1月の随想:貢献と成果(2)(3)
This is my site Written by admin on 2004年1月20日 – 08:00

こんにちは、吉田繁治です。先ほど、2月中旬(下旬?)に出す『利
益経営の技術と精神』の2回目のゲラ校正が終わりました。総ページ
が400ページ(10章)ですから、2冊分のボリュームがあります。

大きなテーマの表題をつけています。

トム・クルーズの『ラスト・サムライ』のためか、新渡戸稲造の『武
士道』がベストセラーになっています。これは嬉しいことです。一昨
年の年末に、書いています。

http://www.cool-knowledge.com/021216identity-no-engen-bushido(1).htm

まだ1月です。前号を続けます。遅れた2号分をまとめてお届けしま
す。(申し訳なく存じます)

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    <Vol.180 1月の随想:貢献と成果(2)(3)> 

【2号目次】
 1.随想風に
 2.近代化以降
 3.ナンバーワンの意識の背景

【3号目次】
 4.個人金融資産の借り手は政府と法人
 5.マネジャーの仕事
 6.楽しく行うこと

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■1.随想風に

▼追求したこと

技術を前面にだしている文面は別にして『利益経営の技術と精神』に
おいて、『精神』で追及したことは、

 ・仕事とはなにか、
 ・経営は何を目的にし、どんな方法で行うべきものか、
 ・マネジメントと言われる管理とは何か、
 ・現場が判断し、
  自律した責任をもつことのできる、
  モラール(士気)とモティべーション(動機付け)の高い組織
  は、どんなものかということです。

【ビジョンとモチベーション】
高いモラール、自己以外の外部への貢献の姿勢、そして自己成長への
モティべーションは、現在を、意味ある未来へのプロセスとして位置
づけることから得られます。

実現していない未来を、コトバと数字で示すのがビジョンです。ビジ
ョンが、人と顧客を惹(ひ)きつけるものになり得るかどうかは、周
囲の人に「静かで冷静な情熱」が感得されるかどうかどうかでしょう。

荒ぶって叫ぶ情熱ではない。それらは、一時の感興で終わることが多
い。目標に向かって、実行すべき戦略と方法をもった冷静な情熱でな
ければならない。

▼未来から現在を意味づける

人が動物と違う点は、未来を予測し、認識できる現在を、イマジネー
ションでしか認識できない未来へのプロセスとして位置づけることが
できるという能力です。

コトバで描くことしかできない未来が失われるとき、人は現在を意味
づけるものと、今日行うべきことへの動機を失います。

自分の今を意味づけるには、仮想的な未来の視点から、現在をプロセ
スとして見る方法しかないように思えます。目標は達成されれば目標
ではなく、目標以後の状態になってしまいます。

ある程度の目標、または人並みの目標が達成されたあと、どうするか。
ここに鍵があるように思えます。

その目標をさらに、未実現の未来の、大きなものへ向かわせるものは
何か? 人から見れば、自分自身に対する「誇大妄想」であるかも知
れません。

その誇大妄想は、近代以降では「差異」の獲得へ焦点をむすぶように
思えます。どこかで人や他の会社と異なりたいという願望が、戦略と
手段をもつ静かな情熱の形をとったものが、ビジョンというものでし
ょうか。

差異を自分以外の人に認められる価値にすること、ここが近代以降の、
経営と仕事の通奏低音のような目標になるものでしょう。

▼共有ビジョンが失われた事例

現代の世界で、平均寿命がここ10年で5歳も縮まった国があります。
医学の問題からではない。社会主義帝国が官僚化し、崩壊したロシ
アです。

社会が、暗黙に人々に与えていた共通目標のようなものが失われ、市
場経済と資本主義への心の適応が多くの部分で進んでいないためです。
直接には、アルコール中毒の増加によるものです。

