を与
えます。このため株価は、もっともティピカル(典型的)に、経済
の活性化度合いを計るものとされます。

株主のマネーが25兆円も減ると、投資は減り、経済活動(投資と商
品売買)は縮小します。株価は、以上のような意味をもっています。

ヘッジファンドが相場が大きく動かすとき、連休や7、8月の夏休み
のように売買の参加者が少ないときが狙われます。売買が少ない時
期は、少ない売買額でも、相場を動かせるからです。

本稿は2部構成です。まず、第一部を送ります。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  <593号:ユーロ危機の第二幕は、スペインのデフォルト(1)>
                      2012年5月9日号

【目次】
〔第一部〕
1.20%上げ、10%下げた日本の株価
2.3月3週のピークアウトから、10%下げの時期
3.株式市場と金融市場は、フェアな効率的市場ではない

〔第二部〕
4.ユーロ危機の第二幕とその展開
5.スペインは、金利6%の利払いを行うことができない
6.2012年3月のギリシアの例
7.負債327兆円のスペインのデフォルトの帰結は、ユーロ暴落
8.ECBによる、スペインへの貸付は想定できるが、破産は同じ
9.イタリアもスペインに類似し、スペインを追う

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1.20%上げ、10%下げた日本の株価

投資主体別の週間売買額(東証が、ほぼ2週遅れで公開)で見ると、
わが国の株価が、上げた要因と下げた要因の、説明がつきます。

(注)2012年の1月から3月までは、世界の主要市場で、日本の株価
の上げがもっとも大きかったのです。

まず、1月16日(8500円)から3月16日(1万90円)の約2ヶ月間の、
上げの時期から、以下で見ます。

わが国の株式市場は、売買の量が1/3くらいに減っています。1日
に1~1.5兆円の売買に過ぎません。このため、少数の、売買資金
の多い主体(ヘッジファンドと証券会社の自己売買)が、自分の利
益のために動かせる「価格が歪んだ非効率相場」です。

▼20%上げの時期(1月16日~3月16日)

この時期に相場を上げた買い超は、
・証券会社の自己売買→   9週で6143億円
・海外ヘッジ・ファンド→ 9週で1兆1260億円、でした。

一方で、上がる相場で売った売り超は、
・国内金融機関と事業法人→9週で9493兆円の売り超、
・700万人とされる個人投資家→9週で1兆1260億円売り超です。

国内金融機関と事業法人は、投資信託と、配当の一種になる会社の
自社株買い(金庫株)を除き、ほぼ継続して売り超です。この時期
だけが売り超なのではない。

個人も同じです。個人投資家は、株式保有で20%のシェアですが、
2008年以降の下げで損をした人が多く、売り超を続けていました。

(1)上がった要因1:
・1月半ばからは、証券会社が、自分で売買する「自己売買」と、
・売買額の60~70%を占め、相場を動かしてる海外ヘッジ・ファン
ドの買い超で上がったと言えます。

(2)上がった要因2:
この間、日銀も、危機対策の「資産買い入れ基金(総枠70兆円)」
のうち一部を使い、株のETF(上場投信:TOPIX等の株価指数)を買
って、「相場介入」を行っています。

(注)ETFは、株価を集め指数化した先物です。先物価格と現物価
格に、期待金利以上の差があると、瞬時に「裁定売買」がはいるた
め、一致します。ETF(Exchange -Traded Fund:上場投信)は、市
場の平均指数を売買すると言っていいものです。

売買の最小単位(一枚とも言う)は、
・主に個人用のETFミニで日経平均価格の100倍(日経平均が1万円
のときは100万円)、
・ラージでは、1000倍(同1000万円)です。

日銀は、2011年8月以降、世界の株価が下がったのに比例して減っ
ていたヘッジ・ファンドの日本株買いを補うように、ETFで市場介
入しています。日経平均で7000円や6000円に向かうトレンドだった
からです。

