ビジネス知識源:経営者が行うべき3つの仕事の内容を解く(2)
This is my site Written by admin on 2010年2月14日 – 15:19

おはようございます。<経営者が行うべき3つの仕事の内容を解く
(2)>をお届けします。

さっきまで見ていた女子モーグルは、すばらしかった。氷と雪を使
う冬期オリンピックは、0.01秒の瞬間の激しく訓練された動作が決
めます。結果は、神の領域としか思えない。スタート直前の、最良
の結果を目指し、挑戦する引き締まった表情がすばらしい。上村愛
子の4位は残念です。金メダルを取った最終スタートの米国選手に「
お願いだから、転んでくれ。極上の演技をした上村愛子にどうか銅
メダルを・・・」と願いました。よくないことかも知れませんが、
心の事実です。

昨日は、仙台の商工会連合会からの招きで、80名の経営者・幹部を
前に講演でした。会を終えてメトロポリタン・ホテルに泊まり、こ
れからの価値の差異化産業になり得て、われわれの食も救う農法の
本を読みながら、帰宅しました。

空港に向かうとき屋根、畑、遠方の山が雪に覆われ、気温は1度でし
た。見晴らす限り遠くまで輝く雪は、現地の人には変わり映えのし
ない風景でも、写真を撮りたくなります。

経営者(及び幹部)が行うべき3つの仕事を、具体例を交え、90分話
しました。この地方の特色か、女性経営者の参加が多かった。事業
はサービス業でしょう。

行うことは、中小企業もトヨタも、業種が違っても何ら変わるとこ
ろはない。個人事業も、同じです。金額の規模が違う。

資本は1.3~1.5kgの頭しかない。個人事業の極みであるコンサルタ
ントを始めたとき、三ヶ月同じであってはいけないと決めました。
藪下雅治先生から、会食のとき教わったことです。

知識の更新、知識を仕事にする技術の更新、そして表現法の改善が
できなければ、コストである時間をいただき、人前で話す資格はな
い。守れているかどうか自分では評価できませんが、目標でした。

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 <Vol.243:経営者が行うべき3つの仕事の内容を解く(2)>
          2010年2月14日

【目次】
1.当たり前のことですが
2.直感と信念
3.リーダシップとマネジメント
4.今日の事業の成果を上げる
5.潜在的な機会を開発する
6.プリウスでの機会の開発の事例:起動力は共感と情熱だった
7.コンサプトの単純化が必要

【次号の目次:想定】
7.価値開発のための、普遍的な方法:4つの問い
8.新しい事業を開発する:ビジネスモデルの開発
9.ビジネス・モデルの発想:事業開発とは?

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■1.当たり前のことですが・・・

組織で行う事業も、変わらない。製造業は、半年前より顧客にとっ
ての使用価値を改善・向上させた新しい商品を開発し、市場に出さ
ねば、売上は減ります。商品の登場から衰退までのライフサイクル
は、年々、短縮しています。(注)ライフサイクル=登場~成長~
成熟~衰退~消滅までの過程

卸売業、小売業は、仕入れ選択はしますが、自分では商品開発は行
いません。生産性を向上させ(=社員の働き方をより効率的にし)、
中間流通の改善と、店舗作業の改善を行い続けねばならない。

現在の売上は、環境要因(=外部要因)で上がるのではない。流通
と店舗作業を改善し、コストに対する生産性を上げた結果として、
消費者にとっての商品価値を高めるべきです。重要なのは消費者に
とってということです。

そのコストダウン(=生産性上昇)の結果として、業界や地域の平
均を超えて売上が増える。そのため、今年はあるいは今月は、何を
どう改善するか、これが「経営のテーマ(=経営者と幹部の仕事)」
でなければならない。

(注)商品価値=[商品の消費者にとっての便益・効用]÷売価、
です。価値は、消費者にとってのものです。

以上は、当たり前すぎることです。それを確認せねばならない。経
営者及び社員を含め、当然のことを、今、忘れている人が多いよう
に感じるからです。

去年と同じなら、去年より悪い結果(業績)しか現れません。トヨ
タでも、2年、新商品を出せねばどうなるか。 言うまでもないでし
ょう。これは小売業、卸売業も同じです。