過去のものの破壊は進行したのですが、現在を意味づけるための、未
来へ向かう建設は、方向を見いだせてはいない。

与えられたものではなく、おそらくは内発的なものがなかった人々が、
方向を見失い嗜癖(しへき)に陥っています。

自己目標は、内発的なものでなければならないもののようです。

▼経営スタイルの2つ

社会の中に存在する人工組織である企業の経営スタイルには、大きく
わけて二つがあります。いろいろ調べても、二つしかないと言ってい
い。
  
  ・統制と管理のコマンド&コントロール型、
  ・そしてエンパワーメントの自律型です。

どちらか一方に偏れば障害が出ます。両者を矛盾なく融合させること、
『利益経営の技術と精神』では、これを目指しました。

近代組織のコマンド&コントロールの方法は、どこでも共通です。こ
こに違いはない。しかし、エンパワーメントには違いが出ます。

エンパワーメント(枠をもった権限の委譲)の中身に、経営スタイル
の違い、つまりは企業の価値観の違いが出て、その違いにこそ、現代
経営の内容があるようです。

ボトムアップという方法に伝統をもつ日本企業は、西洋近代の方法で
あったコマンド&コントロールを、世界で最初に突き抜ける可能性を
もつと考えています。

(ある程度の清算のあと、ほぼ必ずそうなると見ています。今はその
ためのカオスの時期です。)

ここが、今後の私に課すテーマです。文面の題材は、その都度変わり
ます。音楽で言えば、基調低音がそれです。

▼利益の不思議

利益とは、実に不思議なものです。資本が利益を生むのか(資本価値
説:資本主義)、労働が利益を生むのか(労働価値説:社会主義)、
この問題には、未だに決着がついていないのです。

世間では、大問題ほど未解決なことが多い。
根底に遡れば、人々はいつもこの問題に直面しています。

私は、利益の社会化というとことが、到達点だと思っています。

■2.近代化以降

日本の現在を近代化以降とすれば、今の多くの問題を整理(organize)
できると考えています。

日本にとっての近代化は、要言すれば「貧困からの脱出」でした。

その方法として、日本人は、日本を西洋化するのではなく、「西洋の
ものを日本化」するという独特の方法をとったと言えます。「和魂洋
才」は、日本人の価値観として深い意味をもつものです。根元は「和」
でしょうか。

矛盾する異なる価値観を「和」す。

これが日本人の方法です。ワインと一緒に食べれば生臭さが増すトロ
の刺身を、なんとか同化させる能力。言語自体がそうです。漢字、ひ
らがな、カタカナを和す。

明治以降だけではない。大宝律令またはそれ以前からそうだった。

同じ島国である英国は、大陸を含む「コモンセンス」を最後のよりど
ころにしています。コモンcommon(共通)が、英国を普遍に向かわせた
原動力でしょう。

フランスは「エスプリesprit(機知)」でしょう。
米国では、「フリーダム freedom(自由)」です。
イスラムは、「アッラー:唯一神」です。

▼独特の方法

「和」は、西洋のものに対するときに限らず、われわれが共通しても
つ日本の方法の、独特のものに思えます。日本の中華料理は、日本料
理を中華にしたのではなく、中華を和して日本化したものです。

中国に行って中華料理を食べたときこれが舌で分かった。差異が大き
かったのです。日本の中華料理は、日本化されていたのです。日本人
はこうした形で、オリジナルからの差異を作ります。

中華料理を学んで日本化しようと言えば、日本人はその方法を見つけ
ます。同様に、西洋や米国のものを日本化しようと言ってもその方法
を見つけます。

これは、この国で育まれたわれわれがもつ共通の、しかし世界から見
れば独自の差異をつくる才でしょう。

近代化のプロセスは、学ぶべきものを共通にもつことのできる時代で
した。西欧と米国のものは、戦後の日本人にとっておよそ共通に燦然
(さんぜん)と太陽のように輝く目標だったからです。