(注)日経平均が260円(2.7%)下げた5月7日には、日銀は1日で
397億円のETF(金額で最大規模)を買い、下落する株式相場を買い
支えています。これがないと、日経平均はたぶん300円(3.3%)
は下がり、暴落になったでしょう。今日(5月9日)の終値も前日比
で136円(1.5%)下げています。

ヘッジ・ファンドは、米国FRBと欧州ECBが金融機関の不良化した債
券と保有国債を買って投入した現金の、金融機関からの預託を受け
て、日本国債と株を買ったものです。

2011年には、平均で6.5%の損失のため減っていた8000本のヘッ
ジ・ファンドの預かり元本は、欧州ECBと米国FRBの印刷マネーが流
れ込んで、再び、$2兆を超えるように増えたのです。

このヘッジ・ファンドが、昨年の損を取り戻そうとし、世界の、上
げ下げが容易な相場を狙っているのです。ヘッジ・ファンドも損を
続けると、顧客からの解約が増えるので、必死です。トレーダーも、
自分のお金をかけています。

世界のいろんな相場(通貨、債券、株、商品)の、価格の変動(ボ
ラティリティ)が大きくなっている理由は、ごく小さな材料を強調
して売買をするヘッジ・ファンドのためです。

ユーロを売れば円を買い、株を買えば国債を売る。円を売ればドル
を買い、株を売れば国債を買う。従って、株価が売られて下がると、
国債が買われて金利も下がる。このような、非合理な歪んだ相場に
なっています。

2月、3月の上げ相場を作った最大の買い手は、ヘッジ・ファンドで
した。端的に言えば、ヘッジ・ファンドと日銀の買い超で上がった
「談合相場」でした。ヘッジ・ファンドは、ほぼ3ヶ月内での、短
期の売買です。

(注)ヘッジ・ファンドの買いの資金は大きいので、現物や先物、
あるいはオプションを買えば、株価を上げることができます。売り
超になると下がります。

1日で1兆円~1兆5000億円の売買しかない「薄商いの市場」が日本
です。売買の参加者が少ない。

つまり、「効率的市場」ではない。効率的市場は、参加者の恣意で
は、株価を動かせない市場を言います。(注)効率的市場仮説は、
その意味を、後述します。

【薄商いの市場】
薄商いの市場は、日銀の介入買いにも見えるように、1日に数百億
円規模の買い超で、相場を維持または上げることもできます。

日経新聞は、理由は不明ですが、「業績相場への道である」という
主旨の論陣を、4月まで張っていました。

業績相場とは、2013年に向かう上場企業の利益回復が、株価上昇の
原因とするものです。(注)過去から何度も、今回と同じような、
「囃(はや)し立て」があったのです。

経済指標のうち、異常だった前年より好転していたものを探し、集
中的に取り上げて解釈し、買いを煽っていました。

約20年、継続的に切り抜きした過去の雑誌・新聞の、金融・経済の
記事を読むと(1ヶ月にA4のノート1冊分)、面白い。

日経新聞が買いを示唆する意図的な記事を出したときは、ほぼ例外
なく、相場の反転の時期だったのです。これは、今後もサインにな
るでしょう。

証券会社の「買い推奨」もほぼ同じです。ゴールドマン等の、買い
推奨の対象になったときは、「自分は売って利益を確定する空売り
や先物売り」の準備がされていることが多い。

海外のファンド・マネジャーは、「日経新聞に、買い推奨を促す主
旨の記事が登場したとき(特に特集記事)は、売り」としている人
が多かったのです。日本の経営者と投資家は、横並びで、日経新聞
や日経金融新聞を読んでいるからです。

海外のトレーダーは、これを見透かしています。「赤信号、皆で渡
れば相場は動く」という売買をしやすいのが、サラリーマン・ト
レーダーの日本だからです。企業文化にも、かかわるのです。

