特別号:世界の株価バブルは、はじけたのか(1)
This is my site Written by admin on 2022年2月7日 – 12:00
22年2月の特別号シリーズは、世界経済のもっとも大きなテーマであ
る「株価ブルは、はじけたのか」の検討です。2月2日に、有料版とし
て送ったものを、部分的にアップデートし、無料版の3回シリーズに
します。

▼世界のコロナ後インフレ

◎米国と欧州は「コロナ後インフレ」に転じました。4つの要因の複
合からです。

(1)エネルギー・金属資源・食品コモディティの価格上昇
(2)アジアの生産国の、サプライチェーン・ショックと、ECの増加
も絡んだ物流人材の不足。
(3)コロナ対策の財政拡大と、世界の中央銀行による通貨の増刷
(4)コロナへの恐怖からの、労働参加率の低下から、生産性の上昇
以上に賃金が上がり(米国5%;欧州4%:日本は1%と低い)、小売
物価上昇の構造的な原因になったこと。

この4つの要因が、複雑な網のように絡んでいるため、今回のインフ
レは、日銀(黒田総裁)が22年1月に言った、短期的なCPI上昇ではない。
少なくとも2022年、23年は続くだろうと想定しています。

【米国のCPI】
米国のCPI(消費者物価)は、2021年12月の前年比が7.0%の上昇でし
た。第二次石油危機(1979-80)に準じる、高い上昇率です。米国で
は「ディスインフレの10年」が終わりした。

22年1月の米国CPIは、2月10日(現地時間)に発表されます。引き続
き、7%台の上昇が予想されています。

【22年3月から金融引き締めに転じる米国FRB(連邦準備銀行)】
コロナ対策により通貨発行が9兆ドル(1017兆円)に膨らんだ米国
FRBは、22年3月に量的緩和を停止し、1回が0.25%(または0.5%)の
利上げに転じる予定を発表しています。

インフレ率が7%と高すぎるためだい、2022年中に、「FRBの国債売り
→マネー量の縮小」も、利上げに加えて開始すると観測されています。

【欧州の物価と長期金利】
保守的な欧州中央銀行も、「欧州の物価上昇は短期的なものではな
い」と認め、英国は利上げを実行しユーロも利上げに転じます。

昨年まで、マイナス0.4%だったドイツの長期金利(10年国債の金
利)は+0.2%と1か月で0.6ポイントも上がっています(国債の価格は
約6%下落)。ユーロは、ゼロ金利の日本より低い、マイナス金利だ
ったのです。

【日本も、22年3月からはCPI上昇が2%台】
日本では、石油危機のように輸入物価が前年比で41.3%も上がり、企
業物価(卸売物価)は、前年比で8.5%上がっています(21年12月)。
しかし、CPI(消費者物価)は+0.5%と低い(22年1月:総合:総務省)。
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/kubu.pdf

原因は、携帯電話の料金が2021年には約半額に下がって、それが物価
を1.5%押し下げていたからです。2022年3月からは、携帯料金の値下
げ効果(1年だけの特例の要因)が切れていくので、CPIは、2%台の
上昇に上がります。携帯電話を除くと21年秋の物価上昇は+1.5%から
2%でした。

世界でもっとも物価の低下が大きく、約20年の長期にわたって続いて
きた日本でも「インフレに転じていた」のです。(注)しかし日銀の
黒田総裁は、物価上昇は短期的とし、長期金利ゼロの政策に変更はな
いとしていますが、2022年の5、6月ころ、修正を迫られるでしょう。

▼インフレ率と金利の原理

消費者物価の持続的な上昇を「インフレ」といいます。インフレは、
物価の上昇という「現象」だけに見えますが、本質は、通貨の価値
(商品の購買力)の下落です。

3%のインフレの国では、その国の通貨の価値が3%下がったというこ
とです。(注)インフレは、失業率、金利と並び、経済学の、3つの
もっとも大きな問題です。

[前提1:金利というもの]
長期金利は、国債の売買市場での、10年債の価格によって決まります。
発行金利0%の国債が、市場で、発行額面(100万円とします)で売買
されているとき、金利は0%であり、10年後に返済される金額も、
100万円です。インフレ率が0%のときは、10年後の100万円の価値
(商品購買力)は100万円と見られているのです。