近代化の過程では、中央官庁も「日本の近代化」という共有目標を持
ち得たのです。公務員試験に臨む官僚の仕事の動機付けも、そこから
得られていました。

ビジョンの共通項が、同質化でもあった近代化でした。つまり、およ
そ合意ができる建設すべきものをもっていました。

しかし近代化以降となると、「(構造)改革」という手段しか持ち得
ていない。改革は手段です。改革のあとに何があるのか、そのビジョ
ンを示さなければ、改革は正当化されない。

会社のリストラも不良債権処理も同じです。リストラが破壊であれば、
ロシアと同じになってアルコール中毒や嗜癖が増えます。リストラ
は、ビジョンの再構築でなければならない。

何を再構築するのか、リストラの過程を通じ、建設すべきものは何か?
それを、今、問わなければならない。今日の課題です。

よく言われる「生き残り」も手段です。生き残って何を建設するのか?
 問うべきは、そこでしょう。生き残ったあとの、差異化のビジョ
ンを描かなければならない。そうでなければ生き残りもできないので
す。

和すべき対象は何か。ここから、大枠での目標になるでしょう。

■3.ナンバーワンの意識の背景

日本人がおかしくなったのは「世界ナンバーワン」と言われた198
0年代末からでしょうか。ナンバーワンになれば、先のランナーはい
ない。

学ぶべきものがあるとき、日本人は才能を発揮します。自分で考えろ
と言われれば、方向を見失ってしまうことが多い。

ところがナンバーワン以降は、自分が作った目標、つまりはビジョン
と時には大仰に言われるもので動くしかなくなるのです。

【バブルの本質】
バブルとは、不動産が生む不労利益や値上がり利益、そして世界ナン
バーワンだった個人金融資産の金利や資金運用の利益を、多くの人が
夢見ることができた時代だったと言うことができます。

その背景には、世界ナンバーワンに達した個人金融資産という額面の
数字があったのです。そしてハイパーインフレを起こしていた土地資
産もありました。

▼個人金融資産

1990年ですでに1000兆円の個人金融資産(銀行預金、郵貯、
保険積み立て、年金、株)に達していました。現在は、空洞化の実質
価値はともかくとして、銀行や郵貯の通帳を含む、額面の名目金額で
は1400兆円です。

1400兆円が金利5%で回るなら、1年で70兆円の利益になりま
す。70兆円は、日本の小売り総額(140兆円)の50%に相当し
ます。

今日の買い物の50%は、金融資産の元本を減らさず、運用益(金利)
でまかなえるほどの大きな金額です。4678万世帯(00年)の
1世帯あたりで、1年に約149万円にもなる金利収益です。(注)
金融資産は平均的なものではありませんが。

5%の金利は、日本とスイスを除けば、世界的には高いものではあり
ません。以下が、現在の長期金利です。
                    (英エコノミスト誌)

      [04.01現在][1年前](騰落率) (財政赤字)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
米国   4.24% ← 3.97%(+ 7%) −4.9%
ユーロー 4.19% ← 4.19%(± 0%) −2.7%

英国   4.79% ← 4.42%(+ 8%) −2.9% 
スイス  2.26% ← 2.28%(± 0%)  公表せず
豪州   5.78% ← 5.21%(+11%) +0.8%
カナダ  4.70% ← 4.42%(+ 6%) −2.9%
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
日本   1.37% ← 0.89%(+54%)  −7.4%

日本の金利だけが、異常に低いことが分かるでしょう。

この金利を払うのはだれか?

■4.個人金融資産の借り手は政府と法人

経済は、1.政府部門、2.法人部門、3.世帯(個人)部門から構
成されます。

国民経済では、
 ・世帯部門(世帯セクター)が節約して金融資産を貯め、
 ・政府部門が国債や公債として借金をし、年金・郵貯・簡保等と
  して預かり、
 ・法人部門が借金をして投資し、利益を生むという資金循環にな
  ります。

その内容を見て行きます。

【1.政府部門】

個人金融資産の借り手では、政府・地方自治体が、重複部分を除く純
額で766.2兆円です。
                 (財務省理財局の集計)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
国家(政府と社会保障基金)の合計債務  598.0兆円
地方(国家との重複を除く)の合計債務  168.2兆円
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
合計                  766.2兆円