■2.3月3週のピークアウトから、10%下げの時期

相場のピークアウトは、3月の第三週(19~23日)からでした。
3月19日から4月20日の、同じく60日間の主体別の売買は以下です。

●下げた期間の、買い超の主体
・700万人の個人投資家→ 4457億円の買い超
・海外ヘッジ・ファンド→ 1044億円の買い超(買い超の金額が急
減)・・・特に3月19日の週は、2736億円もの売り超に転じていま
す。

(注)ヘッジ・ファンドの売買を見ると、先物を反対売買で決済す
る期限(限月)である第二週の金曜日の翌週、つまり第三週に、大
きな売りや買いをする傾向も見えます。

【個人の買い超】
1月16日から3月16日の、60日間(9週)の上げの局面では、合計で
1兆1260億円も売り越していた700万人の個人投資家は、3月からは
売りの額を減らし、珍しく、買いの額を増やしました。

(注)ヘッジ・ファンドのつぎに売買高が多い個人には、上がった
後に売り、下がった後に買う「逆張りの傾向」が強い。これも、見
透かされています。2012年1月では、ヘッジ・ファンドの売買がほ
ぼ65%のシェアであり、ついで、個人投資家合計が20%です。

3月の26日の週から、前2ヶ月間の株価の上昇を見て、(遅れて)個
人が買い超に転じたのです。

個人は、合計で見れば、日経新聞の記事の目的に沿った動きをして
います。この買いは、遅れた動きです。このため、相場が下げた4
月から多くの人は損をしています。

証券会社は、(高値で売り抜けるために)個人には「2013年3月期
に向かい、企業利益が回復したことによる業績相場だ」と買いを推
奨しながら、自分は売って、利益確定するという卑怯な動きをして
います。

(注)「どこが」とは言いません。証券会社の合計での売買の変化
から言っています。自分が賭けている相場に、有利になるような情
報を「意図して」流します。これが、証券会社や銀行に属すること
が多いアナリストの「ポジション・トーク」です。自分の利益にな
るような情報を流す。かつての「シナリオ相場」に似ています。

日経平均は、1万123円(3月19日)から、9181円(5月8日)にまで
10%下げています。

(1)下げた要因1:ヘッジ・ファンドの売り超
下げた理由は、2012年1月以降買ってきたヘッジ・ファンドが、3月
19日の週には一転して、買い越して上がった株の利益確定のために、
2736億円の売り超に転じたからです。

3月19日から4月20日の60日間では1044億円の、調整的な買い超でし
かない。

1月16日から3月16日の60日間(上げ相場)では、1兆1260億円(週
間平均1250億円)も買い越していたのと好対照です。

ヘッジ・ファンドが買い越さなくなったため、日本の株式相場が下
がったと言えます。

売買の主体は、4種に分けることができます。日本の株式市場では、
この4種が、「横並びの動きをする」ことが多いため、相場は動か
しやすくなっています。

(1)金融機関を含む事業法人の売り超(売買シェア10%付近)、
(2)個人投資家の売買(シェア15~20%付近)、
(3)証券会社の自己売買(シェア15~20%)、
(4)海外ヘッジ・ファンドの売買(シェア65%)です。

金融機関と事業法人は、価格変動のあるリスク資産を減らしいるた
め、市場の株数を減らして上げる配当の一種である自社株買い以外
では、売り超を続けています。

個人投資家は、「上げた後には売り、下がった後には買う逆張りを
する」と見透かされています。

以上の傾向がほぼ一定であるため、買いや売りの予測ができ、「証
券会社+ヘッジ・ファンドの自己売買」が、日本の株式相場を、意
図して動かせるのです。

ヘッジ・ファンド(株式の市場の売買の65%シェア)は、証券会社
の自己売買(同シェア20%付近)と同じく、相場を動かす資金量の
売買ができます。

(2)下げた要因2:証券会社の自己売買の、売り超
同じく、前60日は6143億円を買い越して、2013年は企業利益が回復
すると言いながら、相場を上げてきた証券会社は、3月の決算期を
過ぎると1455億円(4月2日~6日の週)、2348億円(4月9日~13日
の週)と、大きく売り越して、相場下落の主因を作っています。