[条件の変更2:物価上昇率]
しかし、物価が1年3%上がっていると、どうなるか。1年後の物価は、
同じ品目の商品バスケットでは、103万円に上がっています(これが
3%のインフレです)。(注)商品バスケットは、購買品目を、消費の
割合で混合したものです。

この国債を保有すれば、物価の上昇から1年に3万円ずつ損します
(10年の合計では30万円)。1年に3%損をしていくゼロ金利の国債は、
国債市場では売れません。市場で売れない国債は、マネーとしての意
味がない。売るときは、どうなるのか?

[3:結果:物価が金利を上げる]
1年後償還の国債が「100÷(1+期待物価上昇率3%)=100÷1.03≒97
万円」に下がると、3万円の金利がついたことと同じです。97万円で
買った国債でも、政府は、1年後に100万円の額面金額を償還するから
です。

(注)10年後償還の長期国債なら、「100÷(1+10年分の期待物価上
昇率30%)=100÷1.3≒77万円」に下がると、10年後には、政府から
100万円が償還されるので、1年3%の金利(=物価上昇率)がついたこ
とと同じです。

◎このように国債市場では、「国債の売買価格が額面以下に下がるこ
とによって、インフレ率の損(=通貨の価値下落率)を回復する」の
です。マネーは自分の価値下落を、上がった金利として回復します。
↓
3%の期待インフレのときは、国債の金利が3%に上がる調整が国債の
売買市場で行われます。

・1年債(=1年後の償還満期)の価格は、97万円に下がり、
・10年債の価格は、77万円に下がるということです。

◎中央銀行の金利介入がないときは、インフレが3%なら「期待イン
フレ率3%=国債の金利3%」に上がります。10年債の金利が、その国
の長期金利です。

以上が「インフレが認識されたとき金利が上昇する」原理です。

ただし普通、中央銀行は、市場の期待インフレ率より低く金利を誘導
します。これは、中央銀行が、自己が介入しないときの市場の価格よ
り、国債を高く買うということです(108年のFRBの歴史では、FRBの
政策金利は常に、インフレ率より低かったのです)。

(注)中央銀行は、もともと、負債のある政府・企業の立場から、金利
を市場の実勢より低く保ち、金融危機(=債券価格の暴落)のとき、
金融機関を救済する目的で作られたものです。

▼インフレによる金利の上昇と、株価の関係

株価は、株価=次期期待純益×PER倍率です。
PERは、現在の株価÷時期期待純益です。
PERの逆数である、1÷PERは、株式益回です。
この益回りは「投資家の集合が、株価の上昇として期待している利回
り」に相当するものです。

◎株式益回りを分解すると「長期国債の金利+純益実現のリスク率」
になります。

後述するシラーP/E(=10年PER)が、現在のS&P500(米国500社の加
重平均株価指数)のように37倍のときは、益回りは、1÷37=2.7%と
低い。

◎2.7%は、「米国長期国債の金利1.5%付近+企業純益の実現リスク
率1.2%」に分解できます。株式市場は、長期金利を1.5%と低く見る
一方で、将来の企業純益には、高い実現の可能性があると見ていると
いうことです(株価ブルのシナリオ)。

ここで、米国のインフレから、長期国債の金利が、仮に3%に上がる
と、どうなるか。株式益回りは「国債金利3%+リスク率は同じとして
1.2%=4.2%」に上がります。株式益回りが4.2%に上がると、株の
評価指数であるPERは、「1÷4.2%=23.8倍」に下がります。

現在、米国株は、シラーP/E(10年PER)が37倍付近と高い。23.8倍に下
がると、次期企業純益が同じなら、S&P500の株価指数は、「23.8倍÷
37倍≒64.3%」に下がるでしょう。

米国株価の35.7%の下落です。2022年12月までに起これば、歴史上最
大の、現在の株価バブルの崩壊から、「金融危機→経済恐慌」までを
引き起こします。

◎ごくわずかに見える1.5%の金利上昇でも、リーマン危機の後の、
13年のゼロ金利とマネー投入によってバブル化してきた米国株価(=
世界の株価も同じ)には、「金融機関を潰す規模の、重大な下落」を
引き起こします。