政府の総負債としては、この数字がいまのところ根拠がある唯一のも
のです。(民間が国債は44%であり、残りの56%は、政府機関が
持っているからです。)

国家と地方自治体は、金利が5%になれば、年間766.2%×5%
=38兆3000億円を、個人と世帯に対して支払うことになります。

ところが国家の総税収は、1年間で約40兆円です。政府予算は80
兆円の規模であり、足りない40兆円が国債発行です。今のすべての
税を2倍にしない限り、政府予算はまかなえません。

【留意すべき事実】
国家の総税収は、世界がリンクしている金融マーケットが5%の金利
になれば、そのすべてを借金(国債等)と、預かり金融資産(郵貯・
年金・簡保等)の金利で支払うことになります。

そうなると公務員の給与だけですら、どこからも出てこないのです。

【2.法人部門】

他方、政府が使わない分の個人金融資産は、法人(企業)と住宅ロー
ンや消費者金融などで個人の借金になっています。

総額が約650兆円です。個人の住宅ローンの総残高は180兆円で
す。法人が使っている個人金融資産は470兆円です。

金利が5%なら金利払いは1年で、470兆円×5%=23兆500
0億円です。ところが法人で申告された総課税所得は38兆円(03
年3月期までの分:国税庁集計)に過ぎないのです。

法人の全課税所得の38兆円は、平均で今の借り入金利2%を支払っ
たあとのものです。これは、黒字法人だけの課税対象所得の集計です。
(70%、420万の赤字法人の合計赤字は算入していません)

ここで金利が5%になると、利払いは、今のものから3ポイントつま
り14兆1000億円も増加します。600万法人のうち、黒字申告
である180万法人の総所得は、24兆円に減少してしまいます。(
そうなると今度は、政府の税収も約7兆円分が減ります。)

まとめれば、
 ・個人金融資産を766.2兆円借りている政府は5%の金利を
  支払い得ない。
 ・法人セクターも5%の金利になれば、その金利を支払い得ない。
  (180兆円を借りる住宅ローン債務者も同じです)

【支払えない金利】
金利が5%になり、金利支払いが2.5倍にもなれば、倒産企業が続
出するでしょう。50%以上の法人(300万法人:失業が30%く
らい)が倒産するか可能性が高いでしょう。これを経済恐慌と言いま
す。

個人金融資産の1400兆円は(銀行預金、郵貯、簡保、生命保険、
年金、株)は5%という世界的には妥当な金利になれば、1年で70
兆円の金利収益を生みます。

しかし、
 ・それを借りている政府部門(766兆円の負債)、
 ・法人部門(470兆円の負債)、
 ・住宅ローンの借り手(180兆円の負債)は、
  5%に上がった金利を絶対に払うことはできないのです。

「絶対に支払えない」ということの意味は、
 ・金利は世界がリンクした金融マーケットで5%になる可能性は
  ありますが、
 ・それを支払う日本政府、法人、住宅ローン債務者は支払い不能
  に陥って、
 ・(最後の貸し手になる)日銀がマネーを刷って無際限に政府と
  法人と個人に貸さない限り、
 ・支払う前に倒産してしまうということです。

金利上昇が、全体で見た日本経済の最大のリスクになっています。

今の日本は、マーケット金利が5%に上昇すれば、一夜で経済恐慌に
陥ります。財政破綻、企業破綻、個人破綻、失業の急増です。

経済恐慌とは、負債をかかえる政府部門、法人部門、個人部門が同時
に支払い不能に陥って、その結果、人為的なモラトリアム(支払い猶
予)の政策が発動されるということを意味します。

つまり1400兆円の個人金融資産は、(国内に留まっている限りは)
世界的に妥当な、5%の金利がつく資産ではないのです。金利がつ
かない金融資産は、価値がその分薄いのです。つまりは、内容がない。