今、あらゆる企業にとって、環境は売上を上げてくれません。今年
だけではない。来年も、再来年もです。

そのため、新しい機会と事業開発が必要です。まさに、経営者(及
び意思決定に携わる幹部)の仕事が問われていると言っていい。

■2.直感と信念

組織に方向を示し(新商品開発とコストダウン)、仕事の過程を管
理する「経営」は、苦しい仕事です。未来の結果が見ない中で、結
果への責任が伴う意思決定をしなければならない。(注)事業につ
いての意思決定を行う職位の人は、部分的ではあっても経営者です。

しかし「言葉」はすばらしい。言葉で創造する小説は、事実とは異
なるフィクションです。人間は現在の事実だけではなく、言葉とイ
メージよって未来を想定できます。予見とも言っていい。将来構想
も同じです。それらは言葉で作る。

【明日のニーズの想定】
そのため、経営は、明日の顧客ニーズと、そのニーズへの信念(信
じること)から、出発する。小さなことも大きなことも、あらゆる
決定は、見えない未来に向かったものです。

それが「潜在的なニーズ」の意味です。潜在とは隠れていること。
部分的にしか見えない。それを見せるのが「直感するという能力」
でしょう。

その直感は、知識によって得られます。知識は、経験を整合的に論
理化したもの、及び、未経験のことについての予見的な言葉です。

私は、ロシアやイスラエルに行った経験はない。しかし、知識によ
ってロシアやイスラエルを知ることができます。司馬遼太郎は、坂
本龍馬に会ったことはない。しかし、遺された文字としての、言葉
と行動の記録から、龍馬の考えと、行動の意味も知ることができま
す。司馬はそれを行い、イマジネーションの言葉を綴って、映像化
しています。

当方も、当然、プリウスの開発経験はない。残された記録と言葉か
ら、開発者になったかのように、その過程を仮想し知ることができ
ます。これも経験以外の、知識でしょう。言葉を使う人間に備わっ
た能力です。ビジネス知識源も、そうしたことを目標にしています。

顧客の動きから、データには表れていないニーズを直感する。
その直感が正しいどうか、行ってみなければ分からない。

実行しても、結果はずいぶんあとの業績になってしか、現れない。
意思決定の決定の時点では、直感したことへの信念しかない。

以上が、経営者(及び幹部)が行うべき、明日へ向かう仕事として
わかりにくい部分です。わかりにくくても、実行せねばならない。
これを行わないと事業の業績は低下します。経営者あるいは幹部の
誰かが行わねばならない。

■3.リーダシップとマネジメント

【リーダシップとマネジメント】
経営は、
(1)業績を上げるために何(What)を行うべきかの共感できる方向
を示すリーダシップと、
(2)決めたことを、どう行えば効率的か(How)を課題にするマネ
ジメントからなります。

リーダシップ+マネジメントです。経営にはどちらも、欠かせない。

前号の末尾では、以下を示しました。

【3項】
ドラッカーが、経営者及び幹部が行うべき、大切な仕事として挙げ
ている3項です。個人は得意な分野、不得意な分野は当然ある。誰か
が、その不得意を補わねばならない。補う人は、時に、コンサルタ
ントでもあるでしょう。(『創造する経営者』)

1.今日の事業の成果を上げる
2.潜在的な機会を開発する
3.明日のために新しい事業を開発する

プリウスを例に述べたのは、
2.潜在的な機会の発見(言い換えれば、プリウスに具現されたコン
セプトの開発)と、
3.明日のために新しい事業を開発すること(プリウスの生産と販売)
でした。

【しかし、体系的な方法論は不在】
「経営者(及び経営幹部)が、明日の仕事に少しの時間しか割いて
いないことを嘆くだけでは、問題の解決にはならない。明日をおろ
そかしているように見えるのは、今日のことを放っておいては、先
に進めないからである。しかしこれも、症状(=結果)にすぎない。

真の原因は、(上記3項の)経済的な課題取り組むための、知識と
方法論が存在しないことである。」(同書)

別のところでは、事業の修復は、誘惑的である。「昨日の衣服の、
必要な修復はできる。それは今日の義務である。しかし、明日のた
めのデザインは義務ではない。明日は、見えない。だから、おろそ
かにされる。」とも言っています。