●下げた期間の売り超の主体
・証券会社の自己売買→ 1166億円の売り超
・金融機関と事業法人→ 4896億円の売り超

今回も明らかになったことですが、
・個人に高値で買わせて損をさせ、
・自分たちは、で売って儲ける証券会社の動き(自己売買)は、実
に「困ったもの」です。違法な、株価操作にも近いことです。

自己売買は、顧客からの委託を受けて取引所で売買するのではなく、
証券会社が、自分の資金で売買し利益を狙うものです。本来、禁止
すべきです。証券会社には、増資、配当、合併、利益のインサイ
ダーに近い情報もあるからです。

(注:ボルカー・ルールは延期)米国では、5大投資銀行が、自己
売買で巨大損を被ったことから起こった金融危機(リーマンショッ
ク:08年9月~)を反省し、米国金融機関に対して、2012年7月から
は、米国債以外の証券の自己売買を禁止する「ボルカー・ルール」
を施行する予定でした。

証券会社・銀行が自己売買する市場は、「異常で公正ではなかっ
た」という認識からです。ところが、この古典的な銀行家が考えた
「ボルカー・ルール」は、懲りないウォール街の反対によって、施
行が延期される気配です。

日本政府も、日本の国債を米国金融機関が自己売買できなくなる規
制に対し、「日本国債は例外にしてくれ」と依頼しています。

【短期売買】
証券会社とヘッジ・ファンドは、自己売買した株や国債の長期保有
はしません。買い越した後は、短期(ほぼ3ヶ月内)で売り越しま
す。つまり、上場会社の資本の供給元ではない。この自己売買は、
何が目的か?

【東証】
顧客と利益が反することが多い証券会社の自己売買は、過去は規制
されていたのですが、海外の銀行・証券会社(及びヘッジファン
ド)が、国内の規制をすり抜け、自己売買で投機しているため、
「日本の証券会社は不利になる」として、規制が緩和されています。

以上が、1月から4月の株式相場でした。
毎週の主体別売買は、東証が、ほぼ2週遅れで公開しています。

1日遅れのリアルタイム公開なら、株価の予測も、その分、容易に
なるのですが、それはありません。肝心な情報は、遅れています。
東証は何をやっているのか・・・リアルタイム公開を要求します。
http://www.tse.or.jp/market/data/sector/index.html

■3.株式市場と金融市場は、フェアな効率的市場ではない

【仮想のファイナンス理論】
ファイナンス理論は、株式市場や国債市場に対し「効率的市場」で
あると前提しています。

この意味は、ある主体が、利用可能な多額の資金で売買しても、市
場を動かすことはできない公正な市場であるということです。

【実際は・・・】
実際は、「効率的な公正市場」ではない。ヘッジファドと証券会社
の買いや売りの金額が大きいため、その売り超で下がり、買い超で
下がる「恣意的な相場」になっています。

特に、デリバティブ(先物・オプション・CDS等)で、運用のレバ
レッジ(信用乗数)が大きくなった2000年代がこれです。

店頭デリバティブ(OTC)がかかった対象資産は、世界の金融資産
(1京5000兆円)の約4倍である5.6京円($70兆)と言う巨大さで
す(BISの統計)。
http://www.bis.org/statistics/otcder/dt1920a.pdf

この店頭デリバティブ(OTC)は、信用での売買であり公開市場で
はない。大手金融機関とヘッジ・ファンド間、及びオフショア金融
の「密室(仲間内)」での取引です。

株、債券、通貨の現物市場を動かす、先物やオプションの店頭デリ
バティブが巨大化したのが、2000年代の世界金融でした。

日本の株式市場では、新聞で「外人の投機買い」とされるのがこれ
です。1秒に3000回も売買できるロボット・トレーディングも多い。

古色蒼然になってしまった「効率的市場仮説」に基づいて、オプシ
ョン料やCDS等のデリバティブの価格が構成されています。

実際の価格をつける市場は「効率的市場」ではない。
このため、デリバティブの価格も「間違える」のです。

(注)デリバティブの価格は、証券の将来キャッシュフロー(予想
キャッシュフロー)を、リスク率と期待金利で割り引いたものです。
国債にかかったCDS(回収の保証保険)で言えば、ある国債が(特
別な)中央銀行の国債買いで支えられていると、金利は下がって、
不当に低い保険料率になります。このため、不当な価格形成が行わ
れます。中央銀行の買いで上がった株価も同じです。その後買った
人が損をします。