世界ナンバーワンの意識は、西欧や米国と比べた生活水準からきたも
のではなかったのです。所得は高くても、生活水準は低いという意識
でした。

豊かさの意識は、集計される個人金融資産と土地資産の数字の「夢見
た価値」からきた未実現のものでした。

事実上は不渡りになる小切手をもっていて、その額面の名目数字を見
る。そして世界1豊かな気分になっていたのが、1400兆円の個人
金融資産をもつ日本人でした。

▼金融資産の価値の本質

金融の利益の本質は、借りた人の所得からの移転です。金利や配当を
払う人がいて、所得から払うことが可能であるとき、金融資産の意味
があります。どこまで行っても全体はゼロサムであるのが、金融資産
の特質です。

今、金融資産の最大の借り手は国家(公的債務766兆円)です。と
ころが国家の金利の支払いは、税金からしか来ません。

税金は、民間法人と国民が払うものです。法人が金融資産の最大の借
り手だった、80年代までは、金融資産の意味もあったのです。法人
は商品の生産や流通をするからです。

しかし、90年代以降のように国家が最大の借り手になってしまえば、
金融資産の価値(金利)は、自己矛盾に陥ります。

しかもこの自己矛盾は、もとに戻すことはできないのです。借したお
金は、返されるまでは戻って来ません。

国民は、自分の所得で払った税金を自分で受け取るだけです。総体の
結果では、何も増えない。公的債務766兆円の金利を払うためには、
増税しか方法はないからです。

国家の借り入れが最大のものになったため、1400兆円の個人金融
資産は、すでに総体では、金利を生むという意味では、ほぼ無価値に
なっています。

年金(残高155兆円:02年度)や医療や生活保護を含む福祉の構
造と同じです。

年金は、現役世代から引退世代への所得移転。要は、以前は普通のこ
とだった老いた親への仕送りが政府を経るものであって、全体の富は
増えないのです。

年金と福祉の問題は、政府を経るとき、途中で「政府権益」が発生す
ることです。もうこれには見通しがついてしまいました。働く人の仕
送りの分配と分配権をめぐって、人々が我欲で醜悪に動くだけでしょ
う。

遺産処理は親の蓄積の子への分配ですが、年金も金融資産の金利も、
現役世代の所得を、金融資産への権利をもつ人が争って分配を求める
ことです。遺産相続の争いくらい醜悪なものはないでしょう。

(注)時折、訊かれます。虎の子の金融資産をどうしたらいいか?と
いうことについて。金利や株で増やそうと思ってはいけない。

低利のスイスフラン国債を買って、保全だけをしておき動かさず忘れ
ること、というのが私の回答です。米ドルは危険です。外貨を渡り歩
けば、90%以上の人はいずれ減ります。

金融は、ラスベガスの賭博と全く同じで「敗者のゲーム」にしか帰着
しません。ラスベガスで儲ける唯一の方法は、儲けた瞬間にやめるか、
賭博場を開く権利を買うことです。

さて、それ以降です。経営と仕事の問題に戻ります。

■5.マネジャーの仕事

▼経営と仕事の普遍的な項目から

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・マネジャーは、「目標を設定する。」
・マネジャーは、「仕事を整理し、組織する。」
・マネジャーは、「部下にやる気を与え、部下とコミュニケーショ
         ンをもつ。」
・マネジャーは、「一定のモノサシをあらかじめ整え、仕事ぶりを
         評価する。」
・マネジャーは、「部下を育成する。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

アイデアは、ドラッカー(『現代の経営』1954)に借りています。5
0年も前に。こうした整理ができるのはとんでもない才能です。

この5項は、以下のように表現を変えれば、変わらざる経営の自己評
点の項目として使うことができます。自分が何を行うべきか、明確す
るための方法になります。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
1.明確な、しかも合意できる目標を設定し、チームメンバーは、
  その目標にコミットしているか?    (    点)

2.仕事の手順を作り、仕事を工程化し、標準化しているか?
                     (    点)