米国の株価の時価総額は、6000兆円です(世界の時価総額の約50%)。
これが35.7%下がると、株の保有者(金融機関、ファンド、個人)に、
2192兆円の含み損が生じます。

投資家がこの含み損を抱えることは、1785兆円のマネー(=担保とな
る信用)が、ウォール街の口座から抜けることと同じです。追い証を
迫られ、追加の証拠金が払えないと、売れる価格で強制売却されます。
この売りで巨大な損が出るからです。

500兆円のヘッジファンドや、1500兆円のインデックスファンドから
は、個人投資家や機関投資家がマネーを引き揚げ、両方のファンドも
つぶれるでしょう。これが、債券(株、国債、社債)をもつ、投資銀
行の危機になっていきます。

金融市場は「インフレから株価バブルの崩壊がある」とはいえず、下
がる株の反発を期待した「押し目買い」がチャンスだ、としか言わな
い(これが、ファンドが側に立つ金融ジャーナリズムの基本的な性格
です)。世界の中央銀行は、低金利の負債を享受してきた「政府+銀
行側」に立脚しています。

【インフレによる金利の上昇と国債価格(社債の価格も同じ)】
金利の上昇と、国債の売買価格にも、株価に類似した、以下の関係が
あります。国債の市場価格は、額面価格×{(1+現在の金利×残存期
間)÷
(1+インフレで上がる期待金利×残存期間)}です。

日本の長期・短期の既発国債(1200兆円)の、平均残存期間は8年で
す(満期までの期間が8年)。平均の発行金利は0%です。2.5%のイ
ンフレから、長期期待金利が1.5%に上がると、どうなか。

1200兆円×{(1+0%×8年)÷(1+1.5%×8年)}=1200×(1÷1.12)
=1200兆円÷1.2=1000兆・・・・国債を持つ日銀(523兆円:22年1
月)と他の金融機関(677兆円)に生じる200兆円の含み損

◎この200兆円の含み損は、日銀の87兆円の損と、金融機関の113兆円
の損になり、両方の自己資本を消して、債務超過にします。倒産はし
ませんが、他行との、貸し借りの取引信用(=自己資本)がなくなる
のです。
これが、株価が暴落したときと同じ、金融危機です。

インフレの認識が広がり、債券市場の期待金利が上昇すると、株価と
国債か価格は暴落し、金融危機になっていきます。今回は、米国、欧
州、日本を含む、世界的な規模です。

本シリーズでは、以上のテーマを、検討していきます。

               *

▼有料版のプロローグ部

2022年1月、世界の株価は「準暴落」といえる10%から15%の下落を
しています。4週にわたって下げるのは、2020年3月のコロナ危機(約
30%下落)以来です(1月31日)。(注)本稿は特別号として多面的
な分析を行っているので、30ページです。

【22年1月の株価指数】
・NYダウ     3万7000ドル→3万4700ドル(-6.3%)
・米国ナスダック 1万5600→1万3700(-12%)
・日経平均    2万9100円→2万7000円(-7.3%)。
(注)2月に入って、金融株と資源・エネルギーの会社の株により少
し上げています。

【株価の、超長期の評価指標がシラーP/Eレシオ】
140年の長期にわたるS&P500の「シラーP/Eレシオ」が、株価の評価指
標として作られています。
https://www.multpl.com/shiller-pe

P/Eレシオは、日本で使われるPERと同じです。「PER=株価÷次期
(3か月後)予想純益、株価=次期予想純益×PER」。しかし、通常の
PERは、3か月という短期で大きく変動する企業純益をもとにしていま
す。このため、株価の評価指標になりにくい。(注)純益は税引き後
の利益です。

【シラーP/Eの考案】
ノーベル賞経済学者のシラー氏は、過去10年間の平均企業純益に対す
るPERを考案し、それが、上記の「シラー P/Eレシオ」として公開さ
れています。140年間での、バブルと崩壊が分かります。

