食品SMの開発マーチャンダイジングの方法(1)
This is my site Written by admin on 2019年3月5日 – 10:00
おはようございます。今日の日経夕刊に、1面トップで対中国輸出が、
前年比で17%も減少したと出ています。中国経済の減速が原因という。

減速の原因は、トランプの対中関税と、ブレグジット(英国のEU(無
関税の欧州経済同盟)からの離脱:19年3月末が期限)です。中国の
輸出は、対米と対欧が同じくらいです。

サプライチェーンへの波及には約6か月かかっています。日本企業の
対中輸出の多くを占めるのは、米国、欧州輸出している中国の工場へ
の機械と部品です。1990年代の後期から、日本の輸出産業は、中国に
工場を作り、中国から輸出しています(三角貿易という)。そのため
の、工作機械と部品の対中輸出です。

1月は日本の貿易が赤字になって、GDPを減らす要素になっています。
GDPでは輸出は生産ですからプラス要素、輸入は所得の海外流出です
からマイナスの要素になります。

2019年の夏、秋にかけて明らかになる、世界のファンダメンタルズの
数字では下落が一層大きくなるでしょう。集計される経済データは、
3か月から6か月遅れます。

2019年の10月から11月には、経済成長率と偉業利益を高いものとして
織り込んでいる世界の株価に、相当に大きな下落が来るでしょう。

昨年の夏以来、金融商品で上がっているのは、基軸通貨の米ドルが下
がり、米国の株価が下がったとき、アービトラージュ(代替商品)と
して買われる傾向がある金(ゴールド)だけです。
             *

流通の専門誌『販売革新』に、4年前から「新しいチェーンストア理
論:再考と展開」というシリーズを連載しています。

書き始めた理由は、渥美俊一氏亡きあと、チェーンストア理論を進
化・発展させて述べる人がいなくなったからです。渥美氏のチェーン
ストア理論は、ウォルマートが始めたサプライチェーン前の1980年代
までのものでした。

商品開発論(=マーチャンダイザー論)は、破産したシアーズの
1970年代のものでした。このため、食品では、米国で進んだ「生鮮の
グロサリー化論」だったのです。お弁当と総菜を売る日本型コンビニ
は否定していました。店内調理は、もちろん否定です。

来月号で41回目です。1冊の単行本より、長くなりました。最近2回は、
「食品スーパーの開発マーチャンダイジングの方法」を書いています。
インターネット上の商業界WEBでも、連載を続けています。

【SPA】
ユニクロやニトリは、米国で、中国で企画製造する専門店チェーンが
輩出した1980年代の中期から、SPA(製造直売型の専門店)になって
います。

メーカーが作った商品を仕入れて陳列し、販売するのではない。中国、
近年は人件費が上がった中国よりコストが低いインドネシア、ベトナ
ム、カンボジアを含め、東南アジア全域の工場で、商品を作り、輸入
して日本で販売しています。

アップルと同じ、ファブレスメーカー(工場を持たないメーカーとい
う業態)です。アップルは台湾のホンファイの中国工場で、iPhoneを
作っています。

【最も古くから多店舗したSMだが・・・】
わが国の小売業で、もっとも売上が大きいのは、全国で1万8611店の
食品スーパー(SM)です。総売り上げは、18兆円。1店平均10億円で
す(2017年)。わが国の、食品と飲料の総需要40兆円のうち45%を
SMが売っています。

食品スーパーは、米国では100年前から、日本では1970年代からもっ
とも早く、チェーン化を目指す、多店舗経営になっています。需要額
が大きかったからです。

●しかしこのチェーン化とは、
・「商品価値の高い商品」の企画・製造ができる条件を作るために、
・店舗数を500店以上に増やすことです。

(注)日本では、チェーンストアは、連鎖店と訳すだけで、画一的な
商品構成の店舗としてだけ受け取られました。消費者にとってNBより
高い商品開発を作るという面が無視されたのです。

日米SMの平均店舗数には、大きな差があります。

・米国のSMでは1位のクローガーが3825店、
・スーパーバリュが1588店、
・顧客満足度が全米ナンバーワンのパブリックスも5000平米以上の大
型SMが1200店です。
・2万平米のウォルマートも生鮮とグロサリーの食品売上が大きいの
ですが、5284店です(2016年)

チェーン志向の企業群で、最も古いわが国SMの店舗数が、なぜ、平均
30店で止まっているのか。誰でも、素朴に疑問に思うでしょう。

【コンビニは超多店舗化】
食品と飲料が主力のコンビニは、総計5.5万店。食品スーパーの3倍の
店舗数があります。

・1位のセブンイレブンは国内が2万437店(1店売上2.3億円)、
・2位ファミリーマート 1万5469店(1店売上1.5億円)、
・3位ローソン 1万4289店です(18年7月:1店売上1.6億円)

(注1)セブンイレブンは、海外に、日本国内の2倍以上の、4万6780
店を擁しています。セブンイレブンの1店平均売上は、ローソンの53
%増し、ファミリーマートの44%増しです。

(注2)立地、売り場面積、商品数、店舗のパートは同じ技術なのに、
異業種のように売上が違います。コンビニ比較での、顧客にとっての
商品価値の違いが、1店の売上の違いをもたらしています。セブンイ
レブンは、他よりはるかに、開発新商品の投入数が多いのです。

消費者が買う、衣・食・住・エレクトロニクスの中で、もっとも需要
の多いわが国の食品で、なぜ、チェーン店の規模が平均30店と小さい
のか? 