日銀の介入(特例の「資産買い入れ基金」)、つまり週間で数百億
円の介入でも株価全体が動くことが、これを証明します。なぜ、こ
うしたことが市場の価格を歪めていることに、気がつかないのか?


【アン・フェアな市場になっている】
例えれば、ヘビー級(あるいは恐竜級)のボクサーと、フライ級の
ボクサーが、同じルールで戦う不公正なボクシングです。数百億円
と、せいぜい数千万円という資金量の差があるのに、同じルールで
は、公正(フェア)な市場ではない。

個人とヘッジファンドが同じルールであることが不公正なのですが、
誰も、これを指摘しません。市場に多くの資金を呼び込む活性化の
ためだ、と説明されています。

(注)8000本のヘッジ・ファンドの預かり金は$2兆です。先物で
穏やかに、低い10倍のレバレッジで運用しても、世界で$20兆
(1600兆円)の運用額になります。

日本株や国債へのポートフォリオ(分散投資の割合)を、世界への
投資の10%(世界の中での日本のGDP構成比)としても160兆円です。
この額なら、「恣意的に」相場を動かせます。日銀の総資金量でも
141兆円(12年4月30日)だからです。

情報面では公正かもしれませんが、投資可能な資金量で、まるで公
正ではない。従って、勝負は決まっています。

「資金を多く投入できるところが勝つ」。大きな売りや大きな買い
が渡り合う仕手戦の例を言うまでもないでしょう。 

付記すれば、08年9月以降、世界の50%を占める米国株式市場も、
個人の参加が減って、日本ほどではありませんが、若干は薄商いに
なっています。12円3月は、過去に比べ、25%くらい売買株数が少
ない。

▼個人投資家の哀歓

株の売買での短期利益は、参加者間の「勝ち=負け」です。上に示
した主体別売買における、個人合計の、「高くなってから買い、安
くなってから売る遅れた動き」を見て、またも「餌食」になったこ
とが伺え、哀しくなります。

●これが分かっていたので、日本株が上がり始めた2月に、「ヘッ
ジ・ファンドが買いで上げて売り抜けを狙うものだ」と警告してお
きましたが、いかがだったでしょうか・・・株価が上がっていると
きは、相当なところまで上がると思ってしまうのが、人間の「感
情」の悲しさです。

金融市場でのキャピタルゲイン(売買差の利益)では、短期で言え
ば、ある人の損が別の人の利益です。長期では、上げでは証券の保
有者が利益を得て、下げでは損をします。

「日本人は金融資産を預金として過剰にもつ。米国のように、もっ
と株に投資すべきだ」と、一貫して、政府および証券業界は言って
いますが、その市場は、効率的で公正な市場ではない。

なぜ「貯蓄から投資へ」というかけ声があるのか? 

株式相場だけではない。2008年以降は、債券市場(国債の相場)も、
世界の中央銀行の介入(買い)が多いため、効率的市場ではないの
です。

(注)日本のバブルの時期に(確か1986年)、北九州市で、当時の
日銀大阪支店長の講演を聞いたことがあります。とてもびっくりし
たのです。「日銀は、当面、金利を下げたままを続け、資金供給し
ます。不動産や株は買いです。自分も三重野総裁も買っていま
す。」ということでした。

現在なら、この発言は、インサイダー取引の犯罪です。信用が根幹
の金融に、あるまじきモラル・ハザードでもありますが、無邪気に
言う当人には、その意識は欠けていました。日銀の介入には、こう
した面があります。