シラーP/Eが25倍を超えたあと、バブルが崩壊してきたことが分かる
ものです。現在のシラーP/Eは、37倍付近と、極めて高い(22年1月
31日)

【崩壊するまでは、バブルとはわからないとする説】
ファンダメンタルズ(基礎的な経済指標;GDP増加率、企業利益、金
利など)からの理論株価と大きく乖離したバブル株価は、投資家の
「もっと上がるはずだ」という、心理的な共同幻想によって作られま
す。

バブルの発生のとき、金融市場は強い「共同幻想」のなかにあります。
赤い光の中では、赤い色は見えない。赤く染まった自分からは、バブ
ルと認識できない。別の視角から見る必要があります。

元FRBの議長、金融のマエストロとされたグリーンスパンは、「崩壊
するまで、バブルであるとわからない」と述べました。多くのメディ
アとエコノミストは、今も、13年前の言葉を引用しています。

知的に安易です。先行きの株価は分からないといえば、それは楽なも
のです。当方は、楽な方法はとりません。
 ↓
https://www.multpl.com/shiller-pe

【140年間のシラーP/Eレシオ:対象S&P500】
シラーP/E(10年PER)の、140年間の平均(Mean)は、16.9倍です。
「株価時価総額=過去10年間の平均企業純益×シラーP/E(16.9
倍)」。平均では、16.9年分の企業純益を、株価が見込んでいたこと
になります。

現在は36.3倍であり、140年の平均の、2.2倍です。過去、およそ25倍
を超えると、その後、株価バブルが崩壊していました(4回)。これ
を見て、米国株はバブルであり、近々崩壊すると見る識者も多い。

なおP/Eレシオと関連する、株式益回り(株価に投資家が期待する利
益率)は、P/Eレシオの逆数です。

株式益回り=1÷P/Eです。P/Eレシオの平均が16.91倍なら、「株価上
昇+配当」の、株価に対する平均益回りは「1÷16.91=5.9%」です。

その意味は、株式市場の集合が、株の平均利益として、過去140年、
5.9%/年の利回りを期待していたことです。米国の長期金利の140年
の平均を3%とすれば、「株の期待益回り=国債金利3%+リスクプレ
ミアム2.9%=5.9%」だったことになります。これを近似値の6%と
します。

株式投資家は、長期国債の金利(≒少し下がると定期預金の金利)の、
約2倍の6%の利回りを期待していました。(期待利回り÷株式投資
額)

【第二次世界大戦後の、75年間の株価】
第二次世界大戦後のS&P500の株価上昇は、この6%よりインフレの分、
約2%は高く、年平均で8%でした。戦後は、1.08の40年の指数関数に
より、長期的には「1.08の40乗=21.7倍」に上がってきたのです。

◎「戦後の米国株の平均期待上昇率(=株式益回り)である年8%」
は、株価評価の際、記憶に値します。株を売買する人の集合(=株式
市場)では、「約8%/年の上昇を期待してきた」と言えるからです。
長期国債金利の平均の、約2.5倍です。

【ヘッジファンドの基本となる戦略は、リスクのヘッジ】
実際の投資を見ても、ヘッジファンド(HF)の年間利益の目標になる
水準が、ほぼ8%/年です。

8%の長期期待益回りの平均に、一致しています。(注)これは目標
であり、実際の運用益が8%だということではありません。

ヘッジファンドは値上がりだけを予想し、3か月以内の短期売買をし
ているのではありません。下落も想定し、ほぼ必ず損失リスクのヘッ
ジをします。

一例は、株を買うとき、同時にプット・オプションを組み合わせて買
う方法です(これを投資戦略という)。狙いに反し、相場が下がった
ときは、契約した一定価格で売る権利のプット・オプションに利益が
出ます。(注)ブラックショールズ方程式で計算したオプション料を
払うため、ヘッジをした分、利益率は下がります。