ドラッカーは、事業開発を含む方法論に挑戦した。しかしその割に
は、理解が進んでいないと感じます。そのため、具体例を交え、表
現します。

何をどう行えば、
1.今日の事業の成果を上げる(いわば、昨日の衣服の修復)
2.潜在的な機会を開発する(新しいニーズの発見)
3.明日のために新しい事業を開発する戦略(新しい衣服のデザイン)
が作れるか、それも示します。

■4. 今日の事業の成果を上げる

「今日の事業の成果を上げる」というのは、比較的に分かりやすい。
成果は業績(売上と利益)のことです。

社員は仕事をする。その結果が売上と利益(成果=業績)です。設
備や商品は過去からのもので、今日の業績を上げる。

今、月次損益計算(PL=業績結果の計算)をしないところはない。
売上収益(粗利益)を上げ、使った経費が粗利益より少なければ、
利益が出る。

【重要な(注)】
(注1)損益計算の方法で言えば、事業の経営のためには、どこでも
行う財務会計(=税務的勘定科目での会計)ではなく、「管理会計」
が必要です。管理会計は、経営のためには、必須のものです。

(注2)管理会計(MA:Management Accounting)は、
・製造業なら、製品カテゴリー別の原価計算と損益計算です。
・卸売業では事業所別(または営業課別)の、[売上収益-(営業
コスト+物流コスト+管理コスト)=営業利益]です。
・小売業では、店舗の部門別の、[売上収益-(部門の直接コスト
+間接コスト)=営業利益]です。

管理会計の方法も、相当のページを使って書かねばならないことで
すが、今回は、簡単にとどめておきます。

第一に経営者がリードして(方向を示して)、行うべき仕事は、管
理会計の営業利益を上げるための、仕事の管理活動(マネジメント)
です。

総資本利益率は、金利に近接します。金利が低いことは、現在の資
本に対する利益率が低いことを示すのです。

方法が巧いかどうか別にすれば、現在の事業の成果を上げるための
マネジメントは、どの経営者(あるいは部門マネジャー)も行って
いるはずです。衣服の修復に似ています。

売上高(↑)-仕入原価(↓)-経費(↓)=営業利益(↑)

利益を出さねば、年々資本が減り、企業は存続できません。利益を
出すには、コストに対する生産性を上げなければならない。

【方法の改善が必要】
そのためには、仕事の方法をより生産性が高まるよう、改善し続け
なければならない。これだけでも大仕事です。過去の方法の、メン
テナンス的な改善が必要だからです。

企業成長(=出店、工場、物流への設備投資)のためには、「1人当
り売上」という人的な生産性で言えば、賃金の上昇を3%として、年
6%高めることが基準になります。

【生産性を上げる投資が必要】
設備投資が長期間できなければ、企業は成長しません。わが国の経
済の問題は、2000年代が、将来に向かう設備投資が、減価償却費以
下に、下がっていることです。

減価償却費は、企業の諸設備の老化を示します。この劣化分を補う
だけの、メンテナンス投資の範囲しかできていない。

【以下は、日本全体のことです】
これでは、GDPは増えません。街は10年前とほぼ、変わっていません。
逆に減ったものが増えています。特に、情報生産の東京以外では。

1980年代まで、日本企業の、GDPに対する設備投資額は、世界で最高
だった。今、GDP対比で世界最高の設備投資を行っているのが中国で
す。事業開発は、更新投資を除く新規設備投資分です。

過去の遺産で利益は出ていても、それが、将来への投資になってい
ない。投資を停止すれば、一時的に利益が出ます。雇用を減らした
ときも同じです。その後数年で、生産性が上がらなくなり利益も出
なくなる。

わが国の設備投資額が、1990年以降減った根底の理由は、1人当りの
生産性が高まっていないことです。

生産性を高めない限り、約6000万人の平均賃金を増やすことはでき
ない。賃金が増えなければ(2009年は、総平均で、3.9%のマイナス
です)、世帯の消費は増えません。(注)一時的には貯蓄の取り崩
しで消費もできますが、長くは続きません。

消費が増えないと、企業合計の売上増はない。鶏が先か、卵が先か
の循環論に見えますが、根底は、働く人の生産性の低下です。1人当
り売上(本来は粗利益)の、低下です。