疑問をもつのは普通のことでしょう。ところが、わが国の食品スー
パー側は、問いへの回答をもっていないように思います。

端的に答えます。

コンビニの生鮮である加工食品(総菜・弁当)は、フランチャイズの
商品本部が開発した商品です。商品価値の高い商品の製造は、弁当で
も車と同じように、1品目の大規模な生産数が有利です。

1品目当たりの製造数が、商品価値での競争優位を作るので、店舗数
の多いほうが更に店舗を増やし、トップのセブンイレブンは2万店以
上になったのです。

わが国のSMはどうか? 

グロサリー(乾物食品と飲料)はメーカー製です。小売用語ではNB
(全国的ではなくても、ナショナルブランド)と言っています。

【卸売業の、小口バラ物流網】
わが国では、NBの商品を小分けにして、全国の隅から隅まで小口でも
バラ配送してくれる卸売りの物流網が、発達しています。(注)米国
のSMでは、グロサリーでも、小売のPB開発が主力です。

NB商品の卸売業がもっとも発達しているのは、日本です。米国では、
店舗がPB(プライベートブランド)の商品開発をするチェーンストア
なので、卸売業が介在する余地が無くなってきました。

【米国の卸売業は消滅した】
戦後の1950年代までは、米国でも家業店が多かったので、卸売業があ
りました。60年代、70年代、80年代で、一部を除き、消えました。原
因は、チェーンストアの店舗数が大規模化してPB開発を行ってきたか
らです。

米国での卸は、およそ、病院と調剤薬局(米国型ドラッグストア:医
療用医薬の調剤売上が80%以上)が相手の、医薬品だけになっていま
す。病院と調剤薬局は、医薬のPB開発はしないからです(ゼロではあ
りませんが、少ない)。

【食品SMのPB商品は少なかった】
わが国のSMでは、2000年まで、PB商品化がほとんどなかったため、1
店が小さくても仕入れができ、商品価値で劣位にならず商売ができて
きました。まずこれが、わが国のSMの平均規模が30店と少ない理由で
す。NB卸の発達のため、5店でも30店でも、仕入れ・販売ができたの
です。

NB商品の、卸からの仕入れでは、30店より100店が有利という商品条
件は少なかったからです(ゼロではありません。仕入価格で、割引リ
ベートを含んでも数%以下)。

【生鮮商品での、わが国の固有な事情】
もう一点、わが国の食品SMの、特有な事情として、生鮮5部門(青果、
肉、魚、総菜、弁当)の、売上構成比の大きさがあります。平均10億
円の店舗で、生鮮5部門が、平均では50%を占めます。(注)加工食
品の日配(毎日、発注・補充する食品)を入れれば65%です。

【鮮魚の事例】
魚の例を示します。鮮魚ではもっとも売れるマグロの刺身。これは、
インド洋やアマダガスカルの遠洋漁業で採ったものを冷凍し、日本の
漁港に水揚げしています。インド洋で採っても、水揚げした港がマグ
ロの産地になります(日本の食品法)。下関の名産とされるフグでも、
玄界灘でとれたものは、ごく少量です。

解凍し、解体して、刺身にしています。日本の食文化では、ナマの生
鮮をナマのまま食べることが、米国より数十倍も多いからです。

【米国の生鮮】
日本食は、近年、米国でも人気がありますが、食品SMで刺身や寿司を
買う人はマレです。肉は、ほとんどを冷凍のカタマリで買い、数週間
分を冷蔵庫に保管し、少量を解凍して調理します。

青果(果物と野菜)は、大規模な農場で採った直後に、4度Cの20トン
冷蔵車に入れて、店舗に物流するコールドチェーンです。店頭陳列の
消費期限が10日間と長い。コールドチェーンのない日本のSMでは腐る
期間です。

【日本人の食文化】
わが国では、生鮮のナマ食が多く、店頭での消費期限(品質が劣化す
るまでの時間)が1日しかない(肉は3日間)。日本の食品SMでは、ど
ういう方法でこれを売っているか?  3つです。

(1)地域の魚屋を店舗に入れて、刺身を作って売っている。コンセ
ッショナリー・チェーン(妥協型チェーン)と言いますが、食品SMは
この方法をとったのです。デパ地下と同じ方法です。
(2)自社の鮮魚担当が、店舗のバックヤードで刺身を作る。
(3)セントラルキッチンになる工場で作って、店舗に1日1回、配送
する。消費期限が1日と短いので、大量には作れない。