3.チームメンバーに、達成への動機付けをし、同じ立場にたって、 
  コミュニケーションができているか?  (    点)

4.仕事の成果の評価方法、モノサシとして明確に示し、どんな仕
  事を評価するのかを明らかにしているか?(    点)

5.社員のキャリア・ディベロップンメントの方向と方法が明らか
  で、教育という手段を準備しているか? (    点)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

会社、部署、自分を自己評点してみると、マネジメントと仕事として
何を重点化すべきか、分かるでしょう。参考のために私自身の、自己
評点(セルフ・コントロール:自己制御)の結果を示せば以下です。

※前稿の私の自己採点は厳しすぎて、感想をいただいた人から、自分
の点数がでないとのことでしたので若干甘くします。(来年の1月ど
ういう結果がでるか、楽しみです)

(評価項目) (私の方法)    (自己評点04.01.20)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
1.目標:   集中すること   70点を目指します。
2.手順:   開発       80点を目指します。
3.動機:   未来を描くこと  90点を目指します。
4.評価:   自分以外への貢献 70点を目指します。
5.教育:   学習       80点を目指します。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
平均               78点

仮想的な目標(未来)からの自己評価です。平均が78点ですから、
私は、その平均を超えた項目である自己手順、自己動機、自己教育に
重点を置いていることが、感覚的に分かります。

もっと具体的には、自分の考えを数冊の本としてまとめることです。
あらゆることは、数字化しないと、具体的なものにはならない。

集中・開発・未来・貢献・学習が私の目標をコトバであらわしたもの
です。

1.集中とは何か。 1日3時間は、目先の自己課題を作って、成果
をあげるようコンセントレーションすることです。

年間で1000時間。集中の対象はなんでもかまいません。

2.開発とは何か。経営と仕事の方法の手順開発を行うことです。

手段として、この国で数千万の人がすでに使っている「エクセル」に
落とせるものにして、その方法を、言語と図で表現することです。

3.未来とは何か。自分の10年後を思い描くことです。幸運にも、
今までは、思い描けばおよそ5年で形をつくることができています。
何を思い描くか。

大言壮語すれば、ドラッカーが提唱したこと以降の方法を、新しく作
ることです。(これは、どうか忘れて下さい(笑))

4.貢献とは何か。我欲より他利を優先することです。

私ができる人々への貢献は、自己能力の限りクリアに、課題とソリュ
ーションを表現することという、小さなことだけです。

5.学習とは何か。記憶することです。要は暗記です。

頭の中のデータベースを増やし、データベースのインデックスを、相
互に関連づけることです。そのために、表現することです。

表現はexpressです。集中して蓄積したものを圧縮し、コトバにして
論理の方法で関係づけることです。

およそ、以上のようなことが、私の今年の目標です。全部が大言壮語
です。

■6.楽しく行うこと

ものごとを行うには、義務感ではなく、楽しさが必要です。すべてを
楽しく行うことです。事実を冷静に見ながら、楽しく行う。「楽に、
安易に」ではありません。

楽しく行うには、細かい成果を出し、その成果は未来へ向かうもので
なければならない。

会社という組織で、自分が部分を担当しているときはどうか?
成果は、協働の成果であるため見えにくいでしょう。
成果が見えないと楽しくはないのです。

社員が仕事を楽しく行えない理由は、固まってしまった「権限」や権
力ということから来ています。自分には権限がない。しかし権限には
結果責任が伴います。自分が決めることができるときは、成果の責任
がある。

▼権限の枠

会社の権限の枠を突破するには、どういう方法があるか?

1.「上位のマネジャーが保持する権限であると書面に明示されてい
ないものについては、すべて下位のマネジャーの権限とする」

GEがもっともいい時代に、決めていたルールです。このルールはい
ろんな会社の活力化のために、採用する意味がありそうです。ただし、
決定には成果責任が伴うとするのが条件です。

次はいわゆるストレスです。これはどこから来るか?