企業合計(250万社)の人的生産性が高まっていないため、パート・
派遣・アルバイト・嘱託(「非正規雇用」と言われる)の構成比が、
33.3%(2009年:1677万人)に上がっています。同時に、正社員
の賃金も、平均では、増えていません。

(注)国民所得=世帯収入+企業の利益-税+補助金
   GDP(国内総生産)=労働者数×1人当り付加価値の生産性
   付加価値=売上-仕入原価=粗利益

         正規雇用    非正規雇用
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1990年   3473万人(80%)  870万人(20%)
2009年   3362万人(67%)  1677万人(33%)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(注)農林漁業や個人営業を除く。総務省労働力調査

事業経営は、第一に、1人当り生産性を上げるための、仕事の方法の
改善・改革です。これを経営者(及び幹部)が、方向と方法を示し
て、行わねばならない。

マネジメントは、単に、データ観察の管理ではない。仕事の方法の
改善・改革でなければならない。多くの場合、それには仕事の方法
を改善・改革するための投資が伴います。

新規の出店、物流設備、IT開発も、生産性上昇を目的に、行うべき
ものです。トヨタのプリウスの開発に伴ったことを、想起して下さ
い。

■5.潜在的な機会を開発する

ドラッカーが挙げた、経営者及び幹部の、2番目の仕事は「潜在的な
機会」を開発です。しかし「潜在的な機会の開発」という表現は難
しい。(注)ドラッカーが、多くの人に繰り返し読まれている割に
理解されていないのは、表現の抽象度が高いためかと思われます。
概念をあやつる哲学に見えてしまう。

別のところでは、
(1)「顧客が事業である」、
(2)あるいは「事業は顧客を開発する」と言っています。

しかし、企業は顧客を作ることができるわけではない。
地域の人口増は、企業が行うことではないからです。

潜在的な、つまり隠れているニーズを発見し、そのニーズに適合す
る有形の商品・無形のサービスを作って、提供することとすれば、
了解できるでしょうか。

(注)データでは、過去の商品の、傾向の延長しか見えません。

▼潜在的な機会の開発

具体的に言います。業者間取引では顧客になる小売業は、卸売業や
メーカーに、仕入れ価格を下げることを要求します。

【現在の顕在化したニーズ】
一見では商品の仕入れ価格の低下だけが、ニーズに思えます。

店舗売上-仕入原価-経費=利益です。

確かに、同じ商品の仕入れ原価を下げて提供し、店舗が安く売って
売上が増えれば、小売業の利益は上がります。

仕入価格の低下は、表面化した要求事項(ニーズ)です。
売上-仕入原価(↓)-店舗の経費=利益(↑)

ここで、異なる発想をする。
卸の顧客である店舗の経費の合理化です。

【明日の、潜在的ニーズへ】
本当のニーズは、店舗の利益でしょう。
その利益のために、仕入れ原価の低下を要求している。

真のニーズであるはずの、店舗の利益という観点に立つと、別の角
度のアプローチを考えることができます。発想の転換点がここです。

売上-仕入原価-店舗の経費(↓)=利益(↑)

▼事業開発の事例

ある卸売業は、年々増えてきたチェーンストアの店舗の、商品作業
費と物流費を下げるために、店舗への商品配送の「小売専用DC(デ
ィストリビューション・センター)」を開発し、提供して運営して
います。

顧客である個々の店舗の、商品補充のための商品仕分けと配送の経
費を下げ、店舗の利益を、仕入れ原価を下げたときのように、上げ
ることが目的です。

卸売業として、他社よりコストダウンしていた完全物流で培ってき
た技術(=知識)を、
(1)小売の専用DCの設備、
(2)効率的な商品作業、
(3)個店の棚への配送の方法として組み上げ、提供しています。

数年間の店舗の、利益効果の実証を経て、新規の事業に浮上しつつ
あります。商品を卸していた相手としての顧客(小売業)を、ノー
ハウの塊である物流センターを提供する顧客として「創造した」。

こうしたことが「潜在的な機会の開発、または顧客創造」です。

【その内容】
(1)物流センター設備(ハード)と管理のコンピュータシステム(
   ソフト)、
(2)庫内の発注、入荷処理、入庫、バラピック、出庫の商品作業の
  方法と庫内在庫管理、
(3)そして個店の棚への、バラ補充の方法を商品化したと言うこと
  ができます。