【個人投資家の態度】
普通の人は、株価を毎日、毎時、見る時間はない。個人運用ではヘッ
ジファンドか、またはほぼ同じ運用をしている、投資信託を買ってお
けばいい。

実際、米国の、401Kでの個人年金の自主運用(約5000万人:推計)は、
ほとんどが投資信託の買いです。「ドル平均法」で、上がっても下が
っても、自分に可能な一定額の買いの指示をしておく。ドル平均法は
株式指数に合わせて、下がった時は買う株数が増え、上がったときは
株数が減って、保有株全体の平均原価を下げる方法です。

ヘッジファンドのマネジャーにも、株の将来価格は、当然不明です。
このため、値上がりの可能性が高いと判断した株を買うときも、リス
クヘッジをします。

【シラーP/Eを取り上げる理由】
◎140年のシラーP/Eを見ると、投資家による株価評価の大きな動きが
見えます。本稿の冒頭で取り上げる理由は、長期での株価の騰落が見
えるからです。

株価の罫線(推移のグラフ)は、事実のデータです。

しかしグラフが人間に与えるのは、心理的な期待の、「将来の株価」
です。人は、株価罫線を意識のないカメラのように物理的に見るだけ
ではなく、そこから、将来の株価を考えます(観念を抱きます)。

【指数株】
シラーP/Eの対象であるS&P500は、米国500社の、株価の加重平均の指
数です。個別株の動きは60%から70%分くらいは平均指数のS&P500に
比例します(蓋然的)。

◎NYダウ(米国25社)、S&P500(米国500社)、日経平均(日本225
社)の指数は、個別株より、上昇率と下落率がともに低い。

指数株(受動的なパッシブ投資ともいう)にヘッジをかければ、上昇
率と下落率が下がり、個別株より安定した、しかし、低い期待利回り
になります。利益の安定とは、利益率の低下です。ヘッジファンドや
インデックスファンドは、個人投資家や機関投資家の離反を防ぐため、
大きな利益を狙って損を出すことがあってはならない。

【加えて、株価の統計学的な変動幅の性質を知る】
◎現在の、指数株の年間騰落率は、VIX(S&P500のボラティリティ・
インデックス)で示される30%付近です。VIXの30%は、株価変動率
が高いということです。

1年後のS&P500は、「現在価格±30%の幅」にあるということです。
科学的(=統計学的)に正当な株価予想とは、価格を示すことではな
く、変化する変動幅の予想になります。

日経平均のNIXも、約30%です。VIXやNIXは、20日間のS&P500や日経
平均の、日々の価格の標準偏差を、√12倍して(統計学的分散の加法
定理の平方根)、1年間の騰落率に延長したものです。
(S&P500のVIXの推移)
https://jp.investing.com/indices/volatility-s-p-500

【VIXの16%と30%】
株価が上がる時期の、VIX(S&P500の株価変動幅)は、16%付近に向
かって下がり(1年の変動幅が16%に向かって小さくなり)、株価が
大きく下がる時期のVIXは、30%くらいに上がります。

株価の1年の変動幅を示すVIXを、メディアは「恐怖指数」といってい
ます。VIXが上がると、多くの場合株価は下がるからです(というよ
り、株価が下がるとき、VIXは上がる)。VIXの指数は、ポートフォリ
オのリスクヘッジとして売買できる証券化商品になっています。
https://quote.nomura.co.jp/nomura/cgi-bin/parser.pl?TEMPLATE=nomura_tp_kabu_01&QCODE=1552/T

VIXの変動は、
・株価が上がる時期には、投資家がリスクを感じて買うので小刻みに
上がって、VIXは16%くらいに下がり、
・株価が下がる時期は、心理的には、損が大きく見えるので売りが増
え、1日での下げ幅は30%に向かって大きくなります。

これは、利益より同じ金額の損を大きく感じるという投資家心理から
です(行動経済学からの市場の性質)。100万円の利益より、100万円
を失う方が怖いのが、人間です。200万円の利益の可能性と、100万円
の損の可能性あたりが等価でしょうか。

まとめれば、
・株価の変動幅を示すVIXが、30%に向かって上がっている時期は、
株価は下がることが多く、
・16%に向かって下がっている時期は、株価は上がることが多い。

現在のVIXは、27%から30%くらいと高く、「下落」を示しています
(22年1月末;2月2日には21%に下がっています)
https://nikkei225jp.com/nasdaq/