【零細な加工・製造数】
以上のように、30店の食品SMと、100店の食品SMも、販売商品の開発
製造という点では、ともに零細です。100店舗が、店舗PBである生鮮
商品の製造量の面で有利で、顧客にとっての商品価値(品質÷価格)
が高いということはなかったのです。

【米国のSMチェーンは、生鮮をグロサリー化した】
店舗PBである生鮮の商品開発で、量の優位を作らなくても、商売がで
きたのがわが国のSMです。米国のSMは、生鮮を生のままに売ることは
少なく、生鮮もグロサリー化しました。

たとえば肉は、ハイエンドの食品スーパー(ディーン&デリューカな
ど)を除き、冷凍のままのカタマリで売っています。米国でも家業の
肉屋は生の肉を売っていました(欧州も同じ)。チェーン型SMはこれ
を冷凍化したのです。

【日本では・・・】
日本では解凍して、陳列の消費期限を3日に短くして、売っています。
このため、量の優位が出にくかった。

以上が、わが国の食品SMの平均店舗数がチェーンストア以前の、30店
でとどまっている理由です。商品開発がなく、卸からの小口仕入れと
物流で商売できると、チェーン店の店舗数を増やしても有利にならな
い。NB商品の仕入れが便利だったからです。

【コンビニは?】
コンビニは、商品開発型なので、店舗数を増やすと商品価値を高める
基盤ができることから、1万店以上になったのです。

●食品SMが、店舗数を増やして店舗数の多さ、つまり1品目の販売数
の多さが有利になるように転じるには、生鮮のPBで高い商品価値を作
る必要があります。

食べる顧客にとっての商品価値は、「品質÷価格」です。生鮮の品質
は「見かけ、鮮度、味」です。「見かけ、鮮度、味」÷価格、つまり、
食べる顧客にとっての商品価値を、他より高めることです。これが、
SMの売上と店舗数増加の突破口です。

ところが、店舗PBである生鮮の商品価値に気が付いているSMの経営者
は、少ない(経験的に言って、経営者の10人に1人でしょうか)。ま
ず、価格の低さ・高さは分っても、「品質÷価格」で示す商品価値に
ついての理解が浅い。「NBの仕入れ~販売業」と考えてきたからです。
生鮮は、SMのPBだという認識も浅い。

平均30店にとどまっていて、店舗数を増やしても、コンビニのように
は顧客にとっての商品価値で有利にならない理由は何かということへ
の、真正面からの回答を、もっていません。

【コンビニ】
コンビニは商品開発型なので、店舗数が多いと明確に、商品価値の高
さにおいて、有利になります。開発商品の1品目当たりの製造数が増
え、原材料の仕入れ量が増えるからです。担当のマーチャンダイザー
も、少数の品目の開発に責任を持てます。

【まとめれば】
セブンイレブンは、国内2万店なので、取り扱い商品の、ほぼ全部の
販売数(=商品開発数)で、ダントツのナンバー1です。このため1店
の売上が他より40%以上大きく、その結果として増加店数も1位です。
開発新商品の投入数でも、ナンバーワンです。

わが国特有のことですが、食品SMの平均店舗数が、他の業種のチェー
ン店数よりはるかに少ない理由は、
・売上の40%のグロサリーと日配は、卸からのNB仕入れ型であり、
・売上の60%の生鮮5部門では、各店舗で、零細な量の製造を行って
いて、店舗数の多さの有利さが出ないからです。5店舗のローカルチ
ェーンも残っています。

以上は前置きです。本論は、明日送ります。若干、長くなります。

今回は、金融と世界経済論とは趣を変えたように見える、商品開発・
流通論です。根本のミクロ経済学的な原理は金融商品と同じですが、
チェーンストアの商品開発論は外観が違いますね。

【英国産業革命のときの職人生産から近代工業への変化と同じ】
商品開発論は、「国富論」のアダム・スミスが書いたピンの製造
(1776年)の原理と、変わることはありません。ベルトコンベアでの
多段階分業のためには、「製造数=販売数」の大きさが必要だからで
す。そのため、商品構成での標準化店舗数の多さを、チェーンと言っ
ています。

車も同じです。2000年には、トップメーカーがグロバール400万台で
した。今は、1000万台規模になっています。商品開発のセブンイレブ
ンの、フランチャイジーの店舗数(製造数=販売店数×1店平均売れ
数)が増えたことと軌を一にしています。

産業は、同時発展します。エレクトロニクスでは、日本が負けてしま
ったスマホの生産数=販売数です。最先端の商品であるスマホの世界
販売数負けたことは、日本の製造業が、2010年ころ中国に追い抜かれ
てたことを象徴しています。

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