これによって商品流通(商取引+物流)で発生していた、卸・小売
双方の、ムダな経費を合理化した「サプライチェーン・ロジスティ
クス」を組み上げた。

商品の卸売業が行った潜在的な機会の開発です。数年後には、ほぼ
必ずもっと大きな事業(新しい商品と同じ)になるでしょう。

【参考】わが国よりはるかに技術的に進んだ米国のチェーンストア
では、数千店までを作った小売業が、卸売業のマーチャンダイジン
グ機能(MD機能)と、物流機能を吸収する方法での発展が見られまし
た。

わが国では、卸売業のMD機能と物流機能に、小売業が行うよりもコ
ストの低さと技術優位が見られるところがあるため、店舗MDの上流
部分を、事例のような卸売業が担う感じです。

■6.プリウスでの機会開発の事例:起動力は共感と情熱だった

プリウスでは、機会の開発は、まず、
「(1)快適さ、(2)安全性、(3)操縦性、(4)年々増えていた
女性ドライバーに歓迎され、(5)低汚染で環境に優しく、(6)2倍
の燃費効率」という車のコンセプトでした。

こうした創造が、マーケティングです。
(注)小売業ではこれをマーチャンダイジングとも言っています。

マーケティングは、「顧客にとって過去より価値ある商品のコンセ
プト」を、言葉、数字、設計で作ることでしょう。こうした「言葉
+数字+設計図」を、難しくは「概念(=コンセプト)とも言いま
す。

まだ存在せず、具体物でないものは、言葉と数字または図で示すし
か方法はない。いや、これはすばらしいことですが、人間は、言葉
・数字・図で、未来を作ることができます。

確かに、プリウスの、上記デザインと性能のコンセプトは、女性ド
ライバーや高齢者に適合します。ガソリン代もカローラの半分で、
最高に経済的です。環境重視に向かう21世紀の価値観の変化に、見
事に合致しています。

▼販売データは過去の結果でしかない

ただし、プリウスが設計されていた1995年当時は、原油は1バーレル
$15付近で、今の$77の5分の1でした。資材になる鉄、非鉄金属、
プラスチックなども、安かった。鉄板は1トン当り25万円でした。今
はその2.6倍の65万円付近です。

このため1995年の米国では、GMの、大型で重く排気量の多いRV(レ
クレーション車)や、ジープのような4輪駆動のSUV(スポーツ多目
的車)が売れていました。今は、見る影もない。

販売データ(=過去の事実)の延長では、米国のGMと同じ方向しか
見えなかったでしょう。当時のGMは、RVやSUVに注力した製造・販売
を行っていました。トヨタが、GMと同じことをやっていれば、GMに
似た結果になったでしょう。

▼環境、ニーズ、価値観は変わる

資源とエネルギーが約3倍に高騰し、社会の価値観と潜在的なニーズ
(言い換えれば経営環境とニーズ)が変わった2000年代は、GMは、
急激に業績が低下します。

ローン金利をゼロにし、大きな特典を付けるか値引きし、高い下取
り価格で、無理に売っていた。その無理が、会計の偽装スレスレま
でを生み、2008年の破産に至っています。(日航のように政府資金
で救済)

プリウスが開発される1997年の前には「経済的な価格の、超低燃費
のハイブリッド車」という顕在ニーズはなかった。

車がないから販売データもなかった。想定ニーズは、最初は5年先を
予見した、トヨタの役員10名の直感によるものでした。その後は、
300名の設計チームのプロジェクト・マネジメントです。

■7.コンセプトの単純化が必要

プリウスを開発するG21プロジェクトの10名の役員は、自由なディス
カッションの中から、近未来のマーケティング(「21世紀の顧客ニ
ーズ」)として、単純化した上記6条件からなる、新しい車のイメー
ジをまとめます。

(注1)成功する新製品のコンセプト(概念)は、これ以上は無理と
いうくらい単純になるまで、検討を加えねばなりません。事業は組
織で行う。

組織で行うには、皆ができるように単純でないと、開発も販売も実
行できないのです。大きな組織ほど、製品と事業コンセプトは単純
化されねば、業績を上げるような成功はおぼつかないと考えて下さ
い。