◎金融投資の全般に共通する原理は、リスクの大きさが、利益または
損失の大きさと等しいことです。

倒産寸前のジャンク債の金利は高く、優良企業の社債金利は国債並み
に低いことから分かるでしょう。「金利=将来リスク」です。

金利の上昇は、1年後のマネーへの心理的なリスクが上がることであ
り、逆は、リスク予想が下がることです。

▼長期保有と短期売買のポートフォリオ

・1年に資産を30%増やす目標での株の売買は、損のリスクも高い。
・1年8%目標なら、およそ、ヘッジファンドの平均的なリスクです。

なお、実際の投資では、
・3年の長期保有では、ほぼゼロリスクなら、スイスフランであり、
・5年以上の長期保有なら、金になるでしょう。

金融投資は、長期保有と短期売買を、一定率で組み合わせるポートフ
ォリオでなければならない。これは、日本の個人投資家に理解が進ん
でいない領域です。古来、言われてきた「卵はひとつのカゴには盛る
な」。

【金とスイスフラン】
長期保有の戦略では、米ドルの実効レートと価格が逆に動くことが多
い金も、推奨できます。ドルの実効レートが下がるときは金価格が上
がり、下がるとき、金価格は上げることが多い。投資のポートフォリ
オの30%くらいを金にします。

[その理由]
3000兆円の対外債務国であり、しかも構造的な経常収支の赤字を出し、
海外からのドル買いの超過がないと上がらない米ドルは、5年以上の
長期では、ほぼ確実に、下がるからです。

[スイスフラン]
2000年以降、金に似て、世界の富裕者のマネーが集まるスイスフラン
は、65円(2000年)から123円と、円に対しても1.9倍に上がっていま
す。これは、ドルの実効レートの低下(約1/2)と見ていいものです。

◎スイス中央銀行は、海外からの買いで、黙っていれば上がっていく
スイスフランの高騰を防ぐ目的で、マイナス金利を敷いています(現
在:-0.75%)。

スイスフランの、海外からの買いを減らすことが目的です。
裏から言えば、スイスフランへの投資人気が高いからです。

ユーロが出発した2000年に、円でスイスフラン(ユーロには非加盟)
を買っておけば、平均金利3.4%で運用したことになります。円の
2000万円が21年で3800万円です(スイスフラン/円の長期推移:2000
~2021)。

金は、1971年から2022年の51年間で、約50倍です(ドル価格:年率8
%上昇)。ドルの価値が、通貨の金に対しては1/50に下がったことを
示しています。

個人は、毎日または毎時、騰落を見なければならない投資ではなく、
買ったあと、いくら持っているかも忘れる長期リスクが低い金融商品
に、運用資産の30%くらいを、投資すべきと考えています。

ポートフォリオでの長短の売買は、資産づくりでは、重要な戦略です。
長期保有の50%から60%に、短期売買を40%から50%を組み合わせま
す。これがヘッジファンドの、基本的な方法です。
https://ecodb.net/exchange/chf_jpy.html

以上の知識を前提に、本文にはいります。無料版のシリーズ1回目は、
ここまでとします。以下は、有料版で送った本文の目次です。

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<Vol.1207:特別号:世界の株価バブルは、はじけたのか>
      2022年2月2日:有料版

【目次】
■1.シラーP/Eの暴落は140年間で4回だった:
  インフレになった2022年が、5回目になるのか?
■2.米国株暴落論の概要(米国のメディアから総合的に)
■3.1月下落は織り込みの株価調整だという論の概要(投資家より)
■4.カギは、米国の2022年1月から3月のインフレ率

■5.輸入物価を示す、実効レートのドル
■6.円の実効レートは47%下がったがインフレにならなかった
: 理由は、商品を店頭で買う、世帯所得の低下である

■7.日本の世帯所得が下方シフトするなかでの株価は、金融的な上昇
■8.生活意識の調査(=世帯の心理):日銀

■9.過剰流動性以外に、米国株の高騰をもたらした要素
■10.不確定な要素である、2022年3月以降の米国CPI
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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                                    以下は、項目の目処です】

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2.理解は進みましたか?
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