▼ストレスの枠

2.「組織内の摩擦のほとんどは、たがいに相手の仕事、仕事のやり
方、重視していること(価値観)、目指していることを知らないこと
に起因する。問題は、たがいに聞きもせず、知らされもしないことで
ある」(『明日を支配するもの』ドラッカー)

方法は観察とコミュニケーションです。この中で特に大切なものは、
「相手の目指しているものを知る」ことです。

「営業」とは、一言で言えば、顧客が目指しているものを観察とコミ
ュニケーションで知ることでしょう。それと同じです。すぐれた営業
マンは、知る限りではほぼ全員が例外なく人間の観察者です。

同僚、上司、トップが目指しているものを、観察しコミュニケーショ
ンを図って知ること、そこから無用なストレスは解消できます。

知ることとは、相手の立場で考えることができることです。変な例え
ですが、犬を知るにも、犬の立場で考えなければならない。

室内犬なら、床上20センチくらから家の中、人、街を見るといい。
床や地面に伏して見ると、見慣れた景色が変わります。試みたらいか
がでしょう。私も、時々これをやっていました。周囲や家族がそれを
見て、何と言うかには責任がもてないのですが・・・(笑)

そして次は、六本木アークヒルズのような高いところから、晴れた日、
精密に動く下界を見渡す。両方をやることです。発想がわきます。

次は価値観です。同僚、上司、トップが何を優先して評価すべきもの
としているかです。

聴けば意外に同じだったということが多いはずです。万一、価値観が
相違すると感じるときはどうするか。辞めるか、同僚、上司、トップ
が目指しているものに照らして「和す」かです。

和(わ)すとは、自分のものにしてしまうことです。イスラムのアッ
ラーのような唯一神ではなく、宗教という価値観の根元へ遡(さかの
ぼ)れば、日本人は八百万(やおよろず)の神に和して、(イスラム
や西洋人なら感じる)居心地の悪さを感じない才をほぼ共通にもって
います。

▼極めつけ

極め付けになることは何か?

3.だれが言っていることはが正しいかではなく、何が正しいかから
考える。

マスコミ記事を読んでいて楽しくない理由は、「だれが」が先に来る
からです。こうした、他に権威を求める思考方法から、早く逃れるこ
とです。権威によりかかるのではなく、何が正しいかを自己強制で考
えるように努めることです。

そのためには、自分自身が暗黙に求めている「権威」の正体がだれで
あるか、まず見極めることです。結果はばかばかしくなるはずです。

権威なるものから解放され、何が正しいかを考えることができるよう
になると、楽しさが出てきます。権威に拠(よ)らない本当の学習が
必要になるからです。

目的をもった学習は、楽しいものです。そして朋(とも)あり、遠方
より来たる、亦(また)愉(たの)しからずや、です。

それを知れば、お金や地位は二の次でしょう。

この両方とも、他人と自己以外の外部への貢献からしか来ません。

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    <131号:会社と日本の未来(2)>
         
        近代化以降にあるもの

【目次】

 1.近代の原理と株式会社
 2.3つのコーポレート・ガバナンスの形骸化
 3.顧客満足ということ
 4.日本型資本主義の可能性
 5.人的資産の2態
 6.産業資本主義の成立と終焉
 7.おカネのパワーはすでに弱体化している
 8.労働の内容変化

【趣旨】

本稿では、20世紀型の産業資本主義が先進国では終わったと思われ
る1985年以降の、ポスト産業資本主義について考察をくわえます。

鍵になるのは「人的資産」。人間の頭脳のなかや身体のなかに、その
人間から不可分な形で蓄積された知識や能力です。機械や設備、さら
には特許やコンピュータソフトと言った「物的資産」とは区別されま
す。

ポスト産業資本主義とはどんなものか?
株主資本主義ではなかった、戦後の日本的な株式会社の特質をふまえ
ながら考察を進めます。日本の産業の可能性もここから見えます。

以下、本文で。

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