【失敗例】
15年以上前、小売業の王者で理想企業とされていたシアーズの「復
活計画(リストラクチャリング)」を、ハーバード・ビジネス・レ
ビュー誌で見たことがあります。実に、良くできたものでした。

しかし、知識に優れ、頭のいい幹部が作ったコンセプトが難しく、
関連が複雑すぎました。そのため、数万人の組織での実行は難しく、
結果は、業績回復にならなかった。

このとき事業計画はシンプルでなければならないと、心に刻んだの
です。シンプルにならないとすれば、考えと検討が足りていないと、
再考せねばならない。

【21世紀】
G21(=21世紀の車)という命名が、直感による発想を誘ったのかも
知れません。「20世紀今と、21世紀の車は、きっと根底から変わる」
皆がそう感じていたからです。

その開発ビジョンを、新車の開発技術者に提示した。

数百名の技術者は、G21のビジョンに、共感します。リーダシップ(
未来のために今何を行うべきか決めること)は、組織の共感が得ら
れないと、有効に機能しません。空回りしてしまうのです。

トヨタではG21が、未来は「きっとこれだ」という、組織の確信(信
念)になった。この信念からくる情熱が、困難を乗り越えさせたと
言えるでしょう。

しかしその後は、G21プロジェクトの最高に高い、コンセプトの基準
のため、次々に困難が襲った。それを、設計チームが、情熱と知識
集合で克服して行った開発の過程は、既に述べました。

かつて無かった、高い達成基準だから、プロジェクト・メンバーの
情熱が、一層、喚起された。低い基準なら、人には克服への情熱が
生まれない。

プリウスのリコール問題では、現在、米国大手マスコミが、世論を
たきつけているふしも感じます。そうだからといって、LEXUS以降の
トヨタに問題がないわけではない。何事も、トップ企業は、非難で
きる欠陥があれば、叩かれる度合いは大きい。ニュース価値が高い
からです。ただし当方はトヨタに荷担し、こう言っているわけでは
ありません。あくまで、事業開発の見事な事例として、です。

本稿では、経営者の3つの仕事、
1.今日の事業の成果を上げる
2.潜在的な機会を開発する
3.明日のために新しい事業を開発する、のうち、
1.事業の青果を上げると、2.潜在的な機会を開発することまでをの
べました。

次稿では、この2.~3.の方法までを述べます。環境が売上げの上昇
をもたらさない今、機械開発、事業開発が必要に思えるからです。

see you soon!

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お届けしています。最近号の、一部の、目次は以下です。

  <467号:2010年、ソブリン・リスク元年(2)>
     2010年1月13日分:増刊+正刊

【目次】
[増刊分]
1.中央銀行の超金融緩和策と、投機銀行化した金融機関
2.無から負債マネーを刷って、有価証券を買う中央銀行
3.先進国の中央銀行の、マネー印刷策

[正刊分]
4.中央銀行による増加マネーはどこに向かったか?
5.世界の主な金融機関の自己資本比率
6.日本国債の保有 
7.激しいレバレッジ金融が、ゼロ金利リスクを生んでいる
8.北京オリンピック(08年8月)前のような、中国バブルも再現
【後記:09年の世界の株価上昇】

 <468号:経済成長の根本策は、生産性上昇>
      2010年1月20日分

【目次】
1.疑惑の焦点
2.政治の展開
3.参院選へ
4.民主党政権に国民が期待する性格
5.GDPや国民所得とは何か?
6.名目GDPの、急激な減少
7.政府の予算総額は、実は、減っている
8.GDPを、国民所得の観点から見る
9.産業の生産性の上昇対策を支援すべき政府

     <469号:政府赤字の限界は2012年>
         2010年1月27日号

【目次】

1.国の貸借対照表は、何を示すものか
2.なぜ大きな債務超過でも、国は倒産しないか?
3.国は、いくらでも国債発行ができるのか?
4.日本政府の国債増発の限界は、いつ来るか?
5.日銀の信用増(通貨発行)という手段
6.結論
【後記】

 <470号:危機への意識と、ビジョン&リーダシップ>
         2010年2月3日分
【目次】

1.経営における危機への意識
2.経営の条件
3.生産性の上昇基準
4.「意識」というやっかいなもの
5.シンプルなビジョン
【特記:強調した再論】

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(注)お試し期間の1ヶ月後の解除も、自由です。以下は申し込み
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