【世界の外為市場】
通貨の売買と交換を行う外為市場は、1日の売買が、世界で500兆円
(円・ドルで50兆円)とされますから、市場がとても大きい。

このため、株式市場より、効率的な市場でしょう。政府や中央銀行
の介入も、一時的な、呼び水の効果でしかないからです。

(注)昨年11月に日本の財務省は、為替介入として8兆円のドル買
い(米国債買い)を行い、一時は、円を$1=85円にまで下げまし
たが、再び79.9円(12.05.08)に上がっています。

理由は、為替市場の売買額が、財務省の介入も小さく見るくらい大
きいからです。

ここまでで、<Vol.274: ユーロ危機の第二幕は、スペインのデフ
ォルト:第一部>をいったん送ります。

【後記】
ホームページでは、3月9日の、金融・経済講演を、レジュメ全ペー
ジと、音声(150分)とともに、公開しています。以下で、どなた
でも、ご覧になることができます。金融・経済の基礎的なことから
分かると思います。
http://www.cool-knowledge.com/

本稿の元は、5月9日の有料版の正刊として、送ったものです。米国
の投資銀行は、2008年9月以降、政府からの支援資金を受けるため、
銀行に改組しています。

米英の銀行とヘッジファンドの企業文化と行動様式は、幹部の内部
告発にも見られたように、顧客の利益無視とモラル・ハザードを引
きおこしています。

自己売買を禁じる「ボルカー・ルール」の規制の延期ではなく、で
きる限り早期の適用を、希望しています。個人が損をすることが多
い「談合相場」でなくするためです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【ビジネス知識源アンケート:感想は自由な内容で。
                              以下は、項目の目処です】

1.内容は、興味がもてますか?
2.理解は進みましたか?
3.疑問点、ご意見はありますか?
4.その他、感想、希望テーマ等
5.差し支えない範囲であなたの横顔情報があると、今後のテーマ
と記述の際、より的確に書くための参考になります。

気軽に送信してください。感想やご意見は、励みと参考にもなり、
うれしく読んでいます。時間の関係で、質問への返事や回答ができ
ないときも全部を読み、共通のものは、記事に反映させるよう努め
ています。

【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】
yoshida@cool-knowledge.com

◎購読方法と届かないことに関する問い合わせは、ここにメール
 →  reader_yuryo@mag2.com

■1.有料版は、新規に登録すると、『無料で読めるお試しセッ
ト』が1ヶ月分送信されます。

有料版では、新規に月中のいつ申し込んでも、その月の既発行分は、
全部を読むことができます。最初の1ヶ月間分は、無料お試しセッ
トです。その後の解除は自由です。継続した場合に、2ヶ月目の分
から、課金されます。

(1)『会員登録』で支払い方法とパスワードをきめた後、
(2)登録方法を案内する『受付メール』が送ってきて、
(3)その後、『購読マガジンの登録』という3段階の手順です。

【有料版の最近号の目次】

<591号:米大陸のドルが、
                   国際基軸通貨であることの意味と展開>
                  2012年4月25日号

【目次】
1.好調を続けるとされる、米国の小売売上の中味
2. 米ドルを支える構造
3.米大陸が、世界に見える
4.米ドルが「基軸通貨」であることの、金融的な構造を考える
5.海外へ出て、再び米国に還流しているドル
6.日本の円との関係
7. FRBは2013年までの金利ゼロを表明している
8.米国のねじれた金融政策
9.オフ・ショアの、シャドー・バンキングの増加マネーになり、世
界を徘徊(はいかい)している。


【↓会員登録と解除の、方法の説明】
http://www.mag2.com/howtouse.html#regist
◎登録または解除は、ご自分でお願いします。
(有料版↓)
http://www.mag2.com/m/P0000018.html
(無料版↓)
http://www.mag2.com/m/0000048497.html
(以上)


◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則
  のバックナンバー・配信停止はこちら
⇒ http://archive.mag2.com/0000048497/index.html


Comments are closed.